闇の中の妖精

高倉美貴の巻


 全くの新人をいきなり主演に抜擢し、その初々しい魅力で作品全体のインパクトを強める手法は創世記から行われてきたロマンポルノのお家芸ともいうべきものですが、高倉美貴もそうしてデビューした内の一人でした。

 私が彼女の存在を初めて知ったのは昭和58 年6月2日のことです。

 何故日付まで明確に覚えているのかといえば、その日、今では一部で歴史上の出来事とまで言われている「アントニオ猪木舌出し失神事件(注1)」があった新日本プロレスのIWGP決勝戦を蔵前国技館に観戦しに行った日であり、その会場で偶然出会った知り合いのエロ本編集者から――今度、にっかつから素晴らしいお嬢様系の女優がデビューする、それも団鬼六SM物で!――という情報を戴いたのでした。

 今にして思えば、こちらの方が歴史的な出来事として重要であり、等と最初からいささか確信犯的な事を書いてしまったのは、当時の私はSM物も含めていささかエロ映画・成人映画に食傷気味であり、その話を聞いている最中にもあまり期待はしていなかったからで、しかし彼女の宣材用写真を見せられた時には思わず、うっ!と衝撃を受けました。それは上半身だけでもちろん着衣でのモノクロ写真でしたが、その清楚可憐なルックスはとてもSM物の主演でデビューするとは思えないものだったからです。

 そして急にスケベ心が全開となった私は、どうやらデビュー作は夏の終わりころに公開される予定であること、団鬼六が自ら出馬して出演依頼をされたこと等々の情報を彼から聞き出し、さらにその後も彼女についてのチェックをこまめに続けました。どうやら彼女は石川県金沢市の北陸学園高校を卒業後、デビューに至るまでモデルとして活動していたようです。そしてまず、予告篇を見ることが出来ました。


団鬼六・美女縄地獄/予告篇(昭和58年8月・にっかつ)

 実際の話、私がこれほどまでに見たいと思った予告篇は「生贄夫人」以来でした(「闇に蠢く・第2回」参照)。なにしろその目的だけの為に大谷直子主演の「ダブルベッド」を上映している劇場に行ってしまったのですから……。当然、心ここに在らずの態で、次回上映のポスターをまずチェックしました。それは「団鬼六・美女縄地獄」のタイトルの下にヌードで両手に縄を掛けられた清楚な高倉美貴の上半身がレイアウトされいてい、そこで披露されている彼女の乳は細身な体にもかかわらず、かなり熟れた雰囲気が濃厚でゾクゾクさせられました。

 で、いよいよ待望の予告篇、いきなり着物姿で縛られている女が登場しますが、これは彼女ではなく、「高倉美貴」として最初に私の前に現れた彼女は神社の鳥居の所で男と悲しげに会話する場面でした。舞台設定はどうやら大東亜戦争下の田舎町のようで、兵役に行く恋人と別れた彼女が誘拐され監禁されるところは描かれていましたが、おいしい部分は彼女の絡み場面ばかりで、肝心の彼女に対しての縛り等のSM場面は見ることが出来ず、???な気分になりました。しかし、それでも成人映画の巨匠・中村幻児監督の作品であること、画像に重みがあり綺麗であること、そして「明日のない青春、そのゆがんだ情欲がほとばしる」「生かさぬよう、殺さぬよう、美しい蝶をもてあそぶ欲情の罠」というテロップと彼女の「地獄にいきましょう」という、やや舌ったらずで甘えた台詞回しに心が惹かれていくのでした。


団鬼六・美女縄地獄(昭和58年8月・にっかつ)
監督:中村幻児
原作:団鬼六「白昼夢」より
出演:高倉美貴、伊藤麻耶、山路和弘 他

 記念すべき高倉美貴の主演デビュー作です。

 物語は大東亜戦争下の田舎町、高倉美貴の役は絹問屋のお嬢様、物語は兵役のため婚約者との仲を引き裂かれた高倉美貴さんが、彼女に密かに思いをよせる男に誘拐・監禁されて……、という展開です。

