私的日活SM映画史・闇に蠢く

10/昭和54(1979)年・後


 谷ナオミさんが引退されたからという理由からでもありませんが、この時期の私は封切られる新作よりも観逃していた旧作に心を引かれ、名画座に足を運ぶことが多くなりました。日活系はもちろん新東宝系とか東映系、あるいは独立プロ系の成人映画を観ていたのですが、彼女の引退を契機として成人映画を観るのを止めていたらと、今でもフッと思うことがあります。しかし現実はそうもいかず、おりしも映画館やJazz喫茶等、私の愛する闇がどんどん少なくなっていったことからかえって依怙地になり、居心地の良い闇を求めて街を徘徊する日々が続きました。

団鬼六・花嫁人形(昭和54年10月)
監督:藤井克彦
原作:団鬼六
撮影:水野尾信正
出演:倉吉朝子、志麻いづみ 他

 谷ナオミさん引退後初めての本格SM作品です。主演はグラビアモデル等を経てこの作品で映画デビューとなった
倉吉朝子さんでした。

 物語は、怠惰な生活を送る青年が一目惚れした女がM奴隷である事を知り、彼女を救出するべく束縛している男の妻を誘拐しSM調教を施して取引しますが……、という展開だったと思います。

 倉吉朝子さんはスレンダーな美女ですが、やはり縛りが見せ場のひとつであるSM作品においては肉体的に物足りなく、また演技もやや覚束ないという製作者側の不安があっての事か、ここでは「
東京チャタレー夫人」のヒットで当時日活の切札的な存在になっていた志麻いづみさんを共演者に選んでおります。しかしまた、彼女も人妻の色っぽさは天下一品ですがやはり細身とあっては……。さらにベッドシーンで見ることが出来る彼女のパンティがややおばさん臭くて幻滅……。もう少しセクシーな物をと思ってしまうのですが、セックスレスの夫婦という設定ではそれも可なのか………、等と否定的な事ばかり書いてしまいましたが、作品全体としてはちょっとATG的な雰囲気を持った青春映画と受け取る事も出来そうです。それはエロ場面以外で見せる藤井監督の才気溢れる演出と水野尾氏の冴えたカメラワークによる貢献が大きいと感じます。

 で、肝心のエロ場面ですが、当然というか志麻いづみさんが素晴らしく、浴室内でのガラスの破片を使ったオナニーは強烈でした。彼女のいつも勃起しているような大きめの乳首は大好きです。

 ただSM系の見せ場になるとやや大袈裟で羞恥心に乏しい演技が肩透かし気味で、縛られたまま尿意に苦しめられるところでは両手で股間を抑えるのは良いのですが、早くトイレに……と大きな声で訴えるのは羞恥心に欠けているようで個人的にはいまひとつの感があります。ただしようやく便器に辿り着き長い長い放尿を終えようとする時の安堵感と窓の外の情景との対比は良い雰囲気だったと思います。

 倉吉朝子さんについては退廃的な雰囲気が個人的には好きですが、それがM奴隷としての演技では最初から諦めているような感じになってしまい、この作品ではマイナス要因だったと思います。また責められる場面でもグリグリに縛られて宙吊りにさせられたりはしておりますが、他にこれといった見せ場はありませんでした。ただし彼女は後に「
スケバン・マフィア」シリーズとか「絶頂姉妹・堕ちる」等でその捨てばちな感性を生かした素晴らしい演技を見せてくれますのでお楽しみに!

 という事で、日活SM作品としては個人的にはB級の評価ですが、谷ナオミさん引退後の新たな展開を模索中という観点からみれば面白いのではないかと思います。


Mr.ジレンマ・色情狂い(昭和54年10月)
監督:小沼勝
原作:笠太郎
音楽:ダディ・竹千代&東京おとぼけCats
出演:柄本明、橘雪子、小川亜佐美、梓ようこ、朝霧友香 他

 上記併映作で小沼勝監督のドタバタ物の最高傑作! 原作は笠太郎先生の有名な漫画らしいのですが、私は知りませんでした。物語は会社でも家でも虐げられているダメ男が変身願望を持ってスーパーマンに……、というものだったと思いますが、とにかくこれは面白い!

