the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1966 part 53

■Got Live If You Want It (London LL3493:mono / PS493: stereo)
発売日:1966年12月10日(米)
A-1 Under My Thumb
A-2 Get Off Of My Cloud
A-3 Lady Jane
A-4 Not Fade Away
A-5 I've Been Loving You Too Long
A-6 Fortune Teller
B-1 The Last Time
B-2 19th Nervous Breakdown
B-3 Time Is On My Side
B-4 I'm Alright
B-5 Have You Seen Your Mother, Baby, Standing In The Shadow
B-6 Satisfaction
 アメリカ優先で発売されたライブ盤で、タイトルこそ1965年にイギリス優先で発売されたライブEPと同じながら、もちろん内容は異なっています。
 こちらは1966年秋に敢行された英国巡業からの音源で、当時はストーンズ以外の出演者も前座として同じステージに出るという、所謂パッケージショウのスタイルだったので、ストーンズが実際に演奏していたのは、およそ10曲、約30分の演奏が基本でした。そのため、LPとしてライブ盤を作るにはマテリアル不足……。そこで解決策として、スタジオ録音された曲に拍手を被せるという、擬似ライブバージョンが含まれています
 もちろん、本当のライブ音源にもボーカルや演奏部分にスタジオでの手直しが入り、さらにモノラルとステレオの両バージョンでの違いが著しいという、マニア泣かせのアルバムになっています。録音のバランスや音質も決して良いとは言えません。
 おまけにCD時代になると、またまた不可解なリマスターと編集、音源差し替え等が重なり、ますます厄介な存在になっています。つまり現行CDは似て非なる別物……。
 そこで今回は、とりあえずステレオ仕様のアナログ盤を基本にしてご紹介し、CDについては適宜ふれますが、詳しくは後日ということで、ご了解願います。そして結論から言うと、ステレオ盤はボーカルと演奏が遊離している雰囲気ですが、演奏部分は団子状になっています。反面、モノラル盤はボーカルと演奏に一体感がありますが、各楽器の音がしっかり分離しています。ただしボーカルが不鮮明なのが??? という一長一短があり、好き嫌いが分かれるでしょう。
 正直言うと、同時期のライブを収めた海賊盤の方に優れたブツがあるほどです。
 ちなみにこのアルバムは1966年9月23日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで録音されたと宣伝されましたが、それも大ウソ! なにしろその日のライブは観客がステージに殺到して大暴動! メンバーはボロボロにされ、ファンの女の子達にも怪我人が続出という模様は、フィルムに残されています。まあ、如何にもクリスマス商戦用に作られたブツらしい仕掛けでもありますが、チャートでは6位という成果でした。

Under My Thumb : 1966 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham
録音:1966年10月1日、ニューキャッスルのシティホール
 ワーワー、キャーキャー大歓声の中で短いMCがあり、続けて名盤「アフターマス」の中でも一際輝いていたストーンズ流R&Bが、ここではグッとテンポアップして攻撃的に演奏されるという、まさにライブバージョンならではの楽しみが満喫出来ます。
 ブライアン・ジョーンズはスタジオバージョンと同じくマリンバを演奏していますが、何故かCD化されたトラックからは、これが抜かれています。それゆえに薄っぺらなサウンドになっていますが、皮肉なことに、観客の絶え間ない嬌声がその隙間を埋めているという……。
 またアナログ盤のモノラルバージョンでは、最初のチャーリー・ワッツのドラムスが1拍欠けているのも不可解でした。

Get Off Of My Cloud / 一人ぼっちの世界 : 1966 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham
録音:1966年10月1日、ニューキャッスルのシティホール
 前曲の興奮さめらやぬ大歓声の中で演奏がスタートする、これもストーンズ流暴動ロックの傑作です。もちろんオリジナルよりもテンポが速い荒っぽい演奏で、ややビートが性急なのが気になりますが、2本のギターの存在感と全体の勢いが流石です。
 ただしステレオ盤を聴くとモロバレですが、ミック・ジャガーのボーカルと手拍子はオーバーダビング疑惑があります。しかもCD化されたトラックでは、これに加えてコーラスまでも異なっているという不可思議な処理になっています。