 彼女は土蔵のような場所の2階に監禁されるのですが、自然描写も含めてこの場所の雰囲気がとても良く、衣装や世相、風俗等の時代考証もしっかとしており、当時のロマンポルノとしてはかなりの制作費をつぎ込んでいることが覗えます。

 で、美味しい見所ですが、まず巡礼姿の男に薬を嗅がされ白目を剥いて気を失った高倉美貴が目覚めてみるとベットに縛られている場面から続いてそこに現れた男から逃げようとして衣服を破かれる場面があります。そこでの彼女は下着姿なのですが、これが当時のことですから、シュミーズというのでしょうか、分厚いスリップのようなものを着ており、その下からは丈の長いズロースが覗けます。また犯される場面でそれを破かれるとブラジャーは着けておらず、いきなり熟れた乳が出てくるところでは思わず息を呑みました。

 そしてそのまま監禁されるのですが、その土蔵の2階から何とか脱出しようとして、今度は後ろ手に縛られてしまいます。この場面は映像的にも金網越しの彼女のアップが堪らなく美しく描写されており素敵です。もちろんここまでの彼女は当然のように徹底的に抵抗し、お嬢様ですから高慢な態度をモロ出しにしておりますが、続く場面ではとうとう男に必死の訴えをしてしまいます。

 美貴「縄を解いてよ、行かせてっ、もう限界だわ……」
 男  「何がです」
 美貴「おしっこ……」
 男  (わざと聞こえない素振りで)「えっ」
 美貴(消え入りそうに)「おしっこ……」

 ここまでけっして演技が上手いとは言い難い彼女でしたが、ここでの恥じらいのある振る舞いはどうでしょう?! 個人的お好みの場面と言ってしまえばそれまでですが、完全にツボを刺激されるところでした。

 さらに焦らしたあげくに彼女の縄を解きにかかる男に対して「早くっ、早くぅ」と甘えとせつなさが入り混じった切羽詰った台詞回しと表情、そして戒めから解き放たれ、尿意に苦しめられながら階下に下りた彼女がトイレを探してうろうろする演技には最高にグッときました。そして当然のように彼女の前には金属製の洗面器が……。

 このあたりの場面展開は彼女の次回主演作「美女縄化粧」における倉庫の中での責めがあまりにも有名ですが、私はこちらを採ります。

 そして次の見せ場は土蔵の中での彼女の行水です。実はここで彼女の全裸が初めて拝めるのですが、それがノーブルな顔立ちとは逆に非常に淫乱な風情があり、痩せ型であるにもかかわらず大きな尻、どこか熟れたような乳、特に腋の下から乳へのボディラインがとてもいやらしくて堪らないものがあります。

 ここでの彼女は盥のなかで男の視線から隠すようにして恥じらいながら身体を洗うのですが、当然男は彼女に触れてまいります。抵抗する美貴、ついに全裸のまま土蔵の2階に逃避する彼女の身体を下から撮ったショットは強烈で、そのまま2人の絡みになるのですが、ここでのSEXが妙にリアルです。なんとなくその表情等に彼女の私生活でのその場面を想像させられてしまうものがあるのですが、これは彼女のややおぼつかない演技が良い方向に作用したところだと思います。

 ところで、この物語に登場する男は若いにもかかわらず役場勤めらしいのですが、それは彼が足が悪く身体も弱いという設定になっているからで、つまり当時の時局からみれば兵隊に行けない半端者であり、当然のように屈折した男という役柄を山路和弘は好演しております。

 物語上の彼はとにかく高倉美貴に憧れており、誘拐監禁した彼女に懸命に尽くしますが、1970年代前半から数多くの成人映画を作り続けた中村幻児監督は、こういう田舎の屈折した若者を描くのが本当に上手いと思います。

 また、この男には馴染みの女郎がおり、その女郎役が演技派の伊藤麻耶です。彼女は彼に思いを寄せているという設定になっており、冒頭にはその女郎屋で2人による緊縛プレイが行われている描写があり、ここで男がSM愛好者であることがわかります。

