「魅惑のムード / 秘宝館」鑑賞記 


 秘宝館壱之館(disc-1)は日本コロムビア篇です。

01 経験/辺見マリ(昭和45年)
   (作詞:安井かずみ 作曲:村井邦彦 編曲:川口真)
 現在では辺見えみりの母親として有名な辺見マリが19歳の時に発表した2枚目のシングルA面曲で、当時流行のイージー・リスニング・ジャズと呼ばれた音作りを取り入れた洒落た歌謡ポップスです。軽快な8ビートに乗って弾ける楽しいブラスのイントロはヒット曲の条件とも言えるもので、そこで歌い始める彼女の「へっ、やめって〜」というワン・フレーズだけでKOされてしまいます。この「へっ」という部分がこの曲のミソで、当然はっきりと発声されているわけではないのですが、このタメの部分が最高のセクシーさなのです。もちろんこの歌唱法は楽曲全体に用いられております。また彼女の歌に合の手的に絡んでくるジャズっぽいピアノや歯切れの良いドラムス、躍動するエレキ・ベース等々、素晴らしい出来で、このカラオケは永久保存してもらいたいと思うところです。当然この曲は大ヒット、当時の歌謡新人賞を総ナメにしています。実演では彼女の振付けもクネクネと色っぽく、テレビ放送ではお茶の間にやや気まずい雰囲気が漂うほどでした。セクシー歌謡曲の定番中の定番で、個人的に大好きです。ちなみに彼女は人気絶頂の翌年いっぱいで引退し、西郷輝彦と結婚してしまいました。その結果、誕生したのが辺見えみりというわけです。そして、この手のサウンドが気に入った方には「A Day IN The Life / Wes Montgomery」等のジャズ・アルバムをお勧めします。もちろん逆も有りです。

02 ダンチョネ節/沖山秀子(昭和45年)
  (作詞:西山爽 補作曲:遠藤実 編曲:田辺信一)
 野性的な雰囲気とグラマラスな肢体が魅力の個性派女優として当時注目されていた沖山秀子の幻のシングル盤A面曲で、小林旭のヒット曲としてあまりにも有名な流行歌のカバーです。エレキ・ベースによるビートを強調したアレンジが施されておりますが、彼女のジャズっぽい歌唱法と合っているとは、私には言えません。女優デビュー前は本格的にジャズを勉強していたところが少しばかり裏目に出たという雰囲気です。但しオリジナル・シングル盤のジャケットは彼女がブーツにホット・パンツ、そして胸元が大きく開いたセーター姿でバイクに跨っているという、彼女の魅力が全開したセクシーな逸品で最高です。ちなみにこれが何故に幻化したのかと言えば、発売直後に彼女がある事件を起こしてしまったためで、その後も次々とスキャンダル・ネタを提供しつつ活動を続けたのはいかにも昭和的でした。

03 一年は裏切りの季節/賀川雪絵(昭和46年)
   (作詞:吉岡オサム 作曲:鈴木征一 編曲:河村利夫)
 賀川雪絵は東映ポルノ路線の常連女優として大活躍した後、テレビや一般作品にも進出して行きましたが、これはちょうどその過渡期に発売された彼女の歌手デビュー曲です。曲調はポップス演歌というか、いかにも当時の歌謡曲という雰囲気で、電子オルガンやパーカッションでサイケな味付けが施してあります。歌詞の内容は処女喪失〜捨てられたスケバンの青春回顧という、そのまんま映画の中の彼女の役柄が歌われております。ジャケットには虚無的な彼女の表情と共に倒れた洋酒の壜やグラスが写っていて、いかにも捨てられた女の風情が漂うものですが、おまけとして彼女のパンツだけのヌード写真もあるというサービス満点なものです。それは乳も尻のワレメも見えているという、あぁ、いかにも昭和元禄でありました。

