すけばんあいうえおさし
女番長ブルース

牝蜂の挑戦

 目論見どおりの評判となった「牝蜂の逆襲」に続き、路線2作目が企画・制作されたのはブログラムピクチャーのシステムでは当たり前の事でしたが、実は内外に大きな問題へ直面していました。

 まず外側には前年11月から公開され、社会現象となるほどの大ヒット「日活ロマンポルノ」があり、東映としては池玲子を売り出すために自らが作りだした「ポルノ」という造語を使われたわけですから、心中穏やかではなかったでしょう。

 それに対抗する意味からも自社作品は、よりエロスへの依存度を強める他はなく、その表現は激しいものが求められました。

 ところが、こういう「東映ポルノ路線」の主力スタアとして人気絶頂にあった池玲子が、これに反発! 歌手への転身を表明したのですから、後はゴタゴタするばかり……。その渦中で作られたのが――

女番長ブルース・牝蜂の挑戦(昭和47年2月・東映)
監督:鈴木則文
企画:天尾完次
原案:小山裕久
脚本:皆川隆之&鈴木則文
撮影:古谷伸
音楽:鏑木創
助監督:皆川隆之
出演:池玲子(マキ)、風間千代子(ユリ)
■出演:杉本美樹(トモコ)、潤まり子(カルコ)
■出演:渡辺やよい(ナオミ)、東映子(およし)
■出演:岡邦子(エツコ)、女屋実和子、山田みどり
■出演:宮内洋(露木栄三)、荒木一郎(イチロー)
■出演:梅宮辰夫(神坂弘)、小池朝雄(黒地)
■出演:藤木孝(影山)、由利徹(エロ坊主)、岡八郎
■出演:山城新伍(不動産屋)、小山明子(タカコ)
■出演:保積隆信、大泉滉(白バイ警官) 他

 京都の街を縄張にして気ままに生きるパール団は、マキ=池玲子をスケバンとするズべ公グループで、そのシノギは修学旅行生にエロ写真を売ったり、あるいはそこでスカウトした女子高生に売春をさせたりという嬉しいものです♪

 それにはチンピラのイチロー=荒木一郎が加担していて、岡八郎は忽ちカモにされますが、パール団は知らん顔です。

 そしてエロ坊主の由利徹が寺の移転で大金を掴んだ事を知るや、池玲子が肉体を駆使して罠をかけ、マンションを巧みに転売する等々、あぶく銭を手にするのですが……。

 ここまでの流れでは、当然ながら池玲子のヌードや下着姿、そして入浴シーン、あるいはズべ公達のサービス場面が美味しいポイントながら、イマイチ、テンションが低いと感じるのはサイケおやじだけでしょうか? 些かお笑い志向が強い雰囲気が……。

 今となっては、既に述べたように、池玲子が裸のお仕事を嫌がってゴネはじめていたという裏事情も意味深です。それが影響したか否か、前作「牝蜂の逆襲」で素晴らしい肉体と演技を披露してくれた渡辺やよい、潤まり子=潤まりの2人にも、パール団の主要メンバーでありながら、サービスの悪さが目立ちます。

 さて、こういう日常のある日、縄張荒らしにやって来るのが、大阪のズべ公グループという黒百合会で、そのスケバンがユリ=風間千代子です。そして忽ちイザコザとなって杉本美樹が捕まり、集団でのリンチとなりますが、ここは抑えつけられた彼女の秘部にシェイクしたコーラの瓶を激しくブチ込むというエグイ描写が最高です♪ 鈴木則文監督の演出も粘っこく、杉本美樹の嫌がりも高得点♪ ミニスカからスラリと伸びた美脚の抵抗、そして下着を剥ぎ取られる状況、さらに自分の秘部から床に流れ出たコーラを強制的に舐めさせられるあたりは、心底ゾクゾクしてきますよっ♪♪〜♪

 また黒百合会のスケバン=風間千代子のクールビューティな雰囲気も素晴らしく、劇中では些か湿っぽい設定と演技演出のバランスも秀逸です。そして仲間のひとりが東映ポルノ路線ではお馴染みの女屋実和子というのも、要注意ですねぇ。

 もちろんこの後は、池玲子と風間千代子のガチンコ対決となるのですが、ここへ仲裁に入るのがレーサー志望の露木栄三=宮内洋です。しかも偶然とはいいながら、なんと宮内洋と風間千代子は幼馴染みの再会という、まさに映画的な物語の王道が、全く東映ならではのドロ臭さで描かれています。

 さらにこれがきっかけとなり、池玲子が宮内洋に恋心を抱くという、絶妙の三角関係が物語のミソになるんですねぇ〜。もちろんそこを黒地組につけ込まれ、黒百合会のスベ公達はコールガールにされてしまうのですが……。

 一方、池玲子が関東から京都に流れてきたのは、幼い自分を棄てて大学生と駆け落ちした母親のタカコ=小山明子を探す目的もありました。それが大阪でバーのマダムになっている事を知り、会いに出かけるのですが、ここはご存じ「瞼の母」が「お約束」ですから、後は言わずもがな……。

 自暴自棄になった池玲子が自ら宮内洋に肉体を与えてしまうのは当然の流れですが、ここでの映像と演出が日活ロマンポルノ調というのも、潔いというか、妙に憎めません。しかも驚いたことに、池玲子が初体験だったというような展開が!?!

