the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1969 part 53

■Liver Than You'll Ever (Bootleg Live Album)
A-1 Carol
A-2 Gimmie Shelter
A-3 Sympathy For The Devil
A-4 I'm Free
A-5 Live With Me
B-1 Love In Vain
B-2 Midnight Rambler
B-3 Little Queenie
B-4 Honky Tonk Women
B-5 Street Fighting Man
 1969年、ついにライブの現場に本格復帰したストーンズは11月7日から約1ヵ月間の北米巡業を敢行します。それはもちろん大盛況! 通常より高いとマスコミから批判もあったチケットは忽ち完売ということで、12月6日には急遽、予定外だった野外での無料コンサートをサンフランシスコのオルタモントで開催することになるのですが、それは後述します。
 それよりも歴史的に大きな出来事だったのが、この巡業コンサートからライブ録音された、ストーンズ初の海賊盤アルバムが登場したことです。
 その「Liver Than You'll Ever」と題されたアナログ盤LPは、白いボール紙のジャケットにアルバムタイトルがスタンプ押しされたシンプルなデザインでしたが、録音状態が当時としては奇跡的に素晴らしく、当然モノラル録音ながら臨場感もあり、演奏がきちんと楽しめる優れものでした。もちろん局地的な噂から最後には爆発的に売れまくり、最初の発売は1970年1月とされていますが、忽ちコピー盤が出回って、今ではどれがオリジナルか不明になっているほどですし、これに愕いたレコード会社とストーンズ側が急遽、公式ライブアルバム「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」を出したのは有名な話! 全く今となっては、感謝する他はありません。
 で、ここに収録されたのは上記の10曲ですが、録音データは1969年11月9日、カリフォルニア州オーランドで行われたセカンドショウ=夜の部と特定され、後年には残りのソースも発掘、CD時代の現在では、当日の演目がプログラムどおりに全曲聞けるようになりました――
01 Jumpin'
01 Jumpin' Jack Flash
02 Carol
03 Sympathy For The Devil
04 Stray Cat Blues
05 Prodigal Son
06 You Gotta Move
07 Love In Vain
08 I'm Free
09 Under My Thumb
10 Midnight Rambler
11 Live With Me
12 Gimmie Shelter
13 Little Queenie
14 Satisfaction
15 Honky Tonk Women
16 Street Fighting Man

――というプログラムは、この北米巡業では基本的なものですし、音源の性質上、オーバーダビングやテープ編集等のスタジオ手直しが入っていませんので、これを聴くことによって当時のストーンズの生々しいライブステージに接することが出来るというわけです。
 ちなみに隠密録音とはいえ、どうしてこのような良好音源が残されたのか? それには以下のような諸説が代表的です。
 ●当日行われたラジオ放送音源の流用、あるいは、そのスタッフを装っての録音
 ●ストーンズ側ローディの手引き
 ●映画撮影用のマイクリハーサル音源
 いずれにしろ、当時はDATなんてありませんでしたし、カセットテープはありましたが、まだまだ音楽用には使えない状態でしたから、客席からのモノラル録音とはいえ、これだけの音質を確保するには大きなオープンリールのテープレコーダーと優秀なマイク、さらに電源が必要だったわけです。う〜ん、凄い情熱と努力に感謝!

Jumpin' Jack Flash
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 臨場感のある拍手、ステージでの短いチューニングがあって、ミック・ジャガーの「オ〜ライ〜」の掛声、そして全ての人を狂わせる熱いリフが鳴り出せば、辺りはすっかりストーンズ色に染まってしまいますねっ♪ まるっきりその場の観客の中に居るような録音状態は各楽器のバランスも良く、ボリュームを上げるほどに最高のド迫力!
 しかし途中で何箇所か音が引込んだり、ドロップアウトしています。これは多分、マイクを隠すためでしょうね。また、それゆえに最初のアナログ盤リリース時には収録から外されたのでしょう。しかしそういう部分さえもロック黄金期の証として、楽しむ他はありません。
 肝心の演奏は7月のハイドパーク公演よりも纏まりが良くなって、ミック・テイラーが短いながらも、溌剌としたギターソロを聞かせていますし、オリジナルのスタジオ録音バージョンよりもテンポを落としたドロドロにハード雰囲気は、この時期のストーンズならではの魅力ですね♪

