不良番長・暴走バギー団

 ますます快調のシリーズ第9弾は、前作「出たとこ勝負」から約3ヶ月後に封切られました。それは概ね35日とされていた当時の平均的な製作日数からしても、驚異的なペースでの公開になるわけですから、リアルタイムでの猛烈な人気ぶりがご理解いただけるかと思います。

 しかも全くテンションが落ちていないどころか、逆にワルノリ寸前の過激ギャグと社会風刺の密度が濃く、さらに今になって気がついた部分も含めて、日活ニューアクション作品への対抗意識までもが滲み出た、当に大泉東映の良さが存分に出た名作になっています――

不良番長・暴走バギー団(昭和45年10月)
監督:内藤誠
企画:吉田達&矢部恒
脚本:松本功&山本英明
撮影:山沢義一
音楽:河辺公一
助監督:岡本明久
出演:梅宮辰夫(神坂弘)、谷隼人(タニー)
■出演:山城新伍(五郎)、鈴木やすし(ジャブ)
■出演:砂塚秀夫(アパッチ)、カルーセル麻紀(おまき)
■出演:上田峻(サミー)、天津敏(二階堂修造)
■出演:由利徹、八名信夫(挺身会会長・二階堂泰造)
■出演:永原和子(京子)、浦辺粂子(バタ屋のハル)
■出演:菅原文太(カツ)、五十嵐じゅん、藤村有弘
■出演:上田吉二郎、沢彰謙、玉川良一、中村是好
■出演:根岸明美(富豪夫人)、三原葉子(二階堂夫人)
■出演:園佳也子(養鶏場の若後家)、中田博久、団巌
■出演:左とん平佐々木梨里、亀淵由香 他

 さて今回のカポネ団は、いきなりドジを踏んだのか、警視庁の留置場で勝手に騒ぐバカ丸出し! しかも同房内の玉川良一に注意されると、逆に居直っての大ホラ吹きまくり! ところがそこにハイジャック犯人の団巌が居たことから、急にビビッての低姿勢というトホホな展開は、完全に「網走番外地」のパロディになっていて、笑う他はありません。なにしろカポネ団は集団万引の容疑者だったのですからねぇ。

 ここは玉川良一が十八番の浪曲浪花節を使った台詞回しが最高ですし、調子良くツッパリを演じてヘタレに転じるカポネ団の面々が、何時も以上にワルノリしています。

 さらに実は誤認逮捕だったことが明かされ、釈放される際には防犯課長=由利徹のオトボケを逆手取って警官の制服までも奪い取り、白バイを従えて新宿の街を派手にバイク暴走するのですから、強烈です! もちろんこれがタイトルロールで、バックに流れるテーマ曲の「ウッシッシ節」が、これまた昭和歌謡グルーヴに満ちた大名曲♪ ちなみにこの曲は、「一攫千金」の主題歌として既に発売されていたシングル盤「ダイナマイト・ロック」のB面曲でした。

 そして待っているのが、今回の紅一点(?)=元祖ニューハーフタレントのカルーセル麻紀! しかも彼等は、ここでオープンカーに乗り換えです。そして結論から言うと、ここからはタイトルどおり、バイクに代わって四輪が活躍するという新機軸の決意表明があるというわけです。これはもちろん、前作で内藤監督がバイカー映画の醍醐味を達成しての次なる冒険でしょう。こういう流れも、プログラムピクチャーでは必須条件なんですねぇ。

 さて、こういう彼等の棲家は住宅展示場のモデルハウスです。当然、電気も水道もありませんから、夜は蝋燭の灯りが頼りですし、生理現象はオマルを使用するというトホホの耐乏生活……。しかし実に楽しそうなんですねぇ、これがっ! そして仲間に入るのが情けないフーテンのアパッチ=砂塚秀夫とダンプの運転手でサミー・デイビス・ジュニアの物真似が得意なサミー=上田峻という、味わい深いメンツです。

 また彼等のシノギは、新宿歩行者天国でのインチキ精力剤「カメマーラ」の販売というのも笑わせます。ここは実際にロケーションを敢行した名場面で、お約束どおり、地元ヤクザ組織の「挺身会」に嫌がらせをされて逃げ回るところや、神田川で使用済みコンドームを収集するカポネ団の泣き笑いが素晴らしい演出になっています。特に山城新伍の軽いタッチが、最高ですねぇ。

