バングラ・デシ・コンサート始末

 1971年8月1日、いよいよ「バングラ・デシ救済コンサート」が開催されました。舞台はニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、昼夜の2回公演で4万人を動員したと記録にはあります。もちろんチケットは発売と同時に完売でした。それは豪華な出演メンバーが、当時としては本当に「夢の共演」だったからです。

 その主な出演者はジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、レオン・ラッセル、ラビ・シャンカール等々でしたが、当時の状況は――

事実上解散していたビートルズが再結成?
 正式な解散声明はもちろん出ていませんが、ジョージがジョン、ポール、リンゴに参加を呼びかけたことが公になっていたので、期待が高まりました。しかしジョンはヨーコの娘・キョーコの養育権を巡って裁判係争中であり、ポールはイベントにアラン・クラインが参画していたことから出演を断ってしまいました。このポールの行動は「レット・イット・ビー」騒動が継続している事の表れで、対立の根深さを証明する形になったのは残念でした。ちなみにこの辺りの事情については、拙稿「レット・イット・ビーの謎・5」以降をご一読願います。

ボブ・ディランとエリック・クラプトンが久々に登場
 ボブ・ディランは1969年8月の「第2回ワイト島フェスティバル」以来のステージになりました。ご存知のようにディランは1966年7月のバイク事故以来、隠棲し、アルバムは発表していましたが、その都度、賛否両論の物ばかりでした。そして実際のステージに出たのは1968年1月の「ウディ・ガスリー追悼コンサート」、1969年7月にイリノイ州で行われたザ・バンドのライブへの飛び入り出演、それと前記の「ワイト島」のライブだけで、このバングラ・デシ救済コンサートが事故以来4回目のステージというわけです。ちなみに、ちゃんとギャラを受け取ったのは、「ワイト島」だけでした。またエリック・クラプトンは自己のバンド=デレク&ドミノスが空中分解してから自宅に引き篭もり、酒とクスリの日々と噂されていましたので、この2人に対する期待と不安は計り知れない大きさがあったのです。

レオン・ラッセルとその一派の出演
 当時の最先端、スワンプ・ロックの牽引車的役割を果していた実力者だけに、注目されていました。コンサート参加メンバーとの繋がりでいえば、まずボブ・ディランで、レオン・ラッセルは自分のソロ・アルバム製作過程でディランの曲を取上げるために、デモ録音したアセテート盤を送ったところ、ディランが気に入って交流が始まり、1971年3月には一緒にレコーディングを行っています。そして、その内の2曲「川の流れを見つめて:Watching The River Flow」と「マスターピース:When I Paint My Masterpiece」が「ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第2集」に収録されましたが、その時のメンバーが、ここに参加している Leon Russsel(p) Don Preston(g) Jesse Ed Davis(g) Carl Radle(b) Jim Keltner(ds) でした。ちなみにそのアルバムは同年末に発売されましたが、ジャケット写真は、このバングラ・デシ・救済コンサートのステージからのものだと思います。

 というようなお目当てがあってのコンサートには、以下のようなメンバーが出演しています。

George Harrison(vo,g) Ravi Shankar(sitar) Usted Aliakbar Khan(sarod) Alla Rakah(tabra)
Eric Clapton(g) Bob Dylan(vo,g,harp) Jesse Ed Davis(g) Billy Preston(vo,key)
Leon Russsel(vo,p,b) Klaus Voorman(b) Carl Radle(b) Rongo Starr(vo,ds) Jim Keltner(ds)
Badfinger / Pete Ham,Tom Evans,Joey Molland(g,vo) & Mike Gibbons(per)
Jim Horn(sax) Don Preston(g) Steven Stils,Alan Beutler,Chuck Findley
Marlin Green,Jeanie Greene,Jo Green,Dolores Hall,Kamala Chakravarty,Jackie Kelso
Claudia Linnear,Lou McCartney,Ollie Mitchell.Don Nix

