ブラック・シネマの大傑作がDVD化

 昨年は「永遠のモータウン」、今年はレイ・チャールズの波乱の生涯を描いた「レイ」と、なかなか素敵な黒人音楽映画が登場しておりますが、このたび、ようやく1970年代に大ブームだったブラック・シネマの傑作が幾つかDVD化されます。その中で特にオススメなのが――

スーパーフライ:Superfry(1972年・米)
 監督:ゴードン・パークスJr.
 音楽:カーティス・メイフィールド
 出演:ロン・オニール、カール・リー、シーラ・フレイジャー 他

 いろいろな意味で、ブラック・シネマの象徴的的なヒット作がこれです。

 まず監督のゴードン・パークスJr. は、これも1970年代ブラック・シネマの大ヒット作「黒いジャガー:Shaft;1971・米」を撮ったゴードン・バークス監督の息子で、これが監督デビュー作になっています。

 物語はしがない麻薬の売人が引退を決意し、最後の大商売として100万ドルの取引を計画しますが、土壇場でヘマをやらかし警察に現場を掴まれてしまいます。しかし警察から新たな麻薬取引を持ちかけられた主人公は、やがて警察が麻薬売買の元締めであることに気づき……、という展開です。

 基本的には低予算のB級アクションですが、それゆえに
ロケ地の黒人達の協力を得て撮影された映像が、とことんリアルで説得力があります。もしかすると登場するチンピラ、娼婦、ヤク中、ホームレス等々は本物だったのかもしれません。そして物語の主題は黒人対白人という、ブラック・シネマの王道をいくものなのです。

 ちなみにここで私が言うブラック・シネマとは、現代でいうところのブラック・スプロイテーション・フィルムのことで、1970年代前半に大きな盛り上がりをみせた黒人が主人公の映画のことです。

 実はそういう作品自体はアメリカにおいて1920〜40年代にかけてのひとつのブームが歴史として存在しているのですが、それは黒人専門の劇場あたりで上映されていた所謂レイス・フィルムと呼ばれるものでした。それが第二次世界大戦後の一時的な好景気、それにともなう白人優位主義と人種差別の強化等々で映画の世界も保守的傾向が表面化し、その頃作られる作品は白人中心、例えば西部劇では白人=正義、悪者=インディアン、そして黒人奴隷は登場させないというような物ばかりになっていったのです。しかし流石に1960年代に入ると、公民権運動の高まりや興行実績から黒人の客層も無視できないという事情等から、ハリウッドで作られる虚構に満ちたメジャーな作品にも黒人俳優・作家の積極的な起用が始まり、そのひとつの成果が黒人俳優シドニー・ポワティエ主演による「夜の大捜査線:In The Heat Of The Night;1967・米)」の大ヒットでした。

 しかしこれは、人種差別問題に真っ向から立ち向かう黒人刑事の活躍を描いてはいるものの、やはり白人の視点から作られていることは否めず、そのヒットの後を受けて続々と作られる黒人が主役の作品にも白人社会との妥協が見て取れるのですが、その壁を何とか乗り越えんとするエネルギッシュな作品も多数生まれており、前述した「黒いジャガー」や、この「スーパーフライ」もそのうちのひとつだと思います。

 また、この作品を魅力的にしているもうひとつの要素が、
カーティス・メイフィールドが担当した音楽の素晴らしさです。とにかく全篇がファンキー、メロー、サイケにニューソウルとグルーヴのテンコ盛り! 必ず泣いてシビレます。

 カーティス・メイフィールドはもちろん黒人でシカゴ生まれ、1950年代にインプレッションズというR&Bグループを結成してヒットを放ちますが、特に1960年代に入ってからは公民権運動とか黒人の地位向上、あるいは反戦等々のメッセージを含んだ曲を発表していきました。それはグループ内で主導的な立場にあった彼の作曲&プロデュースによるもので、「ピープル・ゲット・レディ:People Get Ready」をはじめとした当時のヒット曲の数々は、今や黄金のソウル・クラシックスになっています。そして1968年には自己のレーベル「カートム」を設立し、1970年にはグループから独立してソロ活動を開始、同時にその基本姿勢は、より一層ラディカルなものになっていくのでした。

 当然、その音楽性は過激な部分とメローな部分がますます深化して行き、自らが弾くギターはファンキーなリズム・カッティングにワウワウやコンプレッサーを使ったサイケでメローな味付けが最高、さらにボーカルはファルセットでの切ないバラード表現が絶品でした。このあたりは
ジミ・ヘンドリクスにも大きな影響を与えているところです。

 で、このスーパー・フライの音楽は、当にそのエッセンスとも言うべきもので、ギターとパーカッションを中心としたファンキーな部分に、ストリングやフルート等の管楽器を巧に配合して、
最高のグルーヴを生み出しております。当然、サントラ盤は大ヒット、アルバム「Super Fly:Curtom 8014」は1972年夏にチャート1位、シングル・カットされた「フレディの死:Freddie's Dead;Curtom 1975」がチャート4位、さらに続けて秋には「スーパーフライ:Super Fly;Curtom 1978」がチャート8位を記録しています。そしてこれは、前述した「黒いジャガー」のサントラとして大ヒットしたアイザック・ヘイズの「シャフト:Theme From Shaft」と共に、当時大ブームになりつつあった所謂ニューソウルの聖典となったのです。

 しかしながら、個人的にはこの「スーパー・フライ」のサントラ盤は、ただそれだけ聴いては物足りないのです。リアルタイムでラジオから流れてきたカーティス・メイフィールドのこれらのヒット曲を聴いた時も、実はピンッときませんでした。しかしこの映画を観た後は違います! とにかく全ての場面で、これ以上無いというほど輝く楽曲の素晴らしさは強烈です。もちろん映像への最高のスパイスになっているは言わずもがなで、ここでようやくこのサントラを、音楽としてしっかり聴けるようになったのです。ちなみに前記した
ニューソウルとは、サイケ・ロックの黒人的な展開だと思います。そしてこれがキッカケになって、私は映画サントラやテレビ劇伴の世界を探求していくようになりました。

 ということで、この傑作の復刻DVDの仕様は次のとおりです――

 
発売予定日4月8日
 
予価3,980円
 
品番DL-28888
 
特典映像:製作ドキュメント、予告篇 他

 尚、やはり見逃せないブラック・シネマとして、前記した「黒いジャガー」の続篇が4月22日に発売予定です。それが――

黒いジャガー/シャフト旋風:DL-65198 3,129円
 シリーズ第2作目です。正直言って映画本篇の出来はまあまあですが、サントラは死ぬほどカッコ良いジャズ・ファンク♪
 
黒いジャガー/アフリカ作戦:DL-65302 3,129円
 シリーズ第3作目で、現代の黒人奴隷売買をテーマに、黒人私立探偵シャフトが大活躍、ニューヨーク〜パリ〜アフリカへと物語が進展します。もちろんサントラは、これまたイカしたジャズ・ファンクで、主題歌はフォー・トップス♪ 

 皆様にはぜひともご覧いただきたいと、ご紹介致しましたが、これを契機に当時のブラック・シネマを大々的に復刻して欲しいものです。


(2005.03.27 敬称略)