 さて、物語は後半、高倉美貴の婚約者が戦死した訃報をきっかけに彼女が絶望ゆえに男に身を任せる展開になりますが、その爛れた監禁生活をある商人に気づかれ、男はその商人を殺害、さらにその彼にまで召集令状が来たことによって絶望の淵に追いやられた2人は固く抱き合いますが、そこを馴染みの女郎に見られて……、という展開になります。

 この後半の部分は高倉美貴の官能場面におけるその表情、仕草、身のこなし等々が徹底的に描写され、予告篇で聞かれた「いっしょに行きましょう……、地獄へ行きましょう……」というせつなくも甘えた台詞が効果的でした。恥ずかしながら不覚にも、私生活においてSEXの最中にこの彼女の台詞回しが脳裏に甦ってきて射精してしまったことが一度ならずあります。

 ということで、この作品は高倉美貴に限っていえばソフトSMの域を出るものではありませんし、演技も未熟です。しかしその美貌と初々しさ、恥じらいが滲み出てくるような仕草には堪らないものがあります。

 また作品全体を貫く「蝶」のイメージと丁寧な映像美が素晴らしく、書店でSM誌が堂々と販売されたり、奴隷・松川ナミの登場によって行く所まで行ってしまった当時の状況の中で、彼女登場こそはまさにSMルネサンス! この作品のヒットを受けて彼女主演作が続けて作られていきます。そしてもちろん「三代目SMの女王」と認定されたのは言うまでもありません。


団鬼六・美女縄化粧(昭和58年12月・にっかつ)
監督:藤井克彦
原作:団鬼六「濡れた復讐」
出演:高倉美貴、江崎和代、伊藤麻耶 他

 デビュー作のヒット、そしてその清楚な美貌から「SM映画のオリビア・ハッセー(注2)」と称された高倉美貴の2本目の主演作品は、そのSM度において前作をはるかに上回る出来となりました。

 彼女が演じるのは社長令嬢で女子大生というハマリ役、物語は何不自由無く、そして仲睦まじく父親と暮らす彼女がある日突然誘拐・監禁され、という発端から彼女への責めが続きます。

 まず薬で眠らされた彼女は倉庫の中の階段に座らせられたまま縛られ、衣服は着けているものの手足の自由は奪われております。そして意識を取り戻した彼女は当然抵抗、帰してくれるように頼みますが、それが無理とわかると今度は身体に指一本触れないように要求し、監禁者の男達はそれを受け入れます。しかし長時間の拘束ですから、当然彼女にはある苦しみが襲いかかり、せつなさのあまり訴えます。

 美貴「お願いがあるんです……、おトイレへ行かせてっ……」
 男  「ダメだ!」
 美貴「どうしてっ!」
 男  「あんたが言い出したんだ。手を触れてはいけない、手を触れなければ縄は解けない」
 美貴「お願いっ、トイレっ!!」

 このような遣り取りがあり、彼女が尿意に苦しみ、表情が歪むあたりは最高にゾクゾクさせられます。そしてさらに限界が近づく彼女の素晴らしい場面が続きます。

 男  「どうしたんです?」
 美貴(呟くように)「……漏れそう……」
 男  「聞こえませんよ」
 美貴「漏れそうよぉ!」
 男  「そこでして、良いんですよ」
 美貴(ぎりぎりの限界で)「……お、お願いっ……」

 あぁ、この時の彼女の表情と仕草、漏らすまいとする必死の切ない表情、そして限界が訪れたその瞬間の最後の抵抗と刹那の開放感、羞恥の表情……、そしてついに……!!!

