不良番長シリーズ概要a

 プログラム・ビクチャーの大きな特色と言えば、ヒット作品のシリーズ化です。

 例えば東宝では「社長」「駅前」「若大将」に「ゴジラ」、松竹では「男はつらいよ」、大映では「眠狂四郎」「座頭市」「悪名」、日活では「渡り鳥」の各シリーズが好評とマンネリが交錯しつつも、邦画最後の全盛期を彩ったのです。

 そして東映では「昭和残侠伝」「日本侠客伝」「網走番外地」の各シリーズが日本映画史上に屹立しておりますが、実は一番の長期シリーズとなりながら、今日の映画史では完全に裏街道に回されているのが、昭和43年からスタートした「不良番長」シリーズです。

 これは日本映画史上初の本格的なバイクアクションを標榜したシリーズでしたが、プログラム・ピクチャーの宿命というか、あくまでも併映としての位置付けが強く、また内容も東映色に染まりきったドロ臭いものでした。

 主演は梅宮辰夫、共演者には谷隼人山城新伍鈴木やすし克美しげる菅原文太千葉真一安岡力也渡瀬恒彦、等々がバイク集団の愚連隊として登場し、彼等はシリーズが進むうちに「カポネ団」と呼ばれるようになります。

 そしてその中の紅一点として大原麗子夏珠美大信田礼子小林千枝がレギュラーとして登場し、さらに作品毎に宮園純子フラワー・メグ池玲子ひし美ゆり子、といった美人スタアがヒロインを演じていたのですから、たまりません♪

 また男優陣では丹波哲郎、待田京介、渡辺文雄、安倍徹、等の芸達者な大物が出演し、作品に格を与えていました。

 しかし、このシリーズの特異性は、その徹底したバカ映画ぶりです!

 当初はシリアスな作りだったものが、ご都合主義と低予算、レギュラー陣の演技の荒っぽさと自然体のキャラクターがゴッタ煮状態となり、どうしようも無いクズ作品になりかかったところから、いつしか作品全体が下卑た演出と三流ギャグの乱れ撃ちという、いわゆるバカ映画一直線に変貌していったのです。

 メイン監督は野田幸男と1作目で助監督を務めていた内藤誠でしたから、阿吽の呼吸というか、終いにはどっちがバカを演出しているか、今ではそんなコアな楽しみに満ちたシリーズが形成されてしまいました。

 もちろん出演女優から推察出来るように、エロもバッチリ

 ですから妙にクセになる恐さを秘めた作品群として、シリーズ化されたのもムベなるかな! あくまでもB面として作られながら、下番館では堂々のメイン作品として人気が沸騰していたのです。もちろん、でなければ長期シリーズになるわけもありません。

 昭和43年の「不良番長」から翌44年には4本、またその翌年には5本、結局、最終の昭和47年までに16本が製作公開されています。

 その主演スタア、梅宮辰夫のプロフィールは――

梅宮辰夫(うめみやたつお)
 学生時代からモデルとして活躍後、昭和33年に東映入社、大泉撮影所を中心とした第二東映製作の現代アクション物に多数出演しています。もちろん当時はスマートな容姿にキリリとしたマスクの二枚目で、子供向け作品でも主役として、例えば「遊星王子(昭和34年・若林栄二郎監督)」のヒーロー、「少年探偵団・敵は原子力潜航艇(同)」では明智小五郎を演じています。
 しかし当時はまだまだ芝居が硬い大根系……。それゆえに昭和36年の第二東映閉鎖後は大した役もつかず、某女優やホステスのヒモをやっていたと言われていますが、この時期の経験を活かして主演し、ヒット作となったのが、昭和40年から始まる「二文字」シリーズでした。
 これは「ひも」「いろ」「ダニ」「かも」というタイトルのイメージどおり、夜のネオン街を舞台に、ヒモやホステス斡旋業として生きる梅宮辰夫が、商売物の女を食い物にして伸し上がるという反道徳的なサクセス・ストーリーで、もちろんエロ場面がウリになっていました。その相手役が緑魔子、大原麗子、桑原幸子……!
 しかしこういう作品は、あくまでも当時のメインだった任侠ヤクザ路線の添物でした。もちろん梅宮辰夫自身も、そういう本編に重要な役で出演することもありましたが、やはり当時からのイメージは、スケコマシの色男! 実際、この時期の梅宮辰夫は連日連夜、遊びに全精力を傾注していたと言われています。もちろん女関係のスキャンダルも数知れず!
 ただし、それでも本業では同じ路線を踏襲した「夜の青春」シリーズ、当時の流行歌をモチーフにした「夜の歌謡」シリーズに主演し、ヒットさせていたのですから、会社側もそれなりに評価していたのでしょう。そして同時期のさらなる展開として企画されたのが「不良番長」でした。もっとも最初からこれほどの大ヒットシリーズになるとは、予想もしていなかったでしょうが――

 物語の主要な展開は、スケコマシ、詐欺、恐喝、ブルーフィルム製作、等々のセコイ商売をしている「カポネ団」が、その要領の良さをヤクザ組織「挺心会」に睨まれ、嫌がらせや妨害を受け続け、仲間が殺されて我慢も限界! 最後には集団で殴り込みです。

 もちろんクライマックスではウリのバイクアクションがたっぷり! 火薬や炎がバンバン炸裂、マシンガンや大砲、手榴弾、ダイナマイト、バズーカ砲までもが、毎回、これでもかと使われます。

 しかし、それは決してリアルではなく、ギャグの道具としての側面も強く、弾が無くならないのは、お約束どころか、当然のように直前で弾をよけたり、当っても即座に死ぬことが無い、執念とお笑いの大格闘になるのでした。

 ということで、最後にはほとんどの出演者が死んだり、行方不明になるのですが、次回作では何事も無かったかのように同名のキャラとして登場してくるのですから、これがプログラム・ピクチャーの良いところです。しかもシリーズが進むにつれて、最初の舞台になっていた新宿を飛び出し、富士山麓から全国各地の名所旧跡を訪ね歩くような物語になっています。これはちょっと日活の「渡り鳥」とか松竹の「男つらいよ」系のノリでしょうかねぇ♪

 そして、繰り返しになりますが、バイクアクション物といっても、日活あたりの洒落た雰囲気を期待してはなりません。あくまでもドロ臭い東映テイストを楽しむのが基本姿勢です。


 そこで各作品については、そのあたりに重点を置き、またサイケおやじ的な視点から、美味しい場面を中心に、ご紹介を進めていく所存です。

(2006.10.17 敬称略)