the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1968 part 13

■Jumpin' Jack Flash / Child Of The Moon
(Decca F12782:mono = UK / London 908:mono = US)
発売日:1968年5月24日(英)
発売日:1968年6月1日(米)
発売日:1968年7月1日(日)= キング TOP-1282
 序文でも述べたとおり、私の人生を決定付けたシングル盤です。
 それは今日に続くストーンズの重要分岐点に位置する名曲「Jumpin' Jack Flash」の登場です! チャートでもイギリスでは1位、アメリカでも3位、もちろん我国でも大ヒットています。
 ところが、そういう大成功の裏には、やはり生みの苦しみというか、グループは内外で大揺れでした。
 まず、マネージメントの問題は、デビュー以来のマネージャーだったアンドルー・オールダムとの決別が1967年9月に正式決定、新たにアメリカ人の豪腕会計士=アラン・クラインをビジネスパートナーに迎え入れます。
 しかしグループの音楽的な方向性は、ストーンズ自らがプロデュースすることになったものの、もともと彼等にはビートルズにおけるジョージ・マーテインのような経験豊富で物分りが良いディレクターがついていなかった事もあり、曲作りはミック・ジャガー&キース・リチャーズをメインとしながらも、バンドとしての現場ではブライアン・ジョーンズが演奏面を仕切っていたようです。
 実際、公式・非公式を合わせて1967年頃までのライブ音源を聴くと、そこではブライアン・ジョーンズがギターばかりで無く、ハーモニカ、ダルシマー、ツィター、マリンバ、シタール、キーボード等々の各種楽器を自在に操って独自の強烈な存在感を示しておりますし、もちろんスタジオレコーディングの現場でもアレンジのキメとか、サックスやフルート等々の各種管楽器、あるいはメロトロンというストリングス効果を出せる当時としては最新鋭のキーボードを導入するといった使用楽器の選定と演奏、さらにコーラスワークあたりにまでも影響力を及ぼしていたのは、残された名演・名盤にしっかりと記録されています。
 ですから、ライブバンドというストーンズの本質を一番良く理解しているミック・ジャガーにしても、ブライアン・ジョーンズが居ればこそ、安心してサイケデリック路線に深入り出来たのだと思います。資料によれば、この時期、ミック・ジャガーとアラン・クラインはアメリカ巡業の企画に入っており、もし実現していれば「ボタンの間」や「サタニック・マジェスティーズ」からの楽曲も演奏された可能性が強いと、私は思っています。何故ならば、楽器の天才であるブライアン・ジョーンズが、そこに居るのですから!
 しかし現実は儘なりません。
 頼みの綱のブライアン・ジョーンズは悪いクスリや心労で心身ともにボロボロ……。燃え尽きる蝋燭の最後の炎のような煌きでサタニック・セッションは乗り切ったものの、実は入退院の繰り返しだったようです。しかも「麻薬不法所持罪」の裁判では1967年10月30日に9ヶ月の実刑判決の後、控訴して保釈中の身でした。そして同年12月12日の控訴審では、実刑ではないものの、3年間の保護観察処分を下されたのです。つまり執行猶予付きの有罪判決!
 ファンにとっては、これで一安心かもしれません。しかしマネージメントやバンド側にとっては、なかなか痛い処分だったでしょう。なにしろこれでブライアン・ジョーンズはアメリカを中心とした諸外国への入国が難しくなり、それはストーンズのライブ巡業の不可能を意味していたのです。
 さて、こうした事態の最中、キース・リチャーズは自宅で古いブルースのレコードを聴き漁り、独学に勤しんでいたことは既に述べました。そして恐らく、ブライアン・ジョーンズに頼らなくとも、自分のギターでバンド全体をコントロール出来る手法を考え抜いていたのではないでしょうか? もちろん一緒に曲を作っているミック・ジャガーもそれに共鳴し、出来上がったのが、この名曲「Jumpin' Jack Flash」だというのが、例によって私の偉大なる妄想です――

