the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1967 part 43

■Flowers (London LL3509:mono / PS509: stereo)
発売日:1967年7月15日(米)
A-1 Ruby Tuesday (stereo album version)
A-2 Have You Seen Your Mother, Baby, Standing In The Shadow
In Th
(simulated stereo version)
A-3 Let's Spend The Night Together (stereo album version)
A-4 Lady Jane
A-5 Out Of Time (Fadeout edit version)
A-6 My Girl
B-1 Back Street Girl
B-2 Please Go Home
B-3 Mothers Little Helper (simulated stereo version)
B-4 Take It Or Leave It
B-5 Ride On Baby
B-6 Sittin' On A Fence
 独自編集による発売を続けたアメリカでは、ベスト盤やライブ盤も含めて通算10枚目のアルバムです。しかも純然たる初出の3曲、またアメリカでは未発表だった4曲を含みながらも、既に他のアルバムに収録済みだったシングル曲を再収録するなどした編集が安易な印象を与えているという、これも問題盤でしょう。まあ、LP1枚分の曲数が足りなかったと言えば、それまでなんですが、チャートでは3位の大ヒットになっています。
 そして、けっこうマニアックな内情を含んでいるので、聞き逃せません。
 まずアルバムタイトル! 当時吹荒れていた「フラワー・ムーヴメント」を意識しているのは、言わずもがなの定説です。この「フラワー・ムーヴメント」というのは、アメリカ西海岸を聖地としたピッピー文化とか反戦運動、さらにLSDとかドラッグ体験を音楽や映像に反映させたサイケデリックの狂乱……、等々を業界が利用したものというが、今となっての結論かもしれません。さらにその象徴をフラワー=花としたところが、愛と平和の世界観として、単純明快にアピール出来たところです。
 しかし当時の先端を行っていたアーティスト側には、明らかに飛びぬけた創作力がありました。例えばビートルズの「サージェント・ペパーズ」は、あまりにも有名ですが、1967年6月16〜18日に行われたカリフォルニアのモンタレー・ポップ・フェスティバルには、当時、最もブッ飛んでいたバンドやミュージシャンが大挙出演し、伝説を作り上げました。今日、それは幾つかの映像作品や音源集として纏められていますが、そこにはストーンズのブライアン・ジョーンズが主宰者側のスタッフとして姿を見せています。
 そしてそれら一連のブームの仕掛人のひとりが、ルー・アドラー:Lou Adler という凄腕プロデューサーで、この人は今日まで続く西海岸系ロック&ポップスの土台を作った偉人ですが、そういう重要人物が、このアルバムの発売に関係しているのですから、なかなか味わい深いところ! もちろんプロデュースはアンドルー・オールダムになっていますが、アルバムジャケットには特に「Title concept by Lou-in Adler」と記載してあるのがキモです!
 肝心の内容は、まず「A-6」「B-5」「B-6」が純然たる未発表初出曲♪ また「A-5」はイギリス盤「アフターマス」に収録されていましたが、アメリカではここで初登場! しかも編集されたショートバージョンになっています。
 また「B-3」イギリス盤「アフターマス」に収録されていましたが、同名アメリカ仕様盤から外され、シングル盤だけの発売でしたから、ここでLPに初収録されたものの、ステレオバージョンと称されるものは擬似ステレオ仕様になっています。
 それは「A-2」も同様で、ステレオ盤収録のトラックは完全に擬似ステレオ仕様ですが、これがサイケっぽい混濁が絶妙に表現されていて、結果オーライの良い味です。
 そして「A-4」「B-4」は「アフターマス」、「A-1」「A-3」はアメリカ盤「ボタンの間に」でLPには収録済みというダブリが、完全に??? しかし、これは曲の流れとかアルバム全体の雰囲気を重視した編集かと思われます。実際、ここにイギリス盤「ボタンの間に」で発表されていながら、アメリカでは未発表となっていた「B-1」と「B-2」が入ったことで、ますますその傾向が強くなっているのですから!
 そうです、これは決して悪いアルバムでは無く、当時の若者文化をダイレクトに伝えている優良編集盤♪ 穏やかで烈しい曲の流れが最高で、告白すると私は中学生の頃から愛聴していますが、その日本盤には「A-5」がオリジナル・バージョンになっているブツが混在していますので、要注意です。
 ちなみにアルバムジャケットは、もちろん「フラワー・ムーヴメント」をモロ出しにした、些かトホホ系のデザインですが、ブライアン・ジョーンズの茎にだけ葉が無いところから、後の悲劇を暗示していたと言われています。

