不良番長・のら犬機動隊

 前作「突撃一番」は地方ロケでしたが、シリーズ14作目は新宿が舞台! しかもなかなかの豪華キャストは新鮮な顔ぶれとなって、物語はシリアスなハードボイルド色が強いという原点回帰な作りとなりました――

不良番長・のら犬機動隊(昭和47年4月)

監督:野田幸男
企画:吉田達
脚本:松本功&山本英明
撮影:稲田喜一
音楽:八木正生
助監督:三堀篤
出演:梅宮辰夫(神坂弘)、山城新伍(西条)
■出演:藤竜也(サブ)、峰岸隆之助=峰岸徹(ゼニ)
■出演:池玲子(ケイコ)、八並映子(ガリ=ノリコ)
■出演:安岡力也、植田峻、内田良平(加納)
■出演:誠直也(バクダン)、小林千枝(トモコ)
■出演:藤井まゆみ(サチコ)、深江章喜(市丸)
■出演:今井健二(沢田)、安部徹(大場)
■出演:久保浩(ギター)、八名信夫(木島)
■出演:岡崎徹(ゴーカン)、渡辺やよい、佐藤晟也
■出演:中田博久(マサ)、永井秀明(藤村)
■出演:藤井まゆみ(サチコ) 他

 まず上記の出演メンバーをご覧下さい! 日活から藤竜也と深江章喜、大映からは峰岸徹と八並映子♪ これは当時、日活も大映も製作中止に追い込まれていた事情があっての登場でしょう。さらに東映ポルノ路線で人気絶頂だった池玲子♪ そして同社が期待していた若手の岡崎徹、つまり後の「仮面ライダーアマゾン」その人が出ています。おまけに歌謡界からは久保浩、またシリーズ9作目の「暴走バギー団」で好演した植田峻までもが名を連ねているのは壮観ですねぇ〜。もちろん常連メンバーも存在感があります。

 それゆえに物語の味わいも、些か煮詰まりが目立ってきたシリーズ近作とは異なり、初心に帰ったハードボイルド路線! というよりも、はっきり言えば日活ニューアクション調で、「のら犬」≒「野良猫」というのは言わずもがなでしょう。

 まず冒頭のタイトルロールから夜明けの新宿を疾走するバイク集団のカッコ良さ! クインシー・ジョーンズ顔負けのブラスロックなテーマ曲も新鮮です。そして着いたところで展開されるのが、神坂弘=梅宮辰夫が率いるカポネ団とマサ=中田博久をリーダーとする高円寺のカッペ団の対決です。それはバイクの一騎打ちという、如何にも映画っぽい演出ですが、ここはもちろん梅宮辰夫の勝ち! そしてカッペ団のイカス女が池玲子ですから、ここは赤い皮ジャンから彼女の乳と乳首の大サービスです。おまけにホットパンツも良いですねぇ〜♪

 こうして勢いづいたカポネ団は映画の街頭ロケをバイクで取り囲んで妨害し、水着の美女3人を略奪・強姦の乱暴狼藉です。ここはその中のひとりに渡辺やよいがいますし、もちろんレイプされ乳も乳首もモロ見えのサービス♪ 「もう、私、家に帰れない……」と泣いてしまいますが、すると藤竜也が――

 いいじゃないか、俺達だって帰る家なんか、ありゃしないんだ

――と、いきなりの名台詞です。 しかしやっぱり警察がその場に急行してきて、八並映子が捕まり、女子感化院へ! ただし直ぐに脱走し、おまけに院内の仲間まで連れてくる手際の良さです。もちろん塀の外にはカポネ団が待っていて、脱走してきたズベ公達は風俗産業のソープ嬢へ斡旋されるのです。

 ここはカポネ団のシノギの実態というか、調子の良さは楽しい限りですが、スベ公の藤井まゆみが太股に入れた刺青を見せる場面は、下着越しのデルタ地帯が雰囲気も良好

 また地元の商店主を相手に空き店舗を無断拝借してショボイ賭場を開帳しているのも、全くカポネ団らしいセコイ手口ですが、そこへ追立てに乗り込んでくるのが安岡力也と植田峻! ところがこの2人は勢いばかりで、忽ち潰されて……。どうやらその店の正当な買主に頼まれての行動ということで、カポネ団は勇躍、その雇い主のマンションへ押しかけるのですが、そこに居たのは梅宮辰夫の鑑別所時代のダチ・西条=山城新伍という、シリーズ恒例の展開です。

 もちろん山城新伍もヤクザな稼業、情婦のトモコ=小林千枝に件の店をやらせ、自分は新宿に足場を固めるのが目的とあって、カポネ団とは面倒を避けたい方針ですが、それにしても山城新伍はシリーズ中でも一番のシブイ役柄! 全く笑いを演じる事がありません。そしてこの裏には、どうやら新宿を縄張にしている加納組とのトラブルもある様子……。

