闇の中の妖精

中川梨絵の巻


 中川梨絵は私が最初に好きになった成人映画の女優さんです。彼女の芸暦は古く、子役として活動後に東宝に入社し、芸名は「中川さかゆ」として昭和42年に成瀬巳喜男監督作品「乱れ雲」でデビュー、他にクレイジー・キャッツ物の「日本一の男の中の男」、若大将物の「フレッシュマン若大将」等に出演しているらしいのですが、いずれも端役だったらしく、今となっては後の2本は見ているはずなのに私には記憶が全くありません。

 どうやら東宝時代は芽が出なかったらしく、昭和47(1972)年に日活に入社、ロマンポルノに出演していくことになります。

 私が彼女を意識し憧れたのは、ちょうどこの時期のエロ本等のグラビアで見ることが出来た愛くるしい彼女の裸体と、初主演作「
OL日記・牝猫の匂い」が摘発された事件があったからでした。もちろん当時はこの作品を見ることは出来ず、こんな素敵なお姉さんが摘発されるほどエッチな映画に出ているのか……、という興奮があったのは言わずもがなです。

 初めて見ることが出来た作品は昭和47年10月の「
エロスの誘惑」でしたので、後追いで見た物も多く、子役時代・東宝時代の作品は記憶に残っておりませんので割愛し、また例によってリアルタイムでの雰囲気はご容赦下さいますようお願い申し上げます。



OL日記・牝猫の匂い(昭和47年1月・日活)
監督:藤井克彦
撮影:森勝
出演:中川梨絵、嵯峨正子、相川圭子 他

 
中川梨絵の初主演作ですが、封切上映最終日の1月28日の朝「映画界への警告」として警視庁保安一課に摘発・押収された作品です。もちろん私はリアルタイムでは見ておりませんし、そういう事情からようやく見ることが出来たのは昭和50年に某所で行われた自主上映会においてでした。

 物語は不倫関係の上司に裏切られた中川梨絵が、その上司の娘の恋人を誘惑し、さらに仮面乱交パーティにその親娘を誘い込んで絡ませることによって復讐を……、という展開でしたが、初めて見たその時の感想は――

 「摘発されるほど卑猥なものなのか……?」
 「いったい何所が……?」

――というものでした。確かに近親相姦的な場面はヤバイ気も致しますが、所謂「モロ見え」ではもちろん無いし、当局の見解による「巷のブルー・フィルムと変わりが無い」というのは大袈裟だとしか思えません。

 しかし、愛くるしい彼女による絡みの場面における興奮度は高く、特に野原で男を誘惑し正常位から女性上位へと体位が変わっていくあたりは最高でした。また普通の女がある出来事を契機として悪女に変貌していく様を演じる彼女の演技力は素晴らしく、藤井監督の演出と森勝氏のカメラワークがそのギトギトした情念を見事に描いていたと思います。


花弁のしずく(昭和47年2月・日活)
監督:田中登
出演:中川梨絵、白川和子 他

 中川梨絵は華道家元の不感症の娘を演じております。

 で、そのために受けるカウンセリングの過程において過去のトラウマが描かれていく物語になっておりました。例えば子供時代に両親のSEXを覗き見たこと、少女時代の強姦未遂体験、そして夫に無理やり処女を奪われたこと等々ですが、この夫が結構「S」的に描かれていおり、最後にはそういう呪縛から解放されるとはいえ、
中川梨絵の被虐のヒロイン的な演技も冴えていたので、本格SM物に出演して欲しかったと今でも思います。


恍惚の朝(昭和47年6月・日活)
監督:加藤彰
出演:中川梨絵、山科ゆり 他

 主演3作目も一種の悪女物というか、物語は中川梨絵が旅先で昔の恋人に再会し、関係を持った為にその男の婚約者は自殺、しかし家に戻った彼女は平然と夫に抱かれるという女の本性を辟易するほど見事に演じております。

