the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1964 part 53

■It's All Over Now / Good Times, But Times (Decca F11934:mono)
発売日:1964年6月26日(英)
発売日:1964年7月26日(米)= London 9687 (画像掲載)
発売日:1964年8月20日(日)= キング HIT-346
 イギリスにおける4枚目のシングル盤で、ストーンズにとってはA面収録曲が、英国のシングル・チャートで初めて1位を獲得したという意義があります。
 アメリカと日本でも同じカップリングで発売されていますが、残念ながらイギリスほど大きなヒットにはなりませんでした。

It's All Over Now : original mono-mix
作者:Bobby & Sharly Womack
製作:Andrew Oldham with Ron Malo
録音:1964年6月10-11日、米国、シカゴのチェス・スタジオ
 既に述べたように、ストーンズが1964年6月に敢行したアメリカ巡業中に、シカゴ・ブルースの総本山ともいうべきチェス・スタジオで録音した名演・名曲です。もちろん、このチェス・スタジオはストーンズのメンバーにとっては憧れの聖地だったわけですし、スタジオのスタッフはブルースの伝説を作り上げた偉人達、さらに現場には大物ブルースマン達が様子を見に来ていたと言われています。
 そしてそんな中で、これだけの素晴らしい演奏を残したストーンズのクソ度胸は、やはり大したものだと思います。
 肝心の楽曲は、1964年のリアルタイムで小ヒットしていたヴァレンティノズ:Valentinos のオリジナルで、作曲には後年ストーンズとも共演することになるボビー・ウーマックが関係しており、ヴァレンティノズは、ボビー・ウーマックを中心とした黒人兄弟グループでした。
 そのオリジナルの演奏は、けっこうジャズっぽいノリが隠し味でしたが、ストーンズはそこにカントリー風味を付け加え、さらに間奏では十八番のチャック・ベリー風ギターが活躍するというアレンジに仕立て直しています。そしてここでは、鬼のように暴れるブライアン・ジョーンズのリズムギターが圧巻!
 さらにここで聴かれる音の雰囲気は、当時リアルタイムでこのスタジオから送り出されていた一連のチェス・レコードの作品群と同質の味わいがあります。それは地元録音技師のロン・マロ:Ron Malo の手腕によるもので、一説にはチェス・スタジオでのレコーディングに必ずしも積極的ではなかったアンドルー・オールダムに代わって現場を仕切っていたのが、ロン・マロだったと言われています。もちろんそれはバンド側の望むところでした。
 また作者のボビー・ウーマックは当時、このストーンズのバージョンに立腹していたと言われていますが、それは素晴らしい出来栄えに対する嫉妬でしょうか? 後年、ソロ・シンガーとして独立後のボビー・ウーマックはカントリー味の強いR&B曲を出していきますので、穿ちすぎとも思えないのですが……。
 また我国のスパイダースがオリジナル曲として演奏していた「恋のドクター」は、この曲やデビュー・アルバムに収録されていた「Now I've Got A Witness」「Can I Get A Witness」あたりのキモを巧みに活かしたものですから、影響力は絶大だと思います(1964 part-3 参照)。
 それとこの曲にはリアル・ステレオ・バージョンが存在しており、それについては後述しますが、あくまでもオリジナルはモノラル仕様ということで、このシングル盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●It's All Over Now / Good Times, But Times (London 9687 = US 7"Single)
●イッツ・オール・オーバー・ナウ / グッド・タイムズ・バッド・タイムズ
●                          (キング HIT-346 = JP 7"Single)
●12×5 (London LL3402 = US 12"LP:mono)
●12×5 = 1986年リマスターCD
●Big Hits (London NP1 = US Compilatino 12"LP:mono)
●Big Hits (Decca TXL101 = UK Compilatino 12"LP:mono)
●Decca Single Collection (Decca STONES-1/12 = UK 7"Single x 12)
●More Hot Rocks (London PS262/7 = US Compilatino 12"LP x 2)
●More Hot Rocks = 1986年リマスターCD
●Single Collection - The London Years = CD
●Singles 1963 - 1965 = CD

Good Times, But Times : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham
録音:1964年5月、ロンドンのリージェント・スタジオ
 とても黒〜い雰囲気が横溢したアコーステックスなブルースで、初めて聴いた時は、また誰か黒人のカーバー物かと思ったら、これがレッキとしたストーンズのオリジナルと気づいて仰天した記憶が今も鮮烈です。
 とにかくキース・リチャーズの生ギターとブライアン・ジョーンズのハーモニカがブルース衝動満点の出来栄えですし、ミック・ジャガーの最初から諦めているような歌いっぷりも感傷的でキマッています。
 このシングル盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●It's All Over Now / Good Times, But Times (London 9687 = US 7"Single)
●イッツ・オール・オーバー・ナウ / グッド・タイムズ・バッド・タイムズ
●                          (キング HIT-346 = JP 7"Single)
●12×5 (London LL3402 = US 12"LP:mono)
●12×5 = CD
●Big Hits (London NP1 = US Compilatino 12"LP:mono)
●Big Hits = CD
●More Hot Rocks (London PS262/7 = US Compilatino 12"LP x 2)
●More Hot Rocks = CD
●Single Collection - The London Years = CD
●Singles 1963 - 1965 = CD

