昭和エロチカ
薔薇の貴婦人

 いきなりの釈明になりますが、この作品については、既に拙稿「闇に蠢く / 第11回」で述べたように、リアルタイムではそれほど印象深いものではありませんでした。現在では無名時代の麻吹淳子が出演し、グリグリに縛られていることから、その隠れた出世作としての評価が高くなっており、私も後追いで名画座の再上映を探しまくったという思い出の1本です。
 そして時が流れ、ついにDVD化されたこの作品は、そういう経緯もあって、なかなかの名品との思いを新たにしたところ……。全く私自身の不明を恥じるばかりでございます――

昭和エロチカ / 薔薇の貴婦人 (昭和55年2月)
監督:藤井克彦
製作:村井良雄
企画:山田耕大
脚本:宮下教雄
撮影:安藤庄平
出演:宮井えりな(北九条絹子)、麻吹淳子(看護婦)
■出演:飛鳥裕子(若槻涼子)、大河内稔(北九条子爵)
■出演:坂本長利(小池)、市村博(秋本)、八代康二(医師)
■出演:高橋明(憲兵・服部大尉)、溝口拳(憲兵・水野)
■出演:兼松隆、小見山玉樹 他

 時代は昭和16年という戦時下、まず何かに急かされるように早足で登場する貴婦人の宮井えりなという場面だけで、物語は最初から悪い予感に満たされています。

 彼女が向かった先は画家・秋本=市村博のアトリエで、そこでは北九条子爵夫人・絹子=宮井えりなの肖像画が製作されているのですが、完成間近となって、時局から子爵と彼女は信州の別荘に隠棲することになり、別れを告げに来たというわけです。

 もちろん2人は恋仲になっているのが、お約束♪ 別れを悲しむがゆえに、ここで初めて肉体関係へと発展するのですが、その土壇場になって訳有りの羞恥心を露わにする宮井えりなは、流石の演技です。というのも、実はアンダーヘアが剃られていたからなのです! ここはその無毛地帯を弄る男の手の動きも羨ましいところ♪

 うむ、これは北九条子爵の仕業かっ!?

 というところで舞台は信州の別荘へと移ります。そして続くタイトルロールでは、幻想的な彼女の剃毛場面や子爵との脂っこい浴室での戯れ、またややロリ系の服装にさせられた宮井えりなが尻叩きのお仕置を受ける折檻場面までもが、大サービスされています。またそれを覗く執事の坂本長利も、目の演技が流石ですねぇ〜。

 一方、どうしても宮井えりなが忘れられない画家の市村博は、完成した肖像画を届けるという大義名分を得て、件の別荘を訪れますが、何故かそこにはミステリアスな出来事が連続して起ります。

 まず2人の屈強な従僕を連れた男装の麗人=飛鳥裕子が颯爽と乗馬で登場しますし、別荘にはマジックミラーが仕掛けられた覗き専用の客室が用意されています。さらに正体不明の怪人までもが跳梁跋扈するのです。

 この飛鳥裕子は、当時の同盟国ドイツの将校服を着用し、射撃も剣も一流という不思議な存在であり、寝室では従僕に服を脱がせたりする完全な女王様! もちろん従僕は赤褌姿で彼女の身体を嘗め回す性の奉仕も仕事です。ここは無機質で粘っこい濡場が、なかなか上手い演出ですし、細身でありながら、質量感豊かな彼女の乳も素敵です♪

 で、その彼女が入浴中に謎の怪人に襲われ気絶させられて剃毛されるというのですから、たまりません♪ もちろんモロな描写はありませんが、かえって上手い演出・カメラワークが絶品ですねぇ〜♪

 そして医師と看護婦が呼ばれるのですが、そこへ続けてやって来るのが、スパイ探索の憲兵2人という緊張感のある展開が見事です。もちろん飛鳥裕子と従僕の2人は忽ち不審人物として憲兵から怪しまれるのですが、実はその頃、飛鳥裕子と麻吹淳子はレズプレイの真っ最中! 看護婦姿の麻吹淳子のストッキングやズロースが、全く当時の時代考証なのも嬉しいところ♪

 そしてここからが、彼女の見せ場の連続になり、まず憲兵大尉=高橋明に襲われて、おしゃぶりの強要から烈しいファックシーンは、撓む巨乳の迫力もあって見応えがあり、また騎乗位での腰の使い方も流石です♪

 さらに宝石泥棒の嫌疑から強烈な拷問折檻を受けるのですから、たまりません♪ 忽ち裸に剥かれて豊満な肉体を晒しながら、嫌がりの演技もリアルで芝居っ気も満点という美しさです。またここは「ズロースも取るんだっ!」等々と無慈悲に指示を出す飛鳥裕子の存在も良いですねぇ〜♪

 そして当然、グリグリの縄姿での折檻が凄まじく、ここは日活ロマンポルノ伝統の上手い演出が連発されますから、観てのお楽しみ♪ う〜ん、この見事な責められっぷり、迫真の嫌がりには、谷ナオミの後を次ぐに充分な魅力があると、あらためて感動してしまいます。

 物語はこの後、またまた正体不明の怪人が麻吹淳子の入浴中に現れて剃毛♪ また憲兵による画家・秋本へのスパイ嫌疑……、等々が続きますが、アッと愕く物語の真相と驚愕の結末へ怒濤の展開です。

 それゆえにネタバレがあって、もう、これ以上書く事は出来ませんが、エロ場面では宮井えりなと子爵の変態性欲の戯れ、覗き趣味、退廃的な生活と人間関係が異様なドラマを生んでいる傑作だと思います。ちなみに北九条子爵を演じた大河内稔は、この当時のロマンポルには欠かせない俳優として、特に変態貴族や上流階級の変質者を演じては最高の存在でした。

 ということで、とにかく終盤は、どこまでも連続する驚愕の真相が強烈です。しかもそれと反比例するかのような静謐な映像美では、名匠・安藤庄平のカメラワークが冴えわたりです。

 もちろん出演者では、物語が進展するにつれて哀切の美女から白痴的美貌へと、強烈に変幻していく宮井えりなが素晴らしく、豊満な肉体を惜しげも無く虐げさせる麻吹淳子の存在感、さらに飛鳥裕子のクールな演技も見逃せません。

 あなたがたは、こんな世界があることを、知っていましたか……? と予告篇で言い放つ坂本長利の言葉が全てという出来栄えです。とにかく私の文章よりは、観て驚愕の1本! 物語として素晴らしい傑作だと思います。


(2007.01.08 敬称略 / 挿絵製作:七四式様)