東映といえばヤクザ映画と時代劇、さらに私の世代では、そこにエロ・グロ&バイオレンスが加味されています。そしてその全ての醍醐味を満喫できる作品が、今回ご紹介する「忘八武士道」です。

ポルノ時代劇・忘八武士道(昭和48年・東映)
監督:石井輝男
原作:小池一雄&小島剛夕
出演:丹波哲郎(明日死能)、伊吹五郎(白首袈裟蔵)
   :遠藤辰雄(大門四郎兵衛)、ひし美ゆり子(お紋)、相川圭子
   :一の瀬レナ、池島ルリ子、久野四郎、小林千枝、内田良平 他

 物語は江戸時代、幕府公認の売春地域である吉原のウラ稼業を取り仕切る忘八者と呼ばれる一団と、お尋ね者の浪人=明日死能(あしたしのう)、そして幕府と諸大名の勢力争いを絡めて展開されるアクション時代劇ですが、ご推察のとおり、エロ&猟奇がこれでもかとテンコ盛りの作品です。わざわざ「ボルノ時代劇」と冠をつけたことに嘘偽りは無いのです。

 なにしろ冒頭のタイトル・バックからして明日死能=丹波哲郎が大立ち回り、切られ役の腕がばっさりと切り落とされて血がドバーッ、刃が触れ合えば激しい火花が散り、その度に銀幕にはクレジットが滲み出る演出です。それにしても丹波哲郎は最初からテンションが異常に高く、ついには橋の上から川面に飛び込んで水死体もどきの芝居までやってしまいますが、それもそれはず、この作品は原作に惚れ込んだ丹波哲郎自らが持ち込んだ企画だと云われています。

 こうして最初から水死したと思われた丹波哲郎は何故か助けられ、裸女2人の人肌に暖められて蘇生しますが、そうやって彼を助けたのが忘八者と呼ばれる集団でした。その「忘八」とは――

 :親孝行の考を忘れる
 :兄や目上に使えることを忘れる
 :君に尽くすことを忘れる
 :人を信ずることを忘れる
 :礼儀を忘れる
 :正義を忘れる
 :欲心無く正しい行いを忘れる
 :恥を忘れる

 つまり忘八者とは人の皮を被った獣というわけです。映像的にはその説明の時に繰広げられる裸女達への拷問、強姦、手練手管の仕込み、梅毒女への非道等々、なかなかエグイものがあります。そしてこういう設定ですから、続く物語の中でも女達への様々な仕打ちが見所となります。

 そしてその中では、何と言ってもひし美ゆり子に対するそれがお目当て、というのが正直なところです。彼女は東宝を退社してフリーになった直後から大胆なヌードも厭わない演技が大きな評判を呼び、男性誌のグラビアにもヌードで登場、一代の当り役=友里アンヌとはまた違った一面で、以前にも増した人気を得ていた時期だけに、ここでも出し惜しみをしていないその姿勢が尊いというほかはありません。

 まず丹波哲郎の刃が一閃すれば、ひし美ゆり子の着物がハラリと落ち、あまりにも美しい肉体が剥き身の状態で曝され、さらに恥じらいで身を縮める彼女に久野四郎が襲い掛かるという演出です。それにしてもここでの久野四郎は本気度が高いというか、美味しい役得にハッスルしているというか、彼女の宝物のような乳を鷲掴みにせんばかりの勢いには、あぁ、この役を代わりたいっ、と素直に思うのが男というものでしょう。

 しかも続けて猿轡から手足を大の字にして縛られ、座敷で晒し者にされていくのですから、これは堪りません。しかも彼女はその姿勢のまま競売に掛けられ、品定めのためにお客から慰みものになるのです。全くこの辺りの演出は、石井監督の遠慮がいっさい感じられず、彼女の苦悶の表情にはゾクゾクします。そしてこの流れの中で、最後には彼女の縄が解かれるのですが、その時、大切な部分だけを隠した彼女がガニ股気味の足の開きを見せてくれて、ここは個人的に完全降伏、最高にグッときました。

