不良少女魔子

 日活最後の作品として映画史に残る云々は別にして、鮮烈な名作です。

 主演の夏純子は、これ以前に同社の「女子学園」シリーズでも主演していましたが、正直、独特のエグミが些か無理な設定にイマイチ、しっくりこないところがありました。

 ところが、これはノー文句です――

不良少女魔子(昭和46年8月・日活)
監督:蔵原惟二
企画:今戸栄一、沢田喜代一、佐々木志郎
脚本:藤井鷹史(=長谷部安春)、黒木三郎
撮影:山崎善弘
音楽:鏑木創
出演:夏純子(魔子)、藤竜也(田辺)、宍戸錠(安岡)
■出演:岡崎二郎(洋次)、小野寺昭(徹)、清宮達夫(秀夫)
■出演:戸部夕子(ユリ)、相川圭子(ナナ)、深江章喜(内海)
■出演:美波節子(ハルミ)、太田美鈴(サナエ)、清水国雄
■出演:原田千枝子(オカズ)、佐々木すみ江、牧まさみ
■出演:五月由美(=片桐夕子)、宮野リエ、森みどり 他

 タイトルからもご推察のとおり、ズベ公映画です。舞台は渋谷辺りでしょうか。そして冒頭から彼女達が賭けボーリングに熱中し、負けて払いが出来ない男にヤキを入れるシーンが続くあたりで、ゾクゾクしてきますねぇ♪

 もちろんスベ公達は1970年代初頭のファッションと雰囲気がバッチリで、特にリーダー格のユリ=戸部夕子が最高のフィーリングを発散せています。

 しかし魔子=夏純子は、その中にあってもマイペースというかクールというか、今風に言えばジコチュウです。前述のリンチにも加わらないし、ヌイグルミを持って街を歩けば、野良の子犬を拾ってみたりして……。そのあたりを描くタイトルロールも最高に雰囲気がありますし、さらに後をついてくる子犬の映像に被って車の急ブレーキと「キャイ〜ン」という鳴声にハッとする夏純子! もう、このあたりから物語は悪い予感に満たされています。

 そして遊び場は、もちろんゴーゴークラブです。ここには「野良猫ロック / マシン・アニマル」にも出ていた沢村和子とピーターパンが出演中♪ メチャ、カッコイイ演奏を聞かせていますが、こういう場所ではマリファナとナンパがお約束♪ 清宮達夫が夏純子にちょっかいを出し、スマートなスポーツカーで連れ出して、さあ、これから♪ という時に現れるのが、スベ公仲間の恐いお姉様達という、変則美人局が、たまりません。もちろんスカンピンの清宮達夫はボコボコにされてしまいます。

 こういう彼女達の悪さは日常茶飯事で、他にも万引きで上手いことやった女子高生達を、さらにカツアゲしたりします。ちなみにここで登場する女子高生の中のひとりが、後の片桐夕子=五月由美♪ デパートの用品売場での彼女は、セーラー服姿で嬉々として万引きしまくりですよ! けっこう良い扱いで撮られています。

 そして彼女達が、こうまで大胆に悪さばっかり出来るのは、もちろんバックにヤクザ組織が付いているからで、その安岡組の中堅組員・田辺=藤竜也が、魔子=夏純子の実兄という設定です。

 しかし、こういう街にはスベ公達がいるのと同様に、チンピラグループもいるわけで、それが岡崎二郎、小野寺昭、清水国雄、そして前述のように夏純子にちょっかいを出し、逆にカモられた清宮達夫も、当然、その仲間です。そして彼等は夏純子を拉致し、アジトに監禁、殴ったりして、それから後は、ふっふっふっ♪

 もちろんスベ公達は直ぐに藤竜也に連絡するのですが、意外にも無事に戻ってくる夏純子!

