天国と地獄の美女 江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」


 全てが傑作・名作と云って良い江戸川乱歩の作品群の中で、あえてベスト10を選ぶという無謀な企てが行われた時、「パノラマ島奇談」を入れることを躊躇するファンは居るはずが無いと、私は断じます。

 それほどに屹立するこの作品を映像化するのは、それこそ無謀な企てに他なりませんが、否、それだからこそ映像作品を観たいと熱望するのが、これもファン心理の微妙なところです。そしてそれをやってしまったのが、「美女シリーズ」の恐ろしいところ! まず、その原作とは――

パノラマ島奇談 / 江戸川乱歩・著
初出:大正15(昭和元)年10月〜昭和2年4月、「新青年」に連載

 物語は乱歩お得意の変身願望をベースに、猟奇と夢想をこれでもかと詰め込んでいます。

 それは妄想癖の強い貧乏小説家の人見広介が、自分と瓜二つの大富豪・菰田源三郎の急逝を知り、故人が墓から蘇生したと見せかけて入れ替わりを企て、まんまと巨万の富を得ようするものでした。

 そして首尾よく計画を成功させた人見広介は、M県に菰田家が所有する小島に、長年夢見てきたユートピアの建設しますが、問題は菰田源三郎の妻である千代子の存在で、どうやら入れ替わりを見抜かれているという疑念が……。

 そこで人見広介は彼女の殺害を決意し、2人で島に渡ります。そこは自然の風景を利用しつつも人工の妄想美学を実現した桃源郷=パノラマ島でした。それはガラスの海中トンネルや大渓谷、巨大階段や奇跡の花園……等々、千代子は我を忘れて陶酔するのですが、人見広介は真相を告げた後に、彼女を殺害するのです。

 こうしてパノラマ島で悦楽の日々を送る人見広介の前に、ある日突然に探偵が登場! これまでの経緯を看破するのですが……。

 という展開のクライマックスは、強烈な人間花火! 乱歩の文章は当に自分の夢想と願望を一気呵成に綴ったものとして間違いないほど、妖しくエグイ描写が続出しています。

 それとは対照的に、探偵の謎解きと観念した人見広介の態度がサラリとしすぎていますが、それは物語の意図するところではないでしょう。とにかくパノラマ島内部の情景が、あまりにも凄すぎます! 客観的にはエドガー・アラン・ポーの「アルンハイムの地所」や谷崎潤一郎の「金色の死」からの影響は否定出来ないと思いますが、その俗悪さというか、乱歩が十八番の極彩色のエログロ描写は圧倒的です。

 ちなみにここで登場する探偵の名前は北見小五郎となっていますが、これは明智小五郎の分身と考えて良いと思います。そしてこれを「美女シリーズ」化したのが――

天国と地獄の美女;江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」
監督:井上梅次
脚本:ジェームス三木
原作:江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
放送:昭和57(1982)年1月2日、テレビ朝日「土曜ワイド劇場」
出演:天知茂(明智小五郎)、叶和貴子(菰田千代子)、伊東四朗(菰田源三郎、人見広介)
■出演:宮下順子(人見英子)、水野久美(釘谷房枝)、小池朝雄(大野雄三)
■出演:荒井注(浪越警部)、五十嵐めぐみ(文代)、柏原貴(小林芳雄)
■出演:原泉、草薙幸二郎、北町嘉朗、近藤玲子バレエ団 他

 お正月特別番組という扱いで、なんと本篇142分! 放送枠が3時間近い大長篇となっています。それは第1部「カラスの化身」と第2部「エロスの園」という2部構成! キャストをご覧になれば、当然、改変が成されていることは明らかですが、比較的単純なストーリーはともかく、肝心のパノラマ島の映像描写がどうなっているのか、大いに気になるところでしょう。

 まず今回の作品では、いきなり明智小五郎=天知茂がお正月の挨拶も兼ねて、テレビの前のファンに語りかけてきます。これは昭和53年12月に年末特別番組扱いとして放映された「妖精の美女」と同じ手法で、このあたりはプログラム・ピクチャーのツボを掴みきっている井上梅次監督ならでは稚気かと思います

 さて物語は夢想家・人見広介=伊東四朗が、自らの理想とする桃源郷について、滔々と語り始めます。そこには天然の樹木や人工的に作り変えた自然の風景があり、半裸体の美女が舞い踊り、美しい音楽が流れているユートピア!

