不良番長a

 私はバイクが好きです。これは多分、父からの遺伝でしょう。なにしろ物心が覚束ない頃から、父のバイクのタンク部分に乗せられ、嬉々としている写真が残っていますし、その当時、熱したバイクのエンジンで足に火傷した記憶も生々しいのです。

 で、そんな子供でしたから「月光仮面」に熱狂し、「少年ジェット」にシビレたのは言わずもがな、洋画では「乱暴者」や「ワイルド・エンジェル」、そして「イージー・ライダー」の世界にどっぷり♪ もちろん16歳からはバイク乗り回しです。

 そして、そんな私の前に現れたのが東映の「不良番長」という作品でした。

 ポスターには梅宮辰夫や谷隼人がカッコ良くバイクに乗り、スチールにもアクションとエッチ場面があったのですから、私は直ぐに観たいっ!

 と思ったのも束の間、なんと同時上映が「徳川女刑罰史」では、中学生の私が映画館に入るのは無理というものです……。その後この作品はシリーズ化されますが、第2作「猪の鹿お蝶」が、またまた「セックス猟奇地帯(昭和44年・中島貞夫監督)」の添物とあっては……。

 結局、私がこの作品を観たのは封切から2年後、某名画座での「不良番長」3本立てがあってのことです。しかもその頃はテレビでエロアクションの最高峰「プレイガール」が放送されており、そのレギュラーだった沢たまき、應蘭芳、桑原幸子が出ている上に、やはりバイクアクションで新宿をブッ飛ばした「野良猫ロック」を観ていたので、気分は、もう、観る前から高揚の極みでした。

 ところが、実際には仰天というか、失望というか、とにかく全く別な世界を覗いてしまった違和感に満たされたのです――

不良番長
(昭和43年10月・東映)
監督:野田幸男
企画:吉田達&矢部恒
脚本:松本功&山本英明
撮影:山沢義一
音楽:八木正生
助監督:内藤誠
出演:梅宮辰夫(神坂弘)、夏珠美(龍子)
■出演:大原麗子(お豊)、谷隼人(タニー)
■出演:克美しげる(ランキング)、保高正伸(ポパイ)
■出演:城アキラ(=ジョー山中 / ジュン)
■出演:小野川公三郎(ロクオン)、小林稔侍(カズオ)
■出演:渡辺文雄(大江)、南原宏治(河本五郎)
■出演:石山健二郎(神津一家組長)、左とん平(松)
■出演:丹波哲郎、室田日出男、永井秀明、佐藤晟也
■出演:沢たまき(サバンナのママ)、桑原幸子(タミコ)
■出演:應蘭芳(矢代由紀子)、藤江リカ(ナオミ)
■出演:泉京子、辰巳典子、藤村有弘、中村てるみ
■出演:大月清子、真木亜沙子 他

 今となっては色とりどりのスタア総出演という感じですが、当時は大部屋組のメンツがほとんどです。例えば大原麗子はズベ公女優でしたし、小林稔侍は高倉健のとりまきのひとりでした。実際ここでも、どうしようもない演技をやっています。

 しかし全体に漂う一生懸命さが、この作品のクセになる魅力です。また出演者には一応、役名がふられていますが、それはほとんど問題になりません。つまり出演者それぞれが自由に自前のキャラを演じているからです。

 さて物語は初っ端から海水浴場のビーチを暴走するバイク集団! これが梅宮辰夫が率いる愚連隊です。ちなみに「愚連隊」とはヤクザにもなれず、もちろん真っ当なカタギにもなれない半端者の集りながら、手に入れたものは何でも公平に分配する掟があると、東映映画では定義されています。

 そのメンバーは梅宮辰夫以下、克美しげる、保高正伸、城アキラ、小野川公三郎、そして紅一点の大原麗子です。

 その彼等の生業はスケコマシで、モノにした女を水商売や風俗産業に斡旋しては、手数料を稼いでいるわけですが、今日もまた、件の海辺でアベックにちょっかいを出します。このカップルが谷隼人と桑原幸子で、谷隼人は簡単にKOされ、白いビキニ姿の桑原幸子は輪姦されるのでした。う〜ん、彼女の悲鳴と嫌がりは、やっぱり、良いですねぇ〜♪ ここまではカメラワークや音楽も含めて、日活の青春物のようなノリがあります。

 ところが続くタイトルバックがモロに東映色で、バイクで疾走する梅宮辰夫以下のグループはカッコイイのですが、主題歌が「ラ〜リパッパ、ラリパッパッ♪」の繰り返しという演歌ラップ! バイク映画のロック的なグループが見事に否定されてしまいます。

 そして彼等が向かった先は夜の新宿です。そこではヒッピーがサイケに踊り狂っているという、当に昭和43年の光景が誇張されています。もちろん一緒になって悪ふざけをするメンバーの中には、なんと前述の谷隼人が! つまり桑原幸子をコマシてクラブのホステスとして売り飛ばすために、「泣いた赤鬼」を演じていたわけです。

 もちろん彼等は万引きや車泥棒は常習で、そんなある日、因縁を作った美女が夏珠美です。もちろん彼女は超ミニスカ♪ 気の強そうなルックスとしなやかな肉体が素敵ですから、愚連隊の面々は策を弄してマンションに連れ込み、イタダキマスを実行するのですが、逆に眠り薬を仕込まれてドジを踏んでしまいます。