 美貴「見ないでっ!」

 目にも眩しい白い下着から滲み出て流れるおしっこ……、自分ではもうどうにもならない恥ずかしい水流……、その場面を男は撮影します。無機質なシャッターの音、非情のフラッシュ……。

 美貴「嫌っ、撮らないでっ、いやぁ〜ぁ、もう嫌っ、堪忍してっ……」

 いきなりのお好みの名場面、必死で訴える彼女に脳天から股間まで痺れっぱなしの私でした。この場面は、さらにそのまま時間が経過した後に彼女の汚れた下着の検査おしっこまみれになった下着を彼女が顔におしつけられるという美味しい見所に続きます。

 さて、ここまでこの物語は何故彼女が誘拐・監禁されなければならないのかという確かな理由が示されておりませんが、次の場面で彼女はある秘密クラブに連れて行かれます。そしてそこで彼女が見せられたものは、マジックミラー越しにSMプレイに興じるある男の姿が……。

 ここで縛られ、責められているのが伊藤麻耶で、その被虐の演技は彼女のファンならずとも見逃せないところです。そしてその2人の痴態・狂態に、マジックミラーを巧みに使って表現される高倉美貴の打ちひしがれ苦悶する表情が重なっていきます。

 さらに続けて、彼女が黒い下着姿でベットにあお向けに拘束され全身をいたずらされるのですが、ここでの乳首責めは個人的に大好きな場面で、かなり本気度が高いと思わせる彼女の演技は、その乳首を見ても明らかです。そしてここでの彼女の健気な演技には本当に興奮させられる見応えのある場面だと思います。

 物語はこの後、隙を見て豪雨の中を逃走した彼女が家にたどり着きますが、またしても連れ戻され、今度は剃毛ですから堪りません。さらに本格的に縄を掛けられる彼女の前に虐め役が絶品の江崎和代が登場、ねちねちと彼女を嬲りながら、一連の真相を明かし始めるのでした。
 
 そしてついに……。ここからは見てのお楽しみと致しますが、とにかく全篇を通しての彼女の被虐の演技が最高にツボを刺激してまいります。彼女の場合、けっして演技は上手くないのですが、それがかえって素人っぽいというか、ある種のリアルさに繋がるという所謂「ヘタウマ理論」の実際例ではなかろうかと思います。つまり本気か演技かわからない部分が私には非常に魅力的です。

 藤井監督の演出もそのあたりを巧みにリードしながら冴えを見せており、被虐の場面以外でも、テニスウェアで躍動する彼女の清楚な美しさを本篇冒頭で見せておき、後半の緊縛場面での美しさも本質的には同じ物であるという彼女の資質をこちらに気づかせる演出、また、中年女性といっしょの入浴場面を設定し、彼女の若々しい肉体の輝きとその羞恥心をたっぷりと見せてくれる演出等、素晴らしいものがありました。とにかくSM物では定番の「み、見ないでっ……!」という台詞がこれほどきまる女優もいないのでは、と思わせるほどです。

 ということで、この作品は低予算ながら清楚な美女が陵辱されるという、まさに王道をしっかりと踏まえた傑作で、封切直後から劇場は満員の大ヒット、その後の名画座でも切り札的存在となりました。まずは皆様にご覧いただきたい一本です。

 尚、予告篇ではロック調だった音楽が本篇ではジャズ調になり、それがチープなマイルス・デイビス(注3)風なのに、どこか憎めません。


団鬼六・修道女縄地獄(昭和59年5月・にっかつ)
監督:藤井克彦
原作:団鬼六「嘆きの天使」
出演:高倉美貴、小川亜佐美、伊藤麻耶 他

 絹問屋の一人娘、社長令嬢の女子大生と演じてきた高倉美貴がこの3作目の主演作品ではこれまたこの世界では定番ともいえる修道女に扮しております。

 物語は妻子ある男と恋愛関係になってしまった高倉美貴が、そのためにその男の妻が自殺した事から自責の念にとらわれて修道院へ、という設定です。修道院物のお約束としてシスター同士のレズ場面はもちろんあり、それにしてもこの修道院はグラマーでチャーミングなシスターが多いなぁ、と思っていたら案の定、ここには小説家の後援者が付いていて多額の寄付をしてくれるので、そのお礼に高倉美貴が出向くところが伏線になっております。

