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さて、こうしてビートルズのアメリカでの配給権を事実上確立させたキャピトル・レコードは、さっそくホヤホヤの新譜を発売します。それが―― ■Can't Buy Me Love / You Can Do That(Capitol 5112) 1964年3月16日に発売されたこのシングル盤はアメリカ国内の予約だけで200万枚を突破していました。ちなみにイギリスでは3月20日発売でしたから、キャピトルの力の入れようは半端ではありません。 仕様は両面ともモノラルで、A面の Can't Buy Me Love はモノラルとステレオでは間奏のギターに違いがあることは有名ですが、実はこの後にアメリカでアルバムに収録されるバージョンは、またまた違いが発生しているという、罪作りな曲です。それについては後述致します。 続いて4月10日にはキャピトルでの2ndアルバムが発表されます。内容は彼等のイギリスにおける2ndアルバム「ウイズ・ザ・ビートルズ:With The Beatles」から、アメリカでの1stアルバム「ミート・ザ・ビートルズ:Meet The Beatles」に収録されなかった曲が5、それにシングル盤として既発の曲が4、そしてイギリスよりも早い発売の新曲が2という構成です。ちなみにここでも収録曲数がイギリス仕様よりも少なく設定されておりますが、それは収録曲数が13以上になると印税率が違ってくるというアメリカの事情によるものらしいです。そしてもちろん、爆発的人気がある彼等のアルバムの発売種類を増やす目的があったのは言わずもがなです。それが―― ■The Beatles' Second Album(Capitol T2080:mono / ST2080:stereo ) ![]() A-1 Roll Over Beethoven★ A-2 Thank You Girl▲ A-3 You Really Got A Hold On Me★ A-4 Devil In Her Heart★ A-5 Money★ A-6 You Can't Do That★ B-1 Long Tall Sally B-2 I Call Your Name★ B-3 Please Mr.Postman★ B-4 I'll Get You▲ B-5 She Loves You▲ 例によってこれも、ここでしか聴けないバージョンが発生しています。それは―― ▲A-2 Thank You Girl この曲はステレオ・バージョン初CD化ですが、アナログ盤で、これまでステレオとされてきたものは、すべて擬似ステレオ疑惑があります。しかし、それでもモノラルとの違いがはっきりしていて、それはハーモニカの入る回数がステレオの方が多いということです。またアメリカ盤のモノラル・バージョンは、このステレオ・バージョンを単にモノラルにしただけのものです。 ★A-5 Money これもステレオ・バージョンは初CD化で、イントロでのピアノにギターとドラムスが加わっているところが、モノラル・バージョンと違い、とても熱っぽい出来になっています。ちなみにこれまた、アメリカ盤のモノラル・バージョンは、このステレオ・バージョンを単にモノラルにしただけのものです。オリジナル・モノラル・バージョンは既発CDで聴きましょう。 ★B-2 I Call Your Name イギリス・オリジナルは4曲入りEP「ロング・トール・サリー:Long Tall Sally」に収録され、6月19日にモノラル・バージョンとして発表されたものですが、アメリカではそれより2ヶ月以上早くピカピカの新曲として登場しました。で、そのモノラルと比較すると、このアメリカ盤のステレオ・バージョンはカウベルとリード・ギターの入り方が違っています。これまでCD化されたこの曲は「パスト・マスターズVol.1」にステレオ・バージョンで収録されていますが、これはそれとも違っていますので要注意です。つまりステレオ・バージョンが2種類あるわけです。 またCD化されたオリジナル・モノラル・バージョンはこれまで高価な「EPコレクション」というボックスでしか聴くことが出来ませんでしたので、この機会に手軽に入手出来るのは嬉しいところです。しかも、ここでとりあげた違いを1枚のCDで聞き比べ出来るわけです。 ▲B-4 I'll Get You ステレオ・バージョンとされるものは、擬似ステレオだと思います。 ▲B-5 She Loves You この曲はステレオ・バージョンが存在しないことが資料で明らかなので、すべて擬似ステレオです。しかし、それが堂々とCD化されるのは今回が初めてです。 以上の他に★印をつけた Roll Over Beethoven、You Really Got A Hold On Me、Devil In Her Heart、You Can't Do That、Please Mr.Postman が今回ステレオ・バージョン初CD化となります。いずれも左右にはっきりと分裂したミックスですが、ボーカルとドラムスのシンバルが異様に大きい録音が特徴です。 また他社と配給権がダブっている曲もありますが、その裁判が終結していないこの時点で堂々と発売しているキャピトルの姿勢に、もはやビートルズは貰ったという、強気が表れています。しかし次のアルバム「ア・ハード・デイズ・ナイト:A Hard Day's Night」に関してはある理由からそうもいかず、またビートルズ側もより進んだ音作りをやっていたために、ますます大きな違いが表面化していくのでした。 参考文献:「ビートルズ・全記録 / マーク・ルウィソーン」 (2004.11.01 敬称略・続く) |