 実際、ここでの映像は乳丸出しの人魚が泳いだりハープを弾いたり、バタフライひとつの美女が舞い、キワドイ衣装のダンサーが踊り、肉襦袢のマネキンが身悶えするという、流石はお正月のお年玉♪ あまりのサービスの良さに絶句です! Tバックを超越したヒモパンしか着けていない美女さえも、しっかりと映し出されているんですねぇ〜〜〜♪ 当に夢の理想郷です。そして同時に怖ろしい仕掛けも用意されているらしく、火山噴火や大ダコに襲われる美女という、グロテスクな見世物までもあるらしいのですが……。

 しかしスケッチまで万全に描いて銀行家を口説く人見広介に、かえって危ういものを感じるのは人の世の常です。当然、融資が叶うはずもありませんし、もちろん、こんな事に慣れきっているのが人見広介です。今日もゴルフ場でプレイ中の代議士や会社経営者を訪ね、ネチネチと融資を頼むのですが、逆に怒らせてしまうのは当然です。おまけに不思議なカラスにまで、つきまとわれて……。

 ところが、こんな人見広介には色っぽい美人妻・英子=宮下順子がいるのですから、またまた吃驚です。もちろん、一応は映画撮影所で美術の仕事をしていた人見広介も、今は彼女のヒモ状態……。ですから、人妻とはいえ彼女も愛想をつかし、新興宗教の教祖・大野=小池朝雄と懇ろになっているのも無理からん話で、今日も自宅で熱い一時です。

 宮下順子は成人映画〜ロマンポルノで大活躍という説明不要の大スタアですから、ここはちょっと期待したのですが、まあ、見てのお楽しみとだけ書いておきます。彼女の色っぽい甘えた仕草と台詞回しには、必ずやグッと惹かれると思います。

 と、そこへ妙なカラスにつきまとわれた人見広介=伊東四朗が帰宅! その場のドタバタと巧みな嘘をミックスさせた宮下順子の演技は流石ですが、人見広介には全てお見通しです。小池朝雄が帰った後の伊東四朗と宮下順子の不貞腐れが、味わい深い演技です。

 そして件のカラスが機縁となって、小池朝雄と宮下順子が邂逅した菰田源三郎は人見広介と瓜二つという、いよいよ原作に沿った展開になっていきますが、ここは御丁寧にも、カラスが人見広介につきまとう理由を明智小五郎が推理するという一幕が用意されていますし、もちろん「カラスの化身」という第1部のタイトルも、ここに所以するものです。

 で、菰田源三郎は東海地方屈指の資産家であり、母親や歳の離れた美貌の後妻・千代子=叶和貴子、そして大勢の使用人達と大邸宅に住んでいますから、宮下順子と小池朝雄は最初っから下心満点です。それは、あわよくば小池朝雄を教祖とする新興宗教「薔薇密教」の神殿建設への寄付願いなんですが、菰田源三郎と人見広介が唖然とするほど瓜二つなのを知って、悪辣な目論見を企てるのは言わずもがなです。

 ちなみにこの「薔薇密教」というのが、様々な教義が語られていても、その実相はセックスエクスタシー奨励ですから、教団本部に女性信者を集めて、毎夜のご乱行! 胡散臭い小池朝雄の説法に法悦の極致に導かれ、完全乳見せ状態で悶える女達の狂態は、当にお正月ならではの「おめでたい」サービス場面♪