 私が彼女に惹かれたのは、エロ本等のグラビアで見た大きな目が印象的な美人の裸という要素でしたので、映画での役も優しいお姉さんという設定に期待していた為に、こういう脚本は彼女に相応しくないと、当時思っていたものです。したがって個人的には愛着のある作品ではありませんが、実際に見た時にはやはり美人のSEX場面ということで興奮しましたし、彼女の甘い声にはメロメロになってしまうものがありました。

 と、ここまでは女の事などほとんど知らない十代の時の感想で、それから30年、今もう一度見てみたい作品なのですが、今だって女のことは分っているとは言えませんので……。


エロスの誘惑(昭和47年10月・日活)
監督:藤田敏八
音楽:J・S・バッハ
出演:中川梨絵、小松方正、地井武男 他

 私が初めて映画館でリアルタイムで見た成人映画です。

 そのあたりの思い出話は「
闇に蠢く・第1回」でも書かせていただきましたが、それにしても初めて成人映画館に足を踏み入れた時の高揚感、背徳性に裏打ちされた妖しい心のときめきは今でも忘れ難いものがあります。もちろん当時の私は未成年でしたから、そうした行為は明らかに確信犯的犯罪なので、誰かに咎められるのではないか、というような「怯え心」と中川梨絵の映画が見たい一心の「すけべ心」が絶妙なバランスで溶け合っていた故なのはご理解いただけると思います。

 で、物語は不景気な倉庫街を舞台に、SEXを通して描かれる所謂「終わり無き日常」を過ごす冴えない人々の人生模様で、今思うとロマンポルノの中でも物凄く地味な映画なのですが、そうした経緯から私の気持ちは本編が始まる前からある程度「出来あがっていた」ので、あぁ、これが成人映画なんだ……、という満足感がありました。

 もちろん美しい中川梨絵の裸体と絡みはどんなに修正が入っていても最高の興奮度で、周り全てが冴えないがために彼女はまさに「掃き溜めに鶴」状態!

 これが藤田監督の演出の素晴らしさなのでしょうか、その後2回見ているのですが、今もう一度冷静に見たくてしかたがない作品です。いや、冷静にはなれないかなぁ、と自問自答しているところです。


OL日記・牝猫の情事(昭和47年12月・日活)
監督・脚本:加藤彰
出演:中川梨絵 他

 ぜひ皆様に見ていただきたい
恐くて妖しい傑作です。

 物語は会社を欠勤したOLの部屋を上司の男が訪れて見ると……、という発端から、その部屋で女の虜になり爛れた時間が過ぎていくという展開なのですが、この女=中川梨絵が淫蕩な母親の系譜を受け継いでおり、さらに病気の為に余命いくばくも無しと思い込んでいるので、男に執拗に迫り、さらに無理心中未遂にまで発展していきます。そしてその失敗により女は性的半狂乱となり、怯えた男は彼女を縄で縛り上げますが、すると女は縛られたままでオナニーを……。

 これが
すべてマンションの一室という所謂密室で展開されることで濃密なエロ空間が出現しております。

 それにしてもここでの「縛り」は、男が圧倒されたあげくの行為なのがいかにも惜しいです。もちろん当時はまだ「日活SM路線」の諸作品は公開されておらず、しかし既に団鬼六先生の世界に侵食されていた私には、この「縄」と「密室」の世界に危ないほど心がときめいたのでした。あぁ、ここで憧れの中川梨絵の虐められる姿が拝めたら……。

 しかし物語は、そんな切ない彼女の狂態に同情した男が優しさを見せる方向へ展開していったのでした。そして数日後、会社で男は部下から「私も彼女から同じようなことを……」と言われるオチが付くのですが、それにしてもこの作品は中川梨絵の悪女としての、また優しい女としての、そしてまさに牝猫というような我侭で不可解な女の性をたっぷりと見せてくれます。

 それをここまで見せられても嫌にならずに興奮させられるのは、彼女の演技力もさることながら、その天性の美貌、愛くるしい面立ち故なのでしょうか? もちろん脚本も担当した加藤監督が好きなように撮ったが故に傑作なのだ、という推察も可能だと思いますが……。DVD化熱望です。


