暴行切り裂きジャック

 大信田礼子主演の人気作「ずべ公番長」の第4弾にして、シリーズ最終作です。もちろん主役・はまぐれリカの魅力は絶大ですし、昭和歌謡映画の保守本流という作りが泥くさい東映テイストにジャストミートした傑作になっています――

すべ公番長・ざんげの値打ちもない(昭和46年12月・東映)
監督:山口和彦
企画:吉峰甲子夫
脚本:宮下教雄&山口和彦
撮影:仲沢半次郎
音楽:津島利章
助監督:深町秀熙
主題歌:ざんげの値打ちもない / 北原ミレイ(東芝)
■主題歌:棄てるものがあるうちはいい / 北原ミレイ(東芝)
出演:大信田礼子(景山リカ)、賀川雪絵(マリ)
■出演:橘ますみ(八尾長子)、集三枝子(センミツ)
■出演:片山由美子(みどり)、市地洋子(おゆき)
■出演:渡瀬恒彦(荒井竜二)、伴淳三郎(村木)、金子信夫(大矢)
■出演:左とん平(ツナオ)、永山一夫(青田)、滝俊介(浜田)
■出演:北原ミレイ、円山理映子(情婦)、中谷一郎(荒井)
■出演:太古八郎=たこ八郎(マカオ)、南利明(ピンサロ支配人)
■出演:世志凡太(映写技師)、山田禅二(赤城学園園長)
■出演:佐藤晟也、東八郎、笠置シヅ子(ラーメン屋) 他

 物語はこれまでのシリーズ同様、まず影山リカ=大信田礼子が収容されている女子更生施設「赤城学園」の生活を見せてくれますが、今回は映画観賞会です。しかも上映作品が「網走番外地」シリーズのひとつなんですから、ずべ公達は大喜びなんですが、もちろん忽ち打ち切り! その後は下着まで飛び交う軽い暴動が「お約束」です。

 さらに続けては入浴シーンの大サービス♪ ここで気分は最高の大信田礼子や橘ますみに因縁をつけるのが、ちょっとひねくれた片山由美子で、彼女の背中には薔薇の刺青、さらにいきなり湯船の中で立ち上がってくれますから、尻のワレメがクッキリと拝める趣向は高得点♪ もちろん肌の美しさも絶品ですし、こういう女風呂の騒ぎは実に良いですねぇ。

 さて、そんなある日の運動時間中、ボール拾いにグランドのフェンス近くまで行った大信田礼子が金網越し出会うのは、みどり=片山由美子の父=伴淳三郎です。どうやら面会に来たのに、彼女には会えなかった様子……。そこで大信田礼子は片山由美子が大切にしていたというタヌキのマスコットを託されるのですが、そこを看守に咎められ、罰としてグランド10周の駆け足を命令されてしまいます。しかも突然の激しいにわか雨!

 ここはびょしぬれ、泥だらけになってグランドを走る大信田礼子が最高に素晴らしく、バックには北原ミレイが歌う主題歌「ざんげの値打ちもない(作詞:阿久悠 / 作曲:村井邦彦)」が流れてタイトルロールとなりますが、この名曲の持つすさんだ雰囲気、北原ミレイの哀切の名唱がたまらなく胸に迫ってくる、昭和歌謡映画屈指の名場面でしょう。

 ちなみに北原ミレイは前年秋にこの「ざんげの値打ちもない」をデビューヒットさせた実力派歌手で、アクの強いクールな存在感は今日まで根強い人気を保っておりますが、ここで歌われる同曲は既発のスタジオバージョンとは歌詞が異なる映画バージョン! 獄窓から大信田礼子を気遣う同囚達のせつない表情にもジャストミートしています。そして嬉しいことには現在、その曲も含めて、「ずべ公番長」シリーズ全4作の主要音源が「ずべ公番長 / ざんげの値打ちもない(Solid / CDSOL-1244)」としてCD復刻されておりますので、ぜひとも聴いてくださいませ。必ず泣きますよ。

 こうして時が流れ、シャバに戻った景山リカ=大信田礼子は、新宿のチンピラ達に絡まれながらも相変わらずの強気なずべ公です。そして行く先は、みどり=片山由美子の父親=伴淳三郎が経営している自動車修理工場なんですが、そこには土地の乗っ取りを企む大矢組の魔手が……。

 その元ネタは娘の片山由美子が保証している借金なのですが、それは彼女の恋人・浜田=滝俊介が大矢組の賭場でイカサマに引っかけられて作ったものでした。もちろんきちんとした借用書がありますから、伴淳三郎もグッとこらえて返済を続けるのですが、しかし片山由美子は実家にも帰らない親不孝状態で、クラブのゴーゴーガールとして働いています。

 ここは彼女も含めてミニスカ&きわどい衣装でローファイに踊る美女達が嬉しい大サービスですが、もうひとつ、その店に出演して歌っているのが北原ミレイ! 前曲に続いてヒットしていた「棄てるものがあるうちはいい(作詞:阿久悠 / 作曲:村井邦彦)」をじっくりと聴かせてくれますよ♪

 また大矢組の親分=金子信夫がオカマ言葉と場違いなメイクで登場するのも楽しく、しかも情婦=円山理映子が絶妙の色っぽさで最高♪ 自然体で下着を穿きかえたり、如何にもという仕草で化粧を直したりするあたりが、実に良い雰囲気です。

 肝心の大信田礼子は成り行きから伴淳三郎の工場で働くことになり、昔の仲間だった集三枝子、橘ますみ、そのヒモの左とん平と再会するのは「お約束」です。今回の彼女達はキャバレーというか、所謂ピンサロで働いていて、連日のサービス稼業も嬉しい見どころになっていますが、気になるのはマリ=賀川雪絵の姿が見えないことです。どうやら彼女はヌードスタジオで働きながら、ヤクザのヒモ=中谷一郎と困窮生活の様子……。