Five By Five (Decca DFE8590 = UK 7"EP:mono)
発売日:1964年8月14日(英)
A-1 If You Need Me
A-2 Empty Heart
A-3 2120 South Michigan Avenue
B-1 Confessin' The Blues
B-2 Around And Around
 ストーンズ2枚目のEPは、前述の「It's All Over Now」同様に、アメリカ巡業の途上で行われたシカゴのチェス・スタジオでレコーディングされた音源から5曲が収録されています。そしてこれが全く素晴らしい!
 ちなみにこの時のチェス・スタジオ・セッションで録音された曲は後年、リアル・ステレオ・バージョンが発表されますが、オリジナルはあくまでもモノラル・ミックスです。
 それはCD化に際しても当初は大切にされ、例えばこのEPを拡大したようなアメリカ盤アルバムの「12×5」が1986年にCD化された時には、全曲モノラル仕様になっていました。しかし2002年にリマスターされたCDでは、このシカゴ・セッション関連曲がステレオ・バージョンに差し替えられていますので、要注意!
 ただし2004年に発売された「Singles 1963 - 1965」には、このEPが丸ごと復刻されて入っていますので、ご安心ください。
 尚、タイトルの「5×5」とは、メンバー5人で5曲を演奏したという意味です。

If You Need Me : original mono-mix
作者:Wilson Pickett, Robert Bateman & Sonny Sanders
製作:Andrew Oldham with Ron Malo
録音:1964年6月10-11日、米国、シカゴのチェス・スタジオ
共演:Ian Stewart (org)
 ミック・ジャガーの黒〜いボーカルが素晴らしいこの曲はもちろんカバー物で、オリジナルは米国の黒人R&B歌手として超有名なウィルソン・ピケットが自作自演して1963年にヒットさせた名曲です。また同曲のカバーとしては、これも黒人R&B歌手の超大物であるソロモン・バーグ:Solomon Burke のバージョンが素晴らしい出来で、同時期にヒットしています。
 ストーンズはこの曲のミソである南部どっぷりの粘っこいノリをギターの3連アルペジオで増幅し、さらにオルガンで絶妙に味付けした演奏を展開、それをバックにミック・ジャガーがいきなり魂の熱唱を聴かせるという構成が見事です。もちろんオリジナルに濃厚だったゴスペル味も大切にされているのでした。
 このEP盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●12×5 (London LL3402 = US 12"LP:mono)
●12×5 = 1986年リマスターCD盤
●Singles 1963 - 1965 = CD

Empty Heart : original mono-mix
作者:Nanker Phelge
製作:Andrew Oldham with Ron Malo
録音:1964年6月10-11日、米国、シカゴのチェス・スタジオ
 ストーンズのメンバー全員の共作によるオリジナルR&Bですが、音の雰囲気が当時のリアルタイムでチェス・スタジオから送り出されていた本場のものと同じなので、非常に本物っぽい仕上がりになっています。
 と書いてしまうと、ストーンズはニセモノ? という結論になりますが、やはり白人が演奏するブルースやR&Bは、まだまだ認められなかったのが当時の風潮でした。特に本場アメリカではその傾向が強く、ストーンズが演奏するような音楽は白人の若者達の間では完全に忘れ去られていたというよりも、知られていなかったのが実状でしょう。この年の初めにビートルズがアメリカで大ブレイクしたのも、そのあたりにツッコミを入れたのがミソでした。
 そしてストーンズこそ、その失われていた宝物を堂々と発掘開陳した偉大なるレイダース! その意味でこの曲には特に凄いものがあります。なにしろミック・ジャガーの黒い歌いまわし、キース・リチャーズの投げやりなギターとコーラス、ブライアン・ジョーンズの哀切のハーモニカ、重くてシャープなチャーリー・ワッツのドラムスと、完全にキマッているのですから!
 このEP盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●12×5 (London LL3402 = US 12"LP:mono)
●12×5 = 1986年リマスターCD盤
●Singles 1963 - 1965 = CD

