不良番長・やらずぶったくり

 傑作「口から出まかせ」に続く第11作目は、約半年ぶりの夏休み公開で、私がリアルタイムで観たシリーズ最初の作品でした。ちなみに直後には名画座で「不良番長」「送り狼」「どぶ鼠作戦」の三本立を観ることになるのですが、既に述べたように、本格的なバイカー映画を期待していた私の前で展開されたのは、全てが異次元の世界でした。しかし、そこにはタガが外れたような破天荒ギャグと下品な笑い、そして青春の血を滾らせるエロスがテンコ盛りにあったのですから、忽ち私は中毒症状!

 シリーズ全体を鑑みれば、特にこの作品は、そういう過去の名(迷)作群から次なる展開に踏み出した印象的が強く、なかなか楽しい仕上がりになっています――

不良番長・やらずぶったくり(昭和46年7月)
監督:野田幸男
企画:矢部恒
脚本:松本功&山本英明
撮影:稲田喜一
音楽:八木正男
助監督:岡本明久
出演:梅宮辰夫(神坂弘)、山城新伍(五郎)
■出演:渡瀬恒彦(カツ)、安岡力也、潮健次(ジャブ)
■出演:芦屋小雁(うなぎ)、一ノ瀬レナ(みどり)
■出演:菅原文太(信次)、渡辺やよい(鮎子)
■出演:八名信夫(花岡組長)、関山耕司、由利徹
■出演:南利明(医者)、玉川良一(紳士)、
■出演:小林千枝(ソープ嬢)、丹下キヨ子(中将夫人)
■出演:若水ヤエ子(女社長)、大泉晃、大前均
■出演:正司敏江、正司玲児、岡八郎(警官)
■出演:天津敏(榊)、中田博久、中村是好、三原葉子
■出演:諸角啓二郎、北川恵一 他

 さて今回は、初っ端から海水浴場にバイクで乱入するカポネ団! 梅宮辰夫の号令で水着美女が溢れる砂浜をブッ飛ばしての引ったくりやカッパライ! その流れの中ではトップレスのお姉さんが巨乳モロ見せというサービスもありますが、パトカーとの追撃戦やバイク炎上というハードアクションも抜かり無く、そしてバックにはテーマ曲の「番長シャロック」が流れます。シンプルで大胆なカメラワークも素敵ですねぇ〜。もちろんここがタイトルロールになっているのですから、これからの展開を思うとワクワクしてきます♪

 で、新宿に戻った彼等のヤサは空き交番! 留置場も完備していますから、寝泊りには最適というブラックな笑いがたまりませんし、カポネ団の面々を警官と間違える映画的ボンクラな人達が、様々な人間模様を持ち込むので、笑いが途切れません。

 ちなみに今回のカポネ団のメンバーは梅宮辰夫以下、渡瀬恒彦、潮健次、安岡力也が主力ながら、途中で芦屋小雁と山城新伍が加わるという、何時ものパターンを踏襲していますし、紅一点が一ノ瀬レナ♪ 多分、彼女にとっては、これが本格的な映画デビュー作だと思われます。

 また梅宮辰夫の鑑別所時代のダチが、例によって菅原文太なんですが、今はすっかりカタギの漁師になっており、しかもその従妹が渡辺やよい

 このように主要キャストが個性的ですから、アクの強い脇役陣の演技と見せ場も冴えています。特に当時、人気絶頂だったドツキ漫才の正司敏江・玲児が、コメディリリーフとしては長めの名演を披露しているのは、全盛期の記録として貴重かもしれません。もちろんパワフルなドツキ合いと夫婦漫才ならではの本音の芝居が、最高の楽しさです。

 肝心のカポネ団の活躍は、様々なシノギが全て地元ヤクザ組織の逆鱗に触れて嫌がらせを受けるという、これも毎度お馴染みのワンパターンですが、これこそがプログラムピクチャーの楽しみに他なりません。

 まず名門女子高の生徒から献血を集め、血液銀行に横流しすると、なんとそれが梅毒の血液だったという、昭和元禄ご乱交のオチが痛快!