 ここまでの流れでは、マカオ=たこ八郎が大信田礼子の入浴を覗いたり、また彼女の美脚に見とれて交通事故を起こしたり、とにかく良い味出しまくりですし、片山由美子は乳首モロ見せのシャワーシーン♪ そして圧巻は賀川雪絵のセミヌードと荒んだメイクによる印象の強さです。病気の中谷一郎を親身になって世話する姿も良いですねぇ。

 ちなみに当時はミニスカとホットパンツの全盛時代でしたから、大信田礼子はもちろんのこと、ほとんどの出演女優さんの衣装は露出度が高く、立ち姿では脚線美が、そして正坐とか座っていれば太腿の存在感が眩しいかぎり♪ こういうところも昭和40年代映画鑑賞のサイケおやじ的なツボなのでした。

 こうしてマリ=賀川雪絵の窮状を知った大信田礼子や橘ますみ、集三枝子というすべ公仲間達は、いろいろと訳ありの彼女をまともなキャバレーのホステスにあっせんし、また中谷一郎の実弟・竜二=渡瀬恒彦も様々に物語へ関わりながら、泣きと笑いのプログラムピクチャー王道の展開を見せてくれます。もちろんそこには如何にも東映ならではの泥くさい雰囲気が横溢し、後半に繋がるのです。

 そして伴淳三郎の土地を狙う大矢組の陰謀、それを知った大信田礼子と片山由美子の身体を張ったずべ公的な決意、さらに厭味な大矢組長=金子信夫の憎たらしさ! ここは命令どおり、組事務所でヤクザ達に見られながら裸になっていく大信田礼子が、たまりません♪ もちろんここは寸前で助けに入るのが片山由美子で、その山猫のような感性が全開という見せ場ですが、結果は2人とも捕えられての縄姿♪

 こうしてついに堪忍袋の緒が切れた伴淳三郎の意外な正体が明かされ、グレていた娘・みどり=片山由美子との親子の絆を深める展開が痛快で心温まる演出になっています。また女言葉でチンケなヤクザという金子信夫も味わい深いところだと思います。

 しかし収まりのつかない金子信夫は、カタギになりたい中谷一郎を唆して伴淳三郎の殺害を企図、さらに中谷一郎までも始末するという悪辣な手口にはすべ公達も大激怒! こうしてクライマックスは彼女達の殴りこみとなるのが「お約束」です。

 それは深紅のマキシコートでビシッとキメた大信田礼子、賀川雪絵、橘ますみ、集三枝子、そして片山由美子の5人衆が夜の新宿ネオン街を行くという様式美の極みが最高です。しかもそれを脱ぎ捨てると、その下はホットパンツにさらし姿ですからねぇ〜♪♪♪ 彼女達がドスを振り回して暴れるのも爽快というよりは、ヨダレが止まらない場面の連続です。特にガラス張りの床下から撮影されたアクションシーンでは大信田礼子の素敵な太腿から禁断のあの場所までが、ぴっちりしたホットパンツという衣装で拝めるのですよ〜〜♪  これが静止画像の奇麗なDVDで楽しめるとしたら、長生きはするもんだっ! と独り納得のサイケおやじをご容赦くださいませ。

 もちろんこういう場面には、無慈悲な仕打ちを受けた中谷一郎の弟・竜二=渡瀬恒彦が助っ人で登場しますが、やはり何よりもずべ公達の存在感が圧倒的です。そして全てが終わったときに到着する警官隊から潔くお縄を頂戴する彼女達は、ある事情から賀川雪絵を庇うのですが、ここは観てのお楽しみと致します。そしてそれゆえに哀切のラストシーンと主題歌「ざんげの値打ちもない」のスローパートが心に染み入る名場面になっているのですから、正に昭和歌謡映画の素晴らしさが堪能出来るのでした。

 ということで、大信田礼子主演の「ずべ公番長・はまぐれリカ」シリーズは、これが最終作となりました。なにしろ当時の彼女は歌手としてもヒット曲を連発する人気スタアとして大活躍でしたし、シリーズの物語展開としても、登場しているずべ公達が年齢的に鑑別所よりは女子刑務所で服役するのが現実的となっていたのです。その意味からも、この作品のラストシーンは簡潔にして全てを暗示した演出が流石だと思います。

 また出演者としては片山由美子が素晴らしく、ずべ公の純情を演じては最高の名演を披露していますし、サービス場面では出し惜しみしない姿勢が尊いとしか言えません。それにしても今の映画演劇界では、こういう味わいの女優さんが居なくなりましたですね……。

 もちろん大信田礼子も、ずべ公としてのノー天気な威勢の良さ、過剰にして気分はロンリーな演技、素晴らしい脚線美や肉体的な魅力を全開させていますし、何よりもスタアとしての資質がリアルタイムからのファンにはたまりません。

 そしてあまりにもベタベタな物語を王道の歌謡映画に焼き付けた山口和彦監督の職人技も特筆すべきでしょう。我が国ではこういう作風の監督を全く評価しない風潮が根強いわけですが、本来は娯楽という映画の楽しみを鑑みれば、山口和彦を含めて、まだまだ無視出来ない監督は大勢いると思います。

 シリーズ全体としては、ずべ公達のお気楽でせつない生き様が、最後には哀切のやるせなさに収斂し、それでもお気楽な救いもあるという、なんとも軽い作風が今日では軽視されるかもしれませんが、それも昭和の素晴らしさでしょう。最近の現実的にして貧乏ったらしい映画よりは、ずっと楽しいんじゃないでしょうか? 私は好きです。

(2008.07.21 敬称略)