 さて、これから後は、スベ公グループとチンピラ達の対立に安岡組が介入するというのが、お約束とはいえ、もちろん藤竜也の兄弟愛があるのは言わずもがな、ここは最高にクールな雰囲気でチンピラ達を痛めつける名演になっています。

 しかしチンピラ達も、こうなると引き下がれません。足を刺された岡崎二郎の復讐のために、安岡組で飼っていたコールガールを集団で足抜けさせますが、ここは当時の売春組織の雰囲気や裸&きわどい下着姿の女達が存分に拝めます。特にその中のひとり、ナナ=相川圭子は当時の映画やテレビで重宝された脱ぎ要員ながら、そのキュートな魅力は人気絶大で、当然、後にはロマンポルノでも大活躍する素晴らしい女優さん♪ 個人的も大好きです。もちろんこの作品でも柔らかそうな乳や曲線美が素敵な肉体を見せまくりです。

 しかしメンツを潰された安岡組は必死、特に藤竜也は、事の発端に妹の夏純子が関係しているだけに組でも顔が悪く、それゆえに兄弟愛と自分の立場の板ばさみです。

 また、この流れの中で、夏純子と清宮達夫が恋仲になるのも絶妙な物語展開です。カッコ良いスポーツカーでドライブしてマリファナでキメ、カーセックスですから、たまりません♪ 全く羨ましい青春真っ只中ですが、ここでは夏純子のヌードと濡場がサービスされる御裾分けがあります♪ しかもマリファナでラリルレロ状態をイメージした映像がハイキー調に白くぼやけていくことで、夏純子の裸体が成人指定から脱するという、驚異の裏ワザが本当に見事! 鏑木創のサントラも昭和胸キュン哀愁モードで、実に良いです♪

 そしてここで夏純子がマリファナのルートを教えた事から、チンピラ達はそれを横取りし、安岡組は完全にブチ切れ状態! 当然、その運び屋をしているスベ公達に疑いがかかり、組事務所の地下室でリンチ拷問は、嬉しいお約束♪

 ここは彼女達が下着姿にされ、ヤクザのエジキになる演出ですが、「ひとりずつ」という台詞が大義名分になり、最後までいかないうちに夏純子が泣きながら全てを告白するのが残念です。しかしツッパリのスベ公達の泣き叫びも、意想外の良さがありますねぇ〜♪

 物語はこの後、安岡組に捕まって監禁された小野寺昭が泣きを入れ、あっさりと寝返ったことから、岡崎二郎や清宮達夫のチンピラグループとは仲間割れ……。またヤクザに利用される事に嫌気がさしたスベ公のハルミ=美波節子とオカズ=原田千枝子、そして居場所が無くなった夏純子も彼等と一緒になり、あくまでも安岡組に反抗していくことになるのですが……。

 ここはもちろんフリーセックス・モードが、お約束♪ 暑苦しい夏純子のキスシーンも用意されていますし、水着姿も良い感じ♪ 新しいアジトはまるで大学生の合宿のようです。しかも不良外人のマンションに押し入ってマリファナを強奪する場面では、ベットに裸の美女までもっ!

 しかしこんな安息は続くわけも無く、小野寺昭の裏切りで安岡組が急襲! 相川圭子は裸に剥かれて犯され、全裸のまま、崖から転落して死んでしまいますが、それまでの嫌がりは流石の演技です。

 そして夏純子は兄の藤竜也に連れ戻され、小野寺昭は仲間から裏切り者として軽蔑されるのが、当然の流れです。さらに成行きから壮絶なカーチェイスとなり、今度は清宮達夫と清水国雄が壮絶な事故死! ここでのキッチュでスピード感のあるカメラワークも良いですねぇ。

 こうして自分の所為で全てを失っていく魔子=夏純子は、マリファナに溺れ、自堕落な生活に……。しかし、その胸中には安岡組、さらには小野寺昭への敵愾心が燻り続け、悲劇に向かって一直線です。ここは、あまりにもせつない兄弟愛の結末とか卑小な小野寺昭の存在が印象的ですが、汚れきった姿で街を彷徨う夏純子の哀切の演技が、尚一層、鮮烈!

