「魅惑のムード / 秘宝館」鑑賞記 


 秘宝館壱之館(disc-2)は日本クラウン篇です。

01 スキャンドール/朝丘雪路(昭和43年)
   (作詞:阿久悠 作・編曲:小杉任三)
 ミディアム・テンポのエレキ歌謡ですが、徹頭徹尾、朝丘雪路の悩殺ボイス、ネチネチした歌い方に辟易させられるのが本音です。これは当時、放送禁止になっていて、その存在は知ってはいたものの、フル・バージョンは今回初めて聴きました。バックのエレキ・ギターも不思議な色気があります。

02 魔女のブルース/泉京子(昭和44年)
   (作詞:大倉芳郎 作・編曲:小杉任三)
 昭和30年代に松竹〜新東宝でグラマー女優として一世を風靡した泉京子が、そのキャリアの末期にリリースしたシングル盤A面曲です。エレキ・ベースとパーカッションの妖しい響きにリードされ、彼女の色っぽい語りからスタートしますが、その最後の部分の「あぁっ〜」という悩ましいため息に続いて出るサックス・セクションの響きが曲全体のイメージを決定づけるほど印象的です。曲調はジャズ風味のスローなムード歌謡曲で、彼女の歌い方は息継ぎの部分も含めて非常に艶っぽく、ジャジーです。しかもそれが嫌味なっていないのが流石というしか無い素晴らしさです。彼女は映画界から去った後、歌手として活動していたらしいのですが、残されたレコードはこれ1枚(B面は「夜の足音」)なのが非常に残念ですし、一度でいいから実演に接したかった思いが募っております。

03 恋の芽生え/倍賞美津子(昭和44年)
   (作詞:上野冷二 作曲:森一 編曲:森岡賢一郎)
 ポップス演歌の傑作です。「泣き」を含んだメロディ、ツボを外さないアレンジが最高です。ただし歌詞の内容が初恋なのに倍賞美津子のボーカルが艶っぽ過ぎるのが???です。まあ、プロの女性が初めて真実の愛に目覚めたと解釈すれば良いのかもしれませんが……。ちなみにジャケットも巨乳と太腿を強調したミニドレス姿の彼女が横たわって媚をうっているという魅力的なものです。

04 デートの日記/由美かおる(昭和44年)
   (作詞:加藤日出男 作曲:叶玄大・編曲:小杉任三)
 由美かおるの最大の特徴と言えば、誰にも真似の出来ないあの白々しい芝居だと、私は思います。現実の彼女の存在にもセクシーでありながら生臭いものが感じられず、実際彼女が永遠の若さを保っているのもその辺りに要因があるのかもしれません。で、この曲はコブシも絶妙なポップス演歌ですが、出だしの白々しい雰囲気は最高で、それがサビで一転して粘っこいものになるという、彼女のそんな魅力を充分に堪能できます。ジャケットも肝心な部分が思わせぶりなもので隠されている大変に素敵な逸品です。

05 京おんな/安藤孝子(昭和41年)
   (作詞:藤本義一 作・編曲:山下毅雄)
 安藤孝子といえば和服美人ですが、やはり何と言っても藤本義一の相手役として出演していた「11PM」での柔らかで洒脱な応待が記憶に残っております。この曲はその頃にリリースされたシングル盤A面曲で、彼女のスキャットというか、フンフンフンと小唄のように色っぽく始まり、熱く咽び泣くテナー・サックスが絡むスローな歌謡曲ですが、ブレイクの部分で「堪忍どっせぇ〜、あぁ〜」という彼女の台詞があり、思わずゾクゾクして参ります。当時の私にはおばさんっぽくてピンと来なかった彼女の魅力が、現在この曲を聴いて分かるようになったのも、つまり私が歳をとった証かもしれません。ちなみに彼女は舞妓さん出身で、タレント活動の他に映画出演も数多く、また着物の着付け教室等の文化活動も行っております。