Carol / かわいいキャロル
作者:Chuck Berry
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 1964年に発売されたストーンズのデビューアルバムに収録されていたR&R古典を、こんな時期に堂々とやってしまう潔さ! まあ、当時はロックンロールのリヴィバル現象があったとはいえ、当に世界一のR&Rバンドは自分達だという主張が見事に観客を熱狂させています。
 ちなみに資料によれば、この北米巡業には前座としてオリジナルを歌っていたチャック・ベリーも同行していましたから、なおさらに凄いですねぇ〜。
 これが十八番というキース・リチャーズのギターもイキイキとしていますし、デビュー期のバージョンに比べて、グッと重心が低くなったリズム隊のグルーヴが素晴らしいと思います。

Sympathy For The Devil / 悪魔を憐れむ歌
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 ハイドパーク公演では狂乱熱狂のクライマックスだった演目が早くもここで登場! まあ、その時のアフリカ系打楽器隊が不参加ですから……。しかし2本のギターのコンビネーションは快調ですし、全体のビートもなかなかファンキー色に染まっています。
 ちなみに北米巡業を意識しての事でしょうか、ミック・ジャガーはオリジナルから「ケネディを殺す云々」という歌詞の三番を削って歌っていますので、なおさらにスッキリというか……。

Stray Cat Blues
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 前曲の演奏で体制に媚びてしまった反省からか、ここではオリジナルの歌詞「15歳」を「13歳」に変えて、よりエグイ演奏を展開しています。ミック・テイラーの流麗なギターソロ♪ やっぱりストーンズのブルースロックは素敵です、このドロリとした感触が!

Prodigal Son / 放蕩むすこ
作者:Mick Jagger & Keith Richards → Robert Wilkins
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 ストーンズがルーツに回帰したと言われた「ベガーズ・バンケット」の中で、それを最も証明したアコースティックなブルースのカバー曲ですから、ここはミック・ジャガーがキース・リチャーズの生ギター伴奏だけで歌ってくれます。
 演奏する前に観客へ座ってくれるように促すミック・ジャガーも嫌味なく、自分達も椅子に腰掛けて歌う姿は、当時のステージ写真やブートビデオの映像でもお馴染みですね。足で拍子をとりながら一生懸命のキース・リチャーズに好感が持てます。

You Gotta Move
作者:Fred McDowell & Gary Davis
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 これより後の1971年に発売の傑作アルバム「スティッキー・フィンガース」に収録されるカントリーブルースのカバーですが、またまたオリジナルを大胆に改変しています。しかしここでは前曲と同じくミック&キースによる2人ぼっちの歌と演奏ですから、シンプルでイナタイ雰囲気は何とも味わい深いところ♪
 ちなみに前述した「スティッキー・フィンガース」に収録の演奏は、この北米巡業終了後にアラバマ州のマスルショールズに赴き、現地のスタジオで仕上げられたものですが、既に基本はここに完成していたという種明しが嬉しいところです。

Love In Vain / むなしき愛
作者:Robert Johnson
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 演奏する前にミック・ジャガーが「もう一丁、ブルースをやるよ」と言ってスタートするあたりから、会場に広がる良い雰囲気が感じられます。曲はハイドパーク公演でも名演を聞かせていましたから、既にこの頃のストーンズにとっては十八番の余裕♪
 ミック・テイラーのスライドギターは歌詞と呼応して列車の汽笛をイメージさせたり、感情の奥深くまで踏み込んでくるような、なかなか繊細な凄みを発揮しています。ちなみに同じくブートで聴ける前日のL..A.公演の2nd ショウでは、この曲でもっと激烈なギターを披露するミック・テイラーが圧巻でした。

I'm Free
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 ハイドパーク公演では些か精彩を欠いていた演目でしたが、ここではバンドの纏まりもグッと良くなり、ドロリとしたサイケロックの味わいを強めた演奏になっています。2本のギターの役割分担が上手くいっているようで、この響きとギターソロの雰囲気なんか、モロにニューロックしまくり♪ これは名演ですねっ、私は大好き♪

★Under My Thumb
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 これまた懐かしい名曲が復活しています!
 オリジナルバージョンは大傑作アルバム「アフターマス」に収録され、またアメリカ優先で発売されたライブアルバム「ガット・ライブ・イフ・ユー・ウォント・イット!」では勢い満点の激烈な演奏を披露していましたが、ここでは同じくギターロック系のアレンジながらテンポを落とし、ヘヴィなサウンドを聞かせてくれます。
 しかし残念ながら、ここでの収録はテープチェンジでもあったんでしょうか、演奏の途中からになっています。

Midnight Rambler
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 今日では「お約束」になっている、あの思わせぶりなイントロはありませんが、じっくりと腰を据えてメリハリの効いた演奏を聞かせてくれます。途中からテンポアップしていくところのウキウキ感が実に良いですね♪ ミック・ジャガーのハーモニカも冴えていますし、中盤の芝居っぽいスローな部分での肩の力を抜いた雰囲気も素敵です。
 しかし全体的にはアッサリ味というか、ハイドパークでの名演にはちょいと及ばす……。実はこの曲の展開とか構成こそが、その日のストーンズの出来を測る目安かもしれません。それゆえに前述のハイドパークのバージョンが、あまりにも名演過ぎたという証なのですが……。