 続く白昼夢のような結末は、バックに流れるせつなさの極みのような音楽、日本語&外国語がゴッタ煮のざわめき、さらに一瞬の静寂から夏純子の独白と涙……。これ以上無いラストシーンになっていますので、本当に観てのお楽しみです。

 ということで、これは蔵原惟二(くらはらこれつぐ)監督のデビュー作にして大傑作です。おそらく周到な準備があったのでしょう。山崎善弘のカメラワークは狙ってスバリと極まり、脚本のやるせなさがヒリヒリした感触に変化していく微妙な味わいを、見事に表現していると思います。

 鏑木創の音楽は、もちろん素晴らしく、ゴーゴークラブで踊りまくる夏純子&スベ公達の躍動感とか汗ばんだ雰囲気をダイレクトに煽るグルーヴィなものから、歌謡曲ギリギリの哀愁モードまで、全てが最高です♪

 ちなみに沢村和子&ピーターパンがゴーゴークラブで演奏する「イン・マイ・ワールド」は当時のRCAビクターから発売されていますが、この作品で使用された純粋フィルム音源は「Mera... Mera Mera / Group Sound Origina Cinema Trax(ポリスター PSCR-5938/9)」に、他の演奏音源も含めて収録されています。

 また劇中挿入歌「バカヤローのあいつ(作詞:西沢爽 / 作曲:大本恭敬)」を歌うのがサナエ役の太田美鈴で、当時は東芝専属の歌手でしたが、私の世代にはスケバン女優としてのイメージ大きく、実際、この作品をはじめ、翌年からは東映の「不良番長シリーズ」や杉本美樹&池玲子の主演作品で活躍していきますので、要注意です。なんと「本物のスケバン」女優として売り出されていたんですよっ! しかし活動期間は短く、昭和49年頃に引退・結婚されたようです。

 それと戸部夕子が、繰り返しますが、素敵です。この人については勉強不足で良く知らないのですが、1970年代にはテレビでも頻繁に出演・活躍していましたですね。この作品では背中が大きく開いたセクシーな衣装がスリムな肢体に良く似合っていますし、本音混じりの憎たらしさが全開という好演です。

 男優陣では、翌年夏から放送された「太陽にほえろ(日本テレビ)」の「殿下」という、ソフトな熱血刑事を演じてブレイクする小野寺昭が、卑小な成り上がりを目論んで友人を裏切るという、全く逆のイメージで好演しています。しかも何もかもが上手く行かないという焦燥感に感情移入させられるあたりは、流石です。

 他にも、けっこうリアルなヤクザフィーリングを漂わせる深江章喜、せつなさいっぱいの藤竜也は言わずもがな、カッコ良過ぎる親分の宍戸錠! さらに末期的青春の苛立ちがそのまんまの岡崎二郎! これぞ日活という味わいがたっぷりです。

 肝心の主役、夏純子は破滅型ヒロインの魔子を薬籠中の熱演! というか冷めた感覚と無軌道な生き様を素直に表現していて、代表作だと思います。泣き顔も情感があって、良いんです。

 そしてもちろん、彼女を含めたズベ公達の日常もしっかりと演出されていて、例えばボーリング場の洗面所で化粧する場面とかゴーゴークラブで踊りまくるところ等々、また彼女達のファッションがホットパンツ中心というのも、嬉しいところです。

 さて、皆様良くご存知のとおり、日活はこの作品を最後に製作を一時停止、秋からはロマンポルノ路線に転進するのですが、それにしても、こんなに良い映画がその点だけで語られるのは勿体無い限りだと思います。ただし、正直に告白にすると、リアルタイムで観た時もジーンとした作品でありながら、この後に日活がエロ映画専門の会社になると知った時、青春期特有のあてどない喪失感にこの物語がオーバーラップしたという、今でもホロ苦い思い出が私の心に残っているのでした。


参考文献:Queen Of Japanese Movie (ウルトラ・ヴァイヴ)

(2007.02.01 敬称略)