 しかしそんな事はカポネ団には関係の無い話で、次の展開は高円寺カッペ団の紅一点だった池玲子との再会から、彼女が経営している雀荘でボロ負けする情けなさが妙に痛快です。ちなみに池玲子の本業はソープ嬢♪ もちろんカポネ団の面々は彼女の肉体に目をつけ、その日の内に深夜のレイプを目論むのです。

 ここは池玲子の全裸のシャワーシーンから抵抗もリアルなレイプ場面へと楽しみが繋がります♪ しかし土壇場で岡崎徹が男の大切な部分に果物ナイフを突き立てられっ! もちろんこれに激憤した梅宮辰夫が、池玲子の働く風俗店に乗り込んで、スチームバスを使った直談判ですから、ここは観てのお楽しみです。という彼女のプロフィールは――

池玲子(いけれいこ)
 芸能史的には「日本のポルノ女優第1号」ですが、実は「ポルノ」という造語は彼女のために作られたものです。それは昭和46(1971)年、ヌードモデルをしていた彼女が東映京都の天尾完次プロデューサーに発見され、鈴木則文監督による主演作品「温泉みみず芸者」で7月にデビューする時のウリ文句として東映が作り出した造語なのです。もちろん内容はピンク路線のエロ映画に他なりませんが、「ポルノ」銘打ったところに従来のビンク映画とは一線を隔した新鮮味をアピールしていたのです。
 ちなみにデビュー時の池玲子は昭和28(1953)年生まれですから、なんと17歳! そこで東映は経歴からデビューのきっかけまで徹底して捏造し、当時は昭和25年生まれ、夜の青山で遊んでいたところを偶然、天尾完次に見初められ云々という事にされていました。またこの時、同時にスカウトされのが、一緒に遊んでいた杉本美樹! という部分も、その後のスケバン作品の成功を思えば味わい深いところです。
 こうしてデビューした池玲子は、若くて豊満な肉体とぽっちゃり系のルックスで忽ち大人気! 男性週刊誌やエロ映画雑誌、エロ本のグラビアにも毎週のように出まくり、脱ぎまくっていくのですから、続けて製作された「女番長ブルース・牝蜂の逆襲(昭和46年10月・鈴木則文監督)」「現代ポルノ伝・先天性淫婦(昭和46年12月・同)」「女番長ブルース・牝蜂の挑戦(昭和47年2月・同)」といった主演作は大ヒットを記録し、彼女は1971年度のゴールデンアロー賞・ グラフ賞、製作者協会新人賞を獲得しています。
 ところがその人気絶頂時、もう脱がない宣言という、勘違いのお決まりコース……。歌手への転向を図ったのですが、昭和47年6月にビクターから発売したデビュー曲「変身(作詞:なかにし礼、作曲:森田公一)」は、お色気歌謡ポップスの名作であるにも関わらず、肝心の歌唱力が伴わずに全くヒットしていません。もちろん営業やテレビ出演でも、脱がない池玲子に商品価値は無く……。しかしそれでも、リアルタイムの私は某イベントで彼女の生ライブに接していますが、かなり体のラインが楽しめる衣装とセクシーなアクションで揺れる巨乳、ヒップから太股のエッチな雰囲気には、クラクラさせられた記憶が今も鮮烈です。う〜ん、失礼ながら確かに歌はヘタクソでしたが、もっと見たかったですねぇ〜♪
 とはいえ結局、池玲子は東映に泣きを入れて女優に復帰、杉本美樹主演の「女番長ゲリラ(昭和47年8月・鈴木則文監督)」にゲスト出演して銀幕に再登場となりました。そして東映ポルノ路線のメイン女優として活躍し、主演としては「不良姐御伝・猪鹿お蝶(昭和48年2月・同)」や「前科おんな・殺し節(昭和48年10月・三堀篤監督)」といった傑作を残しています。
 しかし当時の邦画界は日活ロマンポルノのひとり勝ち状態でしたから、東映としても空手映画や実録ヤクザ路線がメインとなり、池玲子はそうした作品の彩りとして出演しつつも人気は下降線……。自らが起こした前述の歌手転向騒動の間に同期デビューの杉本美樹が台頭したことも重なりました。そしてついに昭和52年5月、覚醒剤取締法違反によって逮捕! ちなみにこの時には年令詐称、つまり昭和25年生まれではなく、実際は28年生まれで17歳のポルノデビューがバレたこともあり、世間に衝撃を与えました。オマケに常習賭博容疑も……。
 こうして彼女は芸能界でホサれる事となり、それでも昭和54年6月には「黄金の犬(大映&松竹・佐藤純弥監督)」でバックから烈しくレイプされる人妻という名演を披露♪ しかし既に往年の人気は取り戻すことが出来ず、フェードアウトしています。

