闇の中の妖精

有明祥子の巻


 今回は少し暗い女優さんをご紹介いたしますので、その雰囲気が嫌いな人は飛ばして下さるようお願い致します。

 スター女優には所謂「華」とか「輝き」が必要だと思いますが、主役を張っていてもそういう華やかなところがなく、逆に暗い部分で見ている側を惹きつけていく人もおります。暗黒星とでも言いましょうか、これからご紹介する
有明祥子はまさにその一人だと思います。彼女については私が見ている出演作品以外のことは全く分らず、そのために余計ミステリアスな雰囲気が感じられます。


天使の欲望(昭和54年10月・東映)
監督:関本郁夫
出演:結城しのぶ、有明祥子、東てる美 他

 
結城しのぶとちょい役で出ている東てる美を見に行って有明祥子の虜になってしまった作品です。

 物語は青森から東京に出てきた姉妹がともに看護婦として働いておりますが、姉・結城しのぶは淫乱で夜になれば男を求めての痴態・狂態というのが実像ですが、それとは対照的に妹・有明祥子は短歌を詠んだりするややネクラなタイプとして描かれております。そして紆余曲折の姉妹愛憎の果てにクライマックスはその2人による全裸で血まみれの殺し合い!

 ここが本当に凄みのある演出で、かなり長時間にわたる場面なのに少しもダレる所が無いド迫力の演技に吸付けられました。特に姉を殺害する決意をした後の
有明祥子のドロドロとした情念の噴出がリアルで、蛾を焼き殺す場面から姉との血みどろの抗争まで、暗く不気味な美しさが一気に輝いて行くところは最高でした。

 彼女はこれが映画初出演らしいのですが、ここでの鮮烈かつ美しい毒のある演技に魅せられた私は、しばらくの間、有明祥子、有明祥子と魘される日々を過しました。また関本監督は後年、日活SMシリーズとして
高倉美貴主演による「縄責め」と「緊縛卍責め」のメガホンをとり、後者では再び姉妹愛憎というテーマを取り上げておりますが、個人的には残念ながらこの作品のような毒気が感じられず、それだけにこの作品の強烈な印象が焼き付けられております。


ザ・スーパーガール/夜の女子寮・狙われたチアガール
   (昭和54年12月・東京12チャンネル=現テレビ東京)
監督:高橋勝
出演:野際陽子、ジャネット八田、有明祥子 他

 女探偵アクション物のテレビシリーズに有明祥子が出演した作品です。

 彼女の役は秘密を知ったがために殺されるチアガールで、思いつめたような表情が印象的でした。それにしてもピンク映画もどきのタイトルは何とかならなかったのでしょうか? いや、それ故に見てしまった私のような者も……、あぁ、この自己矛盾!


ザ・スーパーガール/女の肌は三億円の秘密金庫
   (昭和55年1月・東京12チャンネル=現テレビ東京)
監督:関本郁夫
出演:野際陽子、牧れい、有明祥子 他

 同上シリーズの内の一作で、今回は堂々とエピソードの中心人物を演じております。

 彼女の役は元スケバンで現在はピアノ・バーのママであると同時にやくざの情婦という設定で、物語の最後に淋しく微笑むその翳りのある美しさは、今でも脳裏に焼き付いております。

 ちなみにこの女探偵シリーズは当時流行していた「チャーリーズ・エンジェル」と往年の「プレイガール」の複合路線を狙ったもので、洒落たファッションとお色気に湿りっ気のあるドラマという堪えられないもので、この物語で活躍する女探偵・
牧れいは最高にはまったキャラクターだったと思います。他に泉じゅんも探偵のひとりとして出演しておりましたし、中島葵風祭ゆきが登場した物語もありました。「プレイガール」と共にDVD化を熱望しております。


若妻24時間暴行(昭和55年6月・製作:獅子プロ、配給:東映セントラルフイルム)
監督:田中雄二
出演:三崎真利亜、笹木ルミ 他

 有明祥子に毒されて仲間内でそれを喋りまくったのに、その後彼女の情報が入らずにイライラしていたら、この作品に出演している
三崎真利亜が有明祥子ではないか という噂が流れてきました。ところがやはり独立系の作品なので再上映しているところが見つからず、残念ながら未確認です。どなたか真実をご存知ならばご教授下さるようお願い申し上げます。


影の軍団/花嫁と暗殺の鬼(昭55年6月・関西テレビ、フジテレビ)
監督:関本郁夫
出演:千葉新一、有明祥子 他

 同じ頃に有明祥子として出演したテレビ作品です。これも未確認ですが演出が「
天使の欲望」の関本監督ということでの起用と思われます。


警視K/まぼろしのニューヨーク(昭和55年11月・日本テレビ)
監督:黒木和雄
出演:勝新太郎、有明祥子 他

 これも風の噂ですが、確かに字幕に有明祥子の名前があったと友人に教えていただきました。残念ながら未見ですが、ビデオ化されているらしいので確認出来そうです。それにしても悔しい



暴れん坊将軍/決闘! 甲州笛吹川(昭和56年8月・テレビ朝日)