 また次なるシノギが、交通事故の「当られ屋」です。これは高級車の前でワザと急ブレーキを踏んだ自分達の車に当てた相手から示談金をふんだくるという、荒っぽい手口ですが、これで因縁を作ってしまった女子高教師=藤村有弘が連れている若い女こそ、五十嵐じゅん♪ もちろんこの時は、後の清純派ではなく如何にも「二号さん」というホステス系ですから、たまりません。ちなみに彼女は、この年に同じ東映作品「すべ公番長・夢は夜ひらく」にもヤク中の不良娘として出演していますから、要注意です。

 他にも雑種を血統書付きの犬と偽って売り歩いたり、廃品回収やインチキ不動産業……等々、あの手この手のシノギのドタバタは、笑いの涙の二重奏が見事な演技・演出です。

 もちろんこの流れの中では、梅宮辰夫が根岸明美や園佳也子という熟女相手に、女たらしの本領発揮♪ また豊満な肉体の亀淵由香に翻弄される砂塚秀夫、軽妙な口八丁でインチキセールスの真髄を披露する山城新伍も楽しいですねぇ〜。また今回がカポネ団に初参加の上田峻が、冴えたアクションと味のある演技で好演しています。

 物語はこの後、結局は悪辣な手口で不動産業に手を広げた挺身会とカポネ団の対決となります。そこでは銃機関銃を搭載したジープで殴り込まれたカポネ団が仲間を殺され、その復讐に改造四輪バギーで砂浜を突っ走り、挺身会の式典に乗り込むアクションが本当に痛快! しかも梅宮辰夫は手製の火炎放射器まで使います。

 そしてラストは悪い奴等を退治した梅宮辰夫と上田峻が、パトカーのサイレンに気がついて高波の海へ走りこむという、素晴らしくカッコ良いシーンが披露されます。しかし強烈なオチが付いているのは言わずもがな! これは観てのお楽しみです。

 ということで、この他にも上田峻が盲目の妹の治療費を稼ぐ話にカポネ団が協力したり、社会の底辺で真剣に生きている者達の意気地を見せつけるようなエピソードが重ねられた展開は、正統派ギャグ&アクションの傑作になっていると思います。このあたりは同じ時期に日活で作られていた「野良猫ロック」への対抗意識もあったでしょうし、これまでよりは人情味が強い物語展開は、松竹作品のような味さえ感じられます。

 ただしサイケおやじ的な美味しい場面が無いことが残念……。もちろんカルーセル麻紀の下着姿や、ウリにしていた太股の刺青とかはご覧になれますが、やはりニューハーフですからねぇ。失礼ながら個人的には萌えません。劇中でも執拗に梅宮辰夫に甘えるカルーセル麻紀は、もちろん拒絶されてばかりなのです。

 また谷隼人の出番が、ほとんどありません。と言うのも、恐らくスケジュールがきつかったのでしょう。結論から言うと、シリーズではこれが最後の出演になっています。そして別れの意味での死に際が、如何にも野良犬っぽい最期で印象的!

 あと恒例、梅宮辰夫の鑑別所時代のダチとして菅原文太が登場していますが、角刈りにサングラスという完全ヤクザスタイルながら、実は不動産鑑定士としてカタギになっている設定が泣き笑いです。だって不動産売買のテントで、こんな外見の人に案内を頼みますか? 当時の土地ブームの熱狂とインチキ性を強烈に皮肉ったと思うのは、私だけではないでしょう。

 それと悪徳金融業者の天津敏と挺身会会長の八名信夫が兄弟という設定も、悪役2人の風貌が似ているので結果オーライですし、最初に登場した警部補の由利徹が、後半になって意外な再登場をするあたりも、素晴らしいスパイスだと思います。

 こうした中身の濃さは、シリーズの王道からは少し逸れているかもしれませんが、単なるエロ映画にはしたくないという製作側の意気地を感じるのでした。

(2007.08.22 敬称略)