04 怨歌情死考/小川節子(昭和48年)
   (作詞:小原宏裕 作曲:井関麿里 編曲:小杉仁三)
 小川節子は記念すべき日活ロマン・ポルノ第1号「色暦大奥秘話」でデビューした同路線初期の大スターでした。彼女はそのほとんどの出演作が時代劇ポルノでしたが、数本の現代物も残しており、この曲はその中のひとつ「怨歌情死考・傷だらけの花弁」の主題歌でした。彼女についての詳しい事は七四式様のサイトに掲載していただいた拙作「闇の中の妖精・小川節子の巻」を参照にしていただきたいのですが、この作品での役は歌手を志して家出した美女というもので、彼女自身が唄うこの曲は強烈な印象を私に残しました。ズバリ、名曲です! 一言で云えば石川さゆりの「津軽海峡冬景色」の世界ですが、勝るとも劣らないウラ名曲と断言致します。まずイントロから哀愁を帯びたソプラノ・サックスにリードされ、彼女の後ろ髪を引かれるような歌唱に魅了されます。そしてサビではそこに泣きギターが重なります。彼女の歌唱力も安定していて、何度聴いても飽きがこない名曲です。これが何で当時ヒットしなかったのか不思議です。このボックスの目玉のひとつですが、現代なら松永ひとみか川久保由香にリメイクしてもらいたいと強く希望しています。

05 アンチキショウのブルース/真木七奈(昭和45年)
   (作詞:吉岡治 作曲:鈴木征一 編曲:田辺信一)
 これは初めて聴きましたが、芸名からも推察できるように、青江三奈をさらにエグくしたようなブルース演歌で、実は私はこういうものが大好きです。セクシーな部分はイマイチですが、とにかく青木七奈の歌唱のディープなクドさは半端ではなく、そこに絡むギターも泣いています。付属解説書によれば、彼女は宝塚で男役を演じていたということです。

06 甘えていいわ/叶ひろ子(昭和44年)
   (作詞:なかにし礼 作・編曲:鈴木邦彦)
 鶴岡雅義風レキントギターによる哀愁のイントロで始まる正統派ムード歌謡曲です。彼女については全く知らず、この歌も初めて聴きましたが、付属解説書によればクラブ歌手として活動していたらしく、雰囲気としては青江三奈のセンを狙ったハスキーな歌声が魅力的です。

07 あげてよかった/ペア・スズラン(昭和44年)
   (作詞:野々川大介 作曲:ジュン池内 編曲:ペペ・メルト)

 ペア・スズランは美人双子姉妹として昭和40年代に活動していたすずらん姉妹の変名ユニットです。そうするだけあって、この曲はとても洋楽テイストが強く、低音ブラスとフルートを使ったイントロはDon Sebesky風のアレンジになっておりますが、本篇の歌に入ると一転してこれぞ昭和歌謡曲と絶賛したくなる素敵な名曲です。歌い出しの「あげてよかぁ〜たぁ〜」という部分の色っぽさも程好く、サビの部分のハモリも最高ですし、ふくらみのあるアレンジとの一体感も実力派の彼女達ならではの仕上がりになっております。歌詞の内容はもちろん処女喪失を連想させるものですし、ジャケットもピンクのネグリジェ風の衣装になっているという、これはセクシー歌謡曲の大定番です。

08 恋が喰べたいわ/あい杏里(昭和45年)
   (作詞:石坂まさを 作曲:森川範一 編曲:森岡賢一郎)
 この曲も初めて聴きましたが、完全に奥村チヨ路線をなぞったセクシー歌謡曲になっています。ただしこちらの方がその歌い方等サービス過剰というか、下品な感覚が強く、そのためこうした曲ではバックで絡むテナー・サックスの咽び泣きがポイントになるはずですが、ここではアッサリとしたものになっていて、そこが物足りないやら感心するやら、見事なアレンジだと思います。ジャケット写真で見る彼女は若き日の浅丘ルリ子を彷彿とさせる美人で、ネグリジェ風の衣装ですから堪らなくセクシーです。彼女はこの曲を出しただけで消えて行ったようですが、歌はともかく、セクシー・タレントとして活動してもらいたかったと残念でなりません。

09 夏の女/沢知美(昭和46年)
   (作詞:阿久悠 作曲:宇野弘恭 編曲:佐々永治)
 沢知美は日本テレビ系列の深夜番組「11PM」でのカバー・ガールとしての活動が有名ですが、歌手としてもかなりの枚数のシングル盤を出していました。この曲はフラメンコ調を取り入れた歌謡ポップスですが、個人的にはちょっと凝り過ぎの曲風・アレンジが裏目に出ていると感じます。

