実写版「ハレンチ学園」の世界−4

 以上が実写版「ハレンチ学園」の主な内容です。これまでクドクドと理屈っぽいことを述べてまいりましたが、もちろんリアルタイムではそんなことは何も考えずに笑い、ときめいて観ていたのです。稚拙な文章故、なるべく皆様にご理解いただけるように微力を尽くしたつもりですが、おそらく今、この作品を初めてご覧になられる方はそのあまりのキッチュさに驚かれたり、あるいは若い世代の方々には何が可笑しいのか、またどこが社会問題化するほどエッチだったのか分からない部分が多かろうと思っております。しかし、これが当時の小・中学生にはかなり刺激的だったのは紛れも無い事実でした。実際、この作品は大ヒット、学校ではますます「スカートまくり」が流行ったりもしました。妹が通っていた小学校では「スカートまくり」をさせないように家庭での注意を促すようなプリントが配布されたほどです。

 現在の個人的感想としては、丹野監督の演出にはかなりラフな部分が感じられるのですが、それがここでは独特のスピード感と上手くミックスされて良い方向に作用していると思います。鑑みればこれまでの学園物、例えば昭和40〜42年の日本テレビ・東宝系の学園ドラマ「青春とはなんだ(夏木陽介主演)」「これが青春だ(竜雷太主演)」あたりで築き上げられてきた熱血教師と生徒のふれあいという部分が、ここでは屈折して描かれているということが特筆すべきことだと思います。そこがまた如何にも70年代的であり、この屈折感とエッチな雰囲気はやはり日本テレビ系列で昭和46年から始まる松竹系の「おれは男だ!(森田健作主演)」と昭和47年の東宝系「飛び出せ!青春(村野武範主演)」という傑作学園ドラマに受け継がれ、大輪の花を咲かせることになります。

 正直に言って、この「ハレンチ学園」はそれらの傑作と比べて今日的に受けいれらる部分の充実度は低いと思われます。しかし、昭和45(1970)年という、果てしなき時間の流れのほんの一部分を凝縮しているという点においては、物凄いエネルギーを感じさせる傑作だと思います。つまり時流に乗った面白さという点では最高であり、もちろん当時は破格の大ヒットとなって、その頃には本社ビルまでも売却してしまうほど経営難に陥っていた日活をどうにか土俵際で踏みとどまらせる成果をあげました。もちろん続篇製作が決定したのは言うまでもありません。ここからは個人的推察になりますが、この作品がなかったら後のロマンポルノの開始はもっと早くなっていたか、あるいはそれ自体が無くなっていた可能性まであると思っております。

 それと、この作品の併映は長谷部安春監督の「女番長・野良猫ロック」でした。これは当時、「星空の孤独」や「どしゃぶりの雨の中で」といった一連のR&B歌謡曲で売出していた和田アキ子の主演作として企画された歌謡映画色の強いものでしたが、主役の彼女よりも注目されたのが準主役の梶芽衣子でした。作品の内容は新宿を舞台にした所謂スケバン・不良少女物で、暗さを秘めたシャープな演技を見せてくれる梶芽衣子の輝きは最高! 後の東映での大ヒット作「さそり」シリーズに繋がる萌芽といえるものかもしれません。ちなみにこの作品中には九万里由香の全裸や彼女が煙草の火を押付けられて拷問される場面があります。もちろん私は大いに興奮されられました。そしてこっちの方が「ハレンチ学園」よりも刺激的で問題だと思うのですが、当時は全く無視されていたのはどういうわけでしょう? シンナー遊びやナイフを振り回しての女同士の喧嘩についても同様です。またゴーゴー喫茶では当時のサイケバンド「モップス」や歌謡GSの「オックス」、そして駆け出し時代でまだアンドレ・カンドレと名乗っていた井上揚水が演奏する勇姿を拝むことができますので要注意です。この作品も続けてシリーズ化されていきましたが、それがいかにも70年代的なので、必ずや取上げたいと思います。

 あと、昭和43(1968)年夏に公開された松竹作品に市村泰一監督の「昭和元禄ハレンチ節」という喜劇映画があります。また、昭和44(1969)年に公開された東映作品に石井輝男監督の「異常性愛記録・ハレンチ」という成人映画もあります。原作が少年ジャンプに掲載され始めたのが昭和43(1968)年夏頃ですから、これらは最も早く「ハレンチ」という言葉を取り入れた映画ということになるのでしょうか? 「ハレンチ学園」ブームとこのあたりの相関関係も非常に興味深く「あの頃」を考察するポイントになりそうです。そして少なくとも当時の子供達に「ハレンチ=破廉恥」という言葉を認識させたという点だけでも、「ハレンチ学園」の存在意義は計り知れないものだと思います。
(敬称略・続く)


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