 物語はこの後、当時の江戸の町に次々にオープンしていた各種風俗店、つまり吉原以外で幕府非公認の売春営業をやっている業者と吉原の対立の構図が明かされ、丹波哲郎はそれを潰すために吉原の総名主・大門四郎兵衛=遠藤辰雄に雇われて大暴れという展開になり、それがこの物語の大筋です。

 それはもちろん痛快ですが、しかし言うまでも無く見所は、それに付随するエロ場面です。なにしろカット毎に必ずといってもいいほど、そういう演出があるのです。女の裸体、乳、尻、絡み、濡場、入浴、拷問、縛り、レズ、前張りモロ見えのアクション等々が、石井輝男監督ならではのエグイ演出で連発されます。

 その中で特に印象的なのが、丹波哲郎と久野四郎が敵方忍者から油&火攻めにされて苦境に陥った時、突如登場して助けに入る、ひし美ゆり子以下の女忘八集団の活躍です。彼女達は刺子の着物姿で頭にも布をすっぼりと被り、火の中に飛び込むとその中を転げまわって消火活動! ここは当然吹替えになりますが、彼女の証言によると、ギリギリまで女優陣が演技していたそうで、この根性&頑張りは、ぜひともご覧いただきたい迫力の名場面になっています。また彼女達が登場する瞬間の照明&演出も、如何にも芝居という、さりげないケレン味があって好きです。

 しかし本当の美味しい場面はこの後で、見事火を消した彼女達が、全身焼け焦げの繭状態になった着物を切り裂かれてその中から現れてくる瞬間は、見事な裸体が暗闇の中で輝くばかりの美しさ! 続けて全裸のまま、熱くなった肉体を冷やすために水浴びですから、本当にサービス満点です。

 そしてさらに凄いのが、ここで瀕死の重傷を負った久野四郎を助けるために医者を呼びに行かされたひし美ゆり子が、そんな無駄なことはせず、ひとり吉原の邸に戻ると、何故か監禁してあった外人女を拷問する場面に飛んでしまうのです。この外人女は斜めに固定された板の上に縛り付けられており、ひし美ゆり子はまず彼女の着物を剥ぎ取り、爪の間にかんざしの切っ先を捻じ込むというエグイ責めから、全身を舐めまわすというレズ責めに流れる妖しい演技を見せてくれますが、ここでの彼女の凄みは最高です。他人に意地悪をしたり嫌がらせをすることによって、ますます自分自身が美しく輝くという、美女にだけ許された究極のSを堪能させてくれるのです。もちろん久野四郎が死んでしまうのは、言わずもがなです。あぁ、女といえども忘八者は非情だなぁ……、と思うことなど忘れてしまう素晴らしさです。

 一方、現場に残った池島ルリ子、相川圭子等々の女忘八には、忍びの者の頭領が襲いかかりますが、その内田良平がまた、テンションの高い芝居で、全裸の彼女達を相手に嬉々とした演技を見せてくれます。もちろん揺れる乳、弾ける若い肉体、そして太腿の裏までも見せる全裸アクションが痛快で、極みつきは内田良平の背後から飛びついて太腿で首を締上げる池島ルリ子の必殺技です。これはポスターにも大きく取上げられている名場面のひとつですが、その他にも絶妙のカメラワークと照明・演出が冴えた美味しいカットが連続して飛び出してきます。

 その上、次の場面は、彼女達が邸に戻るとひし美ゆり子が外人女責めているところへ繋がるのですから、堪りません。もう皆様ご推察のとおり、ひとりで楽しんでいるひし美ゆり子への嫉妬から、仲間割れ、全裸のキャットファイトになるという、個人的に大好きなツボを刺激される、お約束の演出なのです。しかも凄いことに、そういう騒ぎを横目で楽しみながら、ひし美ゆり子は外人女への責めを続行してしまうという非道なのです。このクールないやらしさは、並みの女優では出せない素晴らしさで、皆様にはぜひともご覧いただきとうございます。