Have You Seen Your Mother, Baby, Standing In The Shadow
Have You Seen Your M/ マザー・イン・ザ・シャドウ : simulated stereo version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham with Jack Nitzsche & Dave Hassinger
録音:1966年8月3-7日、ハリウッドのRCAスタジオ
共演:Jack Nitzsche (p,arr)
 1966年9月23日に英米同時リリースされた大ヒット曲で、イギリスではベスト盤「Big Hits」でアルバム収録されていますが、そのステレオ盤にさえ限りなくモノラルに近いバージョンが収められていましたので、あからさまな擬似ステレオバージョンの初登場は、このアルバムからとしておきます。ただし件のベスト盤もプレス時期によっては、これと同等の擬似ステレオ感があるバージョンを収録しているブツもあったりして、情報が錯綜しています。
 で、これまでの「音盤史」では、擬似ステレオバージョンに関しては邪道として、意図的に無視してきましたが、これだけを例外的に取上げたのは、いかにもサイケデリック真っ只中の音響効果があるからです。
 ご承知のように、擬似ステレオという手法は、本来モノラルマスターしか無い音源に電気的処理を施し、例えば片方のスピーカーから高音域が強く出るようにしておけば、2つのスピーカーで聴くステレオ装置では雰囲気的に立体音響効果が生まれるという目論みです。
 ただしこれは、独特のエコーや音圧の不自然さがありますので、必ずしも正統派とは言えません。しかしこの曲のように混濁した音作りがメインとなった演奏では、意想外の良さが出てきたりします。特にサイケデリックな感覚という意図があれば、結果オーライの素晴らしさ♪
 ちなみにこの擬似ステレオバージョンは、最新リマスターのCDでは無かったことにされましたので、このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
Flowers = 1986年リマスターのアメリカ盤CD
●Through The Past, Darkly (London NPS3 = US Compilatino 12"LP:stereo)
●Through The Past, Darkly = 1986年リマスターのアメリカ盤CD
●More Hot Rocks (London PS262/7 = US Compilatino 12"LP x 2)
●More Hot Rocks = 1987年リマスターのアメリカ盤CD

Out Of Time (Fadeout edit version)
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham with Jack Nitzsche & Dave Hassinger
録音:1966年3月3-8日、ハリウッドのRCAスタジオ
共演:Ian Stewart (org), Jack Nitzsche (key,per)
 既に述べたように、ストーンズが前年4月に発表した歴史的傑作アルバム「アフターマス」のイギリス仕様盤に収録されていた名曲が、ようやくアメリカで初登場となりました。しかもオリジナルバージョンに比べてキメのリフレインのフェードアウトを早めて、2分近く短いものになっています。
 このあたりは好みの問題もありますが、個人的には物足りないところです。あの延々と続くリフレインが魅力なんですけどねぇ……。ちなみにステレオとモノラルの両バージョンの違いは特に無く、主な収録は以下のとおりです。
ステレオバージョン / original stereo-mix
Flowers (London PS509 = US 12"LP:stereo)
Flowers = CD
More Hot Rocks (London PS262/7 = US Compilatino 12"LP x 2)
More Hot Rocks = CD
モノラルバージョン / original mono-mix
Flowers (London LL3509 = US 12"LP:mono)

My Girl
作者:William Robinson & Ronald White
製作:Andrew Oldham with Jack Nitzsche & Dave Hassinger
録音:1965年5月12-13日、ハリウッドのRCAスタジオ
 当時、一世を風靡していたモータウンサウンドを代表的する名曲のカバーです。オリジナルはあまりにも有名な黒人コーラスグループのテンプテーションズ:Temptations で、1965年1月にチャート1位の大ヒットを記録していますが、同時期に早速レコーディングしたストーンズには、ある種の潔さを感じます。
 ここでのバージョンはストリングスも入れ、あの永遠不滅のイントロも含めて、かなり原曲に忠実な仕上がりになっていますし、ミック・ジャガーのボーカルもソフトな黒っぽさが素敵です。
 しかし、それゆえに当時のストーンズのイメージからはズレも感じられ、ここまで2年間もお蔵入りしていたのでしょう。ところがその間に時代が大きくうねり、ラブ&ピースが求められていた時期に発売されたこのアルバムでは、曲の流れの中でも違和感がありません。ただしこれが発売されなかったイギリスでは、1971年まで未発表になっていました。
 またステレオとモノラルにおける違いは特にありませんが、CD化された際には気にならない程度にフェードアウトが早めてあります。主な収録は以下のとおりです。
ステレオバージョン / original stereo-mix
Flowers (London PS509 = US 12"LP:stereo)
Flowers = CD
Stone Age (Decca SKL5084 = UK Compilatino 12"LP)
モノラルバージョン / original mono-mix
Flowers (London LL3509 = US 12"LP:mono)

