the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1964 part 33

■The Rolling Stones (Decca LK4605:mono)
発売日:1964年4月16日(英)
A-1 Route 66
A-2 I Just Want To Make Love To You
A-3 Honest I Do
A-4 Mona
A-5 Now I've Got A Witness
A-6 Little By Little
B-1 I'm A King Bee
B-2 Carol
B-3 Tell Me
B-4 Can I Get A Witness
B-5 You Can Make It If You Try
B-6 Walking The Dog
 ストーンズのイギリスにおける 1stアルバムで、モノラル盤しか存在していません。収録された12曲の全てが、1964年1月から2月にかけてロンドンで録音されていますが、実はその時期の彼等は国内巡業の真っ最中でした。しかしそれにしても素晴らしい出来栄えで、おそらくこのセッションには、日々の緊張感とヤル気がダイレクトに反映されたのでしょう。私は今でも愛聴しています。
 ジャケットも秀逸で、サイドからの光をメインにした彼等の集合写真からは不良っぽさと黒っぽさがプンプンしてきます。しかも The Rolling Stones というバンド名すら入っていないという物凄さです! そして結果は大ヒット♪ イギリスのチャートでは堂々の第1位を5月2日から12週間も続けています。
 このアルバムは日本でも昭和40(1965)年1月に同一の仕様で発売されたらしいのですが、私は現物を確認していません。またアメリカでは、この仕様での発売はありませんでした。
 ちなみにCDは、まずイギリスで1984年に、この仕様による復刻がなされていますが、マスタリングが酷く、とてもオリジナル盤の迫力は再現されていませんでした。もちろんすぐに廃盤となっています。また1987年には日本でリマスターされたと思われる復刻がありましたが、これも残念ながらイマイチ状態……。そして現在ではこの仕様でのCDは発売されていません。
 ジャケットと曲順が最高なので、早急なる復刻を願っています。

Route 66 : original mono-mix
作者:Bobby Troup
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
 原曲は、小粋な弾語りと曲作りでジャズ者に隠れ人気があるボビー・トゥループという白人が1946年に発表していたもので、ナット・キング・コールの十八番として1956年に吹き込まれたバージョンが決定版とされています。そして1960年には、アメリカでこの歌をモチーフにしたTVドラマまで作られたという人気曲ですから、大勢のミュージシャンに取上げられていますが、その中にはストーンズが敬愛するチャック・ベリーのバージョンもあり、ストーンズはそれに準じた演奏を聴かせてくれます。
 ただしチャック・ベリーのバージョンはピアノを中心としたブギウギ調だったところを、ストーンズはギターを前面に出したロックンロール全開のスタイルで演奏し、これには流石のチャック・ベリーも顔色無しというところでしょう♪ もちろんキース・リチャーズ十八番のロックンロール・ギターが大活躍しています。
 またビート感満点の手拍子が非常に効果的で、このあたりが他のバンドには感じられないストーンズだけのリズム的興奮だと思います。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD

I Just Want To Make Love To You (恋をしようよ) : original mono-mix
作者:Willie Dixon
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
 原曲はプロデューサー、作曲家、そしてベーシストとしてシカゴ・ブルース界を牛耳った黒人ブルースマン=ウィリー・ディクソンの代表作で、やはりシカゴ・ブルースの巨匠=マディ・ウォーターズ:Muddy Waters が1954年に吹き込んだバージョンを筆頭に、後々まで多くのミュージシャンに取上げられている名曲です。
 そのマディ・ウォーターズのバージョンは、呻くようなシャウトと粘りつくような演奏がストレートな恋心を下世話に表現していましたが、ストーンズはそれを攻撃的なギター・ブギ・スタイルに変換し、痛快なアップテンポのロックンロールに仕立てています。
 なにしろ歌詞の内容が「メシも金もいらないよ、ただ、お前とやりたいだけなんだ!」という、元祖パンクな過激さですから、このアレンジは当にストーンズならでは! ここでも手拍子が効果的に使われてビート感が増幅され、またブライアン・ジョーンズのハーモニカが強烈です。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD
●Tell Me / I Just Want To Make Love To You (London 9682 = US 7"Single)
●Single Collection - The London Years = CD
●Singles 1963 - 1965 = CD