 そこで手慣れたスケコマシでソープ嬢の引き抜きを画策し、ここで登場するのが一ノ瀬レナ♪ 梅宮辰夫の相手をしながら見せるムチムチした極上ボディが、非常に良い感じです。ちなみに彼女は全裸ではありませんが、当時、こういう場所で働く女性たちは、あくまでも客のマッサージが名目なので、ブラとショートパンツが定番のコスチュームだったようです。こういう、まだ「トルコ風呂」と称されていた頃のソープランドの雰囲気も、今となっては貴重な映像でしょう。

 また、ここでは山城新伍が女装したソープ嬢として驚愕の登場! 単純な笑いを超越したディープな演技・演出は、シリーズ屈指の名場面です。しかも劇中では、山城新伍もソープ嬢引き抜きを生業としており、「七色会」というキワドイ衣装のスベ公集団を率いています。もちろん前述した一ノ瀬レナもメンバーのひとりですが、ここはケバイお姉ちゃん達とカポネ団の喧嘩アクションも楽しいかぎり♪ そして成行きから山城新伍がカポネ団の仲間に入るのも、お約束なのですが……。

 もちろん地元ヤクザ組織の花岡組に睨まれて計画は頓挫……。一党は「チン拓」を取られて全国のソープランドに出入り禁止とされた事から、次なるシノギは出張ホスト業です。もちろん山城新伍や梅宮辰夫は、丹下キヨ子や若水ヤエ子といった脂っこいオバチャン相手に大奮闘!

 しかし、またまた花岡組の嫌がらせからカポネ団は全員ボコボコにされて新宿を追われ、房総の漁師町へ流れ着きますが、頼りは若水ヤエ子が経営するスーパーからタダで仕入れた缶詰だけというテイタラクです。

 ところが、その缶詰が水銀に汚染された魚を使っていたことから万事休す……。ここはベタな下痢便ギャグが情けなさの極みながら、マジでバカをやってしまった出演者の熱演に拍手するしかないでしょう。いやはやなんとも……、です。

 そして後半は地元で海女として働く渡辺やよいとの再会から、漁業補償金が入った成金景気で浮かれる漁師たちを狙ったカポネ団のシノギが始まります。ここではまず、露出度は低いものの、渡辺やよいのグラマーな肢体が楽しめる海女姿が楽しく、さらに乳丸出しの極めて全裸に近い熟女系海女までが登場する大サービス♪

 もちろん前述した「七色会」を使った売春風俗業も大当りしてカポネ団はウハウハですが、今度は地元の恐いオバチャン達から逆襲され、店はメチャメチャ! 女同士の強烈な乱闘では、三原葉子と一ノ瀬レナが大暴れします。

 物語はこの後、件の缶詰を製造した水産会社の陰謀に花岡組が加担して、地元漁師に悪辣な仕打ちを繰り返しますが、当然、カポネ団の面々は、そのネタを掴んで恐喝を仕掛けます。ただし逆に罠に落とされ、仲間は殺されて……。こうしてクライマックスは海岸でのバイクアクションと派手な大乱闘!

 「ダイナマイトロック」をBGMに海岸をバイクで疾走し、悪漢達が集っている新工場の杭打ち式に殴りこむカポネ団は、いつもながらのカッコ良さなんですが、肝心のアクション場面は「ありえない」場面が続出しますから、笑って楽しむのが王道でしょうねぇ。そして特筆すべきは、山城新伍が口から火を吐いたり、冷凍魚が手裏剣のように突き刺さったりする特撮が使われていることです。それがチープで、実に味わい深いというのが、今日の感想なのでした。

 ということで、毎度お馴染みのワンパターンを踏襲した作りなのですが、ドロ臭味とエロ度の高さは、ますますディープになっています。特に一ノ瀬レナの出し惜しみしない姿勢は立派! 劇中では芸者姿で着物を脱いで乳丸出しになったり、ヌードで梅宮辰夫のバイクの後ろに乗って白昼の街を疾走したり♪ また死に際の愁いが滲む表情と演技も素晴らしいと思います。

 また気になる渡辺やよいの存在は、渡瀬恒彦との恋愛モードが主軸なので、美味しい場面はありませんが、やっぱり可愛いですねぇ♪

 それと菅原文太が、今回は相等にカッコイイ演技です。バカバカしいアクション演出にテレ笑いしているような表情も味わい深いところでしょう。

 そして対照的に素晴らしいのが山城新伍! 思いっきりボケながらも本音の芝居と「ありえない」演出、さらにギャグの乱れ撃ちは、「活動写真の限界に挑戦」と自ら劇中でホザいているほど痛快です。どうやらこうしたバカらしさは、山城新伍を中心に現場でドンドン変質していった脚本との兼ね合いがあったようですから、シリーズもいよいよ佳境に入っていくのでした。

(2007.09.15 敬称略)