 他にも劇中では、当時の風俗の様子が紹介され、吉原の年末年始のしきたりとか、他の風俗店の様子=茶屋遊び、湯女、矢場女、掟破りの制裁、比丘尼、夜鷹等々、時代小説ではお馴染みの言葉が実写で説明され、なかなか楽しい勉強が出来ます。やはりこのあたりは時代劇の東映としての底力、映画の楽しみのひとつです。もちろん、その各々が、お目当てのエッチな描写に溢れています。

 さて物語はこの後、吉原と他の売春地域の対立が幕府と諸大名の代理戦争の様相に発展し、それは全て大門四郎兵衛=遠藤辰雄の策略、もちろん利用されたのは丹波哲郎というわけです。なにしろ吉原には幕府公認=葵の御紋入りの鈴があることから、どんな無理難題でも不可能が無いのです。結局、全ての遊び場が吉原の傘下に事実上入ることで、対立は決着しますが、その代償というか生贄が丹波哲郎=明日死能というオチになります。

 それはまず、丹波哲郎にアヘン入りの酒を飲ませ、さらに女達が色仕掛けを続けて精気を抜き取るという目論みなのですが、流石は丹波哲郎です。こういうことは百も承知、進んでその美酒を飲み、ひし美ゆり子を慰みものにするのです。この時、彼女の豊満で美しい乳を揉みながらニヒルに楽しむ丹波哲郎には、最高の男冥利が滲み出ています。あぁ、この役を代わりたい……!

 ここは映像も幻想的な演出となっていて、ひし美ゆり子だけでなく、池島ルリ子等々の女忘八が痴態狂態を繰広げますが、その最中、丹波哲郎は非情にも彼女達を切り捨て、進んで罠に落ちていくのでした。それにしてもこのアクション場面では、彼女達は当然、全裸なので前張りがはっきりと映し出されてしまいますが、ここは細かいことよりも、エロスの勢いを大切にしようという石井監督の演出方針の一端が覗えるような気がしています。

 ということで、これはエロ・グロ、怪奇、ナンセンス、スプラッター等々、刺激的なものなら何でも含んだ強烈な時代劇です。特に撮影所システムを完全に生かしたその作りの素晴らしさ! これでもかと山のように登場する大勢の裸女には、よく集めたなぁと、必ずや驚嘆されるでしょう。これが劇場用本篇の王道的素晴らしさなのです。

 あと、肝心のひし美ゆり子の魅力は、その輝くばかりの肉体とともに、台詞まわしの声の素晴らしさが特筆物です。特に女忘八達と集団で台詞がある時には、素晴らしい余韻がある彼女の台詞の声に、ため息が出るはずです。少なくとも私には、彼女の声が大変魅力的です。もちろん演技そのものも、伝統の東映京都ですから、かなり厳しいものが要求されたはずですが、それがギスギスしたものになっていないのは、東宝というルーツの他に、彼女ならではの資質というところでしょうか? 激しいばかりのエロ場面もきちんとこなしているのは、流石です。もっとも彼女が自著で告白されたところでは、この時の撮影は毎日、前張りを着けるところからスタートしたので、あきらめの境地だったとか……。

 しかしこの後の彼女は、同じ東映で「好色元禄(秘)物語(昭和50年・関本郁夫監督)」「新仁義なき戦い・組長の首(昭和50年・深作欣二監督)」と続く、所謂和服三部作で大輪の花を咲かせるのでした。その意味でも、この「忘八武士道」は彼女のファンならば必見、また、そうでない皆様にもぜひともご覧頂きたい作品です。

(2004.09.13 敬称略)

(参考文献:「セブンセブンセブン/ひし美ゆり子」「アンヌとゆり子/同」)