 こうして次なる展開は、菰田源三郎を亡き者にして人見広介と入れ替わるという計画が実行されます。そして深夜に車で帰宅途中の菰田源三郎を襲撃しますが、どこか最初から腰が引けている3人は、それに失敗! どうにか逃れるための苦し紛れに、小池朝雄は菰田源三郎の片目を潰してしまいます。ここは相当にグロテスクな血まみれの演出になっていますが、これ故に、後で人見広介も同じ片目を潰さなければならないのです。当然、抵抗する伊東四朗を眠らせ、教団本部内での恐い素人手術は、熱湯消毒したドライバーでの眼球抉り出し! 気の弱い私などは正視出来ないほどにエグイ演出は、劇中でも宮下順子が思わず顔を背ける演技に集約されています。もちろん人身御供の台に拘束された伊東四朗が、刹那に四肢を痙攣させる芝居もリアルです。

 さて、その頃、明智探偵事務所には、これも熟女の色気を発散させた釘谷房枝=水野久美が訪れています。それは前述した菰田源三郎襲撃事件の真相解明の依頼ですが、実は彼女は、その真犯人が後妻の千代子だと睨んでいるのです。もちろん動機は財産狙い! ちなみに釘谷房枝は菰田源三郎の妹であり、子供が居ない菰田家に自分の次男を養子縁組しようと目論んでいるのですから、脂っこさは半端ではありません。その彼女のプロフィールは――

水野久美(みずのくみ)
 東宝特撮の美女と言えば、まず、この人です。「妖星ゴラス(昭和37年・東宝・本多猪四郎監督)」では入浴シーン、「マタンゴ(昭和38年・同)」では色欲を強く感じさせる人気歌手、「怪獣大戦争(昭和40年・同)」では色気で地球人を篭絡しようとして逆に恋に落ちる侵略者、「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン(昭和40年・東宝&ベネディクトプロ・本多猪四郎監督)」ではフランケンを育てる女科学者として母性を強く発揮していましたが、その設定を引き継いだ続篇「サンダ対ガイラ(昭和41年・東宝・本多猪四郎監督)」では外人にまで目をつけられる色香を発散、さらに「ゴジラ・エビラ・モスラ/南海の大決闘(昭和41年・東宝・福田純監督)」ではきわどい衣装の島娘♪ 彩りとしてはこれ以上無いほどの活躍で純真な子供達を惑わせ、性の目覚めに導きました。彼女の魅力はキツイ眼差しとぽっちゃりとした唇でしょうか、特にキス・シーンを演じると何とも言えない濃厚なものが漂います。「怪獣大戦争」ではニック・アダムスを相手にそれらしいシーンを演じていましたが、そのものズバリでなくてもその瞬間の濃密さを表現出来てしまうところが、彼女だけの持ち味だと思います。そして「マタンゴ」ではその唇を真っ赤にして、妖しいキノコを食べるのですからたまりません。子供向けでもこれですから、夥しく出演した大人物ではさぞやっ、と思いきや、以外にもその妖艶な雰囲気はこちらが期待するほど強くありません。もちろんお色気はたっぷり振り撒いておりますが、このあたりは今後の研究課題になりそうです。気になる皆様は岡本喜八監督による「独立愚連隊」シリーズや同じ東宝の「国際秘密警察」シリーズ等でご確認下さい。個人的には東宝退社後に出演した東映作品「渡世人列伝(昭和49年・小沢茂弘監督)」に期待したのですが、悲しい女の宿命を見事に演じてはいるものの、往年の特撮物で披露してくれた味が出ていませんでした。彼女が特撮ヒロインで最高の人気を誇っているのも、そのあたりに要因があるのかもしれません。海外にもファンが大勢いるらしいです。

 という彼女に連れられて菰田家を訪れた明智小五郎が逢った千代子は、なんと旧知の仲でした。どうやら彼女の姉と明智には、なにやら過去にロマンスがあったような……。「姉は死ぬ間際まで明智さんの事を想い続けていました」という千代子の言葉に、煮詰まった表情を見せる名探偵が意味深です。なにしろ姉妹はそっくり! 苦い思い出に感傷的な演技を見せる天知茂は、やはりハードボイルドが似合います。