恋人たちは濡れた(昭和48年3月・日活)
監督:神代辰巳
出演:中川梨絵、絵沢萌子、大江徹 他

 「すけべ心」を抜きにして私が好きで好きでたまらない作品です。そして何から何まで、えっち場面に大きく入る野暮な修正までもが、
1970年代前半の雰囲気を良く描いている映画ではないかと思います。

 では「1970年代前半の雰囲気」とはなにかといえば、目標を見失い一人歩きしている豊かさに追いつけないあせり、所謂「シラケ世代」の人間模様が突出した世相ではないかと思います。学生運動の挫折と所謂「無気力・無感動」、しかし心の奥底には自分自身に決着をつけなければならないという、あせりの時代ではなかったかと思います。

 「すぐれた青春映画は時代を映すこと」とおっしゃられた映画評論家の先生がいらっしゃいましたが、とすれば、これはポルノというよりは青春映画の傑作だと思います。と、なんだか初めから独り善がりな文章になってしまいましたが、舞台は海辺の田舎町、主人公は映画館で働く己の存在を否定し続ける男で、物語はその男の存在とはいったい何なのかという興味で展開していきます。

 とにかくその男は、どうやら自分の故郷に戻ってきているらしいのですが、それを周りから確かめられても否定し続け、行動も怠惰で不可思議なことばかりという有様で、例えば喧嘩をしてはヘナヘナと負け、女を犯してはその女に馬鹿にされ、映画館主の妻と不倫の関係を持ち、自分自身を嘲笑しながら何事にも熱くなれない生活を送っているのです。

 そのあたりの説明を映画は全くしないまま進行していきますが、その男が自分と同じ雰囲気を持った女=中川梨絵に出会い、恋をしてしまいます。そして自転車に二人乗りしている時、男は初めて自分の過去を告白します、「人を刺してきた」と……。しかし、次の瞬間、路地から飛出してきたチンピラに男はドスで刺され、2人を乗せた自転車は海へ突っ込みジ・エンド……。このあたりは洋画の名作「イージー・ライダー」とか「バニシング・ポイント」のラストを想起させられてしまいますが、「自転車の二人乗り」というところが、いかにも当時の日本の青春物語的ではないでしょうか?! 実際「自転車の二人乗り」という恋愛形態に、恥ずかしながら当時の私は憧れていたのです。

 というわけで、この分ったような分らないようなこの作品の雰囲気は絶対に当時的というか、今の若い人達の共感をどの程度呼ぶことが出来るのかは不明ですが、中川梨絵は私にとって間違い無く1970年代前半的な美人です。

 それはつまり、大きな目の愛くるしい面立ちと気だるい雰囲気、不思議な存在感と粘っこい色っぽさでしょうか、この作品は近年、ようやくビデオ化されましたので、そのあたりの彼女の魅力に、ぜひとも接していただきとうございます。特にお勧めのカットは、海岸で絡み合う男女を背景に愁いのある表情のアップで映されている中川梨絵という場面です。

 あと、映画館主の妻を演じている
絵沢萌子が大変に好演で、脂っこいばかりの絡みの演技と男に去られまいと追いかける場面の執念の演技等々、素晴らしいものがありました。

 それと神代監督の演出で印象深いのが、男女3人が海岸で延々と馬飛びを繰り返す場面でしょうか、とにかくどうしようもない「終わり無き日常」を表現しているような気にさせられる名場面だと思います。

 そしてこれは、この雰囲気に浸り込んでしまうと抜け出すことが難しくなる作品で、当時の私は仲間内の会話で、この作品を見たか? というように、この作品の存在を、いささか背伸びをした自慢のタネにしていたのでした。現在ビデオ化はされておりますが、これもまたDVD化熱望の作品です。