Lady Jane : 1966 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham
録音:1966年10月7日、ブリストルのコルストンホール
 一転してスローバラードの世界ですが、それゆえにブレイクでの女の子の熱狂も烈しくなります。それでもミック・ジャガーのボーカルは冷静に丁寧ですが、これはスタジオでの手直しとオーバーダビングが明らかでしょう。
 またここでの演奏は、スタジオバージョンでは入っていなかったチャーリー・ワッツのドラムスが良い感じ♪ ブライアン・ジョーンズはダルシマーでは無く、ツィター(画像参照)を弾いていますが、実はこれに先立つアメリカ巡業で、作ったばかりのエレクトリック・ダルシマーが盗まれていた所為だと思われます。もちろんここで使ったのはエレクトリック・ツィターです。
 ということは、ここで聞こえる生ギターもオーバーダビングです。実際、CD化された時には、この生ギターが消されています。またボーカルまでもが異なっているのですから、これも不可解な処理としか言えません。

Not Fade Away : 1966 live version
作者:Norman Petty & Charles Hardin Holley
製作:Andrew Oldham
録音:1966年10月7日、ブリストルのコルストンホール
 そしてストーンズが十八番の極めてロック色が強い激烈R&Bが始まります。ギターの烈しいカッティングからブリッと入って蠢くビル・ワイマンのベースも凄いノリですし、何よりもブライアン・ジョーンズのハーモニカとミック・ジャガーのボーカルによる対決が、否が応でも観客を熱狂させます。
 しかし良く聴くと、ギターやタンブリン、そしてボーカルがオーバーダビングされているのは明白で、特にアナログのステレオ盤ではモロバレなので、ちょっと違和感があります。

I've Been Loving You Too Long : similitued live version
作者:Otis Redding & Jerry Butler
製作:Andrew Oldham
録音:1965年5月12-13日、ハリウッドのRCAスタジオ
共演:Jack Nitzsche (key)
 前述した問題の擬似ライブバージョンです。
 元になった演奏は1965年5月のスタジオセッションで録音された南部ソウルの傑作曲! オリジナルはオーティス・レディングが1965年6月に大ヒットさせていますから、ストーンズのカバーはリアルタイムのド真ん中という果敢な挑戦でした。
 そしてミック・ジャガーの歌いっぷりは見事です。演奏もギターが幾層にも重ねられ、さらにオルガンとピアノが効果的に使われていますから、一瞬、ホーンセクションが参加しているような雰囲気が出ています。
 さらにダビングされた拍手歓声にも、巧みに強弱が付けられていますが、ステレオ盤では演奏とそれが左右にはっきり分かれ、ボーカルが真ん中から聞こえるために、違和感があります。またモノラル盤ではボーカルがオフ気味で物足りません。
 そのあたりを考慮したか、2002年リマスターの現行CDではモノラルをベースにしながらも、拍手歓声を別なものに入れ替えて、ステレオ感を出すという荒業が使われています。
 結局、一番良いのはオリジナルのスタジオバーションをリマスター発売してくれることなんですが、一応、ドイツやフランスではオムニバスのアナログ盤に収録して発売されたようです。
 ちなみにこのアルバムの主要音源となったストーンズのパッケージショウに参加していた黒人ソウルレビューのアイク&ティナ・ターナー:Ike & Turner が十八番にしていたのがこの曲でしたから、渡りに船というか、その雰囲気再現を狙ったアルバム製作意図は理解出来ます

Fortune Teller : similitued live version
作者:Naomi Neville (= Allen Toussaint)
製作:Andrew Oldham
録音:1963年7-8月、ロンドンのデッカ・スタジオ
 これも擬似ライブバージョンです。
 元になった演奏は1963年に録音され、既にイギリスではオムニバス盤「サタディ・クラプ」に入れられて発売済みでしたが、アメリカでは未発売でしたので、ここに利用されたのでしょう。元バージョンがダンス系の演奏でしたので、流れ的には違和感が無く、またアナログ盤のモノラルとステレオ両バージョンの差異も感じられません。
 ただしCD化されたものはダビングされた拍手歓声が異なっていたり、フェードアウトしていた演奏がきちんと終わるように編集されていたりと、様々に混濁状態……。これについては、後でふれます。

