the rolling stones song chornicled
転石音盤史
1970 part 13

■Get Yer Ya-Ya's Out! (Decca SKL5065) = UK / (London NPS5) = US
発売日:1970年9月4日(米)
発売日:1970年9月4日(英)
発売日:1970年12月1日(日)
A-1 Jumpin' Jack Flash
A-2 Carol
A-3 Stray Cat Blues
A-4 Love In Vain
A-5 Midnight Rambler
B-1 Sympathy For The Devil
B-2 Live With Me
B-3 Little Queenie
B-4 Honky Tonk Women
B-5 Street Fighting Man
 激動の1969年を乗り切って新生を果したストーンズは、1970年にも欧州巡業がブッキングされ、また新作レコーディングもスタートする等、表面的には順調かと思われたのですが、その裏側では、この年にデッカレコードとの契約が切れるとあって、ドロドロした思惑が渦巻いていました。
 そしてアラン・クラインとのマネージメント契約も拗れ、訴訟合戦から関係の清算へと進むのですが、もうひとつ、バンドとマネージメント、及びレコード会社を悩ませていたのが、1969年の北米巡業から作られた海賊盤ライブアルバム「Liver Than You'll Ever」の存在です。
 これは1970年1月頃からアメリカを中心に出回った違法な商品でありながら、臨場感のある、当時としては良好な音質で悪魔的に凄いストーンズの生演奏が楽しめるのです。そして有名音楽誌までもがレコード評を掲載していたのですから、穏やかではありません。しかもそういう雑誌の情報欄には、そのブツの販売広告が載っていたのです。
 イギリスには3月頃に大量輸入され、もちろんストーンズと正規契約を結んでいる関連会社は直ちに販売禁止の訴訟を起こしていますが、爆発的に売れたのは言わずもがな!
 そこでストーンズ側は対抗策として、このライブ盤の発売を決定したのですが、その音源の大部分は既に撮影されていた映画「Gimme Shelter」からの素材を流用しています。しかしその録音は当時28歳ながら、既に英国ロック界では数々の名曲・名演を作り出し、ストーンズとはデビュー以前からの繋がりもあった名匠グリン・ジョンズ:Glyn Johns ですし、当然、プロデュースと編集作業にも関わっていますから、仕上がったアルバムはやっぱりロック王道の名作になっています。そしてこのあたりから、ストーンズの新譜LPはステレオ盤だけになっていくのです。
 ちなみに最初の企画では、この北米巡業の前座をやってくれたB.B.キングやアイク&ティナ・ターナーの演奏も入れた2枚組アルバムの予定が、結局はレコード会社の許諾が得られず……。それでも映画「Gimme Shelter」では、アイク&ティナ・ターナーの熱演が部分的にご覧になれます。マイクを男の大切な部分に見立てて歌うティナ・ターナーは、発禁寸前の艶歌女王♪
 まあ、それはそれとして、ここに収められたストーンズの演奏は、当然ながらボーカルの差し替えやダビング等々の詐術が使われていますし、曲順も実際のコンサートとは異なっています。しかし流石に音はリアルステレオのすっきりしたミックスで、なかなか素直に楽しめます。実際、私は「Liver Than You'll Ever」等々の海賊盤よりも、リアルタイムでこちらを先に聴いていましたから、やっぱりストーンズは世界一のロックンロール・ライブバンドだと痛感しておりました。
 ただし後になって海賊盤で登場する別ミックス盤や同じロケーションから作られた真性ライブ盤を聴くと、未整理でドロドロした生のストーンズにも魅せられるのですから、罪深い話です……。
 う〜ん、それにしても呼びにくいアルバムタイトルですねぇ。
 またジャケット写真にはチャーリー・ワッツが単独で登場! この撮影の模様は映画「Gimme Shelter」で見る事が出来ますが、ミック・ジャガーの現場での仕切りも印象的でした――

