私的日活SM映画史・闇に蠢く

4/昭和50(1975)年・後


お柳情炎・縛り肌(昭和50年6月)
監督:藤井克彦
原作:団鬼六
出演:谷ナオミ、東てる美 他

 谷ナオミさんのシリーズ第4作目は団鬼六先生の原作とはいえ、SMというよりは任侠ポルノでした。私はこの時点で原作は少ししか読んでおらず(おそらく連載中では……?)、そのためあまりそれに拘らず観ることができました。

 舞台設定は昭和初期、
谷ナオミさんの役はもちろん壷振りのお柳です。旅に出ていたお柳・谷ナオミさんが、若親分の窮状を耳にして戻ってみると……、というあらすじで、SMはストーリー展開で罠に落とされ責められるという場面でしか使われていません。またしても「生贄夫人」のような濃密なSM空間が味わえず、やや拍子抜けでした。大の字に縛られた谷ナオミさんが張り型で責められるところがハイライトでしょうか?

 ただし藤井監督の演出がテンポ良く、任侠物といってもこれは東映調とは異なり、日活お得意の青春物の味付けが少ししてあり、可憐な堅気の娘役の
東てる美はそこで輝くように作られていると思います。こういう作品になったのも、その頃は彼女の人気が急上昇中であり、製作者側の意図もより広い観客を想定してのものではなかったかと、推察しております。実際、観客は私と同世代の若い人(つまり私も当時は若かった・笑)が驚くほど多く、封切日でもそれほど客の入りが良くなかった当時の劇場が満員に近い状態になっていました。おそらくほとんどが東てる美目当てであったと思います。彼女も熱演で絡みの場面は彼女のファンならば思わず唸ると思います。

 その意味で製作者側の判断は正しかったのでしょうが、私は違う! 断じて違います。逆さ吊りにしろ! もっときつく縛れ! 大量の水を無理やり飲ませお漏らしに追い込め! 水攻めにしろ! 等々、スクリーンを見つめながらそんなことばかりむなしく希望していました。
 
 しかし、これは任侠物としては佳篇だと思います。あまり考えずに気楽に観てほしい作品で、SMを全く知らない人がこれを観て「こんな世界もあるのか……」と新しい世界への扉としてもらえれば良いのではと思います。ただ、それに興味の無い人が任侠物を自主的に観るかどうかはわかりませんが……。

 東てる美を観に来て、この世界に引き込まれた人はどの位いるのでしょうか?


残酷・女高生(秘)私刑(昭和50年8月)
監督:林功
出演:東てる美、谷ナオミ、中島葵 他

 
東てる美初主演作です。ここでも「私刑」は「リンチ」と読ませます。彼女の役はSEXへの好奇心がつよい女子高生で、その継母に谷ナオミさんという設定でした。二人はあまり上手く行っておらず、東てる美が家出したり縛られたりだったような……、記憶がほとんどありません、と言うよりもほとんど観ていなかったというのが真相です。

 実は、当時私はなんだかんだと忙しく、この作品を封切日に観に行くことが出来ませんでした。やっと時間をつくり映画館に行ったのが写真変りの二日前だというのに、その日は朝から体調が悪く、それなのに出かけた自分のスケベ根性に呆れています。で、観ているうちに意識が朦朧となり……。その後は下の書き込みを読んで下さい。


主婦の体験レポート・続おんなの四畳半(昭和50年8月)
監督:武田一成
出演:宮下順子、三上寛 他

 「残酷〜」の併映作品で、これは前作(第3回参照)よりもさらに味があります。とにかく下町情緒というか、今は懐かしい風景がたっぷりと味わえます。内容は人情ポルノで多くは書きませんが、フォーク歌手の三上寛が怪演を見せています。

 で、体調が悪いくせに、この暗闇に来ると何故か回復の兆しありで、観終わった後の休憩時間にメモをしっかりと書き込んでいるとまた眩暈が……。

 こうして「残酷・女高生〜」を観始めたのですが、とうとう途中で眠ったというか、意識を失ったというか……。気がつくと事務所のソファーに寝かされていました。すでに閉館時間を少し過ぎていたので、とにかくお礼を言って帰宅したのですが、今度はその途中の駅で倒れそのまま病院へ……。原因は夏風邪と過労と軽い食中毒(夏牡蠣にあたったらしい?)との事でした。点滴を受けた後に入院となり、2日後には退院できたのですが、その時にはもう「残酷・女高生〜」の上映期間は終わっていました。

 その後、再上映している名画座のようなところもあったのですが、何故かこの作品は観ておりません。ですから私にそれを語る資格はありません。ですが、書き込んでいるうちにどうしても観たくなりました。と、レンタル屋へ行く決意!


黒薔薇昇天(昭和50年8月)
監督:神代辰巳
出演:谷ナオミ、芹明香、岸田森、高橋明 他

 退院したその足で観に行ってしまった作品です。我ながらどうしようもない好き物ぶりに恥ずかしい限りです。

 谷ナオミさんが主役ですがSM物では無いので、忙しい人はこの部分を飛ばして下さい。

 内容はブルーフィルム製作現場のドタバタを見せる喜劇ポルノですが、監督役の岸田森に「大島渚監督や今村昌平監督を尊敬する」という台詞がある等、随所に映画製作者の情熱を描き込んでおり、ある種の劇中劇の様相があります。

 谷ナオミさんは和服が似合う美女として登場し、絡みはたっぷりと見せてくれますが、やはり「あの場面」が無いと物足りません。ただし、神代監督の映像への拘りは流石で、谷ナオミさんがタクシーの中でもパラソルを広げたままだったり、ブルーフィルムを見ながらパラソルを広げたりと奇態なシーンはたっぷりありますので、映画が好きな人にはお勧めです。このあたりに「
一条さゆり・濡れた欲情」あたりから繋がる監督の映像美学みたいなものを私は感じます。

 あと、当時のメモには書き込んでいませんが、東てる美が少し顔を出していたようなおぼろげな記憶があります……。


新妻地獄(昭和50年12月)
監督:加藤彰
原作:団鬼六
出演:谷ナオミ、東てる美

 団鬼六先生の原作ですが、別物と思って観ていただきたい作品です。縛りもありますが、これはロマンポルノといったほうが良いと思います。部分的には素晴らしい場面があるのですが、全体に猟奇味が無くSM的密度も薄くて、ここまで来ると私が「失望!」とメモに書き込んだ第1作目の「
花と蛇」が名作に思えてきたのが当時の素直な気持ちでした。

 ただし、ここでの谷ナオミさんの愁いを含んだ表情は絶品ですし、
東てる美益々色っぽくなっており、グリグリに縛られていますのでファンは必見でしょう。実際、彼女目当ての人が沢山観に来ておりました。

 観終わって空しい気持ちを慰めるように
昭和51年版のロマンポルノ・カレンダーを買いました。するとそこには3月東てる美12月
谷ナオさんが載っていたのです。前年度版にはこの二人は登場していません。作品の満足度は別にしても、いかにこの年の二人が大活躍であったか、おわかりいただけると思います。

(Nov.2001 「地下画廊」に掲載 / 2003.08.04 改稿転載)
(敬称一部略・続く)

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