 で、肝心な高倉美貴の見せ場ですが、まず、別れて来た男の事が忘れられずにやってしまうオナニー場面がなかなか秀逸で、鏡に映る自分に思わず口付けしてしまう妖しい雰囲気あたりはなんとなく乱歩的でもありますし、その後、穢れた体を清めるためのシャワー・シーンでは熟れた全裸が拝めます。また薬を飲まされて夢と現実の間で乳を挟まれるようにグリグリに縛られている彼女の姿、恋人を回想する場面での絡みで乳首を吸われる彼女の表情にもグッと来るものがあります。

 そして物語は後半、実はその修道院のシスター達を慰みものにしている後援者の小説家が、その本性を剥き出しにして高倉美貴を歯牙にかけ、また、彼女の事が忘れられずに連れ戻しにやって来て捕らえられた恋人共々に責めを受ける展開となります。そこでは彼女に対して行われる山芋責めが見所だと思いますが、個人的にはストーリーもやや予定調和的な気が致しますし、全体を通してどうも散漫で決定的な盛り上がりに欠けている雰囲気を感じます。それは前作の出来があまりにも強烈だったせいかもしれませんが、失礼ながらやや辛口に書かせていただければ、修道院物というと見る側はどうしても東映の人気作「聖獣学園(注4)」を意識してしまいますし、製作者側もそのあたりを考え過ぎたきらいがあるのではと推察しております。

 しかし、彼女の人気は絶大で劇場の入りも良く、各種男性誌やエロ本のグラビアへの登場回数も増え、主演作も続けて製作されていきます。
 
 尚、舞台となった修道院入り口に架かる吊り橋は志麻いづみ主演の「団鬼六・蛇の穴(闇の中の妖精・第6回参照)」にも出てくる所で、おそらく伊豆の城ヶ崎海岸ではなかろうかと推測しておりますが……。


団鬼六・縄責め(昭和59年9月・にっかつ)
監督:関本郁夫
原作:団鬼六「愛奴婦人」
出演:高倉美貴、高橋かおり 他

 4本目の主演作は東映で「好色元禄(秘)物語(注5)」「処女監禁(注6)」「天使の欲望(注7)」といった私にとってお気に入りの作品を撮った関本監督だったので、大いに期待した作品でした。

 物語は親の借金のために銀行の支店長の後妻になり、愛の無い日々を積み重ねている高倉美貴が、ある日海岸で出会った男と愛し合いますが……、という発端から、この後それをネタに脅迫され、調教を受けて……、という展開になります。

 本格的デビューから1年、彼女の身体はますます熟れていて、まず冒頭の夫婦の絡みでバックから乳を揉まれるところは堪らないものがあります。また夫に冷たくされ虚しさの中での和服姿のオナニー場面や夫婦で入浴中に行われる剃毛場面も彼女のファンには見逃せないところですが、ややあっさり味なのが個人的には残念です。

 これは作品前半がSM物というよりも青春物の味がある昼メロにやや近い雰囲気があるためではないかと思いますが、海岸で出会った男との砂浜での絡みに重なる加藤登紀子の歌、その男と別れることを告げた場面での彼女の泥だらけのワンピース、続いて踏切を渡って自ら脅迫者のところへ調教を受けにいく場面の映画的構成は素晴らしいものがあります。

 そして後半はいよいよ肝心の責めが見せ場となり、まず縛りあげての刷毛責め、両手を縛り吊し上げておいての浣腸と続きます。この浣腸場面における彼女の演技がまたグッとくるものがあり、「やめてっ、やめてっ」「お願い、行かせて……、トイレへっ……」「おっ、お願い……」と必死で訴える台詞と苦しみ、嫌がり、悶えの演技は強烈で、最後の瞬間のその刹那の表情と屈辱の後の開放感に満ちた表情の対比は本当にツボを刺激されるものがあります。

 尚、ややネタばらし気味になりますが、この最後の瞬間のところは音だけの演出になっておりますので、そういう責めに汚さを感じてしまう皆様にも安心してご覧いただけるのではと思います。

