Playboys / Chet Baker & Art Pepper(原盤:Paciffie Jazz PJ-1234=LP)
 Chet Baker(tp) Art Pepper(as) Phil Urso(ts) Carl Perkins(p)
 Curtis Counce(b) Lawrence Marable(ds)
 1956年10月31日に録音

 恒例の美女ジャケット・シリーズ、今回はチェット・ベイカーとアート・ペッパーという、ジャズの世界では抜群の人気者の、しかも全盛期での共演作です。この2人は西海岸派の白人天才プレイヤーで、ルックスも良く女にモテモテ、しかも若い時から麻薬と縁が切れなかったという共通点があります。

 そしてその演奏スタイルも、共に甘美な輝きに満ちたアドリブ・メロディーや、退廃的な感覚美が顕著な音色が魅力で、この2人の共演はまさに夢の対決! その存在を知った瞬間から聴いてみたくなるのが、ジャズ愛好者の宿命だと思います。

 ところで西海岸派ジャズはスマートさがウリのアレンジ重視で、アドリブは二の次と思われがちですが、いやいや、そんなことはけっして無く、即興演奏の瞬間芸で勝負していたプレイヤーが大勢いるのです。その中でも特にアート・ペッパーは、黒人プレイヤーにも負けないエモーションと余人には真似の出来ない独特のドライブ感があり、聴いていてゾクゾク、思わずカッコイイ! と叫びそうになる瞬間を演出してくれます。何より凄いのは、モダンジャズのアルトサックス奏者であるにも関わらず、その創始者=チャーリー・パーカーの得意フレーズをほとんど引用しないでアドリブ・メロディを紡ぎ出すところです。独自のマイナー・メロディーを含んだアドリブは、まさにペッパー節であり、唯一無二のスタイリストなのです。

 一方チェット・ベイカーも、これホントにアドリブ? と思わせられる素晴らしいフレーズを即興で生み出す天才で、しかも音色は溌剌していながらソフトな情感があり、この当時はマイルス・デイビスよりも人気があったようです。ちなみに彼は歌もソフト&メローの元祖的な魅力があり、この方面でも人気に拍車がかかっておりますが、それは別に機会にご紹介しようと思います。

 というこの2人をバックアップするリズム隊の3人は黒人で、そのノリは当時主流になっていたハードバップ感覚が強いものになっています。また、もうひとりフロントを構成するテナー奏者のフィル・アーソは白人で、もちろん、そのスタイルはレスター・ヤング〜スタン・ゲッツ系の流れるようなアドリブ・メロディと涼やかな音色が特徴ですが、ここでは黒人リズム隊が生み出すグルヴィーなノリに煽られて力強い部分も感じさせてくれます。

 実はチェット・ベイカー対アート・ペッパーという夢の共演は、このセッションの前にすでに企画されており、それは同年7月26日に録音されているのですが、その時のリズム隊は白人中心で、しかもアレンジが中途半端だったことからイマイチの出来だったために、オクラ入りしている経緯があるのです。もちろんこれは後に発売され、実際に聴いてみると、なかなか良い演奏なんですが、やはりジャズ全盛期の贅沢な悩みというところなのでした。

 で、このセッションは仕切り直しということで、アレンジとアドリブの対比も鮮やかですし、なによりもスマートでありながら力強さに溢れているという、ハードバップの西海岸的解釈が聴かれます。そのキモになっているは、当時、東海岸で活躍していた黒人テナー・サックス奏者のジミー・ヒースが提供した楽曲で、おそらくアレンジにも参画していると思われます。その内容は――

A-1 For Minors Only(J.Heath)
 マイナー調のイカシたテーマ・メロディがラテン・リズムも含んでスピード感満点に演奏され、まずアート・ペッパーが絶妙のフレーズを繰り出して先発のソロをとります。続いて全員にソロが回されていきますが、特にアート・ペッパーの何気ないようでいて愁いを含んだ最初のワン・フレーズが素晴らしく、全てはこの瞬間のためにあるような演奏です。