06 謎の女B/曽我町子(昭和42年)
   (作詞・作曲・編曲:平岡精二)
 曽我町子といえば、私の世代ではアニメ「オバケのQ太郎」の「オバQ」の吹替役のイメージが強いのではないでしょうか、ちょうどドラえもん=大山のぶ代のように。で、彼女は当時「オバQ音頭」を唄い、長らく盆踊りの定番になるほど大ヒットさせておりました。また声優以外にも女優としてコミカルな演技で多くの出演作があります。この曲はそうした彼女のキャラクターを活かしたストーリー性のある所謂ノベルティ・ソングで、内容はBという女にナンパされたAという男の物語です。曲調はジャズ・ロックで、この演奏が物凄くカッコイイ! タイトなリズム隊、刻々と変化する歌詞の内容を煽るバックのリフは、これでもかというくらいイカしたフレーズを連発してくれます。このカラオケも永久保存候補といえるでしょう。トーキング・スタイルでせまる彼女のボーカルもノリが良く、唐突な曲の終わり方がかえって潔いほどです。東京スカ・パラとかが好きな人にはお勧めです。

07 幸せですのよわたくし/三田佳子(昭和44年)
   (作詞・作曲・編曲:渡辺岳夫)
 フレンチ風ソフトロックでバック・コーラスや演奏が素晴らしいのに、肝心の三田佳子の歌唱が少しばかり勘違いしています。これは彼女主演のテレビドラマ「アーラわが君」の主題歌でした。そこでの彼女のカマトト演技が忘れられない人であれば、必携です。

08 雨の夜の恋は終わった/青山ミチ(昭和45年)
   (作詞:片山エツ子 作曲:三原一乃 編曲:高見弘)
 R&B歌謡曲の開拓者と私が密かに思っている青山ミチは日米混血のハーフで、昭和37(1962)年に若干13歳でデビューし、その歌唱力は「奇跡の13歳」と言われるほどでした。しかし残念ながらその後、失踪事件を繰返す等の問題行動でスキャンダラスな話題ばかりが先行し、また彼女自身の素晴らしい肉体美の方ばかりが注目されるという現実の前に、歌手としての活動が鈍りがちになって行きます。その彼女が息を吹き返したのが当時日本テレビ系列で放送されていた「全日本歌謡選手権」への出場でした。この番組はプロ・アマ問わず実力本意の審査がウリで、10週勝ち抜くとプロデビュー、あるいは再契約等で第一線で活躍出来るチャンスが与えられるという企画で、五木ひろしや八代亜紀、天童よしみもこの番組からスターへの道を歩み出したのですが、青山ミチも当然10週抜きで歌手として再注目されました。
 この曲はその当時にリリースされた8ビートのR&B歌謡曲で、イントロから思わせぶりな昭和歌謡曲ならではのグルーヴに満ちており、続けてドラム・ブレイクと対峙しながら「あぁ〜、あぁ〜、恋の上手なあっなぁ〜たぁ〜」と唄いだされるそのワンフレーズだけで、青山ミチの凄さにKOされてしまいます。とにかくこのノリは半端ではなく、和田アキ子に勝るとも劣らないものがあります。しかも、この当時のレコーディングはバック・トラックが先にある、所謂カラオケ状態だったにもかかわらず、彼女の歌唱のあまりの凄さに演奏の方が引っ張られている雰囲気さえ感じられます。コブシの付け方も演歌の範疇を超えて黒人ゴスペルに近づいている部分もあり、何度聴いても飽きません。現在活躍中の歌手で彼女の歌い方に一番近いのが天童よしみと言えば、その実力がご理解いただけるかと思います。
 しかし残念ながら、彼女はこの後も窃盗、覚醒剤、失踪等々の事件を繰り返し、結局フェードアウトして行きました。私は当時、彼女の実演に接していますが、ダイナミックなナイスバディ、そして迫力と繊細さを兼ね備えた歌唱力に圧倒され感動した記憶は、今も生々しく残っております。ということで、彼女の残した録音は全て絶大な価値があると信じる私は、コンプリートな形の復刻を望んで止みません。皆様にも、機会があればぜひ一度は聴いていただきたい素晴らしい歌手です。

09 どういうわけか/児島美ゆき(昭和45年)
   (作詞:大矢弘子 作曲:中川博之 編曲:土持城夫)
 児島美ゆきが実写版「ハレンチ学園」の十兵衛役で一躍アイドルになった頃にリリースされたデビュー曲で、これもまた昭和歌謡ポップスの大傑作です。曲調は「経験/辺見マリ(disc-1に収録)」を大いに意識したものですが、こちらは健全なお色気というか、どんなに色っぽく歌ってもかわいい雰囲気が出てしまうところが最高です。メロディもアレンジも大変良く出来ており、特にサビの部分でのエコーの使い方、そしてそこからダブル・トラックで一人ハーモニーに展開していくところなど堪りません。ちなみに辺見マリも児島美ゆきも各々の曲を歌っていたのが共に19歳の時で、そのお色気の雰囲気の違いを味わうのも楽しいかと思います。