 これも友人からの情報でした。未確認ですが、けっこう重要な役だったらしいです。そしてこうも彼女に会えないと益々愛しさが募ります。


影の軍団U/姿なき吸血鬼(昭和56年10月・関西テレビ、フジテレビ)
監督:関本郁夫
出演:千葉新一、真田広之、志穂美悦子、有明祥子 他

 この作品も見ておりませんが、友人からの情報です。


大日本帝国(昭和57年・東映)
監督:舛田利雄
出演;丹波哲郎、西郷輝彦、三浦友和、あおい輝彦、関根恵子、夏目雅子、有明祥子 他

 ここに書ききれないほどのオールスターキャストによる、なんと途中に休憩時間まであった大作ですが、題名からも推察できるように戦争賛美ではないか? と製作中に中国等の諸外国から抗議があった問題作です。

 内容は大東亜戦争開戦前から日本の敗戦までの歴史の中に庶民の生活を絡めて描いたもので、もちろん戦争の悲惨さや無益さはたっぷりと描かれておりますが、個人的にこういう作品はどうも苦手で、招待券だったとはいえ見始めてから10分もたたないうちに後悔モードに入ってしまいました。

 したがってただなんとなく見ていたのですが、本篇が終了し、最後の字幕のクレジットのところで有明祥子の名前を見つけて仰天! う〜ん、出演していたのか……? その場面はおそらくサイパン島でアメリカ兵をギリギリまで引き付けておいて手榴弾で自決する娘の役だったような気が致しますが……。もう一度見て確認する気にもなれず、ビデオも出ておりますが、どうも……。


犯され志願(昭和57年3月・にっかつ)
監督:中原俊
出演:有明祥子、風祭ゆき 他

 
有明祥子の主演作で、当時いろいろな意味で表面化し始めた「キャリア・ガール」や「自立した女」の生態を、性的部分から捉えようとする主題があります。分りやすく云えば、社会でナウい仕事についてバリバリに活動している彼女達の下半身はどうなっているのか? ということで、有明祥子の役はインテリア・デザイナーとしてマンション暮しをしている良い女です。

 物語はその彼女の日常を描いていくのですが、明るくふるまっていて仕事も出来るのに、どこかネクラな部分があるという、ちょっと難しい役どころを有明祥子は見事に演じております。例えば、一人で蹲って自室にいる時の孤独感の表現、夜に男をほったらかして製図版に向かう姿、飲み屋で中年男に媚びを売る時の仕草等々、なんとか今の自分から脱皮したいのだけれどもどうにもレッテルが剥がせず、それならば誰かにメチャクチャにしてもらいたいけれども、それもかなわず……、というような煮え切らない感情表現が全篇を貫いているようです。

 したがって一見激しいSEX場面においても彼女はどこか冷めいてるように見え、これは監督の演出なのでしょうが、非常に変わったポルノ作品ではないかと思います。そしてこれを成立させているのが有明祥子だけの個性で、それは所謂「不思議な存在感」ではなく内に秘めた「不気味な存在感」だと私は感じております。


双子座の女(昭和59年8月・にっかつ)
監督:山城新伍
音楽:クロード・チアリ
出演:五十嵐夕紀、有明祥子、朝比奈順子、中尾彬、山田辰夫、たこ八郎 他

 昭和52〜53年頃にアイドルとして活動していた
五十嵐夕紀が主演するということで、かなり話題になった作品です。しかも監督が前年早乙女愛主演による「女猫」で当たりを取った山城新伍なので期待していたのですが、残念ながら個人的には生彩が感じられませんでした。

 物語は所謂三角関係物で、女の執念をサスペンス風味で仕上げようとした意図は理解できるのですが、肝心の主演女優の魅力が引き出されていないというか、またそれにつられて有明祥子も印象が薄いというような出来でした。ただし共演者は味のある演技をたっぷり見せてくれ、特に
朝比奈順子と山田辰夫の絡み場面において「おれ、まだパンツ脱いでないよ」という、成人映画史上屈指の名台詞が出るあたりは最高でした。ちなみにこの時の朝比奈順子の返事は「どーでも良いの」なので、その情況を察していただきとうございます。


 ここまでで彼女はぷっつりと私の前から姿を消してしまいました。ある筋からの情報ではNHKの怪物的人気朝ドラだった「おしん」に出演していたとか、「影の軍団」シリーズで姿を見かけたとか、初期AVに変名で出演していた等々がありますが、いずれも現在まで未確認です。

 一般に有明祥子の代表作といえば「
犯され志願」ということになるのでしょうが、しかし、しかしです、個人的にはあの役は的確な演技力さえあれば他の誰かでもこなせたのでは……、という疑惑が心から消え去りません。したがって、やはり「天使の欲望」が彼女の代表作ではないか、あの鮮烈さは唯一無二の物凄さだった、というのが私の見解です。

 「妖精」とは人生のある一時期にしか見る事ができないと云われております。だとすれば有明祥子こそ、私にとっての「妖精」であったのだなぁ……、という思いを強くしております。


(2002・5・22「地下画廊」に掲載 / 2005.01.06 改稿転載)
(敬称略・続く)