Honest I Do : original mono-mix
作者:Jimmy Reed
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
 これも黒人ブルースのカバーで、オリジナルを自作自演したジミー・リードは硬軟自在の個性派です。実は私は、このアルバムでは特にこの曲が好きで、ここからジミー・リードの存在を知り、その残された音源を聴いて吃驚! ストーンズは、ほとんど完全コピーしようと奮闘していたのですねぇ〜♪
 それはギターの絡みとかノホホンとした雰囲気、ハーモニカの響き、リズム隊のビートの出し方等々、なかなか上手いと思います。この曲が気に入ったとしたら、ぜひともジミー・リードの諸作品を聴いてみて下さい。ストーンズ・サウンドの元ネタが散見されるはずです。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD

Mona (愛しのモナ) : original mono-mix
作者:Ellis McDaniels
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
 ストーンズの音楽性を語るの上で絶対に外せないのが、ボー・ディドリー:Bo Diddley という黒人ブルースマンで、この曲は、そのボー・ディドリーが1957年に発表したオリジナル曲のカバーです。
 ボー・ディドリーというミュージシャンは、本当に唯一無二のスタイルでブルースというよりもR&Bを演奏しており、その要はアフリカ色の強い土人のビートにカリブ海あたりの楽園リズムを混ぜ合わせたような躍動的なものです。このあたりは実際に聴いてもらう他は無いのですが、実は白人ミュージシャンに与えた影響は非常に大きく、アメリカではバディ・ホリーからドアーズ、イギリスではストーンズをはじめ、ヤードバーズやアニマルズ等々、キリがありません。
 特にストーンズの場合は、その発散されるリズム的興奮の元ネタがボー・ディドリーのサウンドによるものというのが、隠しようもありません。例えば、このアルバムの発売前に先行シングルとして出され、大ヒットした「Not Fade Away」はモロですし(1964part-3 参照)、実はそのオリジナルがバディ・ホリーだったというのも必然性があります。また後年の「悪魔を憐れむ歌:Sympathy For The Deivl」における土人のリズムは、ボー・ディドリーのビートを拡大解釈したものと推察出来るのです。
 肝心のここでの演奏は、マラカスとベースとドラムスの複合ビートを土台に、ブライアン・ジョーンズとキース・リチャーズのギターの絡みをバックにしたミック・ジャガーが、粘っこく歌っています。それにしても全体に漂う妖気が圧巻! また途中で何度か聴かれるギターのテケテケ急降下は、オリジナル演奏には無いものの、実はボー・ディドリーの得意技ということで、ストーンズのならではのリスペクトなのでしょう。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●The Rolling Stones, Now ! (London LL3420 = US 12"LP:mono)
●The Rolling Stones, Now ! = CD

Now I've Got A Witness : original mono-mix
作者:Nanker Phelge
製作:Andrew Oldham
録音:1964年2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
共演:Ian Stewart (org)
 ストーンのメンバー全員の共作による楽しいインストのジャムセッション曲、と言いたいところですが、実は後述する「Can I Get A Witness」のカラオケと受け取れないこともない、言わばこのアルバムの穴埋め的な楽曲です。
 しかし演奏そのものは、やはり楽しく、ブライアン・ジョーンズの素晴らしいハーモニカ、キース・リチャーズのロックしているエレキギター、エグミの強いイアン・スチュアートのオルガンが魅力的です。もちろんその土台には、モータウン伝来のビートが渦巻いていますが、それを裏付けて鳴り続けるタンバリンは、ミック・ジャガーの担当でしょうか? 「Can I Get A Witness」と聞き比べると楽しさが倍増します。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD

Litlle By Little : original mono-mix
作者:Nanker Phelge & Phil Spector
製作:Andrew Oldham with Phil Spector
録音:1964年2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
共演:Phil Spector (per), Gene Pitney (p)
 既に述べた先行シングル「Not Fade Away」のB面に収録されていた曲で、もちろん同一テイクが用いられています(1964part-3 参照)。
 気になるフィル・スペクターの参加について補足しておくと、当時のストーンズのマネージャーで、このアルバムのプロデューサーでもあるアンドルー・オールダムは、フィル・スペクターの崇拝者として名高い人物であり、実はフィル・スペクターを特徴づける「音の壁:Wall Of Sound」という言葉の命名者もアンドルー・オールダムであるらしいとされています。さらにストーンズも参加した1964年初頭のイギリスでのパッケージ・ショウにフィル・スペクター配下のロネッツを組み込んだのも、それゆえのことです。
 そしてフィル・スペクター自身も、その巡業と当時のイギリス国内の音楽状況からビートルズやストーンズに感心を抱いたのは間違いないところでしょう。
 またジーン・ピットニーとは駆け出し時代から繋がりがあり、フィル・スペクターがプロデュースした1961年のヒット曲「Every Breath I Take (Musicor 1011)」は2人のコンビネーションの賜物として、ポップス史に不滅の輝きを残しています。
 ですから、その2人がストーンズのセッションに参加したのも自然の流れというか、実はジーン・ピットニーが新録用に曲探しをしていて、いまだストックが少なかったミック・ジャガー&キース・リチャーズのストーンズ作曲コンビから提供された「That Girl Belongs To Yesterday (Musicor 1036)」を歌うことになったのも、ちゃんとした戦略というわけです。ちなみにその曲は1964年初頭に発売され、アメリカのチャートで49位にランクされていますので、ここでの参加は御礼の意味合いがあるのかもしれません。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Not Fade Away / Little By Little (Decca F11845 = UK 7"Single)
●ノット・フェイド・アウェイ / リトル・バイ・リトル (キング HIT346 = JP 7"Single)
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD
●Decca Single Collection (Decca STONES-1/12 = UK 7"Single x 12)
●Single Collection - The London Years = CD
●Singles 1963 - 1965 = CD

I'm A King Bee : original mono-mix
作者:James Moore
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
 オリジナルは元祖レイドバックとも言うべき、アメリカはルイジアナを中心に活動していた黒人ブルースマンのスリム・ハーポ:Slim Harpo が1957年に録音したシブイ曲です。う〜ん、それにしてもこういうカバーを演じてしまうブルースオタク丸出しのストーンズには、微笑ましいというよりも驚きが先にたちます。ちなみに作者のジェイムス・ムーアとはスリム・ハーポの本名です。
 で、ストーンズは原曲の緩〜いムードをシカゴ・ブルース・スタイルのエレキ・スライドを入れて別角度から泥臭く作り変えており、それが非常に魅力的です。もちろんこういう「蜜蜂ネタ」には付物のビビビビビビ〜という蜂の飛び交う擬音を表現するエレキギターのトレモロ技も入れていますし、ミック・ジャガーのボーカルも力が入っています。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD

Carol (かわいいキャロル) : original mono-mix
作者:Chuck Berry
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
 これもオリジナルはチャック・ベリーが1958年10月に放ったヒット曲のカバーということで、ストーンズにとっては得意中の得意だったのでしょう、ここでの演奏は余裕の中にも手拍子を入れてビートを強める十八番のノリが感じられます。
 またオリジナルではピアノとアフタービートを強調したスネアドラムが印象的でしたが、ストーンズのカバーでは、やはりキース・リチャーズのギター! それとチャーリー・ワッツのシンバルが鮮やかで、ロックンロールを越えてロックになっている名演だと思います。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD
●テル・ミー / かわいいキャロル (キング HIT388 = JP 7"Single)

