実写版「ハレンチ学園」の世界−3

 後半はうつみみどりが演じる女性教師が赴任してくるところから始まりますが、その彼女が道すがらでハレンチ学園の場所を尋ねる幼児達がサイコロ賭博に興じているのは、その頃に大ブームだった女任侠物、例えば藤純子の「緋牡丹博徒(東映)」とか江波杏子の「女賭博師(大映)」といったシリーズ物の影響でしょう、可愛い女の子が壷振りを演じております。

 そしてハレンチ学園に辿り着いた彼女は教育心理学を専攻していただけあって、大きなマニュアル本を頼りに早速生徒達とのふれあいを実行すべく、男子生徒の空いていた「社会の窓」のジッパーをやさしく上げてやりますが、その返礼は「スカートまくり」です。もちろん彼女の服装はミニスカですから白い生パンがバッチリ!

 お待たせしました、ここからが当時、世間を震撼させた「スカートまくり」のエピソードが始まります。まず、十兵衛が遅刻しそうになり、近道である学園の裏山の有刺鉄線を得意の忍術で飛び越えますが、この時セーラー服のスカートが翻る場面では当然ローアングルのカメラ及びスローモーションが決め手になっています。そして瑞々しい太腿やパンチラを拝むことが出来ますが、何故か次の瞬間、十兵衛が下半身に違和感を覚えて振り返ると、飛び越えた有刺鉄線には自分が履いていた白いパンツがひっかかっているという、このあたりは理論もヘチマもない問答無用のお約束です。しかもその場面をヒゲゴジラに覗かれていたというオマケがついており、そのパンツをすかさずゲットしていく時のヒゲゴジラ=藤村俊二の変態演技は流石です。それにしても今日的観点からするとそのパンツのおばちゃんっぽいこと! それでも当時は同級生の女子のそれを想い合わせて妄想を掻き立てられたものでした。

 そしてそれは、うつみみどりが新任教師として受けなければならない洗礼=いたずらのひとつとして、授業中に釣り糸・釣り針を使った凝った仕掛けで「スカートまくり」を受けたことからエスカレートし、生徒ばかりかヒゲゴジラ、マルゴシ等々の教師連中までもが加わった「スカートまくり」の大饗宴へと発展したことから、ますます膨張させられました。ここではお目当てのパンツ見せがきちんとあり、それは白・赤・緑・青……等々と連なってまいりますが、それは生パンというよりもブルマー状の雰囲気が濃厚で、当時はやや残念な雰囲気もありましたが、今となってはブルマニアというかブルマー愛好者にはかえって結果オーライかもしれません。セーラー服の中身がブルマー、ふっふっふっ……。

 ですが、やはりその中のミソはノーパン状態の十兵衛=児島みゆきの運命です。狂乱の中を逃げまどい教室を脱出して行きますが、ついに山岸に追いつめられ、とうとうノーパンであることを告白し、「やめて、やめてっ」と必死の懇願! ここは児島みゆきの羞恥心が見せ場となっていますが、もう少し色気が欲しいというのが正直な気持ちです。しかしこれは成人映画ではありませんから、当時としてはこれが限界かもしれません。ただし教師達の変態描写はかなりのものがあり、ヒロインがノーパンであることを言いふらすヒゲゴジラやそうと知ってますます執拗に襲い掛かるマルゴシ以下のスケベ教師達の演技には大笑いさせられました。このあたりは当時、教育関係者にとっては屈辱物だったと想像に難くありません。なにしろその挙句、十兵衛を守ることで団結した生徒達から逆に裸に剥かれてしまうのですから、尚のことだと思います。

 こうして難を逃れた十兵衛ですが、エピソードの最後には原作と同じオチがちゃんとついておりますのでご安心下さい。すなわちノーパンの彼女に対しての「スカートまくり」です。この場面で児島みゆきのきれいな生尻のラインがサイドから映画的ストップモーションで拝めます。つまり劇場ではほんの一瞬の大サービスで、もちろん尻のワレメなど見えるはずもなかったのですが、それでもかなり衝撃的で劇場内はオォッ〜というどよめきに満たされたほどでした。後年、私はこのシーンが忘れられず、ビデオ化された時にはそれを一時停止でしっかり確認して長年のもやもやを解消したのですが、それゆえにこの作品のDVD化を強く望んでいる次第です。セーラー服に生の尻、ふっふっふっ……。

 こうして盛り上がった物語はバス旅行のエピソードへ突入します。それは生徒から旅費を徴収しておきながら、盗んだ移動スーパーのバスを使い、ガソリンは入れ逃げするという、当然のようにハレンチなものですが、その事をうつみみどりから糾弾されると「今回の旅行は何が悪いか、それを生徒に教える旅である」と他の教師は居直ります。もちろん生徒達もめちゃくちゃが出来るというので大喜び、したがってやっとの思いで警察に連絡して来てもらった白バイ警官の前では彼女が他の先生や生徒達から精神病患者扱いされる始末です。

 そして着いたところが伊豆湯ヶ島町の「船原ホテル」です。ここは今では閉館しているようですが、当時は広大な敷地面積と22金の鳳凰型風呂がウリの人気スポットでした。このあたりは低予算をカバーするタイアップの表れですが、今となっては懐かしい昭和元禄の風俗の一端を垣間見ることができるという、これまた結果オーライ的な味があります。ちなみにここは質の高いフロアショウでも有名でしたが、流石にそれは映画では登場しておらず残念でした。

 で、このホテルにも当然無銭宿泊を試みる一行なのは言うまでもありません。某有名校の団体に成りすまして首尾よくチェックインすると先生達はまず入浴、ここでヒゲゴジラが浸かっているのが前述した鳳凰型の金風呂ですが、これは数年前に閉鎖してあった建物から盗まれていたことが判明し、かなりのニュースになった記憶があります。確か時価壱億円だったとか! あと、この場面では浮かれる教師達を怒鳴りつける役でカバゴンこと阿部進が一瞬登場しておりますので、この人をご存知無い方も顔を見ればすぐ分かっていただけるかと思います。