(秘)女郎責め地獄(昭和48年4月・日活)
監督:田中登
出演:中川梨絵、山科ゆり、絵沢萌子 他

 タイトルがいかにも「それ風」ですがSM物ではなく、
女郎物・時代ポルノの大傑作です。

 まずオープニング・タイトルからそのまま女郎部屋に引きづりこまれるかのような映像の流れが凄く、続けて全篇に溢れている田中監督の映像美学に酔わされてしまいます。

 中川梨絵の役は女郎「死神おせん」、何故「死神」と呼ばれているかといえば、彼女と関係した男は死ぬという噂があり、客の付きが悪いからです。物語はそんな彼女を中心として、精一杯生きようとする人々の人間模様を描いておりますが、「死神おせん」はその名前とは裏腹にどこまでも優しく、美しく、妖しく、そして人間味がある存在として中川梨絵は演じております。

 例えば、彼女のヒモが死んだ時には、その死体から指を切り取り自分の体を這わせるという行為にゾクゾクしてしまいましたし、自分が原因で破局した男女の心中未遂で、さらし者になった女の事を終止気にかけている優しさを見せます。

 それと特筆して良いのは彼女の甘い声による台詞まわしで、ここでは役柄から少しクールな雰囲気も漂わせているあたりにグッと来てしまいました。それは物語の最後に男と駆け落ちする約束を破り、落ち合う場所で男の置手紙を読んだ後に「うぶだねぇ」と呟くところで最高の効果を発揮しております。

 このラストシーンについては賛否両論、あまりにもわかりきった結末ではないかという意見も当時ありましたが、個人的にはその効果故に、裸体やえっち場面以外のもので興奮させられた最初の体験となりました。

 そして作品全体の映像美の美しさと妖しさ、色彩の豊かさは素晴らしいものがあり、これはビデオ化されておりますので、ぜひとも皆様にご覧いただきたくお願い申し上げます。


女地獄・森は濡れた(昭和48年5月・日活)
監督:神代辰巳
出演:中川梨絵、伊佐山ひろ子、山谷初男、高橋明、絵様萌子、山科ゆり 他

 またしても警視庁の標的にされた作品です。
封切公開中の5月29日に
「わいせつ罪の疑いが濃い」として映倫に対して再審査の要求があり、ついに上映中止となってしまいました。

 私は幸運にもその前に見ることができましたが、「猥褻」というよりは「エログロ」の味がとても強い作品だったと思います。

 物語の時代は大正、舞台は森の中のホテルで、強権的なホテルの主人・山谷初男、その美しい妻・中川梨絵、無実の罪で逃げている女・
伊佐山ひろ子の他に使用人や訳有りの客が入り乱れての乱交が描かれていきますが、それが主題というかほとんど密室的で観念的な作りになっております。後に推察することが出来たのですが、どうやらマルキ・ド・サドの「ジュステーヌ」の翻案ではなかろうかと思います。

 作品の中で衝撃的だったのは、男女6人がそれぞれ絡み合っている最中に相手を撃ち殺してしまう場面で、返り血を浴びて悶える中川梨絵の凄絶な美しさはどうでしょう?! このあたりの演出が当局を刺激したのではないでしょうか?

 それと身も心も悲劇のヒロインを演じきっている
伊佐山ひろ子の小悪魔的雰囲気の良さ、山谷初男の怪優ぶりも見事だと思います。

 それにしても神代監督はどうしてこうも難解なのに心惹かれる作品を撮り続けるのでしょう?

 権力への反発があるのはこの作品でも明かですが、こういう訳のわからないものを提供するという姿勢が当時のクリエイターとしての必須条件であり、それを理解したかのように半可通な意見を述べるのが流行だったような気が致します。もちろん私もその一人で、この作品を見ていることがすでに自慢のタネであり、それでいい気になっていた嫌な奴だった自分が今ではたまらなく恥ずかしく思っております。

 で、この作品ですが確かビデオ化されていると思いますので、ご覧いただければおそらく十人十色の感想が出で来るものと思われます。個人的には大正琴を使った音楽や出演者の演技力の確かさ、そして神代監督の奥深い演出によって不思議に忘れ難い作品になりました。