 そして後半は、盗んだ車に黒地組の大切な資金源となる拳銃が大量に積んであったことから、捕まったズベ公達がリンチ♪♪〜♪ それを助ける見返りに、宮内洋が得意の運転で車をブッ飛ばし、パトカーと追撃戦を演じるのも王道の展開ですが、最後には自らが黒地組に殴りこんで殺されるのも、これまたヤクザ映画の定番パターンでしょう。

 しかしここは、なんといっても峻烈な責めを受ける杉本美樹の被虐の演技が圧巻! 大股開きに縛られての蝋燭、さらにグリグリの縄! もはや本格的なSM映画といって過言ではありませんし、彼女の泣き叫びにもグッと惹きつけられます。

 もちろんそれは池玲子にも容赦はありません巨乳も撓む厳しい縄ビシバシの叩き、さらにカメラワークもエグイ角度からの映像には、リアルタイムで観ていた青少年は言うにおよばず、現代でも下半身を直撃されるでしょう。苛烈な責めを嬉々として与える小池朝雄や藤木孝の自然体の演技も、実に羨ましいところです。

 物語はこの後、なんとか窮地を脱した池玲子がズべ公グループを抜け、ひとりで復讐に向かいますが、ここからは実に緊張感のある演技演出で、溜飲が下がります。

 それは縄張を視察するために街を行く黒地組を尾行し、組長の小池朝雄を狙うというサスペンス! ここは実際の街頭からデパート内の雑踏、さらに繁華街の賑わいを存分に活かしたロケ撮影の醍醐味がスリルに直結した、最高に秀逸な演出だと思います。

 そしてついに回転ドアの中で、小池朝雄をブッスリと刺し殺す池玲子!
 
 血まみれの回転ドアのガラス、驚愕して苦悶の小池朝雄の名演技も強い印象を残します。

 実は個人的には、この作品は些か纏まりが無いというか、とっちらかった印象だと、リアルタイムで初めて観ながら不遜な感想を抱いていたのですが、終盤になってのSM色が極めて濃いリンチの場面や、池玲子のクールで熱いクライマックスでの演技には深い感銘を受けています。

 しかし現実には撮影中から彼女はゴネまくっていたそうです。それゆえでしょうか、劇中では不良番長・神坂弘=梅宮辰夫が助っ人として登場したり、あまり全体の流れとはそぐわない笑いの場面が多すぎると感じるは、私だけでしょうか。

 また、ペテンと要領だけで世渡りをしているイチロー役で出演の荒木一郎は、現実には池玲子や杉本美樹が所属する事務所の社長というのも、微妙な部分ではないかと思います。

 さらに杉本美樹が一手に引き受けた感もある被虐の場面での頑張りは、特筆すべきでしょう。実際、この作品の後には歌手へと転向を宣言した池玲子に代わり、杉本美樹が東映ポルノ路線の主役となっていくのですが、それはここでの素晴らしい根性を鈴木則文監督が評価したのだと思います。

 そして本来は池玲子の主演作と決まっていた「徳川セックス禁止令・色情大名」に彼女を主役抜擢し、決して優れているとは言えない演技力を逆手に活かして特別の傑作に仕立て上げたのも、また池玲子が復帰して後の「女番長ゲリラ(昭和47年8月・鈴木則文監督)」や「前科女・殺し節(昭和48年10月・三堀篤監督)」が成功したのも、全てはこの作品に所以するところかもしれません。そして「前科女・殺し節」には、この作品で好演した風間千代子も出演しています♪

 ということで、些か池玲子には厳しい事を書いてしまいましたが、作品自体は完全に彼女をメインにした作りですし、主演前作「現代ポルノ伝・先天性淫婦」で発揮された内側からの演技力と持前のグラマーな肉体は、やはり大いに魅力があります。

 その意味で、結局は失敗に終わった彼女の歌手転向という回り道が、どのように評価されるのかは賛否両論でしょう。しかしスケバン=池玲子というイメージは、本人にとってはマイナスだとしても、ファンにとっては不滅の魅力となっているのです。

 鈴木則文監督の演出も、そのあたりを踏まえた手堅いものですし、主題歌には再び八田富子が歌う「女番長ブルース」が使われているのも王道ですが、今回の音源もシングル盤とは別バージョン! そして現在では関連音源を纏めた復刻CD「歌謡曲最前線・女番長ゲリラ(ソリッドCDSOL-1127)」に収録されているのは嬉しいところです。

 ちなみに劇中の演出には既に述べたように「ロマンポルノ」調の男女の絡み、あるいはクライマックスでの池玲子の追跡と刺殺に顕著な「ニューアクション」調という、「日活」色が散見されます。

 また小池朝雄の最期の演出に至っては、東映では御法度とされる「鈴木清順」調が堂々と応用されるという、まさに鈴木則文監督ならではの大らかさが痛快!

 ドロ臭さもほどほどな、そのあたりも含めて、お楽しみ下さいませ。

(2009.02.14 敬称略)