Live With Me
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 最新アルパム「レット・イット・ブリード」からの人気曲とあって、メンバーも気合が入った演奏を聞かせてくれます。そしてスタジオバージョンでは熱狂的だった間奏のサックスがここには入っていないので、その分だけギターロックのアレンジが潔い感じです。キース・リチャーズが弾くリードのリフや独特のR&Rリズムギターは本当に良いですねぇ〜♪ こういうノリは後年、多くのハードロック系バンドにパクられ、所謂ストーンズサウンドが流布していくのでした。

Gimmie Shelter
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 これも最新アルパム「レット・イット・ブリード」ではド頭を飾っていた名曲で、あの不安感を煽るようなギターのイントロから、ミック・ジャガーの熱いボーカル、さらに鋭いミック・テイラーのギターソロという、ソウルフルなスタジオバージョンとは一味違った黄金の展開が楽しめます。
 全体の出来としては、ミック・テイラーのギターワークが1972年以降の最強ライブ時代と比べて些か物足りませんが、基本ラインは完成されていますから、リアルタイムの観客は大喜び!

Little Queenie
作者:Chuck Berry
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 この北米巡業で初めて公式レコーディングされるストーンズの新演目ですが、オリジナルは彼等が敬愛するR&Rの神様というチャック・ベリーが1959年に放ったヒット曲♪ ですからストーンズにとっては自然体で演奏出来たと思います。
 しかし意図的に演奏スピードを落として粘っこく展開されるロックンロールは、既にロックへと進化したストーンズならではグルーヴが全開していて、もう最高です。基本的には同じステージで演奏している2曲目の「Carol」と似通った雰囲気なんですが、さらに重心の低いノリは、こちらが一枚上でしょう。あぁ、思わず身体が揺れてきますね。
 演奏終了後に観客を煽るミック・ジャガーも最高!

Satisfaction
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 いよいよ佳境に入って盛り上がる会場の雰囲気をさらに熱くする、あの過激なイントロ! これがストーンズのライブの醍醐味という一瞬が楽しめます。如何にも当時というファズギターの響きは永遠に不滅でしょうねっ♪
 ビンビンに飛び跳ねるリズムとビートの素晴らしさっ! ミック・テイラーのギターソロもギラギラと混濁していて、もっと長く聴きたいほどに最高です。

Honky Tonk Women
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 前曲の熱狂の後には、もうこれしか無いという当時の最新ヒット曲というプログラムなんですが、曲間にちょっとしたチューニングとか楽器の交換があって、通して聴いていると、ややシラケる雰囲気……。まあ、このあたりの問題点は、後に発売される公式ライブアルバム「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」では絶妙の編集で解消されるのですが、それはそれとして、やっぱりこの曲もイントロが出た瞬間に会場は興奮のルツボです。
 もちろんストーンズの演奏は、些かイモを露呈したハイドパークのライブバージョンよりも進化したバンドアンサンブルが見事! キース・リチャーズが変則チューニングを用いて独自に編み出したリズムギターとヘタウマ間奏、猥雑なボーカルに絡むミック・テイラーの流麗なリードギター、さらにタメとグイノリが絶妙というベース&ドラムスのグルーヴ♪ もはや無敵のストーンズが、ここで存分に楽しめます♪ 眩暈がしそうなほどに最高ですねっ!
 ちなみにスタジオ録音バージョンには無かった、パリでの水夫の話が2番の歌詞で歌われ、ニューヨークの話は3番に移された新展開になっています。

Street Fighting Man
作者:Mick Jagger & Keith Richards
録音:1969年11月6日、カリフォルニア州オークランドのコロシアム、夜の部
 そしてクライマックスには、これしか無いの怒濤の熱演! 2本のギターの絡みも興奮を呼びますが、ミック・ジャガーも渾身のシャウトですし、突進するリズム隊が見事な大団円を導き出していますから、熱狂の真っ只中という会場の雰囲気が存分に楽しめます。それこそが、このアルバムの最大の魅力でしょうねぇ〜〜♪
 やっぱりストーンズのライブは凄いです。


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」
参考文献:「Das Weissbuch / Dieter Hoffmann著」
参考文献:「Collector's File / Wilfried Stember著」
参考文献:「ストーンピープル / ローリング・ストーンズ・ファンクラブ編」

(2008.06.11 敬称略・続く)