Jumpin' Jack Flash : 1969 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月27 or 28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン
 最強のロックンロールバンド! ザ・ローリング・ストーンズ! というアナウンスコールが真中から左右に被さって作られた編集が秀逸で、いきなりワクワクさせられます。熱狂する観客をさらに煽る強烈なイントロのリフは、右チャンネルにキース・リチャーズ左チャンネルにミック・テイラーというギターの振り分けも最高で、これは観客席から見たステージの立ち位置と同じですから、以降、ストーンズのライブでは定番となるミックスとして意義深いと思います。もちろんロン・ウッドが加入してからも同様ですし、海賊盤にしてもブツによっては左右が逆になっていたりすると、落ち着きません。
 肝心の演奏は巡業初期、例えば海賊盤ライブアルバム「Liver Than You'll Ever」で聞けるバージョンよりも、オリジナルのスタジオ録音バージョンに近いテンポにスピードアップしていて痛快です。しかも直線的に斬り込んでくるキース・リチャーズに対し、ちょいとジャズっぽいコードワークで味付していくミック・テイラーがニクイところ♪
 ただしボーカルとコーラス、さらにギターパートはスタジオでの手直しがミエミエです。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD

Carol / かわいいキャロル : 1969 live version
作者:Chuck Berry
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、昼の部
共演:Ian Stewart (p)
 これもスタジオでボーカルが手直しされているようですが、海賊盤ではほとんど聞き取れなかったイアン・スチュアートのブギウギピアノがきちんとミックスされているので、さらにワクワクする演奏が楽しめます。う〜ん、それにしてもキース・リチャーズのR&Rギターは世界最強ですねっ♪ 決して上手いとは言えませんが、この味わいは容易に出せるものではありません。そしてバンド全員の意思統一が見事なノリとか、これがストーンズの真骨頂です。
 ちなみに演奏前には「ボタンが取れてズボンが落ちそうだ、落ちたほうが良いかい?」なんて観客を煽るミック・ジャガーの話術は至芸! ここは映画「Gimme Shelter」でも観ることが出来ますが、もちろん女性客にはバカ受けなのでした。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD
●Rock'n' Rolling Stones (Decca SKL5149 = UK Compilatino 12"LP:stereo)

Stray Cat Blues : 1969 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、昼の部
 このツアーの演目の中でも、特にミック・テイラーの参加を得て輝いた名演が海賊盤とは完全に一線を隔する最高のステレオミックスで楽しめます。とはいえ、それゆえに楽曲の魅力だったドロドロした味わいが薄れたような気も致しますが、とにかくブートを聞かずに、このアルバムだけ楽しむ分には、これでベストだと思います。
 ちなみにここで歌われる「のら猫」の年齢は13歳!
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD

Love In Vain / むなしき愛 : 1969 live version
作者:Robert Johnson
録音:1969年11月26日、メリーランド州ボルチモアのシビックセンター
 右にキース・リチャーズ、そして左にミック・テイラーというギターの絡みが最高に魅力的♪ バンドのアンサンブルも素晴らしく、これはスタジオの手直しが全く無いピュアなライブトラックでしょう。ビル・ワイマンのベースも意外なほどに芸が細かいです。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD
●リトル・クイーニー / むなしき愛 (キング TOP-1601 = JP 7"Single)

Midnight Rambler : 1969 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、夜の部
 ハイドパーク公演以来、ストーンズのライブでは欠かせない劇的な演目になっていますから、このアルバムにも収録は当然なのですが、この北米巡業では海賊盤で聴けるだけでも、他にもっと熱いバージョンが残されていますから、このトラックの選択には??? けっこう途中でモタモタしている場面もありますし……。
 しかし聴きどころはちゃ〜んとあるんですねぇ〜♪ それは途中のブレイク、5分38秒目あたりに入っている「カッチョイイ〜!」という、感極まったファンの叫び声! あぁ、日本人に生まれて良かったと思える瞬間ですねっ♪ 本当は別の意味なんでしょうが……。
 まあ、それはそれとして、これはスタジオの手直しが無いリアルライブバージョンだと思います。観客の拍手や歓声には多少、作りこんだ疑惑も感じられますが、いかがなもんでしょう? このあたりは同じくグリン・ジョンズの手腕が冴えたストーンズのライブEPと聴き比べる楽しみもあろうかと思います。臨場感の生々しさが実に良い雰囲気なんですねぇ〜♪
 肝心の演奏はキース・リチャーズがグイノリのリズムギターで土台をつくり、ミック・テイラーがブルースリックを駆使した味付けという、2本のギターの絡みが進化の過程というところですが、こんな事はブライアン・ジョーンズ時代には当たり前でしたし、そのブライアン・ジョーンズが演じていた部分を2人で分け合っているのが、この曲と演奏の真相かもしれないと、私は思っています。もちろんミック・ジャガーのハーモニカさえも、です。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD
●Hot Rocks (London PS606/7 = US Compilatino 12"LP x 2)
●Hot Rocks = CD

