the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1969 part 13

■Honky Tonk Women / You Can't Always Get What You Want
(Decca F12952:mono = UK / London 910:mono = US)
発売日:1969年7月4日(英)
発売日:1969年7月11日(米)
発売日:1969年8月20日(日)= キング TOP-1422
 1969年に入って初めて発売されたストーンズの新譜ですが、もちろん大ヒットした事実以上に、様々な意味で大きな出来事を含んでいます。
 まず一番驚かされるのが、ストーンズのリーダーだったブライアン・ジョーンズのグループ脱退! そして代わりのギタリストとしてミック・テイラーの新加入です。
 これは1967年中頃から特に目立ってきたブライアン・ジョーンズの精神&肉体の疲弊から禁止薬物使用事件での有罪判決、さらにはグループ内の人間関係、恋愛問題の縺れ等々が大きく、しかもブライアン・ジョーンズが巡業に参加出来る見込みが無い事もあって、脱退とは名ばかり……。現実にはレコーディングにも参加することがほとんど無くなり、バンドメンバーから解雇を通告されたのです。
 当時のブライアン・ジョーンズは前年11月にサセックス州ハットフィールド村に古い邸宅を購入し、静養を兼ねて隠遁していたそうですが、それでもストーンズが企画制作して結局は未放送に終わった「ロックンロール・サーカス」へも出演し、またその前後には断続的に行われていた新作レコーディングにも時折は参加していました。ただし好不調の波がはっきりしていたのは、後に解禁復刻された「ロックンロール・サーカス」の映像からも明らかです。
 そして1969年6月8日、ブライアン・ジョーンズの家を訪れたミック・ジャガー、キース・リチャーズ、そしてチャーリー・ワッツを交えたミーティングにより、ブライアン・ジョーンズのバンドからの解雇が決定するのです。その手切れ金は10万ポンド! しかもストーンズが存続する限り、毎年2万ポンドが支払われるという条件でした。もちろんブライアン・ジョーンズにも様々な言い分があったはずですが、とにかくこれを了承、6月10日には新メンバーとして当時は全く無名に近かったミック・テイラーの参加が公表され、新生ストーンズお披露目の無料コンサートが7月5日にハイドパークで予定されるのです。
 そのミック・テイラー:Mick Taylor は当時21歳だった金髪の美青年でしたが、既に17歳の頃からジョン・メイオール&ブルースブレイカーズ:John Mayalll & Bluesbreakers に参加していた凄腕ギタリスト! 実はブライアン・ジョーズの解雇が決定する以前、多分4月頃からレコーディングセッションに呼ばれていたそうで、それにはストーンズのサブメンバーだったイアン・スチュアートの強力な推薦があったと言われています。
 ところが7月3日午前零時過ぎ、ブライアン・ジョーンズが自宅プールの底に沈んでいるのが発見されるという悲劇! 死因は溺死と公表されたものの、その背景にはドラッグの過剰摂取、自殺、他殺、事故……等々、事件直後から今日まで様々な憶測が囁かれ、関連書籍や映画が発表されています。近年では2005年に公開されたスティーヴン・ウーリー監督の「ストーンズから消えた男」が記憶に新しいところでしょうが、真相は依然としてプールの底です。
 こうして劇的な混乱の最中、7月4日にはこのシングル盤が発売され、翌日のハイドパーク無料コンサートは急遽「ブライアン・ジョーンズ追悼公演」として予定通り開催されるのですが……。

