the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1967 part 53

■We Love You / Dandelion (Decca F12654:mono = UK / London 905:mono = US)
発売日:1967年8月18日(英)
発売日:1967年8月28日(米)
発売日:1967年10月10日(日)= キング TOP-1200
 フラワー・ムーヴメント真っ只中に発売されたストーンズ渾身のシングル盤ですが、音楽的な部分と同様の比重で彼等の私生活やビジネスのゴタゴタを避けては語れない1枚になっています。
 この年のストーンズは、ひとつの絶頂期であり、製作するレコードは充実し、またライブ活動を止めてしまったビートルズとは対照的にステージでは狂乱のライブを繰り広げていました。
 もちろんメンバーの私生活もド派手なスキャンダルの連続で、ミック・ジャガーはマリアンヌ・フェイスフルと熱愛中であり、またブライアン・ジョーンズはモデルとしても高名な女優のアニタ・パレンバーグ:Anita Pallenberg との結婚が近い……等々と報じられていました。
 ところが3月の初め、この2人にキース・リチャーズともうひとりの女性を交えてモロッコへ旅行した際、ブライアン・ジョーンズが喘息の急病で入院! しかもその間にキース・リチャーズとアニタ・パレンバーグが恋愛関係に発展するという、いやはやなんともの展開に……。
 またそのキース・リチャーズは2月に自宅が「危険薬物法」により捜索され、そこで開かれていたパーティに出席していたゲストまでもが取調べを受けていました。もちろんその中には、ミック・ジャガーとマリアンヌ・フェイスフルも含まれています。そして5月には裁判が……。
 この間にもストーンズは欧州巡業を敢行し、各地で暴動が頻発するという異常事態です。もちろん各国の入国管理ではメンバーへドラッグ疑惑で審査が厳しく、ミック・ジャガーやブライアン・ジョーンズにも政治的な発言が相次ぐ等、マスコミやファンはストーンズの動きに大狂騒です。
 ただし彼等の音楽的活動は充実しており、6月にはミック・ジャガーとキース・リチャーズがビートルズの「愛こそはすべて」のセッションにコーラスで参加、またブライアン・ジョーンズは5月に同じくビートルズの「ベイビー・ユーアー・ア・リッチマン」のセッションに加わり、サックスを吹いています。またビル・ワイマンやミック・ジャガーも他の歌手やバンドのプロデュースを手がけていますが、肝心のストーンズとしてのレコーディングも年頭から断続的に行われていたのです。
 しかしその最中の5月10日、ミック・ジャガーとキース・リチャーズは前述2月の家宅捜索から「麻薬不法所持罪」で裁判所に召喚され、結局、100ポンドで保釈されますが、なんと同日に、今度はブライアン・ジョーンズが自宅にて同罪で逮捕されるという事件が! まあ、この時も250ポンドで釈放されていますが、いくら不良がウリのストーンズであっても、ドラッグ問題はロックスタアとしては致命的な状況となる裁判が始まるのです。
 そしてミック・ジャガーとキース・リチャーズは陪審団から有罪の評決を下され収監! 裁判長の判決はミック・ジャガーが懲役3ヶ月、キース・リチャーズには懲役1年と言い渡されますが、当然、2人は控訴して、保釈金はそれぞれ7000ポンド!
 もちろん、こういう結末について世論は沸騰し、ファンや業界からは判決が厳しすぎるという声が圧倒的でした。その趣旨は「麻薬問題の生贄にされた」というものですから、行き過ぎた抗議行動で逮捕されるファンが続出したり、同じロックバンドとして他人事では無いと訴えるザ・フー:The Who の面々は、支援レコードとしてストーンズの名曲をカバーしたシングル盤「Under My Thumb / The Last Time(Track 604006)」を発売しています。
 こうして向かえた7月31日の控訴審では、当局も所期の目的を達成したということでしょうか、ミック・ジャガーには条件付きの無罪、キース・リチャーズへの判決は破棄という結末を迎えます。もちろん2人にはアイドルとしての責任ある行動を求める裁判長の意見が付帯していましたが、直後の会見でミック・ジャガーは「私生活はそっとしておいて欲しい」云々という、懲りない発言をしています。しかも一緒に拘引された2人の友人である某画商には恩赦的な扱いが一切なく、6ヵ月の実刑を務めさせたのですから!
 このあたりは、その後のドラッグ関連での様々な問題を思えば、全くやるせない気分にさせられますが、同時期にリアルタイムで行われていたレコーディングセッションから生み出されたのが、このシングル盤というわけです。しかも裁判中にも励ましてくれたファンへのお礼という宣伝までもあったというのですから、なんだかなぁ……。
 ちなみにチャートではA面曲がイギリスで第8位にランクされていますが、アメリカでは50位がやっと……。しかしB面曲が14位のヒットとなっています。また我国では音楽マスコミでさえ、このシングル盤の発売よりも、彼等を取巻く事件やスキャンダルを優先的に報道していたと思います。それが後の来日中止騒動に繋がるわけなのですが……。