Tell Me (full length version) : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
共演:Ian Stewart (p)
 ストーンズとしては初の本格的オリジナルで、当時流行していたマージービート系の胸キュン曲です。明らかにこのアルバムの中では浮いていますが、アメリカと日本ではシングル盤として発売され、大ヒット! 特に日本ではグループサウンズ全盛期に、多くのバンドが演目にしていました。
 ところで、この曲には前述のシングル盤に収録された編集バージョン、アメリカ盤アルバム・バージョン等々、いくつかあって混乱していますが、ここに収められたバージョンがオリジナルです。それらの違いについては追々触れていきますが、簡単に述べると、このバージョンは最後のフェードアウトを忘れてしまったかのような、一端、終わると思わせておいて、またまた盛り上がってしまう演奏です。ちなみにイギリスではシングルカットはされていませんし、ベスト盤等の編集アルバムにもアメリカ盤アルバム・バージョンが収められているのは残念です。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●The Rolling Stones = 1984年リマスターのUK盤CD
●The Rolling Stones = 1987年リマスターの日本盤CD

Can I Get A Witness : original mono-mix
作者:Eddie Holland, Lamont Dozier & Brian Holland
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
共演:Ian Stewart (p, org)
 不世出の黒人歌手=故・マービン・ゲイ:Marvin Gaye が1963年に大ヒットさせた、これぞモータウンR&Bという名曲のカバーです。そしてこれは、アンドルー・オールダムの希望だったとか……。明らかに浮いている選曲ですが、演奏の出来はなかなか素晴らしく、個人的には気に入っています。
 それはミック・ジャガーの投げやりで猥雑な歌い方、合っていないコーラスが逆にロックしてしまった結果オーライ気味の成果かもしれませんが、原曲がオーケストラも使った豪華な迫力で仕上げていたところを、ストーンズはモータウン伝来のリズムをタンバリンとピアノで活かしながら、シンプルなバンド・アレンジで押しきった潔さが最高です。特にチャーリー・ワッツのドラムスは、ジャズの隠し味も巧みで秀逸!
 そのあたりは、このアルバムA面に収録された、同曲のカラオケ・バージョンとも言える「Now I've Got A Witness」と聞き比べると、楽しさが倍増すると思います。また、なんとなく我国のスパイダースの演奏に雰囲気が似いてたりして、コーラスにかまつやひろしの声が聞こえるのは、私の空耳にすぎませんが……♪
  このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD

You Can Make It If You Try : original mono-mix
作者:Ted Jarret
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
共演:Ian Stewart (org)
 今もってマニアックなファンが多いアメリカの黒人シンガー=ジーン・アリスン:Gene allison が1958年2月に放ったヒット曲のカバーです。オリジナルは緩いビートが魅力でしたが、ストーンズは3連ビートでオルガンと生ギターを活かした演奏に仕立てています。
 ミック・ジャガーの歌いっぷりは、正直まあまあですが、バックのコーラスが決まらない分だけ良さが目立つという、やや皮肉な出来だと思います。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD

Walking The Dog : original mono-mix
作者:Rufus Thomas
製作:Andrew Oldham
録音:1964年1月後半-2月、ロンドンのリージェント・スタジオ
 アルバムのラストを飾るに相応しい、物凄くカッコイイ演奏です。
 オリジナルはアメリカ南部出身の黒人歌手にして芸人としても超一流のルーファス・トーマスが、自作自演して1963年12月に大ヒットさせたダンス曲です。ということは、このアルバム製作時にはリアルタイムで流行っていたわけですが、これを逸早くカバーしたストーンズは、原曲の良さを活かしつつもギターを中心としたロック・バージョンに作り変えており、全く見事!。
 犬を呼ぶ口笛、十八番の手拍子によるビートの強化、卓越したギターの絡みと凄み、与太者風のミック・ジャガーの歌唱、永遠に持続するバンド全体の若々しいノリ等々、本当に最高で、何度聴いても飽きません。ストーンズの素晴らしさが完璧に出た必聴の名演です。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●England's Newest Hit Makers (London LL3375 = US 12"LP:mono)
●England's Newest Hit Makers = CD


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」

(2006.06.04 敬称略・続く)