10 経験/城野ゆき(昭和45年)
   (作詞:古木花江 作曲:中川博之 編曲:小杉任三)
 城野ゆきは昭和40年代に東映〜松竹で数多くの作品に出演しておりますが、私の世代では何と言っても「キャプテン・ウルトラ(昭和42年・TBS)」におけるアカネ隊員です。また彼女は同時期のテレビ昼メロの常連でもあり、彼女の語りでスタートするこの曲は、まさに昼メロの世界です。そして中間部で再び聴かれる彼女の台詞が、そのまんまの雰囲気をますます濃厚なものにしていきます。もちろんこの曲は辺見マリのヒット曲とは同名異曲で、ストリングス・アレンジも流麗なミディアム・テンポの典型的な昭和歌謡曲、彼女の歌唱力の見事さにも関心させられます。

11 女番長ブルース/八田富子(昭和46年)
   (作詞:鈴木則文 作・編曲:鏑木創)
 コブシの効いたテナーサックスの響きでスタートするこの曲は場末感たっぷりの演歌で、池玲子や杉本美樹が出演していた「女番長ブルース(鈴木則文監督・東映)」の主題歌でした。「女番長」は当然「スケバン」と読ませますが、歌詞の中には「ばんちょ〜う、ぶるうぅすぅ〜」と歌われております。八田富子は付属解説書によれば作詞家の八坂ふじおの実娘だそうで、なかなか安定感のある歌唱聴かせてくれます。アレンジもブレイクの部分でハーモニカを使用して哀感を強調するあたりがニクイところです。

12 冷えた世代/須藤リカ(昭和47年)
   (作詞:伊勢正三 作曲:中川博之 編曲:大柿隆)
 私にとって須藤リカは日本テレビ系列で昭和50(1975)年に放送されていた「ウィークエンダー」のレポーター役として、その過激な発言があまりにも印象的ですが、それ以前に実は子役〜歌手として活動していたそうです。この曲はフォーク調の歌謡曲で、取り戻すことの出来ない学園生活・青春を綴った歌詞が切なく、メロディやアレンジも素晴らしい上に、彼女の憂いを帯びた歌唱がしみじみとした哀感を醸し出す、これもまた隠れた昭和名曲のひとつだと思います。そして個人的にはこの曲を一捻りするとユーミンが作った「まちぶせ/三木聖子or石川ひとみ」になると思っていますので、その雰囲気をご理解下さい。ちなみにこの曲は池玲子や杉本美樹が出演した東映のスケバン映画「恐怖女子高校・女暴力教室(昭和47年・鈴木則文監督)」の主題歌でしたが、その辺りを踏まえて聴くほどに、あぁ、泣けて参ります。また同じテーマを扱っていながら、前出の「女番長ブルース」と比べてその曲調に大きな違いがあり、当時の流行がわずか1年の間に演歌からフォークに移っていたことがご理解いただけるかと思います。

13 ゆるしてあげない/佐野ひろ子(昭和44年)
   (作詞:星野哲郎 作・編曲:小杉任三)
 結論から言えば60年代フレンチ・ポップスの大名曲「アイドルを探せ/シルビィ・バルタン」のパクリなんですが、これが元ネタを超えた素晴らしい昭和歌謡曲になっており、特にサビの部分の開放感ある展開が最高です。佐野ひろ子については個人的に全く知らなかったのですが、ボーカルはソフトで艶があり、かなりの実力派と思われます。また、ジャケ写で見る彼女はあどけない面立ちとグラマラスな肢体が非常に魅力的で、こういう人が表舞台に出て来られなかったところに、当時の芸能界の厚みを感じたりもしますが、それは、まあ、今も同じですね。ちなみにこの曲のコーラスはハニーナイツですので、ますます要注意です。

14 見えた見えたよ/プッシーズ(昭和46年)
   (作詞:星野哲郎 作・編曲:山路進一)
 あまりにも露骨なグループ名にちょっと引いてしまいますが、曲調はほのぼの唱歌とでもいいますか、例えば「麦畑」とか「みよちゃん」の世界という、当時も今も時代錯誤感がいっぱいの作りです。しかし、オープン・ハーモニーを駆使する彼女たちの実力はかなりのもので、付属解説書によれば実際に東小金井市周辺のキャバレー等で活動していたそうです。ジャケ写もかなりきわどい衣装で見せてくれています。