 一方、千代子は莫大な財産に目が眩んで菰田源三郎と結婚した事を、はっきりと明智に告白します。しかし現実は田舎に閉じ込められた愛情の無い生活……。ですから、義姉の水野久美からは疎まれてイヤミの言われどうしです。

 ここは「虫も殺さないような顔をして、あの女の心は欲でいっぱいよっ」と言われつつも、耐え忍んでいる和服姿の千代子=叶和貴子に、グッと来ます。それにしても彼女は、名探偵に何を期待しているのでしょう……。

 ところが、ある夜、菰田源三郎が持病の発作で急逝! これには関係者も仰天しますが、特に自分の子供を養子縁組しそこなった水野久美はガックリ……。さらに入れ替わりを画策して片目を犠牲にしている人見広介は半狂乱です。しかし故人の埋葬が古くからの仕来りで土葬と知った小池朝雄の姦計で、墓からの蘇えりという奇策は原作どおりの展開となります。

 ここでの墓暴きは、原作でも江戸川乱歩の筆が恐怖と焦燥を描いて特に秀逸な場面でしたが、それを映像化した演出も死後硬直してポキポキと骨が折れる死体とか、そこから片目の義眼を抜き取るところ等々、笑えるほどに恐くて臨場感があります。また翌朝になって蘇生した菰田源三郎を演じる伊東四朗も、なかなかですねぇ。性格から行動までもが変わっても疑われないような朦朧とした芝居が、本当に巧みです。

 さて、こうして首尾よく菰田源三郎となった人見広介の夢の実現と顛末を描いたのが、第2部「エロスの園」です。それは原作どおり、地所内にある孤島に莫大な費用を投じて大パノラマを建設する展開ですが、その過程では、もちろん伊東四朗が自分の正体が露見する恐れに慄いたり、水野久美との対立、そして小池朝雄や宮下順子の駆け引き、さらには叶和貴子の心理と行動が、如何にも「美女シリーズ」らしいドラマ展開となって絶妙です。

 そのあたりはネタバレがありますから、詳しくは書くことが出来ません。しかし、叶和貴子の曲線美が堪能出来るシャワーシーンは吹き替え無しの完全乳首見せですし、オールヌードでの烈しいアクションシーンまでもが用意されています。またこの流れの中では、バスタオルだけの彼女の身のこなしも、実に良いですねぇ♪ さらに伊東四朗との夜の寝床での場面は、あまりの色香にクラクラするほどです。

 そしてもうひとつの見所であるパノラマ島の楽園については、書ききれないほどに美味しいネタが満載!

 まず楽園の妖精達には、小池朝雄が主催の新興宗教「薔薇密教」の信者達に加えて、日本各地から拉致した美女を使うという計画ですが、叶和貴子から夫の変貌について相談を受けた明智の推理によって、ここに文代=五十嵐めぐみが潜入捜査という、ワクワクする展開があります。それにしても明智! あんなエロい教団に可愛い弟子を入れるなんてっ!

 肝心のパノラマ島の施設は外から見えない仕掛けになっており、洞窟内のエレベーターで海底にまで下りると、そこは華麗な水族館! 珍しい魚類に加えて、美しい人魚の群れがっ! さらに通路を進めば、野球場ほどもある広い人工の楽園がっ! 生きたワニや色鮮やかな鳥類、綺麗な植物が生い茂り、海や滝や火山までもが作られています。

 また、お目当ての「エロスの園」にはキワドイ衣装や半裸の美女が大勢、舞踊っています。もちろん島に渡った叶和貴子は女王様♪ なかなかヤバイ衣装を身につけ、すっかり良い気持ちです。もちろん、その場には全裸の生きたマネキンとか、なんと文代=五十嵐めぐみまでもが、薄物を身に纏って居るのです♪

 しかしパノラマ島には硫酸の池や剣の谷という怖ろしい場所もありますから、人間の欲望がドロドロに渦巻いた果てには、怖ろしい惨劇が待っています。

 そしてクライマックスは、原作どおりの人間花火! あぁ、血の雨が降り注ぐ!

