集団暴走 '71 a
野良猫ロック

 シリーズ第5弾にして最終作は、お正月映画として堂々の封切ながら、またまた時代の雰囲気が横溢した仕上がりでした。否、と言うよりも、半ばヤケクソ気味の痛快作でしょうか。しかし、これは――

野良猫ロック / 集団暴走 '71 (昭和46年1月)
監督:藤田敏八
製作:笹井英男、岩沢道夫、真下武雄
企画:佐々木志郎
脚本:永原秀一&浅井達也
撮影:萩原憲司
音楽:玉木宏樹
助監督:田中登
出演:梶芽衣子(フリコ)、藤竜也(マッポ)、原田芳雄(ピラ)
■出演:范文雀(あや子)、司美智子(レモン)、郷^治
■出演:地井武男(荒木隆明=リュウメイ)、稲葉義男(荒木)
■出演:小磯マリ(ユメ)、高野沙理(ハナコ)、久万里由香
■出演:青木伸子、夏夕介、常田富士男、前野霜一郎
■出演:安岡力也、戸浦六宏、鈴木利哉(マー坊)
■出演:藤木孝、堺正章、野村正樹、モップス 他

 まずはキャストをご覧下さい。シリーズの最後を飾るに相応しい、当に総決算的なメンツが集合しています。メインで出ていないのは和田アキ子ぐらいというあたりが、なかなか味わい深く、しかも今回は、新顔として日活ニューアクション最末期を彩った原田芳雄が強烈な活躍を見せてくれます。

 物語は、新宿中央公園あたりに住み着いているヒッピー達の、無軌道で反権力な生き様を描いています。ちなみに昭和40年代の彼等と現代のホームレスが、どう違うのか? というのは難しい問題ではありますが、当時のヒッピー達には集団生活というか、男女共に自由に連帯しているところが、個人主義の浮浪者とは違うところでしょうか。とにかくフリーセックスとか自給自足、原始的でありながら夢が大きかったり、理想を求めて止まない、しかも気ままな生活を楽しむ理念があったようです。

 このあたりは、当時の学生運動の挫折とかウッドストック等がキーワード! もちろんセックス・ドラッグ・ロックンロールが含まれています。

 で、そんなヒッピー集団の中の純愛追求カップルが、梶芽衣子と地井武男です。

 しかし陽だまりの中でニャンニャンと楽しむ2人の前に、突如現れるのが郷^治の率いるバイク集団! 実は地井武男の正体が、ある田舎町の権力者の嫡男であったことから、もちろん狙いはその連れ戻しです。そして、このイザコザの中で安岡力也が地井武男に刺殺され、そのナイフが意識を失った梶芽衣子の手にあったことから、結局、彼女は愛する男の罪を被ってムショ送り! もちろん地井武男は叩きのめされて連れ戻されています。

 ところが梶芽衣子は、何故かいっしょに収監されている妹の久万里由香と共に施設を脱走! このあたりは後の「サソリ」シリーズに繋がるような雰囲気が無きにしもあらずですが、実は全くエグミもドロドロした情念も漂わない、むしろトホホ系の演出が如何にも藤田敏八監督です。

 で、梶芽衣子はもちろん、地井武男の地元へ密航し、久万里由香は新宿にいる姉の仲間のところへ助けを求めにいくのですが、その頃、ヒッピー集団達は相変わらずの気ままな暮らしです。エロ雑誌に自分達のヒッピーライフを売りつけて取材費を取ったりしていますが、ここは当然、フリーセックス場面がウリなんですねぇ〜♪ 司美智子、青木伸子、小磯マリ、高野沙理の下着姿や藤竜也、常田富士男、夏夕介が入り乱れての絡みが、軽いタッチでご覧になれます。

 物語はこの後、紆余曲折ありながら舞台は地井武男が連れ去られた田舎町へ移ります。そしてヒッピー達がそこへ行くのに5人乗りの自転車を使っているのが、如何にも当時です。また梶芽衣子が密かに姿を現すのも、お約束ながら、哀切に満ちた表情は本当に良いですねぇ〜♪

