不良番長・猪の鹿お蝶a

 さて、めでたく続篇製作が決定した「不良番長」の次なるテーマは、当然ながら、如何にして前作よりも面白いものが作れるか、です。

 もちろんプログラム・ビクチャーとしての宿命というか、王道として、前作の設定は壊してはならないのですから、楽なんだか、苦行なんだか、製作現場の本音を聞いてみたいところです。そして完成公開されたのが――

不良番長猪の鹿お蝶(昭和44年1月・東映)
監督:野田幸男
企画:吉田達&矢部恒
原作:凡天太郎
脚色:松本功&山本英明
撮影:山沢義一
音楽:八木正生
助監督:山口和彦
出演:梅宮辰夫(神坂弘)、宮園純子(猪の鹿お蝶)
■出演:谷隼人(タニー)、千葉真一(藤木光男)
■出演:克美しげる(赤沢五郎)、菅原文太(八代)
■出演:夏珠美(ユキ)、左とん平(バッチリ)
■出演:長井浩二(プリンス)、団巌(ポパイ)
■出演:水島道太郎(小日向)、河津清三郎(大場)
■出演:三原葉子(佳子)、賀川雪絵(ナナ)、大泉滉
■出演:沼田曜一(椎名)、曽根晴美(福田)、橘ますみ
■出演:由利徹(周)、佐々木梨里、長井秀明
■出演:沢彰謙(住田) 他

 物語は久里浜の関東特別少年院が舞台となってスタートしますが、なんと、初っ端から主役の梅宮辰夫が野外作業場の片隅で野グソの真っ最中! う〜ん、男のケツは見たくないぞっ!

 この、いきなりの先制パンチが、後々まで効いてきます。

 で、ここに集っていたのが谷隼人、克美しげる、千葉真一、菅原文太という面々で、梅宮辰夫と医療用アルコールで盃を交わし、その夜に脱走を計画しているのですが、なんと対立する曽根晴美のチンコロ(密告)によって刑務官の椎名=沼田曜一に事が露見し、現場は忽ち大混乱というのが、今回の発端です。

 そして5年後の新宿、ここを根城に暴れている不良バイク集団として梅宮辰夫、谷隼人、左とん平、夏珠美、団巌、長井浩二が革ジャンで登場し、ひったくりに集団暴走と悪事のやり放題です。さらに某工場の女工達を誘い出し、河原のガード下でレイプ! ここは下着、太股が乱舞の美味しさです。

 しかし彼等は悪事ばかりではなく、一応、真っ当な仕事も持っており、それは自動車修理工場と舞踊学園です。とは言っても、それはもちろん表向きで、コマシた女にダンスや歌を仕込み、由利徹を通じて海外に売り飛ばしたり、盗難車を改装して転売という悪どさに変わりはないのですが……。

 ここは美女のレオタード姿が見せ場とはいえ、彼女達は決して一流の美女では無く、しかしその中で夏珠美のスタイル良さだけが絶品です。

 そんな日常の彼等の前に、少年院時代の仲間だった克美しげる、千葉真一、菅原文太が、それぞれの事情を抱えて集ってくるという展開から、物語はヤクザ組織=挺心会との対立になっていくのです。もちろんそこには、因縁を作っていた曽根晴美、刑務官からヤクザに転職した沼田曜一が居るという、ご都合主義!

 そして今回のヒロインが、女賭博師・猪の鹿お蝶=宮園純子です。もちろん賭場では和服姿に立ち膝で太股からその奥までも見せて凛としつつも大サービス、キメは猪・鹿・蝶の札を飛ばして相手の目を潰すという離れ技を披露しています。

 梅宮辰夫グループとの関係も、ある時は敵対し、またある時は仲間として手を握るという微妙なものですが、何故か肝心な時に頼りにならなかったりして、ちょっと???

 また千葉真一が着流しの古風なヤクザ、菅原文太が無口な殺し屋として登場していますが、完全にミスマッチな役と芝居が笑えます。これは、狙ったんでしょうねぇ。でなければ、菅原文太の芝居が大根を通り越してイモ、ですから! もちろんこれは、千葉真一にも言えるので、まあ、ひとつの見所かもしれません……。

 物語は中盤で、挺身会の嫌がらせに耐えつつも、盗んだ高級車の中から大会社のウラ帳簿を発見した梅宮辰夫が、一発逆転のユスリを働く展開です。

 ここでは件の会社の経理を担当している三原葉子が篭絡されますが、お色気サービス要員なのは言わずもがな、パンツ丸見せのボーリング下着姿での脂っこいベッドシーン、さらにネチネチと谷隼人や梅宮辰夫に絡みつくのは、お約束を超えたギャグになっています。

 そして帳簿や大金が入ったカバンの争奪戦と二転三転する物語の起伏も、なかなか良いテンポだと思います。

 しかし、その中に生き別れになっていた親子対面とか、駆け落ちしてきたヤクザの健気な極貧生活という、ドロ臭〜いエピソードが混ぜられ過ぎており、いささか辟易……。

 おまけにクライマックスで殴り込みをかけるバイク集団に、着流しの千葉真一の道行きというのは、東映ヤクザ映画の自嘲的パロディですから、素直に笑えない部分も多々あるのです。

 そして何よりもエッチ場面の不足は決定的で、例えば訳ありの橘ますみ、あるいは踊り子として登場する賀川雪絵に美味しい場面が無い演出は、完全に???です。また前作のヒロインだった夏珠美の存在も、何故か、極めて薄くなっています。

 またクライマックスの殴り込みでは、バイクアクションにマシンガンやダイナマイトは派手ですが、どこか虚しさが感じられ、これさえもギャグなんでしょうか……。ただしラストシーンの梅宮辰夫と宮園純子の2人芝居は、かなり冴えています。

 ということで、いささか中途半端な仕上がりだと、私は思います。

 しかし今日からは想像も出来ないであろう梅宮辰夫のボケ具合は、やはり強烈です。例えばジゴロとしての陰の努力で美容体操教室に通ったり、ボテ腹のバレータイツ姿! 等々、冒頭の野グソに優るとも劣らない演技・演出は笑いを通り越して呆れてしまいます。

 まあ、それが、これから延々と続くシリーズの核心ではありますがっ!

 ちなみに今回のテーマ音楽は「練鑑ブル〜ス」で、ジャズアレンジのタイトルバックやボーカルバージョン等々、いろいろと聴かれますが、これは次回作に繋がっていくのでした。

(2006.10.19 敬称略)