愛に濡れたわたし(昭和四十八年7月・日活)
監督:加藤彰
出演:宮下順子、中川梨絵、あべ聖 他

 これまた「プログレ・ポルノ」とでも言うか、「えっち物」を見て頭が痛くなった最初の体験で、訳の分らなさではロマンポルノ屈指の作品だと思います。

 いちおう主演は
宮下順子ですが、物語は蒸発した妻を捜す男が彼女に振り回される展開で、イライラするほど不可解に進行していきます。

 中川梨絵は仲間な指図して宮下順子を強姦させる謎の女というチョイ役ですが、その場面で宮下順子が中川梨絵からナイフを奪い、自分の太股にある蛇の刺青をめった刺しにするところは、猟奇と狂気のギリギリの境目を見せてくれて興奮させられました。しかしこれも原因不明の行動だし、部分的には痛いほど勃起させられる場面もあるのですが、ラストで以前の愛人を殺害する件も煮えきらず、それにしてもこういう意味不明の作品を見せられると分るまで見ようと居続けたり、そのあげく分ったような顔をして半可通な自慢をしていた当時の私のツッパリに自己嫌悪です。

 結局当時のメモを読み返し、今こうしてこの映画についてあれこれ書く段になっても分らないという、所謂「幻想ポルノ」なんでしょうが、困った末にとても気になる作品です。まあ、こういう作品が作られ公開されたという、それがいかにも当時の熱気というあたりをご理解願えればと思います。


(秘)女郎残酷色地獄(昭和48年10月・日活)
監督:白鳥信一
出演:中川梨絵、丘奈保美 他

 女郎物・時代ポルノですが、とても不条理性が強い作品です。

 物語はある日突然女郎屋に売り飛ばされた中川梨絵が、自分は見せしめのための生贄だったことに気づいて狂ったように客を取りまくるという展開ですが、そうなるまでの彼女のやるせなさや抵抗が抜群の演技力で表現されているあたりが見せ場だと思います。

 この作品もビデオ化されておりますので、「物語としてのSM物」が好きな人にはこれはお勧めですし、荒んだ中に人情物的な味もあるのでせつない物語が好きな人にも満足していただけるのではと思います。

 それにしても本篇中の彼女は最高に美しくて艶っぽいのに、肝心のポスターが妖怪っぽい作りで愕然とした記憶があります。このポスターについては、機会があればご覧いただきたいとは絶対に申しません。


性教育ママ(昭和48年11月・日活)
監督:加藤彰
出演:司美智子、中川梨絵、二條朱美、片桐夕子、潤ますみ、小松方正、山谷初男 他

 所謂「団地妻」物の変形で、暇と肉体を持余している4人の若妻が童貞男をホテルに連れ込んだり、処女と童貞の新婚夫婦に性教育をしたりの内容で、最後にはその2人は人前でなければ出来なくなるというオチが付いております。

 出演者は豪華ですが、中川梨絵に限って言えば美しさは一番だと思いますが、失礼ながらこれまでの出演作に比べると何故か気合が入っていないというか、残念ながら個人的には印象が薄い作品です。

 他の出演者の中では
司美智子さんがなかなかグラマーで気になる存在です。彼女は実相寺昭雄監督のお気に入りで、ATG作品の「無常」で演じた近親相姦物語がとても良く、もっと出演作を見たいと思っていたのですが果せず、未練が残っている人です。

 あと、ちょっと余談になりますが、この頃になると慣れというか成人映画館に行くにも生意気に一丁前の顔が出来るようになり、場内で「あ、あれは駅前の下駄屋のおやじだ!」とか「あれは中学の時の体育教師じゃあないか?」等と周りを観察する余裕も出て、またそれが故に見つかったらどうしようというような不安もつのり、その屈折感が妙に心地良く、益々エロ映画にのめり込んでいったのでした。