Honky Tonk Women (single version) : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Jimmy Miller
録音:1969年3-4月、ロンドンのオリンピックスタジオ
共演:参加人員不明のホーンセクション
 ミック・テイラーが加わった新生ストーンズの新曲はチャーリー・ワッツの印象的なカウベル&ドラミングでスタートし、そこにキース・リチャーズの変則チューニングされたリズムギターが入ってくるという、今日に繋がるストーンズ独特のビート感が確立された大名曲! 全篇に横溢するゴスペル&ファンキーな雰囲気、そして一緒に歌えるサビも気持ち良く、もちろん英米ではチャート1位の大ヒットになっています。
 何よりも特筆されるのはキース・リチャーズのギターが「オープンGチューニング」にされた事でしょうか。これは全くフレットを押えていない開放弦でGの和音が鳴るチューニング(6弦から順にDGDGBD)で、黒人ブルースのスライドギター奏法では頻繁に用いられるのですが、これでロック的なリフまで弾くという発想が新鮮で秀逸です。
 しかしこれは当時、ストーンズ関連のレコーディングに助っ人参加していたアメリカ人ギタリストのライ・クーダー:Ry Cooder から教えられたというのが真相らしく、この曲のキメのリフに関しても、ライ・クーダーは自分から盗まれたものと主張しています。
 まあ、それはそれとして、とにかくチャーリー・ワッツのタイトで重いドラミング、サビから入ってグイノリに蠢くビル・ワイマンのベース、そして幾分ズレたようなキース・リチャーズのリズムギターが麻薬的なグルーヴを出しています。もちろん猥雑な歌詞を歌うミック・ジャガーの粘っこさや絶妙にアレンジされたホーンセクションも素晴らしく、間奏で聞かせるキース・リチャーズのギターソロなんか、もうヘタウマの極北♪ 何度聞いても飽きないほどに私は大好きです。
 気になるミック・テイラーの貢献については、個人的にはそれほど感じないのですが、サビからのボーカルのバックで絡んでくるフレーズがそうなんでしょうか? 後年のライブ映像を観ると、けっこう執拗に単音弾きを聞かせているのですが……。
 ちなみにこの曲も当時のシングル盤では当たり前のモノラルミックスで、後年、様々なアルバムに収録されるバージョンと比べると、ピッチが幾分早くなっています。しかもオリジナル・モノラルバージョンは、2008年2月現在、未CD化だと思われます。

You Can't Always Get What You Want
You Can't Always GethYu / 無情の世界 (single edit version) : original mono-mix
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:Jimmy Miller
録音:1968年5-6月&1969年3月、ロンドンのオリンピックスタジオ
共演:Jimmy Miller(ds) Rocky Dijon(per) Al Kooper(p,org,frh,vib) Jack Nitzche(arr)
共演:Doris Troy(vo) Madelaine Bell(vo) Nannette Newman(vo) The London Bach Choir
 ストーンズ流儀のゴスペルロックで、結論から言うと、後に発表される傑作アルバム「レット・イット・ブリード」に収録の名曲をシングル盤用に短く編集したバージョンです。
 そして録音時期やゲスト参加メンバーからも推察出来るように、ここにはブライアン・ジョーンズ、ミック・テイラー、さらにはチャーリー・ワッツも演奏に加わっていませんが、共演者の中ではアル・クーパーのオルガンとピアノが良い味を出しまくり♪ 既に前年12月の「ロックンロール・サーカス」でライブが披露されていたことから、主要ゲスト陣のパートは3月のスタジオセッションでダビングされたものでしょうが、全体の纏まりと完成度は圧巻です。
 ちなみにアルバムバージョンとの比較では、イントロのコーラスパート、そして2&3コーラス目がカットされ、もちろんモノラルミックスになっています。
 う〜ん、それにしても、この高揚感は最高ですねぇ〜♪ リアルタイムの中学生時代に聴いた時は、ちょっと大袈裟なコーラスとか???だったんですが、後にゴスペルとかジャズ等の黒人音楽、さらにはスワンプロックあたりにシビレてからは、この曲と演奏の密度の濃さに完全降伏しています。特にこのシングルバージョンは大好き♪
 このアナログシングル盤以外の主な収録は以下のとおりです。
●Slow Rollers (Decca TAB30 = UK Compilatino 12"LP:mono)
●Single Collection - The London Years = 2002年リマスターのCD
●Singles 1968 - 1971 = CD


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」
参考文献:「Das Weissbuch / Dieter Hoffmann著」
参考文献:「Collector's File / Wilfried Stember著」

(2008.02.27 敬称略・続く)