 独自の境地で笑わせてくれる柄本明がまず好演ですし、共演の
橘雪子さんも軽妙かつエッチな演技が素晴らしいと思います。そしてなにより小沼監督のツボをはずさない演出がテンポ良く、さして客の入りが良くなかった劇場が一体となって笑いに包まれたことを昨日のような思い出します。当然シリーズ化を期待したのですが、これっきりになったのは残念でした。

 尚、音楽担当のダディ・竹千代&東京おとぼけCatsは当時一部で異常な人気のあったバンドで、80年代後期から人気の出た米米クラブの先駆けをなしたコミック系ソウルミュージックを演奏していました。この映画と共に再評価を望みます。


ダビデの星・美少女狩り(昭和54年10月)
監督:鈴木則文
原作:佐藤まさあき
出演:池乃ひろみ、八城夏子、朝霧友香、小川亜佐美、岡本麗 他

 原作が佐藤まさあき先生の毒気のある名作、東映の人気作「
聖獣学園」の鈴木則文監督による日活初作品、そして主演が元ミス日本で巨乳の池乃ひろみとあって大いに期待した作品だったのですが……。

 物語は父親が強姦魔だと知った資産家の息子が偏った正義感と独自の悪の理論に基づいて親殺しを実行し、美女達を誘拐監禁、そして破滅して行くという展開でしたが、失礼ながら主演の池乃ひろみの演技がよろしくありません。

 キメの台詞も「お兄ちゃまぁ」と甘えるだけでは物足りず、また私の大好きなおしっこ我慢から堪えきれずに……、という場面においての苦しみの演技では、おしっこが漏れそうで苦しんでいるのか、あるいは縛られている苦しみなのか、見ているこちらに伝わって来ません。そしてついに我慢の果ての放尿というところでは「あーっ、あーっ」という大袈裟な叫び声が総てをぶち壊していると感じるのは私だけでしょうか? またそのまま続く場面では彼女の衣服が切り裂かれ、巨乳が露出される最高においしい展開になるのですが、そこでの彼女のブラジャーは、ただ大きいだけで色気が感じられず、ここは極小水着を着用させて羞恥責めに追い込んで欲しかったと妄想を広げてしまいました。

 鈴木監督の演出も例えばおしっこ我慢のシーンにおいて時計の針の進み具合で時間の経過を表す手法など、全体に「
聖獣学園」からの使いまわしが多く残念でした。

 しかし、この作品の随所に漂うSMロマンは捨て難く、また共演女優陣も好演でしたので、一度は観ておく作品ではないかと思います。個人的には現在じっくりとリメイクすれば大化けする作品になるのではと期待しているのですが……。


愛欲の標的(昭和54年12月)
監督:田中登
原作:勝目梓
出演:宮井えりな、日野繭子 他

 タイトルの「標的」は「ターゲット」と読ませます。SM作品ではなくちょっとミステリっぽいロマンポルノなので忙しい人は飛ばして下さい。

 物語は金目当てに結婚した
宮井えりなが夫を殺害し、それを知った脅迫者までも次々と……、という展開なのですが、とにかく彼女のすけべさ全開です。

 しかし、個人的にはこの作品のお目当ては
日野繭子でした。というよりも、劇場前に貼り出してあったポスターに映っていた全裸で立ち姿の彼女に一目惚れ状態だったのです。彼女は「親指繭子」という愛称があったくらい小柄でしたが、バランスのとれたスタイルと形の良い乳がとても魅力的で、加えて歌も上手く演技も的確で、独立プロ系の「日本の拷問」「日本の緊縛」などが代表作だと思います。また、確かこの年にポルノ女優を対象にした賞を受賞したような記憶があります。残念ながら病気で引退されたようですが、記憶に残る女優さんでした。


 この年の秋、山口百恵がステージでかねてから噂の三浦友和と恋人宣言をし、翌年の引退へ向けての騒動が始まりました。前年のキャンディーズ引退騒動で確立された「芸能活動の一環としての引退」が演じられていくのですが、米英の「産業ロック」同様にあまりいい感じは持ちませんでした。また「テレビ漫画」がいつのまにか「アニメ」と呼ばれるようになり、「銀河鉄道999」「機動戦士ガンダム」等の大ヒットが出たのですが、もう私には興味が持てず、むしろテレビの「西部警察」のような破天荒な刑事物が好きでした。カラオケが加熱気味になってきたのもこの頃からだったと記憶しておりますが、どうも馴染めず、ますます時代から孤立して行く自分を感じるようになりました。しかしまた、エロ映画狂いは止む気配も感じませんでした。依怙地というより惰性の境地……。

(2001.12.08 「地下画廊」に掲載 / 2003.10.18 改稿転載)
(敬称一部略・続く)

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