We Love You / この世界に愛を (single version) : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham with Glyn Jones
録音:1967年7月、ロンドンのオリンピックスタジオ
共演:Nicky Hopkins (p), John Lennon & Paul McCartney (vo)
 イントロから強烈な印象を残すニッキー・ホプキンスのピアノ、エスニックなビートを敲き出すチャーリー・ワッツの強靭なドラムス、ビンビン唸るビル・ワイマンのベース、そして分厚く濁ったサウンドを構築するブライアン・ジョーンズのサックス&ブラスに歪みのギター! 当にこの時期にしか生まれなかった「サージェント・ペパーズ」症候群のひとつだと思います。
 そのビートルズからジョンとポールがコーラスで参加しているというのも、大きな話題でした。これはストーンズのメンバーが自分達のセッションに参加してくれたお礼という以上に、所属レコード会社との契約を超越した活動として、愛と自由の象徴のように扱われました。
 ちなみに歌詞はミック・ジャガーが収監中にムショ側=女王陛下から与えられたノートに書かれたものと、我国でも当時のラジオが伝えていましたが、徹頭徹尾、反体制をウリにしていた如何にもストーンズらしい宣伝です。
 しかも曲のイントロの前には監獄の廊下を歩く足音、「ギー、バタンッ」と閉じられる牢屋の扉をイメージした効果音が使われているのですから!
 またストーンズの面々に加えてマリアンヌ・フェイスフルが出演したプロモーション・フィルムも作られましたが、イギリス国内では放送禁止になっています。
 そして当時の私には、全く理解の範疇を超えていた曲でした。ミック・ジャガーのボーカルやジョンとポールが参加したとされるコーラスにはエコーがたっぷりで???でしたし、演奏そのものが雑音に近いような感じで、その頃のトランジスタラジオではバタバタした妙な曲にしか聞こえなかったのです。そのあたりはビートルズの「サージェント・ペパーズ」周辺の楽曲にも言えることで、この先、どうなっていくのかという不安感ばかりが先立つような按配でしたが、ビートルズの場合は卓越したメロディ感覚とサウンドプロデュースの妙が両立していましたからねぇ♪ しかしストーンズは……。
 これはあくまでも、リアルタイムの個人的な感想にすぎません。今聴くと、初期ソフトマシーンとかキング・クリムゾンあたりが作り出したジャズロックと一脈通じるところもあり、特にCD鑑賞ではハッとする部分もあるほどです。
 で、この曲にもまた、幾つかのバージョンが存在しており、これはとりあえずシングルバージョンのモノラル仕様ということで、曲の最後にB面曲「Dandelion」の一節が小さく入っているのがミソ♪ このシングル盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●Single Collection - The London Years = CD
●Singles 1965 - 1967 = CD

Dandelion (single version) : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Andrew Oldham with Jack Nitzsche & Glyn Jones
録音:1966年11-12月、ロンドンのオリンピックスタジオで録音
 曲名も含めて、これもフラワームーヴメント丸出しのポップな曲調で、ブライアン・ジョーンズがハープシコードとオーボエでエレガントな彩りを副えているのが大正解! ノーテンキなコーラスやバタバタするチャーリー・ワッツのドラムスも良い感じです♪
 しかも曲の最後には、「We Love You」のピアノイントロが小さく入っているという、つまりA面曲と同じ仕掛けでループを狙ったというニクイお遊びが、全くビューティフルだと思います。
 ちなみにこの曲にも幾つかのバージョンが存在しており、これはとりあえずシングルバージョンのモノラル仕様ということで、このシングル盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●Single Collection - The London Years = CD
●Singles 1965 - 1967 = CD

In Another Land / The Latern (London 907:mono)
発売日:1967年12月4日(米)
発売日:1968年4月20日(日)= キング TOP-1262
 これは続けて発売される新作アルバム「サタニック・マジェスティーズ」にも含まれている楽曲のカップリング盤ですから、先行シングルという扱いも可能ですが、実は発売名義がビル・ワイマンのファーストソロという恐ろしさです!
 もちろんB面はストーンズ名義になっていますが、この経緯については、やはり当時のグループを取巻く様々な事情が反映されているようです。
 まず前述したメンバーの麻薬事件と裁判のゴタゴタ、恋愛問題、新作レコーディングの難航、さらに巡業での暴動頻発、おまけにマネージメント側との確執が重なって、バンドを取巻く人間関係は最悪でした。
 特にデビュー以来のマネージャーだったアンドルー・オールダムとの関係は完全に行き詰まり、8月には両者が決別! 以降のプロデュースはストーンズが自ら行うことになり、マネージメントは後に悪名ばかりが名高くなるアラン・クラインが引き継ぐことになるのですが……。
 肝心の新作レコーディングにはメンバーが勢揃いすることが無い日もあり、それゆえに現場ではサポートメンバーが重宝された作業が進められた様です。このA面曲もそのひとつですが、これがアメリカ優先のシングル盤として発売されたというあたりに、新マネージャーに就任したアラン・クラインの思惑が見え隠れしています。しかしチャートでは87位が最高でしたし、我国で発売された時にはAB面が逆にされ、しかもステレオバージョンになっていました。