 ここは夏珠美とその仲間の中村てるみ、大月清子が衣服を脱がされ、レイプされるという美味しい場面♪ 特に夏珠美の白い下着姿が目に眩しいほどです。

 しかし土壇場で梅宮辰夫が粋なスーツ姿で登場し、夏珠美を篭絡してしまうのは、お約束♪ ただし成人映画ではないので、実際のベッドシーン等はありません。

 ところが彼女は関東神津一家のひとり娘だったことから事態は紛糾、またスケコマシを堂々とやりすぎたことから地元のヤクザ組織である大江興行からも睨まれる始末で、梅宮辰夫以下のメンバーは窮地に陥りますが、その都度、梅宮辰夫が機転と度胸、生来の要領の良さでピンチを切り抜けるところが、なかなか痛快です。

 そしてそこを見込まれた一党が、神津一家に頼まれて悪徳土建屋から3千万円を恐喝するのが、本筋となります。もちろんその背後には大江興行と神津一家の対立があり、さらなる大組織=挺心会の存在があるのです。

 ここまでの流れでは、当時のスベ公女優のひとりだった藤江リカと大原麗子のキャットファイト應蘭芳の下着姿とレイプ場面が見所です♪ 特に應蘭芳のパンツの色当ては、ワクワクしつつも笑えますねぇ♪ また彼女と城アキラの濡場が撮影され、恐喝に使われるのです。

 また沢たまきが梅宮辰夫のお得意様の店「サバンナ」のママ役で登場し、超ミニスカ姿やキスシーンを色っぽく演じてくれるのも見逃せません♪

 さて物語はこの後、大組織の陰謀から裏切られた梅宮辰夫とその一党が、挫折しつつも仲間の敵討ちで殴りこむという、東映ヤクザ映画のお約束を演じるのがクライマックスです。ここはもちろんバイクアクションが見せ場で、火薬や炎がバンバン使われ、決して弾が無くならないマシンガン、あるいはギリギリで避けることが可能な銃弾が当たり前の演出です。

 もちろん梅宮辰夫の仲間は壮絶な最後で、中でも大原麗子は超ミニスカで撃ちまくられ、クルクル回ってスカートがヒラヒラ♪ 下着をチラ見せして倒れ、ムチムチの太股を存分に見せてくれる大サービス♪ 彼女の出演と存在価値は、当にこの場面に凝縮されています。

 ちなみに今では大女優の彼女も、デビュー当時は東映のエロ部門担当で、梅宮辰夫が主演した「夜の青春シリーズ」や「夜の歌謡シリーズ」では相手役としてベッドシーンを大胆に演じていたのです。さらに東映入社前には六本木界隈で遊んでいた不良少女という過去が、公然の事実になっています。

 ついでながら、克美しげるは昭和歌謡界の大スタアでありながら、昭和51年に愛人を絞殺するという事件で服役、出所後には覚醒剤で逮捕される等、今日では転落の人生を歩んでいますが、この当時は味のある芝居と歌で強い印象を残し、「不良番長」シリーズ初期に連続出演していくのです。

 またポパイ役の保高正伸は、テレビのスポ根ドラマ「柔道一直線(TBS)」の大豪寺虎男として大噴火投げで暴れ、大ブレイクしていますし、小野川公三郎は軟弱な二枚目からクセのあるオトボケ役まで巧みにこなす演技派で、後に大映に移籍し、八並映子の相手役を演じた「高校生番長」シリーズ等の活躍が忘れられません。

 さらに城アキラは当時GSの歌手でしたが、後にジョー山中となって「人間の証明」で一般的な人気を獲得していますし、谷隼人については言わずもがな、このシリーズの他にも夥しい東映作品やテレビ出演で、今日まで大活躍しているスタアです。

 そして主役の梅宮辰夫については、当時、公私共についてまわっていた色男・スケコマシという部分が抜けきれず、この作品でもスーツ姿で夏珠美に平手打ち! また肉付きの良い腹にサラシで皮ジャンという、怖ろしくミスマッチなスタイルが妙にリアルでした。これが東映です!

 ちなみに夏珠美は子役として昭和30年代の東映作品に出演していた藤井珠美です。劇場版「月光仮面」での縄姿を覚えていらっしゃる皆様も多いはずです。あぁ、なんという因縁でしょう。そして大人になった彼女は、ここでは新人扱いで登場し、「不良番長」シリーズ初期のヒロインとして活躍していくのです。

 ということで、現在では良く知られているように、この作品は当初、アメリカでヒットしていた「ワイルド・エンジェル」等のバイクアクション物を狙って作られたのですが、内容は東映が十八番のヤクザ映画の変形でしかありません。しかも、丹波哲郎や渡辺文雄、南原宏治といった大物や芸達者な面々を出演させて「格」を与えているにもかかわらず、極めてB級テイストが強いのです。日活や松竹作品のような、青春のやるせなさとか、そういう湿っぽい部分がバッサリと切り捨てられています。

 そして現実には大ヒット! ただし私には、この「大ヒット」という部分が、同時上映のメイン作品「徳川女刑罰史」のおかげだと思っているのですが、下番館では一般作品として集客があったということなんでしょうねぇ、現実に、私のような者がいるわけですから……。

 とにかく続篇の製作が決定したことが、その証明ですし、シリーズ化された後の作品に比べれば、この1作目はかなり生真面目な内容になっています。むしろ中毒性があるのは、シリーズが進むにつれての諸作なのでした。

(2006.10.17 敬称略)