 一方その頃、生徒達は温水プールで遊んでいますが、もちろん女子生徒達の水着姿が拝めます。

 と、ここまでは和やか(?)な修学旅行風景が続いておりましたが、夕食時になってそれが一変、生徒達には素食の膳を出しておきながら、先生達は豪勢な料理を堪能しており、さらに芸者まで呼んで酒池肉林の饗宴を目論んでいるところから生徒達の反撃が始まります。それはまず呼んでいた美人芸者をババア芸者に交代させ、さらに意図的な停電を策して酒や料理を強奪し、座敷では「野球拳」に興じます。

 あぁ、「野球拳」……! これこそ当時! と、つい力が入ってしまいましたが、これはお座敷遊びのひとつで、男女がペアになってじゃんけんをやり、負けた方が衣類を一枚づつ脱いでいくという、例の「♪や〜きゅうぅ、す〜ぅるなら、こういう具合にしゃしゃんせ〜、アウト、セーフ、ヨヨイノヨイ!」という唄に合わせて行うもので、これが当時大変なブームになっていました。それは昭和44〜45年にかけて日本テレビ系列で日曜日夜8時から放送されていた「コント55号の裏番組をぶっ飛ばせ」の目玉コーナーとして演じられていたもので、坂上二郎と若手女優や歌手、タレントの対戦が驚異的な人気を獲得していました。なにせそれまでその時間帯に揺ぎ無い地位を確保していたNHKの大河ドラマが視聴率で後れをとってしまったのですから! リアルタイムでご覧になっていた方ならそのときめきがご理解いただけるものと思います。また未見の方はテレビだから大したことはないだろう、とあなどるなかれ、坂上二郎ばかりではなく対戦相手の女の子もちゃんと服を脱いでいって下着姿になるのですよ。もちろん実はお約束があって、下着といってもあらかじめビキニ系の水着を着ていたりする者もいたのですが、中にはパンツを2枚履いてきてその上の方を脱いでしまうサービス満点の者もいました。また相手が大物の場合は二郎さんが負けていき、逆にセクシー系のゲストは負け続けるのですが、それに気づいてからはますます期待と妄想と下半身が膨らむようになり、個人的には桑原幸子や大信田礼子等々、強烈な記憶が残っています。ちなみに、脱がされた衣装は観客にオークションされるという、非常に結構な企画になっておりました。当然、PTA等々から俗悪番組と決めつけられ、後期からは肝心の脱ぐ場面が顔の部分だけ穴が開いている電話ボックス状の箱の中でやるようになってしまったのは残念でした。

 さてここまで、うつみみどりが演じる常識的な女性教師は頑なにハレンチ学園では当たり前の行動を拒絶しておりましたが、とうとうブチキレて酒乱の狂態をあらわにしてしまうところからクライマックスに入ります。まず修学旅行では定番の枕投げに興じる女子生徒達を唆し、続いてお待ちかねの大浴場へ行くことになりますが、実はそこは男風呂で山岸達が入浴中、そこへバスタオル姿の女子生徒の集団が! あわてて浴槽の隅に隠れる彼等ですが、ついにはノボセテ見つかるというオチがついております。もちろんここで女子生徒達の入浴姿がサービスされているのは言わずもがなです。

 そして翌朝、宿賃を踏み倒すためにベランダから脱出する生徒達ですが、ヒゲゴジラやマルゴシ達は前夜の暴飲暴食がたたって動けず、さらには山岸達が温泉のバルブを閉めていたことから圧力が上がってホテルは大爆発という、まさにマンガの世界! おまけに肝心のバスは酒浸りのうつみみどりが運転しての大暴走、ここでの彼女はシュミーズ風の下着ルックに一升瓶を抱えてケタケタと笑い続けるという危ない演技を見せてくれます。ちなみに彼女は現在でもテレビのバラエティ等で明るく軽妙な存在感を示しておりますが、朝日新聞社で出していた英字誌の記者からタレントに転向、日本テレビ系列の子供番組「ロンパールーム」の先生役があまりにも有名というこの当時はどちらかというと才媛的イメージが強く、その彼女のここでのタガが外れたような演技はお見事です。

 またバスの大暴走の場面は完全にマンガ的処理のギャグで構成されており、例えば自転車の女の子がバスとすれ違った次の瞬間には生下着姿になっているとか、それを発見した白バイ警官はその時立ちション中だったとか、あるいは禁断の差別用語「キチ○イ」が連発されたり……。今思うと、このスピード感・キッチュな雰囲気がいかにも昭和45年だと思います。

 ということで、教師達はもちろん全員逮捕、留置場送りとなりますが、当然そこから脱走、護送車を奪って学園に戻り、生徒達を懲らしめる展開になります。しかし山岸達が窮地に陥ったその瞬間、十兵衛に率いられたレオタード姿の女子生徒集団が助けに入りハレンチ教師達をやっつけるというのがラストシーンです。ちなみにここでバックに流れる「♪やめてケレ〜」という歌は、この作品にも用務員役で出演している左ト全が当時大ヒットさせていた「老人と子供のポルカ」です。そしてここでも教師役の男優達は女子生徒にもみくちゃにされるという美味しい役得があり、つまり作品的には最後まで教師・教育というものが徹底的にコケにされているという、王道を大きくハズした作りが持続しているのでした。しかし、その場面でも十兵衛と山岸ががっちり握手という青春の甘酸っぱさのような雰囲気が入っており、後味は爽やかでした。
(敬称略・続く)


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