愛欲の罠・朝日にようにさわやかに
   (昭和48年12月・製作:天象儀館、配給:日活)
監督:大和屋竺
出演:荒戸源次郎、安田のぞみ、中川梨絵、絵沢萌子 他

 残念ながらこれは見ておりません。そもそもこの作品に中川梨絵が出演されていることを私が知ったのは昭和52年の夏で、データはその時友人から貰った情報を元に致しました。公開されたのは昭和48年12月で日活ロマンポルノ作品「
欲情の季節・蜜を塗る18歳」、「女調査員SEXレポート・婦女暴行」との併映ではなかったかと推察しております。

 その頃は小遣いも乏しく、全てをリアルタイムで見ることが出来なかったとはいえ、中川梨絵が出演していると分っていれば万難を排して見に行ったのに……、と未練が残り、名画座等の再上映を探しまくったのに現在まで未見のままで、非常に悔しい思いです。

 当時の日活ロマンポルノの興行形態は、新作が2本と独立系からの買い上げ作品、あるいは人気作の再上映という3本立が一般的で、日活作品は名画座や下番館等で再上映される機会も多いのですが、こういう独立系の作品はリアルタイムで見逃すと、その後まずお目にかかれないという状況でした。現在でもポルノに限らず独立系の作品はあまりビデオ化・DVD化されていないのは非常に残念な情況と言わざるをえません。

 ちなみにこの作品の監督=大和屋竺は「大和屋ダンディズム」という言葉が当時あったほど粋な立ち振る舞いとファッションセンス等で一部から注目されていた俳優、脚本家、そして監督であり、これは彼の数少ない監督作品のひとつですので尚更気にかかります。

 また主演女優の
安田のぞみは元祖・不思議な存在感ともいうべき個性的の持ち主で、日活ロマンポルノでは「やくざ観音・情女仁義」での好演が忘れられません。

 で、「愛欲の罠」なんですが、どなたか見ておられる方がいらっしゃいましたら、内容や感想等を教えていただけますようお願い申し上げます。う〜ん、まさに人生一期一会だと痛感致します。


男女性事学・個人授業(昭和49年6月・日活)
監督:小原宏裕
出演:中川梨絵、芹明香 他

 インポ青年が中川梨絵によって機能回復する羨ましい物語ですが、2人の関係に嫉妬した彼女の叔父さんがヤクザを雇って彼女を輪姦させるという惨い展開となります。

 若干ストーリーにひねりが欲しいような気が致しましたが、個人的にはインポ青年に優しく接し何とか機能回復させようと愛撫するあたりでは素直に興奮させられました。

 それにしても女郎役をこなした彼女ですから、現代物でソープ嬢役というのも見てみたいなぁ、というのがこの作品を見た後の感想でした。


竜馬暗殺(昭和49年・映画同人社〜ATG)
監督:黒木和雄
出演:原田芳雄、中川梨絵、松田優作、石橋蓮司、桃井かおり 他

 坂本竜馬を取り巻く人々を扱った幕末の物語ですが、それまで英雄的に描かれていた偉人を現実的に扱うという当時流行した手法が導入されているので、とにかく坂本竜馬=原田芳雄も中岡慎太郎=石橋蓮司もどうしようもなくカッコ悪く、その竜馬を暗殺するように密命を受けているのにそれを果せない松田優作に至っては、ダメ男の決定版的な描かれ方をされておりますが、それがいかにも松田優作的なカッコ悪さで、逆に最高でした。

 中川梨絵は竜馬が潜んでいる蔵の二階の向かい側の部屋で営業している女郎役ですが、やたらに笑う白痴美的な艶っぽい演技で、最初に登場したときから眩暈がするほどの美しさでした。

 ちなみにこの作品はモノクロで、それ故に彼女の妖艶さが浮き彫りになっているようです。反対に桃井かおりの華の無さは……、まあそういう演出になっているのでしょうが、あまりにも対照的な、そして印象的な演出でした。

