the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1968 part 23

■Street Fighting Man / No Expectations (London 909:mono = US)
発売日:1968年8月31日(米)
発売日:1968年10月20日(日)= キング TOP-1320
 ストーンズ会心の大ヒット曲「Jumpin' Jack Flash」に続くシングル盤で、また同時に、既に録音が完了していた新アルバムからの先行シングルという位置付けになっています。
 しかしこれは本当のところ、新アルバムがジャケットの問題からバンド側とレコード会社側が対立していた事情があってのことで、それゆえに待ちきれなくなったアメリカのロンドンレコードが優先して発売したもののようです。
 ただし後に発表されるアルバム収録のバージョンとは別物の仕上がりになっていますから、要注意!
 肝心のヒット状況は、一部地域で放送禁止になった所為もあり、A面曲がアメリカのチャートで最高48位止まりでした。しかし、その過激で悪魔的な歌詞とドロドロの演奏は強烈な印象を残し、ストーンズのライブ演目としては今日まで必ず求められている永遠の名曲になっています。
 またB面には、ブライアン・ジョーンズが白鳥の歌ともいうべき素晴らしいスライドギターを披露した、忘れえぬ名曲・名演が収録されています。

Street Fighting Man (single version) : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Jimmy Miller
録音:1968年3-4月、ロンドンのオリンピックスタジオ
共演:Nicky Hopkins (p), Dave Mason (g)
 はっきり言うと、曲調は「Jumpin' Jack Flash」の二番煎じかもしれませんが、そのサウンドのドロドロした混濁さとか、当時の学生運動や政治集会における暴動を素材にした歌詞の内容が、強烈な印象となっています。
 そして「夏は路上で暴動だぜっ」と、はっきり言い切っています!
 このあたりがシカゴを中心に放送禁止にされた要因ですが、当時のアメリカではロバート・ケネディ上院議員や黒人指導者のキング牧師が暗殺されたことによる政情不安と暴動騒ぎが大問題になっていましたから……。
 ただしミック・ジャガーは「貧しいガキが金を儲けるにはロックバンドをやるっきゃ〜ない!」と、特に本音を吐露しています。つまり最初っから革命をあきらめているようなところが???
 ですから、そのサウンドが異常なほどにオドロの雰囲気に満ちていて、必死でシャウトするミック・ジャガーのボーカルが完全に飲み込まれているのにも、必然性が感じられます。まずイントロのギターによるコード弾きとチャーリー・ワッツのヘヴィ級ドラムスが強烈! さらにブライアン・ジョーンズのシタールやエスニック系の打楽器までもが執拗に絡んでいるという、まさに修羅場の暴動ロックが見事に作られているのです。ニッキー・ホプキンスのピアノやビル・ワイマンのベースも烈しいですねぇ。
 ちなみにこうした演奏と音作りには、プロデューサーのジミー・ミラーとブライアン・ジョーンズの対立があったと言われており、頑なにギター以外の楽器に固執するブライアン・ジョーンズの所為でギターパートの弱さを懸念したジミー・ミラーが、同時期に製作を手がけていたトラフィックから、ギタリストのデイヴ・メイソンを助っ人参加させたという事情があるようです。
 ちなみに、このトラフィックというバンドは当時2枚目のアルバムを録音中で、これこそ傑作「トラフィック:Traffic(Island:ILPS9081)」という名盤に結実するのですが、その内容は所謂スワンプロックの先駆けであり(「バングラ・デシ・コンサート始末4」参照)、たまたま同じスタジオで仕事をしていたミック・ジャガーがそれを気に入ってジミー・ミラーに新作セッションのプロデュースを依頼したというのが、今では定説になっています。
 で、そういうわけですから、アメリカでのヒット状況もイマイチでしたし、それは我国でも同様でしたが、リアルタイムのラジオでこの曲を聴いた私は、もちろんシングル盤を即ゲット! ただし当時のトランジスタラジオでは、モンモンワンワンという印象でしたし、レコードに刻まれた音としても、なんだかなぁ……。というのが正直な気持ちでした。
 それは既に述べたように、ボーカルパートが演奏に埋もれ気味な所為かもしれません。これはシングルバージョン特有のもので、もちろんモノラル仕様ですし、後に発表されるアルバムバージョンとは、ボーカルパートそのものが違っているのでした。
 このシングル盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●Single Collection - The London Years = 2002年リマスターのCD
●Singles 1968 - 1971 = CD
●ストリート・ファイティング・マン / ノー・エクスペクテーションズ
●●●●●●●●●●●●●●●●●● (キング TOP-1320 = JP 7"Single)
No Expectations : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Jimmy Miller
録音:1968年3-4月、ロンドンのオリンピックスタジオ
共演:Nicky Hopkins (p)
 美しくも哀しい、ストーンズを代表するスロー曲!
 そのキモは、もちろんブライアン・ジョーンズの、うち震えるように繊細なスライドギターです。全篇を彩るニッキー・ホプキンスのピアノやキース・リチャーズの生ギターも味わい深く、ミック・ジャガーの抑制の効いたボーカルも素晴らしいのですが、それは全てブライアン・ジョーンズのスライドギターがあってこそ!
 当時のブライアン・ジョーンズは身も心も、そして社会的にも破滅の瀬戸際にあり、当然、バンド内での活躍もロクに出来なかったようですが、ここで聞かれるスライドギターのように、いざとなれば、まだまだ誰も立ち入ることの出来ない天才性を発揮するという、そんなブライアン・ジョーンズのピュアな魂に触れることが出来る名演だと思います。
 ところで、この曲も後に「ベガーズ・バンケット」に収録されるのですが、愕いたことにCD化された時、このモノラル仕様のバージョンを忠実に再現したブツがひとつも無いのです
 例えば1989年に3枚組で出された「シングルコレクション」では、ブライアン・ジョーンズのスライドギターが薄くミックスされ、また2002年にリマスターされた同ボックスセットでは、ややピッチ高く=演奏スピードが早くされています。もちろんアルバム「ベガーズ・バンケット」はステレオ仕様ですから、問題外……。
 ということで、このシングル盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●Beggars Banquet (Decca LK4995 = UK 12"LP:mono)
●Beggars Banquet (London LL3539 = US 12"LP:mono)
●ストリート・ファイティング・マン / ノー・エクスペクテーションズ
●●●●●●●●●●●●●●●●●● (キング TOP-1320 = JP 7"Single)


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」
参考文献:「Das Weissbuch / Dieter Hoffmann著」
参考文献:「Collector's File / Wilfried Stember著」

(2007.05.06 敬称略・続く)