A-2 Minor Yours(A.Pepper)
 これもマイナー調のテーマが素敵で、アレンジも西海岸派の真骨頂、そしてアート・ペッパーがその魅力を全開させたソロを聴かせます。続くチェット・ベイカーも好演で美味しいアドリブ・メロディーを連発、さらにフィル・アーソも負けじと歌心を発揮しています。カール・パーキンスのピアノによるイントロも躍動的で、このアルバムの中でも特に優れた演奏だと思います。

A-3 Resonant Emotions(J.Heath)
 ミディアム・テンポで本来は黒っぽいはずのテーマが、このメンバーではやはり白っぽくなってしまったという曲です。ここでもアート・ペッパーがソロのブレイクから手の込んだペッパー節を連発して、ゾクゾクさせてくれます。また短いながらも独特の歌心を聴かせるカール・パーキンスのピアノも印象的です。ちなみにこの人は左手に障害があり、それ故に独自の奏法を編み出しており、それが個性に繋がって隠れ人気があります。

A-4 Tynan Tyme(A.Pepper)
 フロント陣の3管がスリル満点の掛け合いを演じてスタートするアップ・テンポの曲で、こういう味は西海岸派にしか出せない魅力だと思います。また、なかなかハードバップなソロを展開するチェット・ベイカーのバックで、蠢くように被せてくるフィル・アーソの吹くリフが不思議なカッコ良さです。そしてカール・パーキンスのピアノが、またして歯切れ良い好演です。もちろんアート・ペッパーは最高!

B-1 Picture Of Heath(J.Heath)
 ローレンス・マラブルのシャープなドラムスを活かした、如何にもビバップ〜ハードバップ色の強い曲です。溌剌としたチェット・ベイカー、そして、そのソロが終わるのを待ちきれないかのように飛び出すアート・ペッパーが躍動的です。

B-2 For Miles And Miles(J.Heath)
 ミディアム・テンポで演じられるこの曲では、いっそうリズム隊の素晴らしいグルーヴが輝きます。それに煽られるフロント陣ではちょっとハスキーな音色のチェット・ベイカーが良い味ですし、アート・ペッパーも得意のフレーズをたっぷり聴かせてくれます。

B-3 C.T.A.(J.Heath)
 ジーミー・ヒース作曲作品では一番有名な曲だと思います。マスルス・デイビス、レッド・ガーランド&ジョン・コルトレーン、リー・モーガン等々、幾多の名演が残れされておりますが、ここでの演奏もそのひとつです。もちろん曲調はアップ・テンポのハードパップそのもので、黒人リズム隊がビシッと要所を締めており、特にスティックとブラシを持ち替えて大技・小技を渋くキメるドラムスのローレンス・マラブルが好演、それに煽られて白人フロント陣が熱く燃えているのは、言わずもがなです。

 というこのカッコ良いアルバムのジャケットは冒頭に掲載したように、ヌードの美女が人形で乳首を隠しているという嬉しいものです。タイトルの「プレイボーイズ」とはもちろんチェット・ベイカーとアート・ペッパーという、当時モテモテの2人の大スターを指しているのでしょうが、雑誌の「プレイボーイ」とのタイアップ等もあったのかもしれません。何にしろ嬉しい企画でした。

【現行CD】
 ところが現行のCDは、このジャケットでは出ていないようです。タイトルも「Picture Of Heath」とされ、日本盤・輸入盤ともに入手が容易ですが、曲順もA・B面が逆にされたような配列になっております。実はジャケットも含めてそれがオリジナルの仕様らしいのですが、中身が充実しているだけに、ぜひとも美女の紙ジャケット仕様盤を出していただきたいところです。ただ、このアルバムはアナログ盤時代から人気があったので、日本ではこの美女ジャケットで度々再発されてきました。中古でそれを狙う手も有り、かと思います。

(2004.09.24掲載・敬称略)