バングラ・デシ・コンサート始末

 こうして成功したコンサートは、当初からライブ盤として製作が予定されていましたが、その発売元に関して、ジョージ・ハリスンとリンゴ・スター、そしてボブ・ディランという超大物の音源が含まれていることから、各々が所属するレコード会社であるEMIとCBSの間でトラブルが発生し、結局、カタログ番号はアップルで統一するものの、アメリカとカナダではビートルズが所属するキャピトルが、それ以外の国ではCBSが配給権を獲得することで決着しています。そのアルバムが――

The Concert For Bangla Desh(Apple STCX-3385)
 発売日:米・1971年12月20日、英・1972年1月10日、日・1972年3月21日

 A-1 Bangla Dhun / Ravi Shankar
 B-1 Wah-Wah / George Harrison
 B-2 My Sweet Lord / George Harrison
 B-3 Awaiting On You All / George Harrison 
 B-4 That's The Way God Planned It / Billy Preston
 C-1 It Don't Come Easy / Rongo Starr
 C-2 Beware Of Darkness / George Harrison
 C-3 While My Guitar Gently Weeps / George Harrison
 D-1 Jumping Jack Flush 〜 Young Blood / Leon Russsel
 D-2 Here Comes The Sun / George Harrison
 E-1 A Hard Rain's Gonna Fall / Bob Dylan
 E-2 It Takes A Lot To Laugh,It Takes A Train To Cry / Bob Dylan
 E-3 Blowin' In The Wind / Bob Dylan
 E-4 Mr. Tambourine Man / Bob Dylan
 E-5 Just Like A Woman / Bob Dylan
 F-1 Something / George Harrison
 F-2 Bangla Desh / George Harrison

 以上のような曲目がアナログ盤3枚、6面に振り分けられて収録されましたが、「」で既に述べたコンサートの実際の曲順とは全く同じではありません。これは後に公開される劇場用映画と同じで、つまりそのサントラ盤という性格も併せ持っているのです。そして一番大きい曲順の変更は、「Something」をラス前に持ってきていることで、これはビートルズ時代の大ヒット曲というウリを活かした編集で納得出来ます。

 肝心の演奏については、はっきり言って録音がモコモコですが、音が団子状に迫ってくる妙な迫力があります。これはプロデュースを担当したフィル・スペクターお得意の「音の壁」効果の表れでもありますが、それを逆に突いて物凄く鮮烈なのが、シンプルな弾語り中心に展開されるボブ・ディランのパートです。


 また初っ端で展開されるラビ・シャンカールの演奏には、私の世代ならば否でもサイケ色を感じてしまいますが、聴き進むうちに、あまりにも先鋭的な音とリズムの洪水にヘトヘトにされてしまいます。

 そしてこの2つのパートを除くと、このアルバムはあるひとつの色合に染め抜かれており、それは当時流行だったスワンプ・ロックそのものでした。

 このスワンプ・ロック:Swamp Rock とは、白人がやるR&Bですが、それまで存在していたブルー・アイド・ソウル:blue-eyed soul と決定的に違うのは、より黒人ゴスペル風味が強く、さらにアメリカ南部系ソウルの音と雰囲気を強調していたことです。ちなみに「Swamp」とはアメリカ南部の湿地帯を意味していますが、スワンプ・ロックとは、けっしてアメリカ音楽業界だけの発明ではなく、イギリスのロックやポップスと微妙に混合されて成立したものだと、私は思っています。そしてそれが実際のステージで大団円を迎えたのが、この「バングラ・デシ・救済コンサート」だったのではないでしょうか。

 本来ならば、このまま映画での曲目解説へ進むのが本筋なのですが、そのあたりを鑑みて、次回はスワンプ・ロックについて書かせていただきます。

(2005.09.27 敬称略・続く)