恋の狩人 ラブ・ハンター
監督:山口清一郎
企画:三浦朗
脚本:こうやまきよみ(=神代辰巳+山口清一郎)
撮影:安藤庄平
音楽:真鍋理一郎
出演:原英美(今日子)、田中真理(久子)、乱孝寿(恵子)、三田村玄(英之)
■出演:大泉隆二(和夫)、南寿美子(母親) 他

 当時の日本を騒がせた、所謂「日活ロマンポルノ摘発事件」の発端となった作品です。その物語内容と顛末については、拙稿「闇の中の妖精・田中真理の巻」をご一読願いたいのですが、今回は特にこの作品を中心に振返ってみます。

 まずこの作品は、ロマンポルノとしては第6回目の配給となりますが、それまでの作品と決定的に違っていたのが、舞台設定をブルジョアの家庭にしてあるので、貧乏臭いしがらみとか、日常生活の苦悩・感傷というものが感じられません。ですから登場人物は、ひたすら自分の欲望に負けていくことが許されているように思います。

 それが当局には面白くなかったのでしょうか?

 この作品は昭和47年1月28日の金曜日、それは上映最終日の朝、フィルムが押収され、上映中止を勧告されました。するとその日は上映館全てで興行が打てなかったことになりますが、そのあたりの実態は不明です。そして当然マスコミで大きく報道され、ここから一連の騒動が始まったのです。

 しかし日活は翌日からの封切予定作品をきちんと配給・上映しています。もちろんその興行成績は大入り♪ 図らずも当局による摘発は大宣伝効果もあったわけで、つまり「摘発されるほど凄いロマンポルノとは、どんなんだろう……♪」という国民のスケベ心は限りなく刺激されたというわけです。当然、私も観たくてたまりませんでしたが、成人映画という壁が憎くて仕方なかったのは言わずもがな、ただただ、上映劇場の前に立ちつくすのみでした。

 というこの作品を撮った山口清一郎監督は、日活入社後に助監督として10年近くの修行時代があってのデビュー作ということで、かなり入念な下準備があったようです。それは脚本にしても長年温めていたものらしく、執筆者名は神代辰巳監督との共同名義で、これは後々のロマンポルノ路線の中でも登場してきます。

 その山口監督は会社側からも嘱望された人材だったということですが、この摘発事件では一貫して国家権力に反撥する姿勢を貫いたために、結局、ホサレた形で日活を解雇されたのは残念至極というか、どこか不条理なものを私は今でも感じています。

 また、その同志と言ってもいい田中真理も、その潔さと美しさが人気を超越して大ブレイク! それがゆえに、あまりにも短くならざるをえなかった全盛期が、今は限りない宝物のような気がするという、これは忘れられない作品です。

(2005.10.10 敬称略)