10 恋の五ヶ条/ザ・シュークリーム(昭和46年)
   (作詞:阿久悠 作曲:鈴木邦彦)
 ザ・シュークリームはゴールデン・ハーフと同時期に活動していたセクシー・グループで、まずそのグラマーな肢体が注目されてテレビや雑誌のグラビア等で大活躍していましたが、歌の実力もかなりのものがありました。この曲は当時流行の兆しが見えていたニュー・ソウルの味付けが施された数え歌的な演歌です。今聴くと、16ビートなリズムと和太鼓風のブレイク等々、なんともミスマッチな感覚に驚きますが、このデビュー曲は当時かなりヒットしていた記憶があります。ところが彼女達は意外にもすぐに解散、メンバーのクーコはクーコ&エンジェルスとしてこの路線を引き継いだ故・清水クーコ、ノロは売れっ子モデル、イッコは演歌歌手・南麻衣子、ユキはホーン・ユキとしてグラマー女優の道へと進みました。

11 青い薔薇のトゲ/杉本エマ(昭和45年)
   (作詞:水沢亜紀 作曲:小林亜星 編曲:筒井広志)
 杉本エマも昭和40年代のセクシー物を語る時には外せない人で、アメリカ生まれの日本育ちというハーフだと思います。本職はモデルでしたが映画出演やタレント・歌手活動と人気を集めました。この曲はデビュー・シングルのB面に収録されていたもので、今日のソフトロック・ファンによって再発見された経緯があるようです。曲調はフレンチ風和製ボサノバとでも申しましょうか、とにかく彼女の気だるい歌い方、洒落たメロディーに惹きつけられます。ただ惜しむらくはギターのリズムが8ビートにアレンジしてある部分で、ここが本格的なボサノバになっていれば……、と思わずにはいられません。肝心の彼女の歌唱力は山場で若干不安定なところもありますが、それがまた、良かったりします。

12 太陽の恋人/ケイ・アンナ(昭和45年)
   (作詞:大日方俊子 作曲:井上かつお 編曲:馬飼野俊一)
 ケイ・アンナもまたハーフのモデルで、抜群のスタイルと語学力でタレントとして人気がありました。雑誌のグラビアやポスターでその素敵な水着姿を披露することも多く、おそらく当時、青春期を送っていた多くの男が彼女にはお世話になっているはずではないか、と推察しております。この曲は彼女のデビュー曲で、カリプソ調のアイドル・ポップスですが、ややストレートすぎて面白みに欠けていると思います。ちなみにこのシングル盤のジャケットは当然ビキニの水着姿です。彼女の歌声はやや舌ったらずのロリータ・ボイスなので、豊満な肉体を眺めつつ歌を聴き、そのギャップを愉しむという点では最高かもしれません。

13 輝きの中から/くらもと恵子(昭和48年)
   (作詞:羽切美代子 作曲:穂口雄右 編曲:高田弘)
 くらもと恵子も当時モデルやタレントとして活動しており、大きな目が魅力的で少し新藤恵美に似ていた人でした。この曲は「どうにもとまらない」以降の山本リンダのセンを狙ったものと思われるスピード感が爽快な歌謡ポップスです。タイトなリズム・セクション、歯切れの良いブラス、泣きまくるギター、そしてツボを外さないメロディ! 主役の彼女の歌声はやや金属的で好き嫌いが分かれるところですが、これもまた様々な洋楽のエッセンスと歌謡曲本来の味が非常に上手くミックスされた、どの真似でもない昭和歌謡曲の最高の高みに達している名曲と言えましょう。作曲した穂口雄右は現在再評価されているGSのアウトキャストでキーボードを担当していた人で、その時は高校生でした。グループ解散後の19歳の時からスタジオ・ミュージシャンとして活動し、さらに作・編曲家への道を歩みましたが、彼の作品はいずれもヒット曲マニアの琴線を刺激するものばかりで、例えば「年下の男の子/キャンディーズ」「ポケットいっぱいの秘密/アグネス・チャン」等があります。また、彼と共に活動していたスタジオ・ミュージシャンには水谷公生(g)、後藤次利(b)、林立夫(ds)等々の名手が揃っており、この曲のバックにも彼等が参加している可能性が大きいように思います。