 ちなみにミック・ジャガーも参加予定でしたが、ビザが発給されずに断念となりました。

 で、肝心のコンサートでは、以下のような曲が演奏されました。昼夜2回のステージでは演目に若干の違いがありますが、もちろん、その全てはライブ録音され、映像もフィルム撮影されたのです。そしてそのマテリアルを駆使してアナログ盤LP3枚組のアルバムと約100分に編集された劇場公開用映画が作られたのですが、両者の音源は基本的には同一ながら、収録内容に違いがありますので、そこに用いられた音源の詳細を、以下の記号で示しておきます。

 ※ アルバム「バングラ・デシ・コンサート」
 ★ 劇場用フィルム「バングラ・デシ・コンサート」
 ▼ 昼の部だけの演目
 ▲ 夜の部だけの演目
 ◎ 部分的に編集されて使われた音源

バングラ・デシ救済コンサート / 昼の部
 01 Bangla Dhun / Ravi Shankar
 02 Wah-Wah / George Harrison ※◎
 03 Something / George Harrison
 04 Awaiting On You All / George Harrison
 05 That's The Way God Planned It / Billy Preston
 06 It Don't Come Easy / Rongo Starr
 07 Beware Of Darkness / George Harrison
 08 While My Guitar Gently Weeps / George Harrison ※◎
 09 Jumping Jack Flush 〜 Young Blood / Leon Russsel※◎
 10 Here Comes The Sun / George Harrison
 11 A Hard Rain's Gonna Fall / Bob Dylan
 12 Blowin' In The Wind / Bob Dylan
 13 It Takes A Lot To Laugh,It Takes A Train To Cry / Bob Dylan
 14 Love Minus Zero 〜 No Limit / Bob Dylan ▼
 15 Just Like A Woman / Bob Dylan
 16 Here Me Lord / George Harrison ▼
 17 My Sweet Lord / George Harrison
 18 Bangla Desh / George Harrison

バングラ・デシ救済コンサート / 夜の部
 01 Bangla Dhun / Ravi Shankar ※★
 02 Wah-Wah / George Harrison ※★
 03 Something / George Harrison ※★
 04 Awaiting On You All / George Harrison ※★
 05 That's The Way God Planned It / Billy Preston ※★
 06 It Don't Come Easy / Rongo Starr ※★
 07 Beware Of Darkness / George Harrison ※★
 08 While My Guitar Gently Weeps / George Harrison ★
 09 Jumping Jack Flush 〜 Young Blood / Leon Russsel ★
 10 Here Comes The Sun / George Harrison ※★
 11 A Hard Rain's Gonna Fall / Bob Dylan ※★
 12 It Takes A Lot To Laugh,It Takes A Train To Cry / Bob Dylan ※★
 13 Blowin' In The Wind / Bob Dylan ※★
 14 Mr. Tambourine Man / Bob Dylan ※▲
 15 Just Like A Woman / Bob Dylan ※★
 16 My Sweet Lord / George Harrison ※★
 17 Bangla Desh / George Harrison ※★

 以上の音源詳細は、あくまでも私自身が公式音源とビデオ、そして海賊盤を聞き比べて部類した結果に過ぎませんし、残された記録にもいろいろな分類が存在していますが、特に指摘しておきたいのが――

Wah-Wah
 アルバム収録のバージョンは前半と後半で演奏が異なっているように思います。おそらく前半が夜の部、後半が昼の部だろうと推察しておりますが、頼りになる海賊盤の音質が劣悪で、決定的なことが言えません。

While My Guitar Gently Weeps / George Harrison
 アルバム収録バージョンとフィルム・サウンドトラック・バージョンが違うような気がします。レコード化されたものは、昼の部の演奏主体ではなかろうかと……?

Jumping Jack Flush 〜 Young Blood / Leon Russsel
 同上

――というところです。また、アルバムに収録された「Mr. Tambourine Man / Bob Dylanは映画では観ることが出来ません

 ということで、ここからライブ・アルバムと映画が作られていきますが、それは当日の曲順とは異なった編集になっていたのです。

(2005.09.09 敬称略・続く)