In Another Land (single version)
作者:Bill Wyman
製作:The Rolling Stones with Glyn Jones
録音:1967年6-9月、ロンドンのオリンピックスタジオ
共演:Nicky Hopkins (key), Steve Marriott & Rinnie Lane (g)
 ゴタゴタを究めた時期のレコーディングのある日、連絡の不備からスタジオに集ったビル・ワイマン、チャーリー・ワッツ、そしてニッキー・ホプキンスだけで録音が始められた曲だと言われています。
 楽曲そのものも、ストーンズ内で初めて発表されるビル・ワイマンの完全オリジナルですし、もちろん作者本人がボーカルとベースを担当していますが、これがなかなかの傑作! 曲調は当時の典型的なサイケロックで、エコーの強いボーカルやニッキー・ホプキンスのハープシコードが印象的ながら、サビでは後の「ベカーズ・バンケット」以降で確立されていくストーンズ独特のノリが出ています。
 このあたりは、この曲を録音するように強く勧めていたグリン・ジョンズの影響か? あるいはちょうど隣のスタジオで仕事中だったスモール・フェイシズ:The Small Faces からスティーブ・マリオット&ロニー・レーンの助っ人参加によるものか? 諸説ありますが、やはりストーンズだけのグルーヴを生み出していたのはビル・ワイマンとチャーリー・ワッツだったという証明かと思います。実際、ビル・ワイマンが抜けて以降のストーンズは、リズム&ビートがすっきりしすぎて物足りないというファンが多いのでは……?
 ちなみに完成された音源にはミック・ジャガーのコーラス、ブライアン・ジョーンズのギターが後からダビングしてありますが、アルバムバージョンにあった曲終わりのイビキをカットしたのが、このシングルバージョンで、当然モノラル仕様になっています。
 またステレオとモノラルの両バージョンにおける違いは特にありませんが、初期日本盤シングルに収録されているのは、このシングルバージョンのステレオミックス! しかしこれは多分、日本に送られて来たアルバム用のステレオマスターテープからイビキの部分をカットして、我国独自で作り上げたフェイクという疑惑が濃厚です。
 また1989年に発売された「Single Collection」には、やや擬似ステレオ風のミックスで収録されていますが、サイケ風味が強調された侮れない良さがあります。
 この曲の主な収録は以下のとおりです。
モノラルバージョン / original mono-mix
In Another Land / The Latern (London 907 = US 7"Single)
Single Collection - The London Years = 2002年リマスターのCD
Singles 1965 - 1967 = CD
擬似ステレオバージョン / simulated stereo-mix
Single Collection - The London Years = 1989年リマスターのCD
ステレオバージョン / original stereo-mix
ランターン / イン・アナザー・ランド (キング TOP-1262 = JP 7"Single)

The Latern (single version) : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:The Rolling Stones with Glyn Jones
録音:1967年7-9月、ロンドンのオリンピックスタジオ
共演:Nicky Hopkins (p)
 ニッキー・ホプキンスのピアノと生ギターに導かれた幻想的で力強いサイケロックです。
 もちろんこの曲はアルバム「サタニック・マジェスティーズ」にも含まれていますが、イントロ前に入る効果音の鐘がステレオバージョンよりも1回多いのがモノラルバージョンという違いがあります。つまりオリジナルシングルバージョンは鐘が3回!
 う〜ん、それにしても思わせぶりなミック・ジャガーの歌いまわしと混濁したエレキギターが、生ギターやピアノと上手くミスマッチ(?)して、たまりません。こういう妙な感想が出てしまうあたりに、当時のサイケデリックの真骨頂があるような気がします。
 このシングル盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●In Another Land / The Latern (London 907 = US 7"Single)
●Their Satanic Majesties Request (Decca TXL103 = UK 12"LP:mono)
●Their Satanic Majesties Request (London NP2 = US 12"LP:mono)
Single Collection - The London Years = 2002年リマスターのCD


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」
参考文献:「Das Weissbuch / Dieter Hoffmann著」

(2007.02.24 敬称略・続く)