 さて、こういう物語の中でも、「美女シリーズ」お約束の演出はちゃ〜んと用意されています。それは明智小五郎の変装と独善的推理に他なりません。そして思いがけない真犯人の企みをスバリと指摘します! あぁ、これぞ「美女シリーズ」の醍醐味!

 パノラマ島の原作、そして「キッチュ」なその映像美学、さらに叶和貴子の大サービス場面に目が眩んでいるテレビの前のファンは、事件の奥底の真相にド肝を抜かれたのではないでしょうか!? 少なくとも私は、そうです。

 う〜ん、これはやっぱり、凄い作品!

 ちなみに気になる名探偵の過去のロマンスは、叶和貴子の思わせぶりで再燃し、2人でナイトクラブでのダンスとか、なかなか良い雰囲気です。天知茂も十八番の設定とあって演技が冴えまくり! 「帰りたくなくなってしまいましたわ」と千代子に囁かれた名探偵の昇天しそうな表情は必見です。

 それと伊東四朗、小池朝雄、宮下順子が繰り広げる熟達の芝居も流石です。特に宮下順子は結論から言うと脱いでいないので、そのあたりを期待するファンには物足りないかもしれませんが、正統派の演技には必ずや納得されるでしょう。劇中では、実はこの3人が主役級の演出で物語が進み、感情移入させられますが、それにしても宮下順子のような美人妻が居たら、人生を踏み外すのも悪くないなぁ……、なんてアブナイ気分にさせられます。

 そして、やっぱり叶和貴子です! 「美女シリーズ」では後に「白い素肌の美女」にも出演し、強い印象を残しますが、この作品での出し惜しみしない女優魂は尊いとしか言えません。定評のある柔らかな曲線美は、芸能界入りしてから人気を獲得した特撮テレビ番組「宇宙刑事ギャバン(昭和56年・テレビ朝日)」のヒロイン・ミミー役(右掲載画像)の頃から既に注目されていましたが、やはりオールヌードでの鑑賞は別格の美しさ♪ 入浴シーンが、これでもかと続く後半は目が離せません。それは和服姿とても同様で、豊かなヒップから太股のラインは、着物越しゆえに尚一層、惹きつけられます♪

 そのあたりは井上梅次監督の、分かっているとしか言いようの無い演出がニクイほどです。なんと完全勃起状態の乳首のアップまでもが、堂々とテレビ作品で映されているのですからっ!

 また、そればかりで無く、彼女が芸能界入りする前にやっていたピアノ教師という腕前も、さり気なく披露されます。特にパノラマ島で入浴後、全裸に薄い布を巻きつけたような衣装で電子キーボードを弾く場面には、ゾクゾクさせられます。もちろん入浴から着替えまでが逐一、丁寧に演出描写されていますからねぇ〜〜〜♪

 肝心の彼女の演技は、やや拙いところも散見されますが、そこが逆に素人っぽい魅力というか、水野久美や宮下順子という強烈な個性派が脇を固めていますから、結果オーライでしょう。初々しいところと、猫を被ったような女の恐さを見事に演じていると思います。些かネタバレになりますが、実際、劇中では伊東四朗と小池朝雄が彼女を奪い合うような場面展開すらあるのです!

 ということで、これはやはり傑作として良いでしょう。個人的には、もう少しコンパクトに纏めた方が良いという気持ちもありますが、原作のポイントはしっかりと映像化されていますし、死体のすり替えから事件の意外な奥底の動機と名探偵の推理、さらに美し過ぎる刹那のラストまで、唸りながらも楽しめます。

 特に映像化されたパノラマ島は、当時としてもチープだった特撮やセットが、逆にキッチュで乱歩味だと思います。サービス満点の美女集団の存在も、素敵♪ このあたりは現代ならばCGを駆使して、もっとリアルに作れるでしょうが、やはり乱歩にはアナログが似合うのではないでしょうか。

(参考文献:DVD「天国と地獄の美女」付属解説書」)

(2007.06.17 敬称略)