Jumpin' Jack Flash : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Jimmy Miller
録音:1968年3-4月、ロンドンのオリンピックスタジオ
 発売された当時、中学生だった私の人生を大きく狂わせた悪魔の名曲! 聴く者全てを狂熱地獄へと誘うギターリフはロック永遠の輝きを象徴していますが、その前の初っ端に炸裂するツ〜ン、ツ〜ンというオープンコードによるギターの響きが、実はキモではないかと思います。
 そしてブ〜ン、ブ〜ンと唸るビル・ワイマンのベース、小刻みなリズムギターとチャーリー・ワッツのドラムスのコンビネーションが、これまで聴いたことのないリズム的興奮を作り出し、そこへミック・ジャガーが史上最強の「ワン、ツー」という掛声! ここまでのお膳立てがあって、ようやく始まるのが、あのリフなんですねぇ〜♪ 全く周到としか言えません。
 ちなみに問題のリフは、ビル・ワイマンが自分で作ったと主張し続けて今日に至っています。
 まあ、それはそれとして、演奏は幾層にも重ねられたギター、執拗なマラカスのリズム、中間部やラストコーラスでのサイケ風味、そしてそれを増幅するサックスやオルガンの隠し味……等々、そういうものがバンド全体の突進力として見事に集約されていますが、これは新たに参加したアメリカ人プロデューサーであるジミー・ミラーの手腕によるところが大きいと感じます。
 この人は本職がドラマーだった所為か、リズムアプローチがとても鋭敏で、ストーンズと邂逅する以前にはスペンサー・デイビス・グループやトラフィックといった有名バンドを成功に導いたのも、そこを基本にしていたようです。
 で、ここでは既に述べたように、初っ端に鳴り響くツ〜ン、ツ〜ンというオープンコードによるギターがリズムのウラから入るというか、半拍喰って始まるようなビート感が、おそらくジミー・ミラーの指示によるものだと推察しています。それはキース・リチャーズの意図を体現したものでしょうか、とにかく今日まで続くストーンズならではの必殺技になったのです。
 もちろん、この時期の彼等は名盤「ベガーズ・バンケット」として結実するレコーディングの真っ最中で、この曲もその中のひとつとして録音されたのですが、そのあまりの出来の良さに急遽シングル盤として発売されたものです。ただし、この時代、LPは既にステレオ仕様がメインになっていたものの、シングル盤はまだまだモノラル仕様が一般的ということで、この曲もオリジナルはモノラルバージョン! 主な収録は以下のとおりです。
●Through The Past, Darkly (Decca LK5019 = UK Compilatino 12"LP:mono)
●Single Collection - The London Years = 2002年リマスターのCD
●Singles 1968 - 1971 = CD

Child Of The Moon : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Jimmy Miller
録音:1968年3-4月、ロンドンのオリンピックスタジオ
 エレキギターのフィードバックを使ったイントロから怠惰な雰囲気が充満したサイケロックの隠れ名曲になっています。そのあたりは明らかに「ボタンの間」や「サタニック・マジェスティーズ」からの影響を引きずっていますが、力強いギターのコード弾きやチャーリー・ワッツの重心の低いドラムス、そしてビル・ワイマンのファズベース! それを立体的に構築した音作りが全く見事です。同時期のビートルズ、特にジョン・レノン色が強いあたりもクセモノでしょう。
 ただし続くアルバム「ベガーズ・バンケット」収録の楽曲群とは完全に肌合いが違っていますから、ここで発表されたものと思われます。ちなみに要所で聞かれるオルガンやサックスはブライアン・ジョーンズによるもので、なんともいえない味わいが素敵です♪
 そしてこの曲も、後に幾つかのステレオバージョンが発表されますが、ここでのオリジナルはあくまでもモノラル仕様ということで、主な収録は以下のとおりです。
●Single Collection - The London Years = 2002年リマスターのCD
●Singles 1968 - 1971 = CD

※Jumpin' Jack Flash / Child Of The Moon (London 45-LON-908:mono = US)
 このシングル盤にもアメリカだけのプロモーションディスクが出されており、A面曲だけが特別な編集バージョンになっています。また同時にステレオ仕様のプロモーション盤 (London 45-LOS-908:mono = US) も出たと資料にありますが、こちらは残念ながら聴いたことも現物を確認したこともありません。

Jumpin' Jack Flash (promo edit version) : original mono-mix
 2コーラス目が終わった間奏部分から例のリフの部分をカットして3コーラス目に繋ぎ、フェードアウトもかなり早くして、全体を3分ほどに短縮編集してありますので、完全に物足りない世界です。
 これはおそらくステレオバージョンでも同じかと思われますが、そのステレオミックスがどうなっているかが非常に気になるところ……。


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」
参考文献:「Das Weissbuch / Dieter Hoffmann著」
参考文献:「Collector's File / Wilfried Stember著」
参考文献:「ストーンピープル / ローリング・ストーンズ・ファンクラブ編」

(2007.04.14 敬称略・続く)