 ということで、この作品は彼女が東映相手にゴネまくっていた時期の出演とあって、池玲子というイメージからすれば、些かサービスが良くありません。しかし彼女の場合は演技力がそれなりに備わっていたこともあり、作品全体の中で浮き上がるようなことはありません。梅宮辰夫とのお色気絡みの芝居も、乳揉みとか本気度が高くて良い感じです。

 ところでカポネ団は前述した脱走不良少女達を風俗店へ斡旋したことが警察にバレ、梅宮辰夫と藤竜也が暴力刑事の今井健二から峻烈な取調べ! ブタ箱へ放り込まれた2人は不貞腐れて留置場の中で放尿したりのメチャクチャですから、そこへ容赦なく冷水をぶっかけられたりするテイタラク……。ちなみにここで仲間になるのが、当時の流行歌手だった久保浩です。もちろん劇中では役名どおりにギターを弾きながら、フォーク歌謡の隠れ名曲「海に帰ろう(作詞:清彰、作曲:八木正生)」を歌ってくれますよ♪

 またこの間には、加納組の企みによって池玲子の雀荘やカポネ団の新アジトが潰される展開に! しかし久保浩が以前に働いていた製薬会社の繋がりから、麻薬の密造を掴んだカポネ団は十八番の強請りに活路を見出すのですが……。もちろんその背後には加納組の黒い影があるのです。

 一方、山城新伍は情婦の小林千枝にスナックをやらせて悠々自適ながら、実は射撃の名手としてヤクザ業界では有名人! ちょいとした弱味から加納組に梅宮辰夫を消す仕事を強要され、2人は対決するのですが、なんと山城新伍は八並映子と生き別れていた兄という、如何にも東映なドロ臭い演出がたまりません。

 ここは加納組の内田良平、深江章喜、八名信夫、そして暴力刑事の今井健二が、それぞれに恐さを滲ませて味わい深く、また八並映子のお涙演技も流石だと思います。

 こうして後半は藤村製薬から恐喝した大金の争奪戦から、藤竜也が加納組に捕まり、日活時代から十八番としていたリンチを受けての嬲り殺し寸前という、お約束の演出です。さらにカポネ団内部の仲間割れとか、もうこのあたりは完全に日活調なんですが、どうにもこうにもドロ臭いのが、やはり東映という素晴らしさでしょう。そして加納組を相手にしたバイクアクションや銃撃戦、爆発炎上する車が痛快です。

 しかし煮え湯を飲まされた加納組は、会長の大場=安部徹が出所したこともあり、ついにカポネ団は根絶やしに狙われ、新宿からの脱出を図るのですが……。ここはもちろん、仲間がそれぞれに殺される悲壮な演出が、なかなかの緊張感です。

 こうしてクライマックスは何時もどおりにカポネ団がバイクでの殴り込み! しかもBGMがサイケファンキーなんですから、たまりません。場所はシリーズ恒例の富士の裾野というのも嬉しく、飛び交う銃弾と炸裂する爆薬の中で、登場人物の死に様がいろいろな趣向で演出されていますが、それにしてもこの頃の役者は死に方が上手いと痛感させられますね。

 ということで、なかなかハードボイルドに撤した仕上がりです。札びらを撒き散らして逃走するモーターボートのラストシーンも、濃いですねぇ。

 しかしシリーズを通して観てきたファンにとっては、明らかに違和感が残る、些か物足りない作品でしょう。これまでのキモだったハチャメチャなギャグや下品な笑いが、ここにはありませんし、八並映子が全く脱いでいないのも減点です。そして何よりもクソ真面目な山城新伍なんて……。

 ただその反面、藤竜也は日活時代の「野良猫ロック / ワイルド・ジャンボ」で演じたガニ新を受け継いだキャラで好演していますし、梅宮辰夫は池玲子に対して女たらしの本領発揮です。また他のカポネ団の面々も、自らのキャラを活かしていますから、まあ、これ1本だけ観る分にはOKでしょう。諸事情から、今ではなかなか観ることが出来ない池玲子を楽しめるという事でも貴重ですし、何よりも東映が日活ニューアクションを意識していた証としても興味深いと思います。

 もちろんそれは、繰り返しますがドロ臭く、しかも東映への愛着に変わっていく面白みは絶品です。そしてシリーズは、次回作で再び原点回帰を目指すのでした。

(2008.05.07 敬称略)