 彼女の見せ場はこの他に拘束されたままのレズ・プレイ等もありますし、物語はクライマックスにおいて驚愕の真相が明かされ、さらに素晴らしいオチに繋がってまいりますが、これは見てのお楽しみとさせていただきます。

 ということで、純粋なSM物としてはやや物足りない部分もありますが、個人的には少しニューシネマっぽい部分があったりして好きな作品です。高倉美貴の演技も中盤から後半、そしてラストに至って進歩の跡が覗えますし、また高橋かおり、後の麻生かおりが共演しているところにも要注意です。そしてポスターも乱れた着物から太ももと胸元を見せつけ、さらにこちらに目線を投げかけてくる高倉美貴の妖艶な姿をとらえた秀逸なものでした。本篇と共に、機会があればぜひご覧いただきとうございます。


団鬼六・緊縛卍責め(昭和60年1月・にっかつ)
監督:関本郁夫
原作:団鬼六「黒縄貴婦人」
出演:高倉美貴、麻生かおり 他

 高倉美貴の最後のSM物です。

 物語は男に騙されSM好きの金持ちに売られ、今はその金持ちをパトロンにして銀座の高級クラブのママをしている高倉美貴と、彼女に対する嫉妬心を抱き、自分も夜の街で伸し上ろうと上京してきた妹・麻生かおりとの対決、女のドラマを描いたものです。このあたりは「天使の欲望」思わせるものがあり、関本監督がお得意とする姉妹愛憎物ということで演出も冴えていて、さらにそこにSM味が塗されているのですから堪りません。

 姉=高倉美貴の見せ場としては、まずレイプシーン、続いて売り飛ばされてからのSM調教がありますが、このあたりはやや様式美に陥ったようなところがあり個人的には物足りなかったものの、後半の盛り上がりを思えばこの部分の淡白さは流石の演出という気も致します。

 一方、妹=麻生かおりはSMクラブのショウに出演して評判を取り、前出の金持ちに見込まれます。そしてそれを知った高倉美貴の焦燥、対立する姉妹の感情のもつれ等々のドラマがあり、クライマックスでは妹の前ですっかりM奴隷となっている現在の自分の本性を見せつける姉の縄姿が……、という展開です。

 この場面では赤い襦袢姿で縛られ鞭打たれる高倉美貴が素晴らしく、ドラマの部分での演技力もデビュー当時からみればかなりの進歩が覗えます。また麻生かおりもそんな姉の姿に驚愕し、ついに2人は心を通わせますが、この結末は見ている側がそれぞれに感じとっていくものというラストが「青い」と言われようとも、私は大好きです。特にラストの坂の場面における高倉美貴と昔恋人だった男のキスシーンは何回見ても涙腺が緩みがちになります。ちなみにこの坂は東京は目白の現・田中真紀子邸の近くにあり、この作品以外にも数多くの映画やドラマに使われた隠れた名所でもあります。また劇中挿入歌「午前2時の街で」は作詞・斎藤論、作曲・土師一雄による名曲だと個人的には思っているのですが、ドラマの中で高倉美貴さんに「売れないわねぇ、暗いもの」と貶されたせいかどうか、レコード化はされていないのようなのが残念です。

 で、最初にも書いたとおり、高倉美貴はこの作品を最後にSM物から離れてしまいますが、私はこの作品を見たことで、残念ではありますが、それを肯定しても良いなぁという気分になりました。そして彼女の事が本当に好きなりました。この作品もまた本格SM物というよりもロマンポルノに近いものがありますが、ぜひ皆様にご覧いただきたい作品です。


 以上5本の作品を残し、高倉美貴は一般映画やテレビドラマ等で活動することになります。主な出演作は映画では「カポネ大いに泣く(昭和60年)」「幕末青春グラフティ・Ronin坂本竜馬(昭和61年)」「極道の妻たちU(昭和62年)」、それと日本未公開ですが三島由紀夫を扱った「MISHIMA」等々、テレビ作品では「男女七人夏物語(TBS)」等の他に2時間枠のサスペンス物が幾つかあり、さらにイメージビデオとして「わたくしその気」「情炎」「雪おんな」等がありますが、残念なことに映画やテレビドラマでの主演作品はありません。