2120 South Michigan Avenue : original mono-mix
作者:Nanker Phelge
製作:Andrew Oldham with Ron Malo
録音:1964年6月10-11日、米国、シカゴのチェス・スタジオ
共演:Ian Stewart (org), Muddy Waters (g)
 ストーンズのメンバー全員の共作によるブルース・インスト曲で、タイトルには実在するチェス・スタジオの住所を用いて敬意を表した意図があるようです。
 肝心の演奏は軽いファズが用いられたビル・ワイマンのヘヴィなベースからイアン・スチュアートのオルガンが唸りをあげるという、ほとんどブッカーTとMGs のようなスタイルですが、途中からブライアン・ジョーンズのハーモニカが暴れだして山場を作るという構成です。しかもここは良く聴くと、ハーモニカが2本入っているようですから、もしかするとミック・ジャガーも吹いているのかもしれません?
 あと、この曲にはシカゴ・ブルースの大巨匠であるマディ・ウォーターズがギターで参加しており、最後には素晴らしいギターソロを聴かせてくれるのですが、残念ながらこのバージョンではその前にフェードアウトしています。
 では何故それが分かるのかというと、ドイツだけで公式発売されたアルバム「Around And Around (独Decca SKL16315)」に、この曲の未編集ロング・バージョンが収録されてしまったからという情報は、昔から有名でした。私自信はそのアルバムを確認していませんが、多くの海賊盤に盗用されたその演奏は、やはり素晴らしい♪ ただし擬似ステレオ疑惑があります。
 そして現在では、2002年にリマスターされたCD「12×5」に収録のバージョンが、このマディ・ウォーターズのギターソロが聴けるもので、しかもリアル・ステレオ・ミックスという恐ろしさ!
 ただしオリジナルはあくまでもショート・バージョンのモノラル・ミックスということで、このEP盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●12×5 (London LL3402 = US 12"LP:mono)
●12×5 = 1986年リマスターCD盤
●Singles 1963 - 1965 = CD

Confessin' The Blues : original mono-mix
作者:Walter Brown & Jay McShann
製作:Andrew Oldham with Ron Malo
録音:1964年6月10-11日、米国、シカゴのチェス・スタジオ
共演:Ian Stewart (p)
 ストーンズのブルースに対する敬意と憧れが存分に発揮されたカバー・バージョンの名演です。オリジナルはカンサス・シティを中心に活動していた黒人シンガーのウォルター・ブラウンが1941年に放った大ヒット曲で、それ以降、多くのカバーが存在していますが、ストーンズはシカゴ・ブルース流儀で演奏しているところから、恐らくリトル・ウォルター:Little Walter が1958年に発売したカバーを手本にしているというのが定説です。
 実際、ここでのストーンズは、2本のギターの絡みも絶妙な本格的エレクトリック・ブルースに仕立て上げています♪ するとハーモニカはミック・ジャガーか? とにかくレイジーでハードな演奏と甘さを残したミック・ジャガーのボーカルが素晴らしく、白人ブルース・バンドとしては同時代で最高の存在がストーンズという証明になっています。
 この曲も今ではステレオ・ミックスが一般的ですが、オリジナルはモノラル・ミックスということで、このEP盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●12×5 (London LL3420 = US 12"LP:mono)
●12×5 = 1986年リマスターCD盤
●Singles 1963 - 1965 = CD

Around And Around : original mono-mix
作者:Chuck Berry
製作:Andrew Oldham with Ron Malo
録音:1964年6月10-11日、米国、シカゴのチェス・スタジオ
共演:Ian Stewart (p)
 出ました! カバー物ながら、ストーンズが駆け出し時代から自己主張を明確にしていた代表曲で、そのオリジナルはロックンロールの神様=チャック・ベリーが1958年に発表した説明不要の名曲ですが、ストーンズはそれを完全に薬籠中の物として自分達のスタイルに仕立て上げています。
 そのキモはもちろんキース・リチャーズの一芸主義のギターで、チャック・ベリーのスタイルを自己満足的に解釈したフレーズとノリは本当に見事! ロックンロールをロックに、完全変換させているのです。
 ちなみにストーンズが2度目のアメリカ巡業を行った1964年秋には、10月25日にエド・サリヴァン・ショウに生出演、初っ端にこの曲を演奏して観客の乱痴気騒ぎを誘発しています。
 また名曲だけにストーンズ以外にも多くのカバー・バージョンが作られていますが、現在ではこのストーンズのバージョンを元ネタにコピーするのが一般的で、ストーンズ系のアマチュア・バンドでは必須科目になっています。
 この曲も2002年にリアル・ステレオ・ミックスが公になりましたが、オリジナルはあくまでもモノラル・ミックスということで、このEP盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●12×5 (London LL3402 = US 12"LP:mono)
●12×5 = 1986年リマスターCD盤
●Singles 1963 - 1965 = CD


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」

(2006.06.21 敬称略・続く)