The Last Time : 1966 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham
録音:1966年9月23日、ロンドンのロイヤル・アルパート・ホール
 アナログ盤ではB面のスタート曲とあって、いきなりサティスファクションのリフが繰り返されてから間髪を置かずにこの曲のイントロが鳴り響くという、なかなかエキサイティングな仕掛けになっていますが、これはテープ編集によるものでしょう。しかしカッコイイです♪
 またボーカルやコーラス、手拍子には明らかにスタジオでの手直しが入っています。まあ本来の演奏が相当によれていますからねぇ……。ベースのチューニングも怪しいところです。
 ただし勢いは素晴らしく、荒っぽいライブの雰囲気が存分に楽しめます。

19th Nervous Breakdown / 19回目の神経衰弱 : 1966 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham
録音:1966年10月1日、ニューキャッスルのシティホール
 前曲の後に若干のチューニングタイムがあって始まりますが、これも荒っぽくて勢いのある演奏です。正直、ドシャメシャなんですが、ヨレヨレになりそうなリズムを必死で立て直そうと奮闘するチャーリー・ワッツが光りますねぇ♪ 自然に歪んでいくギターの響きも良い感じです。

Time Is On My Side : 1966 live version
作者:Norman Meade
製作:Andrew Oldham
録音:1966年10月7日、ブリストルのコルストンホール
 これが様々に違いのある演奏で、まずアナログのステレオ盤ではバスドラが鳴った後、いきなり歌と演奏がスタートしますが、モノラル盤ではミック・ジャガーがカウントしてから始まります
 またCDバージョンはミック・ジャガーのボーカルと語りが異なっていますので、もしかすると幾つかの音源を混ぜ合わせた仕上げでしょうか……?
 肝心の演奏は可も無し、不可も無しという無難な出来だと思います。

I'm Alright : 1966 live version
作者:Nanker Phelge
製作:Andrew Oldham
録音:1966年10月7日、ブリストルのコルストンホール
 ストーンズにとってはデビュー当時からの十八番とあって、イギリス優先で発売されたライブEPに続く2度目のライブバージョンです。
 その出来は甲乙つけがたいのですが、ここでのミック・ジャガーは、ちゃんと「I'm Alright」と歌っていますし、暴れまくるブランアン・ジョーンズのギターが、尚一層、強烈です。もちろん会場は興奮のルツボ!
 ちなにみミック・ジャガーはマラカスを振りながら歌っていますが、CDではそのマラカスの音が聞こえないミックスにされています。

Have You Seen Your Mother, Baby, Standing In The Shadow
作者:Mick Jagger & Keith Richards / マザー・イン・ザ・シャドウ : 1966 live version
製作:Andrew Oldham
録音:1966年10月7日、ブリストルのコルストンホール
 当時バリバリの最新ヒット曲がギンギンに演奏されています。
 それはイントロから炸裂するフィードバックのエレキギターと蠢くベース、そしてワイルドなミック・ジャガーのボーカルと叩きつけるような演奏が強烈で、もちろん荒っぽさの極みですが、これがロックです! 個人的には、こじんまりしたスタジオバージョンよりも、こっちが好みですねぇ〜♪ 団子状になったビートの塊が強烈です!
 アナログ盤モノラルとステレオのバージョン違いについては、ステレオバージョンではピアノが聞こえません。またCDについても 2002年リマスターのバージョンでは、ピアノが極めて薄いミックスにされています。
 さらに次曲への繋がりでは、エンディングのリフがステレオバージョンでは4回モノラルバージョンでは3回で「Satisfaction」のイントロが入ってきます。しかしCDバージョンでは、ここでいったん途切れて拍手歓声が入るので、ライブ特有の迫力が損なわれています。

Satisfaction : 1966 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham
録音:1966年10月7日、ブリストルのコルストンホール
 そしてストーンズと言えば、今も昔もこれが出ないと収まらないという興奮の名曲です。
 ここでの演奏はイントロからファズギターが永遠のリフを鳴らし続け、リズムとビートは叩きつけるような強烈さでミック・ジャガーを煽っています。もちろん会場は暴動寸前という雰囲気が、なかなか見事に録音されていますし、意外にキマッているコーラスと手拍子はスタジオで手直しされたものでしょう。それだけに最後がフェードアウトで終るのは残念です。
 アナログ盤のステレオとモノラル両バージョンの違いは特にありませんが、CD化されたバージョンはラスト近くのブレイクが1回でフェードアウト! ここは強烈な山場だけに完全に???の処理です。


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」
参考文献:「Das Weissbuch / Dieter Hoffmann著」

(2006.10.13 敬称略・続く)