 また、平成7年頃に原田伸郎と結婚、この時は彼女の事が本当に好きだったので首のあたりが熱くなるほどの衝撃がありました。まあ、その後ヘアヌード写真集を出してくれたのは嬉しいプレゼントでしたが……。

 ということで、高倉美貴は私にとって本当に忘れられない女優さんです。清純派というルックスでありながら、あの「艶ぼくろ」とでも言うのでしょうか、口元のほくろがなんとも色っぽく、細身の身体に熟れた乳、大きめの尻が不思議と淫らな雰囲気を漂わせているあたりが堪らなく、その彼女が被虐のヒロインを演じた作品をリアルタイムで見ることが出来たのは幸せというほかはありません。幸いな事にここで紹介した彼女の主演作品はすべてビデオ化されており、またその予告篇も「団鬼六SM映画予告篇集(日活H-93)」というビデオで公開時のポスターと共に見ることが出来ます。この世界に共鳴されている皆様にはぜひともご覧いただきたい作品群です。


(注1) アントニオ猪木が乱立するプロレスのタイトルを統一すべく立ち上げたイベントがIWGP(インターナショナル・レスリング・グラン・プリ)で、紆余曲折ありながら3年の歳月をかけた決勝戦で起こったのがこの事件。決勝の相手であるハルク・ホーガンの技を受けまくって最後には逆転で勝つ試合展開を決めていたであろう猪木が、あろうことかホーガンのアックス・ボンバーでリング下へ転落し失神! セコンドに付いていた坂口たちにリングに押し上げられても舌を出したまま動けず、これがテレビで全国へ放送され、猪木神話崩壊のきっかけとなってしまったが、真のチャンピオンを決めるという目的からすればリアルさはあったと思う。

(
注2) 1970年代に「ロミオとジュリエット」等に出演して清純派として人気があった女優。一時、日本の歌手、布施明と結婚生活をおくっていたこともある。ちなみに「谷ナオミがマリリン・モンロー、麻吹淳子はイングリット・バーグマン」と例えたのは団鬼六。

(
注3) 日本では「ジャズの帝王」と称される黒人トランペッター。すでに故人だが、モダンジャズ創世記から活動を続け、数多くの名作アルバム発表し、その影響力は今でも絶大。この作品はそのマイルスが音楽を担当した1957年のフランス映画のサントラ盤「死刑台のエレベーター」を元ネタにしたクールなものになっている。

(
注4) 鈴木則文監督による昭和49年の作品。修道院を舞台にした復讐劇だがSM風味が強く、これが映画デビューとなる主演の多岐川裕美の鮮烈なヌード、渡辺やよいに大量の塩水を飲ませお漏らしに追い込む場面等がある。今でもレンタル屋の定番で、後に多岐川裕美は騙されて出演したと発言し問題化したこともある。

(
注5) ひし美ゆり子主演による昭和五50年公開作品。元禄時代を舞台にしたポルノ時代劇だが、ここでも姉・ひし美ゆり子、妹・橘麻紀による姉妹愛憎劇が繰り広げられている。見所はやはりひし美ゆり子の巨乳が揉まれて吸われるあたりだが、全篇をとおして彼女の演技力は出色! ビデオ化もされているはず。詳しくはここ

(
注6) 昭和52年に公開された三崎奈美のデビュー作。タイトルそのまんまの内容で、彼女が監禁され股間洗いという場面が鮮烈で当時話題になった、今では幻の名作。彼女の巨乳も眩しく、DVD化熱望。

(
注7) 昭和54年に公開された、これも姉妹愛憎物の名作。「闇の中の妖精・有明祥子の巻」参照。


2002.10.02「地下画廊」に掲載 / 2005.01.10 改稿転載)
(敬称略・続く)