不良番長・王手飛車a

 前作「どぶ鼠作戦」は、これ以上無いほどのコテコテが大きな魅力でしたが、続くシリーズ6本目の本作は、対照的にグッとスマートな味わいで作られました。と言っても、東映ですから、とても日活のようクールな仕上がりにはなっていません。やっぱり根底には泥臭い部分があって、実はそれこそがシリーズの魅力だと思い知らされるでしょう――

不良番長・王手飛車(昭和45年1月)

監督:内藤誠
企画:吉田達&矢部恒
脚本:松本功&山本英明
撮影:星島一郎
音楽:八木正生
助監督:伊藤俊也
出演:梅宮辰夫(神坂弘)、谷隼人(タニー)
■出演:山城新伍(桜井保)、鈴木やすし(ジャブ)
■出演:長沢純(バイキング)、榊原史子(飯塚アキコ)
■出演:菅原文太(滝川)、由利徹、渡辺文雄(大門)
■出演:安部徹(大崎)、夏珠美(ヨーコ)、藤岡重慶
■出演:関山耕二、人見きよし、大泉晃、団巌
■出演:小林千枝(ヒロミ)、佐藤晟也、佐々木梨里
■出演:桜京美(芸者)、神太郎、北川恵一
■出演:小林稔侍、日尾孝二、佐藤京一 


 さて、前作のラストから再び新宿に舞い戻ったカポネ団、今度は結婚相談所「愛の星友の会」を経営しています。と言っても、結婚を前提とした真面目な交際なはずも無く、谷隼人をエリートのボンボンに仕立てて女を篭絡し、風俗産業に売り飛ばすという、毎度お馴染みのスケコマシ! 今日も佐々木梨理がまんまとひっかかりますが、そこへ乗り込んでくるのが人相の悪い3人組です。

 ゲッ、またしても挺身会の妨害か!? と思いきや、相手はもっと大きな国営! つまり警察というオチがあってカポネ団は見事に塀の中へ転落です。う〜ん、それにしても佐藤晟也の巨体とコワモテがハマり過ぎて、いきなり笑わずにはいられません。

 そして懲役暮らしのドタバタがタイトルロールになっていくあたりの手際の良さは、流石に内藤監督らしいところ♪ BGMがスタックス風R&Bのインストなのもイカシています。

 で、2年後、どうにかシャバに戻った梅宮辰夫はヌードスタジオを経営、そこで働く夏珠美の色っぽい肢体をサービスしてくれますが、横で居眠りをしている身なりの良い紳士が由利徹です。そして何やらワケアリの事情から、そのヌードスタジオに居ついてしまうのですが……。

 また谷隼人は白タク営業ながら、結局は2人とも景気が悪くて不満タラタラ……。ここで雨の夜、つい接触事故を起こして因縁を作るのが、清楚な美女の榊原史子♪ もちろん梅宮辰夫は自分のアパートに連れ帰ってモノにしようと目論みますが、ここは彼女の下着姿が嬉しいサービスとはいえ、もちろん結果はダメダメです。

 そしてついに2人はカポネ団再編を決意して愚連隊に逆戻り! その頃、鈴木やすしは風呂屋のサンスケとしてオトボケを連発! また長沢純がヒッピーにシンナーを売って儲けているあたりは、当時の世相丸出しですが、こうして再編されたメンバーには、夏珠美と小林千枝のズベ公美女が入っている他に、今回のミソとして前述した由利徹が加わっています。

 それはシノギに経営コンサルタントを開業するという、これまた如何にも昭和45年どっぷりの中身が楽しく、ハッスルと猛烈なトレーニングに加えて、セールスには女を篭絡するのが肝心というあたりが爆発的に結果を出して大評判! もちろんそれは由利徹の出したアイディアをカポネ団が自己流に改良(改悪?)したものです。

 ここは後々に因縁を作る東亜開発の社長・大崎=安部徹に気に入られ、しかもそこで梅宮辰夫が昔の愚連隊仲間・滝川=菅原文太に再会するという、シリーズならではの「お約束」に繋がりますが、その菅原文太がスマートなスーツ姿でカッコ良いスポーツカーを乗り回しているのは、ちょっと当時の東映では珍しいスタイルで、しかもキマッています。もっとも菅原文太は映画界に入る前はファッションモデルでしたから当然なんですが、このあたりもコテコテだった前作とは明らかに違った味わいでしょう。