 で、一般映画なのですが、もちろん女郎役なので彼女の裸と絡みは拝めます。これまで書き落としておりましたが、彼女はけっしてグラマーではありませんし、乳も当時としては平均的な大きさだと思いますが、所謂美乳で乳首まわりにも品があり、肉体もしなやかな雰囲気がありますからセクシーです。加えて絡み場面での身のこなしが本当にえっちっぽく、大きな目と形の良い鼻の表情も色っぽくてたまらないものがあります。

 もちろん芝居部分の演技力も的確で、ここでは隊の金を使い込んで逃げてきた新撰組隊士に愛想をつかす場面や記念写真を撮る場面での台詞の無い表情の良さ等々、素晴らしいものがあります。

 あと彼女と坂本竜馬が絡んでいる横で中岡慎太郎が不貞腐れている場面は、ロマンポルノなら絶対3P演出になるはずで、そういうのも見たかったなぁという感想もあります。現在の感覚から見れば臭味があるかもしれませんが、いかにも1970年代前半的な味として一度はご覧いただきたい作品です。


実録飛車角・狼どもの仁義(昭和49年10月・東映)
監督:村山新治
出演:菅原文太、中川梨絵、小林旭、渡瀬恒彦、石橋蓮司、内田良平 他

 当時流行した実録風やくざ映画で、データにあるように大物俳優の中にあって堂々の主演女優を演じた作品です。

 あいまいに生きることが出来ない世界で、懸命に生きようとする菅原文太の相手役として時に悲しく、時に美しく、そしてせつない演技は最高で、その美貌もギラギラした映像に華として輝いております。エロ場面は期待薄ですが、一般映画ではこれが代表作ではないでしょうか?


喜劇・女の泣きどころ(昭和50年2月・松竹)
監督:瀬川昌治
出演:太地喜和子、中川梨絵、坂上次郎、財津一郎、湯原昌幸 他

 喜劇映画の巨匠・瀬川監督の傑作で、中川梨絵は明るく楽しいストリッパー役でした。ただし所謂エロ場面はありません。


歌麿・夢と知りせば(昭和52年9月・製作:太陽社、配給:日本ヘラルド)
監督:実相寺昭雄
出演:岸田森、平幹二郎、成田三樹夫、中川梨絵、緑魔子、渡辺とく子 他

 久しぶりに銀幕で中川梨絵のお姿が拝めるうえに、それが実相寺監督がメガホンを、ということで多いに期待した作品でした。

 物語は江戸時代の高名な浮世絵師歌麿・岸田森を取り巻く様々なエピソードを扱ったもので、監督が監督だけに暗い画面にオドロの雰囲気で、中でも歌麿が天井裏を徘徊して女郎の絡みを覗くあたりは流石の演出でした。

 その覗かれる女郎の売れっ子太夫が中川梨絵でした。ハマリ役の美形女郎なだけにツボを外さない演技でしたが、この作品で個人的に最も好きなのが大奥の女=
渡辺とく子が怪しげな祈祷によってひとりで悶えて痴態を見せる場面でした。他にもこの作品がR指定にされた事が頷ける演出が多く、あまりヒットしなかったようですが、一度は見ても損はないと思います。


 さて、ここまでで中川梨絵はスクリーンから姿を消してしまいます。そしてしばらく後「
日蓮」とか「ラブホテル」という作品に出演しているらしいのですが、残念ながら見ておりません。テレビ出演作品もほとんど記憶に無く、歌手としての活動も「踊りましょうよ」という自作自演の曲を発表していた気がするのですが、私にとっての彼女は1970年代前半が全てという感じです。
 
 今回はエロ場面についての既述が少なく、ちょっと個人的感傷で観念的になりすぎてしまったようで反省しておりますが、彼女の身体で私が一番気に入っている特徴は所謂「モリマン」ということです。下着越しにもモッコリと膨らむ股間を何回おかずにしたことでしょう……。特に昭和48(1973)年度版ロマンポルノカレンダー2月の彼女は素晴らしいその部分を見せてくれます。機会があればぜひご覧いただきたいと思います。

(2002.4.30「地下画廊」に掲載 / 2005.01.05 改稿転載)
(敬称略・続く)