15 愛の接続詞/牧れい子(昭和50年)
   (作詞:しょうめぐみ 作曲:徳永浩太郎 編曲:安形和巳)
 牧れい子はクールな美貌が魅力的な日活ロマンポルノの女優さんで「女買占め売り惜しみ(昭和48年・白井伸明監督)」という主演作品もありますが、いつしかフェードアウトし歌手に転向して行ったようです。この曲は初めて聴きましたが、デビュー・シングルのB面に収録された喘ぎ声も生々しいムード歌謡曲で、彼女の歌の表現力に圧倒されます。ただバックのアレンジやミックスがイマイチなのが残念でした。楽曲的には悪くないのにB面扱いになったのはそこら辺りに原因があるのかもしれません。
 あと、日活ロマンポルノや独立系ピンク映画で活躍した牧れいかという女優さんがいますが、一時私は同一人物かと思っていたこともありました。付属解説書によれば、やはり別人だということなので、念のため。

16 涙のドレス/キャシー中島(昭和48年)
   (作詞:さいとう大三 作・編曲:馬飼野俊一)
 キャシー中島は現在でもタレント活動の他にパッチワークや料理本執筆等々、幅広く活躍しておりますが、元々はハーフのモデルとして注目された後に本格的に芸能界に入ったセクシーな美女です。男性週刊誌等のグラビアにも頻繁に登場し、特に当時としてはかなり大胆な水着姿も披露してくれました。その中で私が今も記憶に残っているのは、確か週刊プレイボーイ誌の折込グラビアだったと思いますが、ビキニの水着姿の彼女の太腿の付根あたりに確認できた濃い目の体毛の存在でした。もちろんこれは凝視しなければ分からないものでしたが、当時はヘア・ヌードなど夢のまた夢でしたので、非常に興奮させられました。
 話を本筋に戻しますと、この曲は彼女のデビュー曲で、当時流行していたブラス・ロックやニュー・ソウルを巧みに歌謡曲に取り入れたアップ・テンポの素晴らしい和製ポップスです。歪むエレギ・ギター、歯切れの良いブラス、低い重心でドライブするリズム隊、特に左チャンネルに定位するワウワウを使ったチャカポコ・リズム・ギターがカッコイイ! メロディも印象的で、特にサビは昭和歌謡曲ならではの「泣き」を含んだ展開で最高です。肝心の彼女の歌唱力は拙い部分も目立ちますが、独特の鼻にかかったボーカルが堪らないものを感じさせてくれます。私はテレビの歌番組でこの曲を歌っている彼女の水着姿が今も忘れられません。当時は春から夏にかけて、女性歌手を水着姿にして出演させる歌番組が多数あったのです。昭和歌謡曲が復活している昨今ですが、その辺りの企画もぜひ取り入れていただきたいものです。 

17 天使の朝/高村ルナ(昭和50年)
   (作詞:横山由 作・編曲:佐藤博)
 当時=1975年頃、流行の兆しが見えていたクロスオーバー=フュージョンを取り入れたカリプソ〜レゲエ調のポップス、と言うよりも所謂ニュー・ミュージックです。高村ルナはご存知、元ゴールデンハーフのルナで、この曲は彼女がグループ解散後に主演した日活ロマンポルノの大ヒット作「修道女ルナの告白(小沼勝監督)」の主題歌でした。バックの演奏はLittle Featが高中正義したような非常にグルーヴィなもので、そこに乗った高村ルナの溶け出しそうな歌唱が歌詞の意味を充分に理解していて素晴らしい出来です。そして後半にはSonny Rollins風のサックスや分厚いコーラスも加わり盛り上がります。まさに最後まで間然することの無い素晴らしさで、皆様にはぜひとも聴いていただきたいところです。もちろんジャケットも素敵ですね。

18 夜はエマニエル/吉井亜樹子(昭和51年)
   (作詞:松井由利夫 作曲:中村千里 編曲:北野ひろし)
 吉井亜樹子は日活ロマンポルノの初期に脇役として活躍していた人で、同時に営業で歌手活動も行っていたようです。この曲はタイトルからもご推察のように、当時大ヒットしていたフランス映画「エマニエル夫人」に肖ったものです。曲調はイントロがフレンチ風味、一転してタンゴ味の演歌になります。彼女の歌唱は安定していて粘っこく、色っぽく、コブシの廻し方も絶妙で、この辺りは女優活動で培った演技力が発揮されているものと思います。

 (敬称略・続く)