 ちなみに菅原文太は小さいながらも土建屋を経営し、女よりも金儲けという、これも当時ならではの猛烈ぶりなんですが、その実態は成り上がりの焦りを利用される地上げ屋です。しかもライバル企業としてヤクザ組織の大門組が絡んできますから、ここからはシリーズ恒例の組織対カポネ団という展開になっていきます。

 その標的になるのが、前述した榊原史子が細々と経営する印刷工場であり、そこの従業員がハワイから来た日系人の山城新伍ですから、物語は一筋縄ではいきません。梅宮辰夫は何とか榊原史子を篭絡して立ち退かせようと奮闘するものの、逆に恋に落ちて、ついにカポネ団は仲間割れ……。菅原文太との友情にもヒビが入りそうになるのですが……。

 という展開から大門組の強引な遣り口に菅原文太は窮地に追いやられ、かくして再び梅宮辰夫と共闘を宣言して最後の決着へ! しかし安部徹と渡辺文雄という極悪タッグは強力ですからねぇ。一度は袂を分かった谷隼人や鈴木やすし、長沢純といった仲間が戻って来ても、逆に山城新伍が襲われて瀕死の重傷、さらに問題の印刷工場がメチャメチャに壊され、夏珠美や小林千枝までもが殺されます。もちろん菅原文太も襲撃されて行方不明……。

 こうしてクライマックスは富士の裾野でカポネ団 vs 大門組の壮絶な殺し合い! やたら派手なドンパチは、なんと現場が自衛隊の演習場だったというオチが強烈です。まあ、それゆえにカポネ団も自前のバズーカ砲を撃ちまくるという、破天荒なキメをやってしまうのですが……!

 ということで、もちろん最後には現実的な限界を超えたド派手なアクションから、梅宮辰夫と谷隼人が命拾いの大団円となります。そしてラストシーンは帰る交通手段を失った2人が、たまたま通りかかった自転車通学の女高生の群れを追いかけるという、なんともトホホで洒落た結末へ♪ このあたりも内藤監督ならではのスマートなオトボケで憎めません。

 そして全体的にも、そういうライトタッチの演出が目立ちます。例えば山城新伍は不可思議な日本語を喋りながらも、義理と人情の味わいがたまりませんし、由利徹の意外な正体と一味違ったインテリ風オトボケは稀代のコメディアンとしての面目躍如でしょう。またクライマックスの大アクションシーンにしても、真面目に受け取っては呆れた怒りしか残らないはずです。なにしろ拳銃の弾を自在に避けたり、そういう場面で余裕のギャグをかますという登場人物達の純粋さが、???ですから……。

 また、土壇場で颯爽とジープで登場する菅原文太が、テンガロンハットにライフル銃という日活スタイルなのは、全く似合っておらず、パロディを超えて笑うしかない名場面♪

 しかし、そういう部分こそが、これからさらに続く「不良番長」シリーズの中毒性です。この作品は、前作があまりにもドギツイ仕上がりだったので、続けて鑑賞すると拍子抜けするほどですが、随所に溢れる昭和45年のテイストは、その時代を知っている者にとっては涙が滲むほどに面白いはずです。もちろん、その時代を知らない人にとっても、時代の空気が感じられるのではないでしょうか?

 ただし、失礼ながら、この作品はヒロイン=榊原史子の存在感が、少しばかり薄いと思います。私はこの人のプロフィールを知らないのですが、一応、清純派なのでしょうねぇ。それゆえのアクの無さがシリーズには合っていない雰囲気なのが、非常に勿体無いところ……。

 しかしサイケおやじ的な見所としては、梅宮辰夫のバイクの後に横座りで乗せられている時の脚線美に、グッときます。でも、こういう事はやってはいけません! もし事故った時には、彼女の美脚がダメになってしまいますよ! その点、夏珠美や小林千枝なんか、大股開いて跨っているのが嬉しい正解なのでした。

 う〜ん、やっぱりバイク愛好者には、血が騒ぐ1本です♪

(2007.07.24 敬称略)