14 短い手紙/西尾三枝子(昭和46年)
   (作詞:藤沢さち子 作曲:松原タカシ 編曲:斉藤恒夫)
 東京12ch(現・テレビ東京)で放送されていた人気エロ・アクション「プレイガール」のメンバーとして皆様のご記憶に永遠に残っておられるであろう西尾三枝子は、シャープで知的な美人女優でした。彼女は高校生の頃に日活でのチョイ役として芸能生活をスタートさせ、その後グラビアで美しいヌードを披露したり、歌手としての活動も行っていたようです。この曲は「プレイガール」として人気絶頂時に発売された情感漂うしっとりとしたフォーク調の歌謡曲で、中間部には彼女自身による語りもあり、聴くほどにしみじみとした雰囲気に包まれてしまいます。当時のラジオの深夜放送では頻繁にオン・エアされていて、これもまた隠れ昭和名曲と言えるのではないでしょうか。

15 私は蜘蛛の糸/橘モナ(昭和48年)
   (作詞:有馬三恵子 作曲:曽根幸明 編曲:小谷充)
 この曲もまた「プレイガール」マニアにとってはコレクターズ・アイテムになっており、何故ならば橘モナは中期のメンバーだった大田きよみの変名だからです。で、この曲は演歌味が強い正統派歌謡曲で、ソフトな部分とコブシを利かせた部分との対比がなかなかに魅力的ですし、もちろん色っぽい部分も充分に感じられます。しかし残念ながらヒットには至らず、その後も改名を繰り返して歌手活動を続けて行きますが、結局、この曲の作者である曽根幸明と結婚し、引退して行きました。

16 おそい夏/麻田奈美(昭和48年)
   (作詞:林春生 作・編曲:川口真)
 誰が何と言おうと昭和48年は麻田奈美の年でした。この年初めに突然「平凡パンチ」のグラビアで鮮烈に登場した彼女は、そのあどけない面立ちと豊満な肉体、特に今もって忘れ難い巨乳によって、当時の若い男の欲望の対象となっていたのでした。元祖グラビア・アイドルというところですが、特に私は彼女をグリグリに縛って虐めてみたい妄想に囚われて苦しみました。彼女の活動はほとんどが「平凡パンチ」誌上でしたが、その人気は絶大で、この曲もそれに肖る形で発売されたものです。しかし彼女には芸能界での野心が無かったようで、年末には姿を消してしまいました。肝心のこの曲はまさにアイドル歌謡曲のお手本のような素晴らしい出来のフォーク調のポップスで、拙い歌唱力を補うための分厚いボーカル・エコーやほのぼのとしたバックの演奏がクセになる素晴らしさです。またこのボックスには収録されておりませんが、B面の「カトレアの花」も個人的には好きです。彼女は4年後に一時的にカムバックしますが、どうやら発売されたレコードはこのシングル盤だけのようです。

17 太陽の季節/三東ルシア(昭和50年)
   (作詞:橋本淳 作曲:井上忠夫 編曲:森岡賢一郎)
 三東ルシアといえば、日活ロマンポルノの上垣保朗監督作品「女教師・生徒の目の前で(昭和57年)」の熱演があまりにも印象的ですが、この曲はその7年前のアイドル時代にリリースした2枚目のシングル盤A面曲です。彼女もまたモデルとして注目されてからタレント・女優活動へと移行して行ったグラマー系の美女で、その愛くるしい面立ちと豊満な肉体のギャップが魅力的でした。この曲はアップテンポの歌謡ポップスで、ちょっと聴きにはThe Venturesが作曲したのかと思われる部分もありますが、そうした洋楽の味に日本的なエッセンスを巧みに塗した名曲と言えましょう。肝心の彼女の歌声はセクシーな部分はあまり感じないもののノリが良く、聴いていて気分爽快になります。ただしジャケットで折角の水着姿を披露した彼女の表情がオカメ顔になっているのは、減点です。

18 パイパイサンパ/向井真理子(昭和52年)
   (作詞:岩永嘉弘・葛上周次 作・編曲:いずみたく)
 和製ボサノバで、付属解説書によれば当時のCM用に作られたものだそうです。向井真理子はマリリン・モンローの吹替役としておなじみの人で、この曲はけっしてマリリン・モンローが歌っているのではありません。分かっていてもそうした注釈を付けたくなるほど堪らない魅力があります。

 (敬称略・続く)