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1964年のビートルズは、アメリカ進出以来、大ブレイクの中で超過密なスケジュールに追いまわされました。それは―― 2月:アメリカ上陸〜テレビ出演&公演、帰国後にレーコーディング 3月:レコーディング&映画撮影、テレビ・ラジオ出演 4月:映画撮影 5月:長期休暇 6月:レコーディング&欧州〜香港・オーストラリア巡業 7月:テレビ・ラジオ出演、イギリス国内&スウェーデン巡業 8月:レコーディング&アメリカ巡業 9月:アメリカ巡業 10月:イギリス国内巡業&レコーディング 11月:イギリス国内巡業&レコーディング、テレビ・ラジオ出演 と続き、5月に休暇をとってはいるものの、直後にはリンゴが病気でダウンする等のトラブルもありました。また夏のアメリカ巡業ではライブ録音も敢行されています。これはひとつでも多くのビートルズ音源が欲しいキャピトルの要請によるものでしたが、当時のリアルタイムでは、あまりの音の悪さ故に、その一部しか発売されませんでした。もちろんそれが後に「アット・ザ・ハリウッド・ボール」として纏められたライブ盤の一部になるのは、言わずもがなです。 この時期は第3回ですでに述べた様に、ヴィー・ジェイ・レコードが初期の契約を有効に活かすために、手当たりしだに権利を保有するビートルズの楽曲を発売していましたが、キャピトルもそれに負けていませんでした。それは―― ■Chartbusters Vol.4(Capitol T2094:mono / ST2094:stereo) A-1 I Want To You Hold Your Hand B-5 I Saw Her Satnding There 5月11日はキャピトルが発売したオムニバス盤で、当時の所属歌手のヒット曲を集めたものと云われています。私は現物を聴いたことがありませんが、資料によれば収録されたビートルズの楽曲は上記の2つです。ちなみにステレオ盤では I Want To You Hold Your Hand が擬似ステレオになっていると思われます。ビートルズの音源が公式オムニバスに収録されるのは珍しいという価値があります。 ■Four By The Beatles(Capitol EAP2121:mono) A-1 Roll Over Beethoven A-2 All My Loving B-1 This Boy B-2 Please Mr.Postman キャピトルが出したビートルズのアメリカにおける初めてのEP盤は、すべて既発の曲を収録していますが、おそらくはヴィー・ジェイ・レコードが発売したEP盤への対抗意識からだったと思われます。ちなみにこれも5月11日に発売されています。 ■Slow Down / Matchbox(Capitol 5255) アルバム「サムシング・ニュー」からシングル・カットされたものです。もちろんモノラル仕様で、発売は8月24日でした。 ■The Big Hits From England And The USA(Capitol DT2125) B-1 Can't Buy Me Love B-2 You Can't Do That これも資料にある当時のオムニバス盤で、カタログ番号から推察すると、この2曲は擬似ステレオ仕様での収録と思われますが、例によって、私は見たことも、聴いたこともないので、ご容赦願います。ちなみに発売は9月7日だったようです。 というように、現在からすればコレクターズ・アイテムというようなものばかりですが、当時は既発の曲でも、仕様を変えればそれなりの売上げが見込めたという商魂の名残でもあります。そしてその極みつきが―― ■The Beatles Story(Capitol TBO2222:mono / STBO2222:stereo) A-1 On Stage With The Beatles ![]() A-2 How Beatlemania Began A-3 Beatlemania In Action I Want To Hold Your Hand A-4 Man Behind The Beatles - Brian Epsten Slow Down A-5 John Lennon This boy A-6 Who's A Millionaire ? B-1 Beatles Will Be Beatles You Can't Do That / If I Fell B-2 Man Behind Their Music - George Martin B-3 George Harrison C-1 A Hard Day's Night - Their First Movie ★ A Hard Day's Night / And I Love Her C-2 Paul McCartney C-3 Sneaky Haricuts And More About Paul D-1 Twest And Shout ★ D-2 The Beatles Look At LIfe D-3 Beatles Medley : Things We Said Tody I'm Happy Just To Dance With You Little Child Long Tall Sally She Loves You D-4 Ringo Starr Boys D-5 Liverpool And All The World 1964年11月23日にキャピトルがアメリカだけで発売したこの2枚組アルバムは、ビートルズ及び関係者へのインタビューやドキュメント音声等々に加えて、彼等の楽曲の断片を適材適所に挿入した立志伝物語を収録しています。そのナレーションと構成を担当したのは、ジョン・バブコック:John Babcock、アル・ワイマン:Al Wiman、ロジャー・クリスチャン:Roger Christtian です。ビートルズの生の声が聞ける事と同時に特筆すべきは―― ★C-1 A Hard Day's Night - Their First Movie ここで使われている A Hard Day's Night は約1分の編集バージョンです。ちなみにこれはモノラル仕様なので、ステレオ盤は擬似ステレオになっています。 ★D-1 Twest And Shout この曲だけが当時としては純然たる未発表扱いで、ビートルズ初の公式ライブ録音です。これは1964年8月23日のハリウッド・ボウルでのステージを収録した内の1曲で、後年、その他の音源と共に纏められ、「アット・ザ・ハリウッド・ボウル」として発売されるのですが、当時はこれがウリで、そのためにチャートの7位まで上がる大ヒットになっています。ただしここのでのバージョンは約45秒ほどの断片でしかありません。音も混濁しています。 他では、やはり断片として使われた曲のうち、I Want To Hold Your Hand、This boy、You Can't Do That、She Loves You が擬似ステレオ仕様になっています。 という内容のこのアルバムは、実は日本でも昭和41(1966)年に発売されていますが、その時の仕様はステレオ盤LP2枚がこのジャケットとおなじデザインのボックスに入れられており、さらに対訳&解説のブックレットが付いていました。これから入手をお考えの皆様には、このアナログ日本盤をオススメ致します。ちなみに米国オリジナル盤は見開きのダブル・ジャケットです。 ということで、今回ご紹介したものは、かなり強引なアイテムばかりでしたが、ビートルズの創作意欲はハード・スケジュールの中でも衰えることなく、ちゃんと年末には新作が発表されるのでした。 参考文献:「ビートルズ・全記録 / マーク・ルウィソーン」 (2004.11.12 敬称略・続く) |