Ride On Baby
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham with Jack Nitzsche & Glyn Jones
録音:1966年11-12月、ロンドンのオリンピックスタジオで録音
共演:Jack Nitzsche (p)
 ストーンズの、と言うよりも、ストーンズのマネージャーだったアンドルー・オールダムが当時運営していたイミディエイト・レーベルに所属し、ミック・ジャガーのプロデュースでレコードを発売していたクリス・ファーロウ:Chris Farlowe が1966年秋に放ったヒット曲(Immediate IM038)として有名です。日本でも翌年に発売されており、当時、これ(東芝 SR1646)が欲しくて買えなかった悔しい思い出が、私の中に残っています。
 ちなみにクリス・ファーロウは、白人ながら非常に黒っぽいフィーリングで前述した「Out Of Time」も歌っており、1966年6月にはイギリスのチャートで1位の大ヒット(Immediate IM035)にしている、私の大好きな歌手です。
 で、ストーンズのバージョンは、そんな経緯から最初のレコーディングは1965年末頃に行われたらしいのですが、最終的に完成したのは、その約1年後とされています。
 音作りではブライアン・ジョーンズがハープシコード、マリンバ、ギター、パーカッション、そして多分メロトロンまで使いこなしての大奮闘! ポップな曲調と幾分シニカルな詩の内容を見事に彩っています。またボンゴドラムスに感じられるアフリカ色のニュアンスは、この頃からブライアン・ジョーンズが関心を抱いていた北アフリカ音楽からの影響でしょうか?
 それらの美味しいキモは当時リアルタイムのGS歌謡曲から1980年代のアイドルポップスにまで、我国でたっぷりとパクられているほどで、如何にも1960年代中期らしい究極の洋楽ポップスだと思いますが、なんとイギリスでは、このアルバムが正規盤CDとして国内発売される1988年まで未発表になっていました! ちなみにステレオとモノラルにおける違いは特に無く、主な収録は以下のとおりです。
ステレオバージョン / original stereo-mix
Flowers (London PS509 = US 12"LP:stereo)
Flowers = CD
モノラルバージョン / original mono-mix
Flowers (London LL3509 = US 12"LP:mono

Sittin' On A Fence
作者:Mick Jagger, Keith Richards
製作:Andrew Oldham with Jack Nitzsche
録音:1965年10月26日、ロンドンのIBCスタジオ&1966年、オリンピックスタジオで録音
 生ギターを主体にしたフォークソング風の曲で、元々はアンドルー・オールダムが売り出しを図っていたフォーク・デュオのトゥワイス・アズ・マッチ:Twice As Much に提供され、1966年に発売されたシングル盤(Immediate IM033)A面曲として、6月にはイギリスのチャート25位のヒットなっています。
 そしてこのバージョンは、そのデモテープを手直ししたもので、ミック・ジャガー&キース・リチャーズが2人だけで録音したところへ、ブライアン・ジョーンズのハープシコードとギターをダビングしてありますが、なかなかすっきりとした出来栄えになっています。
 ちなみにステレオとモノラルにおける違いは特に無く、主な収録は以下のとおりです。
ステレオバージョン / original stereo-mix
Flowers (London PS509 = US 12"LP:stereo)
Flowers = CD
Through The Past, Darkly (Decca SKL5019 = UK Compilatino 12"LP:stereo)
Through The Past, Darkly (UK LP version) = CD
More Hot Rocks (London PS262/7 = US Compilatino 12"LP x 2)
More Hot Rocks = CD
モノラルバージョン / original mono-mix
Flowers (London LL3509 = US 12"LP:mono)
Through The Past, Darkly (Decca LK5019 = UK Compilatino 12"LP:mono)


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」
参考文献:「Das Weissbuch / Dieter Hoffmann著」

(2007.02.19 敬称略・続く)