Sympathy For The Devil : 1969 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、昼の部
 様々に過激な内容を含んだ歌と演奏は今でも話題になるほどですが、ここでは例の「ケネディを殺した」云々はきちんと歌われています。そしてライブならではの熱気を存分に発散するストーンズの勢いが最高です。
 特にジャズっぽいビートを内包したチャーリー・ワッツのドラミング、ミック・テイラーの熱血ギターソロ、荒っぽいR&Rのキース・リチャーズ、さらにモータウンサウンドのロック的解釈に撤するビル・ワイマンというバンドメンバー各々の個性が見事に楽しめますから、これは録音を仕切ったグリン・ジョンズが良い仕事♪
 ちなみにミック・ジャガーのボーカルはスタジオでの入れ直し疑惑があるとはいえ、全体にはストーンズの大名演になっています。欲を言えば、もっとミック・テイラーのギターソロを長く聴きたいわけですが、キース・リチャーズとのバランスを考慮すれば結果オーライでしょう。
 演奏が終わっても、まだまだ敲き足りないチャリー・ワッツのアフロなリックが憎めません♪
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD

Live With Me : 1969 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、夜の部
 いよいよクライマックスへ疾走していくストーンズの勢いが噴出した演奏です。このギターアンサンブルの荒っぽいカッコ良さ! 叩きつけるようなバンド全体のグルーヴ! キース・リチャーズも大奮闘です。もちろんボーカル&コーラスはスタジオでの手直しが入っていますが、ちっとも気になりません。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD

Little Queenie / リトル・クイーニー : 1969 live version
作者:Chuck Berry
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、昼の部
共演:Ian Stewart (p)
 公式録音としては久々の正統派R&Rカバーで、オリジナルはチャック・ベリーのヒット曲ながら、実に見事なストーンズだけのグルーヴが楽しめます。あぁ、グイグイ進んでいく重心の低いノリは最高ですねぇ♪
 ただしノリが合わないというか、ミック・テイラーがちょいとイモを演じていて、それゆえにイアン・スチュアートのピアノが大きくミックスされ、絶妙のスパイスになっています。そして当然ながらキース・リチャーズが大活躍! 最近は寸止めが多いチャーリー・ワッツも、この頃はビシバシに敲く重いドラミングで、グッときます。
 ちなみにこの曲はライブトラックでありながら、1970年12月に堂々とシングルカットされ、欧州と日本で発売されていますが、欧州盤はモノラルとステレオのリミックスバージョンが混在しており、結局、このアルバムと同じステレオミックスは日本盤だけだと思われます。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD
●リトル・クイーニー / むなしき愛 (キング TOP-1601 = JP 7"Single)
●Rock'n' Rollin Stones (Decca SKL5149 = UK Compilatino 12"LP:stereo)

