闇の中の妖精

サリー・メイの巻


 昭和40年代の日本の芸能界ではハーフも含めて西洋人系の女性スターがもてはやされました。例えばフォーク歌謡のベッツィ&クリスやお笑いもこなせるダニエル・ビダルやゴールデン・ハーフ等々、覚えておられる方も大勢いらっしゃると思います。

 サリー・メイもそんなひとりといえるかもしれません。元々はグループ・サウンズのシャープ・ホークスで紅一点の歌手として活動し、その後モデルをしていたらしいのですが、やや「にらみ顔」ながらその整った面立ちと美しい金髪が注目され、CMやグラビア展開で人気が上昇したハーフのタレントでした。そして本格的な歌手としての活動と映画デビュー、さらにグラビアモデルとして一世を風靡していきます。

 私が彼女に本格的に注目したのは昭和47(1972)年頃の週刊プレイボーイ等の男性週刊誌やエロ本等のグラビアによるところが大きく、出演した映画はリアルタイムではなく名画座における再上映で観たものばかりです。


狙撃 (昭和43年・東宝)
監督:堀川弘道
出演:加山雄三、森雅之、岸田森、浅丘ルリ子、サリー・メイ 他

 加山雄三が殺し屋を演じたアクション物ですが、健全すぎて「殺し屋の若大将」という雰囲気です。むしろライバルとして登場する殺し屋を演じた森雅之が大変に良い味でした。
サリー・メイはその情婦役だったと思いますが、ほんの端役で、これが映画デビュー作となりました。


 
昭和44年になると歌手として「銀蝶流れ花」でデビューします。なにしろ金髪の美人歌手ですから、当時沢山あった歌番組に出演することも多く、その後「銀蝶番外地」「銀蝶流れ星」等を出しておりました。曲調は演歌です。ちなみに「銀蝶」とは「銀座の蝶=銀座のホステス」のことです。発売はいずれもビクターからで、「銀蝶流れ花」は平成12(2000)年に東芝ファミリークラブから通販扱いで出されたCD6枚組ボックス・セット「魅惑のムード/秘宝館」に収録、復刻されました。で、この後再び映画出演があります。


夜の手配師・すけ千人斬り (昭和46年・東映)
監督:内藤誠
出演:梅宮辰夫、川口ひろし、榊ひろみ、松尾和子、サリー・メイ 他

 梅宮辰夫がコールガール組織のボスを演じた恋愛アクション物で、サリー・メイはここでも端役でした。


らしゃめんお万・雨のオランダ坂 (昭和47年・日活)
監督:曾根中生
出演:サリー・メイ、林美樹、山科ゆり 他

 
サリー・メイ初主演作で、今回紹介の本命がこのシリーズです。公開当時、私はテレビや雑誌等のグラビアで彼女を知っていたので観たくてたまらなかったのですが、ロマンポルノという成人映画の壁に阻まれ諦めざるをえませんでした。後にリアルタイムで観た人にお話を伺ったところ、かなり好評だったようで、それはすぐさま続篇が製作されたことからも証明されております。

 舞台は昭和初期、彼女の役は金髪の美人壷振り師という設定にまず痺れます。物語は母を捜して上海からやって来たお万=サリー・メイが信じていた男に遊郭に売り飛ばされますが、壷振り師となりついに長崎で母と妹に再会します。しかしその二人もかつて彼女を裏切った男の罠に落ちていて……、という展開でした。

 やはり西洋系の美人だけにキス・シーンは様になっておりますし、とりたててグラマーというほどではありませんが、当時の日本人女優よりはるかにメリハリのあるプロポーションは魅力でした。また所々拙くなる台詞回しが妙にリアルです。

 一応任侠物というジャンルなのでしょうが、個人的には時代劇に金髪美女が登場しているというような若干倒錯的な、そして破天荒な臭いがするこうした作品が好きでたまりません。曾根監督の演出もそのあたりを踏まえたアクの強い部分があり、若干好き嫌いがあるかもしれませんが、個人的には結果オーライで、私は昭和49年に「サリー・メイ特集」という名画座の3本立興行でこのシリーズを連続して観ておりますが、第1作目からすっかり物語りの虜になってしまいました。


らしゃめんお万・彼岸花は散った (昭和47年・日活)
監督:曾根中生
出演:サリー・メイ、林美樹、山科ゆり 他

 前作の好評を受けてすぐに作られた続篇です。物語もリンクしておりますので、これからご覧になられる方には第1作目から観ることをお勧め致します。

 あらすじはお世話になった親分が殺される企みを知ったお万が監禁され、さらにそこから逃れた後も刺客に狙われて……、という展開です。任侠物ですから当然助っ人も登場しますし、お万が妹を捜して……、というようなサイド・ストーリーもあります。出来としては、この作品が一番かもしれません。また、今思うと、この設定でSM物が出来たらなぁ、というような雰囲気が味わえます。そしてこの頃から彼女の人気は沸騰したらしく、私がリアルタイムで見たエロ本等のグラビアはこの作品のスチールも含まれておりました。


艶説女侠伝・お万乱れ肌 (昭和47年・日活)
監督:藤井克彦
出演:サリー・メイ、林美樹、山科ゆり、風間杜夫、高橋明 他

 シリーズ最終作です。物語は料亭の仲居として堅気になったお万が、そこの同僚やおかみの嫉妬から首になったことから再び壷振り師となり、昔お世話になった人達を苦しめるヤクザと対決するという展開でした。

 監督が交代したからでしょうか、ややあくアクの強さが薄れたような気も致しますが、任侠物の定石を踏まえた作りは前2作以上に楽しめます。特に金髪の柔肌に刺青というサリー・メイの美しさには猟奇心を刺激されます。


新・色暦大奥秘話・やわ肌献上 (昭和47年・日活)
監督:林功
出演:小川節子、二條朱美、サリー・メイ 他

 初期ロマンポルノにおける時代物の女王=
小川節子の主演作です。サリー・メイは脇役で八代将軍吉宗の寵愛をうける金髪娘役でした。おそらくこれが彼女の映画出演最終作ではないかと思われます。


 これらの作品に出演した後、彼女は再び歌手として活動していたようです。私は昭和49年の初め頃に関西の某ナイトクラブに出演中の看板を見たようなあいまいな記憶があるのですが、どうもその頃に引退されたようです。

 彼女の主演作品「らしゃめんお万」シリーズは現在のところ全くビデオ化・DVD化されていないようなのが残念でなりません。機会があればぜひご覧いただきたい作品です。案外通天閣あたりの映画館でひっそりと上映されているような気が致します…。

(2002.02.02 「地下画廊」に掲載 / 2003.08.01 改稿転載)
(敬称略・続く)