 もちろんその町は、地井武男の父親である稲葉義男一派が牛耳る保守的な土地柄とあって、ヒッピー達は疎まれ、梶芽衣子は忽ち捕らえられ、屋敷内の牢屋にぶち込まれてしまうのでした。そして――

 ここからは藤田敏八監督の無手勝流の演出が冴えていると書きたいところですが、当時は如何にも自由な発想が、今日では、いささか纏まりが無いと感じます。

 それでも地井武男の屋敷の前でアジるヒッピー達の前に突如現れ、「御意見無用 / いいじゃないか」の英語バージョンを烈しく演奏するサイケGSの雄=モップスの勇姿は、今や伝説! また檻の中で、「こいび〜とに、ふられ〜たの♪」という日吉ミミがオリジナルの大ヒット曲「男の女のお話」を軽く、しかし鋭く歌う梶芽衣子の姿は、その歌声と共にインパクトがあります。

 そしてクライマックスは廃坑を利用して作られた観光用西部劇のテーマパークに立てこもったヒッピー集団対国家権力の対決! それはダイナマイト対ライフルの激突という烈しいものですし、最後には、そういういっさいのしがらみを超えて、個人対個人、裏切りと勘違い、さらに人生も愛情も、全ては虚しい結末を想起させられるのですが……。

 正直言うと、個人的には、ほとんど面白くない作品です。

 それは梶芽衣子の出番が少ない事と演技・演出にイマイチ、存在感が薄いからです。

 というのも、実はこの頃の彼女は日活が製作していたテレビ用時代劇「大江戸捜査網(東京12ch)」にレギュラー入りしており、スケジュールが取れなかった所為と思われます。ちなみにそこで彼女が演じていたのは、普段は芸者ですが、その裏では黒装束の女忍者(くの一)=女密偵という魅力的なものでした。

 また范文雀もスケジュールがきつかったのでしょう、ほとんど顔見せ程度の出演であり、堺正章、野村正樹という当時トップの男性歌手の登場が、単なるシャレに押し込められたのも、自分の感性に合っていません。

 とは言え、終盤の廃坑の場面では梶芽衣子の超ミニスカ姿からのパンチラがお宝ですし、クライマックスに向けての彼女の思いつめた表情、緊張感のある音楽の使い方、ちょっとシビレるカメラワーク等々、随所に光る場面があるのも、また事実です。

 う〜ん、でもなぁ……。

 実は今では有名な逸話として、撮影中のラッシュプリントを見た会社上層部が、ドテラ姿という原田芳雄の衣装に激怒! 日活お正月作品の主役がドテラでは! という保守的な気持ちも理解出来ないこともありませんが、いや、時代がねぇ……。

 そこで前半のフィルムではかなりボツったところがあるんでしょう。今回復刻されたDVDの特典映像に入っている予告篇では、本篇に無い場面・演出が沢山ご覧になれますし、スチールも同様です。そして前半のバラけた雰囲気とテンポの良さというか、端折りも、それならば納得出来るところです。

 また後半、田舎町の舞台となった伊豆のロケーションでは、監督以下のスタッフや出演者による酒盛りミーティングが連日連夜行われ、その結果として物語展開や台詞がどんどん変化して行ったそうです。まあ、そういう発想とか手法は藤田敏八監督の得意技かもしれませんし、上下関係よりは友達感覚の連帯という部分は、リアルタイムの時代の空気では、憧れと理想の結晶です。そう思えば、いささかトホホのアクションも許す他はありません。

 物語で登場するヒッピー達は疎外され、一見惨めな生活のようでいながら、実は自由きままな楽しさに満ちていることが、この作品のキーポイントでしょう。それが現代からみて、明らかに破れた夢だとしてもです。

 こうして日活ニューアクション最後の年が始まったのでした。


参考文献:Hotwax Vol.1 & 2 (ウルトラ・ヴァイヴ)
参考文献:DVD「野良猫ロック / 暴走集団 '71」付属解説書

(2007.01.03 敬称略)