Honky Tonk Women : 1969 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、昼の部
共演:Ian Stewart (p)
 前曲の終りから続く観客の盛り上がり、それをさらに煽るミック・ジャガーとチャーリー・ワッツの合の手ドラミングも冴えまくりですから、「今夜のチャーリーはノッてるぜっ!」という伝説の名台詞が痛快です。そして間髪を入れずに鳴り響く、あのコードリフが実にたまりません。
 このあたりは海賊盤で聴ける実際のコンサートの流れだと、楽器のチューニングや交換があるので、せっかくの盛り上がりに水が入る雰囲気だったんですが、流石に公式盤だと編集が絶妙♪ ますます熱狂していくコンサートが素直に楽しめるというわけです。
 もちろん演奏にはかなりスタジオでの手直しが入っているようですが、ボーカルに絡んでくる流麗なミック・テイラーのギターが心地良い限りですから、一緒に歌えるサビも楽しさ倍増! また途中から活躍していくイアン・スチュアートのピアノも転がりが素晴らしく、まだまだイモっぽいミック・テイラーのリズムギターを見事にカバーしています。
 ちなみに映画「Gimme Shelter」で使われたこの曲のシーンは同日の夜の部で、観客がステージに上がって来て混乱するという、ストーンズのライブではお馴染みの場面がご覧になれますが、その所為か否か、ミック・テイラーのリズムギターに粗野な魅力があって捨て難く、個人的にはそういう味わいを残して欲しかったところです。
 それと2番の歌詞が「パリでの船乗りの話」になっていますが、これはオリジナルバージョンの2番では「ニューヨークでのバツイチ女との話」になっていますから、地元への「ストーンズらしくない」配慮でしょうか? 前述した夜の部のバージョンでは、きちんと「ニューヨーク」を歌っているのですが……。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD

Street Fighting Man : 1969 live version
作者:Mick Jagger & Keith Richards
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、昼の部
 もう、ここまで来ると、大団円はこれしかないの白熱曲です。叩きつけるようなビートとエレキギターの爆裂は本当にロックの醍醐味ですし、ミック・ジャガーのボーカルに絡むやけっぱちなキース・リチャーズのコーラスも良い感じ!
 そしてミック・テイラーとキース・リチャーズはこの時期、2人ともギブソン系のギターを使っているので非常に力感溢れるアンサンブルを作り出しています。このあたりは後になって、例えば1972年以降になるとキース・リチャーズがフェンダー系を多用していきますから、今となってはこういうギトギトした響きの演奏は貴重で新鮮だと思います。
 左チャンネルからは独特の手クセで弾きまくるミック・テイラー、右チャンネルにはファジーでワイルドなキース・リチャーズ、さらに真ん中ではビル・ワイマンのペースがハードロックしています。気になるミック・ジャガーのボーカルは完全にスタジオでの手直しがモロバレとはいえ、やっばり熱いですねぇ〜。演奏の流れからエンディングでは歌が聞こえないパートが長く続きますが、それが逆にストーンズのステージを様々に想起させられるところです。
 このアルバム以外の主な収録は以下のとおりです。
●Get Yer Ya-Ya's Out! = CD

Little Queenie / Love In Vain (Decca F13126:mono = UK export)
発売日:1970年12月
 イギリスのデッカで作られた輸出用のシングル盤で、音源的には既に発売されていた「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」からのシングルカットながら、両面ともにモノラル仕様! なにしろ、例えばドイツや日本では同様のシングル盤がステレオ仕様で出されていますからねぇ〜。しかもこの輸出用のシングルも、何故かカタログやマトリックスの番号が同じでもステレオ仕様のブツがあるのですから要注意です。

Little Queenie / リトル・クイーニー : 1969 live version / original mono-mix
作者:Chuck Berry
製作:The Rolling Stones & Glyn Johns
録音:1969年11月28日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン、昼の部
共演:Ian Stewart (p)
 既に述べたように、この演奏のミソはバンド全体の重心の低いノリですから、モノラルミックスではそうしたドロドロした魅力がますます楽しめます。そしてミック・テイラーのギターがステレオバージョン以上に埋もれ気味なのは、結果オーライでしょうね。

Love In Vain / むなしき愛 : 1969 live version / original mono-mix
作者:Robert Johnson
録音:1969年11月26日、メリーランド州ボルチモアのシビックセンター
 結論から言うと、こちらは逆にステレオミックスの方が個人的には好きです。なにしろ2本のギターの存在感が左右に別れても強いですから。ただしチャーリー・ワッツのドラムスが前面に出た印象のモノラルミックスにも捨て難い味わいがあるのでした。


参考文献:「ローリング・ストーズ・クロニクル / マッシモ・ボナンノ著」
参考文献:「ノット・フェイド・アウェイ / ジェフリー・ジュリアーノ著」
参考文献:「Das Weissbuch / Dieter Hoffmann著」
参考文献:「Collector's File / Wilfried Stember著」

(2008.07.10 敬称略・続く)